• 更新日 : 2024年10月18日

雇用契約書を電子化して工数削減!要件や注意点は?

契約書など、さまざまな書類を電子化する流れが進んでいます。従業員を雇うときに交わす雇用契約書についても同様です。電子化を進めると工数を削減、業務効率の向上が図れるなど、得られるメリットも大きいです。

ただし注意すべき点もあります。ここで雇用契約書を電子化するための要件、注意点についても説明していきます。

雇用契約書は電子化しても良い

雇用契約書とは、使用者となる会社と労働者となる方との間で交わす、雇用契約に基づいて作成される契約書です。雇用契約書は、電子データとして作成・交付することができます。

雇用契約書について、詳しくはこちらでも説明しています。

契約書は、当事者間で定めたルールを明確にし、客観的にその内容を示すために利用される書類です。雇用契約書には労働条件などが記載され、誰とどのような条件で雇用契約を交わしたのかを明らかにできます。

ただ、契約自体は原則として意思表示が合致するだけでも成立するため(民法第522条、労働契約法第6条参照)、雇用契約書を作成する義務はありませんが、労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認することが求められます(労働契約法第4条第2項)。雇用主と被雇用者の双方が同意したことを証明する書類として、雇用契約書を用意した方が良いでしょう。

なお、雇用にあたって交付が法的に求められているのは「労働条件通知書」です(労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条第4項)。     労働基準法では労働条件通知書に関しても、原則としては書面での交付が必要としつつ、労働者が希望したときにはメールやSNSなどを使って労働条件を明示しても良いと規定されています(労働基準法施行規則第5条第4項)。

雇用契約書を電子化する際の要件

作成した雇用契約書について、労働基準法では「5年間」の保存義務を課しています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 労働基準法第109条

しかし同法第143条第1項では「第109条について、当分の間、5年間とあるのは3年間とする」と規定されており、2023年執筆時点においては3年間の保存義務が課されています。

そして国税関係書類の保存について規律する電子帳簿保存法では、電子的にやり取りされた取引情報の保存について、「電子取引」という区分で保存要件を定めています。

契約書を保存するときに求められるのは①真実性の要件と②可視性の要件です。

①真実性の要件について

  • 契約書にタイムスタンプを付与する
  • 契約書の訂正や削除を行ったとき、その記録が残るシステムを利用する(または訂正や削除ができないシステムを利用する)
  • 訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける

②可視性の要件について

  • 保管場所にPC・ディスプレイ・プリンタなどを備え付けて、速やかに、明瞭に、整然と内容を確認できるようにしておく
  • システムの概要書を備え付ける
  • 契約書を作成した日付などの情報から契約書が検索できるようにしておく

雇用契約書を電子化するメリット

雇用契約書を電子化することには、次のようなメリットがあります。

  • 業務効率が上がる
    押印するために出勤する、移動するといった手間をなくせる。雇用契約を交わす相手方としても、わざわざ会社に出向く、あるいは郵送されてくる書面を待ち、署名押印などを施して返送するなどの手間がなくなる。
  • コストが削減できる
    ペーパーレスとなることにより用紙を購入するコストが不要になる。また、契約書を書面として作成すると印紙税が課税されるが、電子化することで印紙代も不要となる。雇用契約書はもともと必要ではないが、実際には作成するケースが多い。契約書の電子化ができるシステムを備えておくことで、その他の書類作成に関して印紙税をカットできるようになる。また、郵送などにかかる費用も不要となる。
  • スペースが節約できる
    紙の契約書を保管する場合、スペースを取ってしまう。一方、電子化する場合、物理的なスペースが不要となる。
  • 閲覧制限をかけやすい
    電子化しておけば、システム上でアクセス権限を付与することで、閲覧の制限をかけやすい。

雇用契約書を電子化する際の注意点

書面の場合、署名押印により本人性を担保していますが、電子化した契約書に従来のやり方で署名押印をすることはできません。

そこで、電子署名により真正性と非改ざん性を、タイムスタンプにより契約書作成の時期と非改ざん性を確保することが大事です。契約書等の電子化を支援する専用ツールを導入すれば、会社側が特別な技術を備えていなくても、電子署名やタイムスタンプは付与できます。

また、契約書の電子化導入に向けてワークフローを調整しておく必要があります。どのような手順で契約書を作成するのか、作成後のデータの取扱いなど、問題なく運用ができるような体制を整えておきましょう。

なお、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねるケースもありますが、この場合は労働条件通知書にかかるルールが適用されるので要注意です。労働条件通知書は本来書面で交付すべき書類ですので、会社側の裁量で電子化してはいけません。契約相手(労働者側)の、電子化してメール等で交付することに関する意向を確認しておきましょう。

SNSやSMSを使って労働条件を明示することも禁止されてはいませんが、法律で想定されているのは、PDFとしてファイルにまとめた労働条件通知書を送信する手段としての利用です。
LINE上で「契約期間は○○」「就業場所は○○」などとチャット形式でテキストを送るのではなく、PDFファイルを送るようにしましょう。

労働条件の通知や保存要件に注意して雇用契約書の電子化を進めよう

雇用契約書は電子化することが可能です。電子化することで業務効率を上げることができ、コストの削減や省スペースなどのメリットが得られます。

電子化した雇用契約書には電子署名やタイムスタンプを付与して真正性や非改ざん性を確保することが大事です。専用のツールを導入して対応しましょう。

一方で、労働条件通知書としての役割も兼ねる場合には、法令に準拠して電子化しないといけません。労働者の希望を受けた上で、必要な事項を漏れなく記載するように気を付けましょう。

よくある質問

雇用契約書は電子化できますか?

雇用契約書は電子化できますが、雇用契約書兼労働条件通知書とするときは、労働者の希望を受けている必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。

雇用契約書を電子化する際の要件はありますか?

電子帳簿保存法に従い、真実性と可視性が確保できる形で電子化する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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