• 更新日 : 2024年8月22日

電子化できる契約書とできない契約書一覧 – 関連する法律から紹介!

近年はさまざまな分野でデジタル社会に向けた取り組みが行われており、契約書についても電子化の流れが進んでいます。ただし、すべての契約書を電子化できるわけではなく、電子化が可能な契約書とそうでない契約書があります。

この記事では、電子化できる契約書について解説します。法改正によって最近電子化できるようになったものや、未だ電子化の対応ができていないものも紹介します。

電子化できる契約書一覧

電子化が認められる契約書の例は、以下のとおりです。

デジタル改革関連法によって電子化が可能になる契約書についても、表の下部に一例を記載しています。

契約書
内容
業務委託契約書
・業務の実施を外部の者に委託し、受注者が業務を行うことで報酬を得る契約
・発注者に具体的な指揮権がない点が雇用契約と異なる
・企業がフリーランスに仕事を依頼するケースでよく見られる
顧問契約書
・企業が、専門家から専門的なサポートを受ける時に交わす
・業務委託の一種だが、専門家に対し、継続的にその能力を企業に活用する場合を「顧問契約」と呼ぶことが多い
・月額やタイムチャージ制で、顧問料として支払うことが多い
秘密保持契約書
・取引に際して自社の秘密情報を開示する場合、秘密を保持する義務を課すために交わす
・「NDA(Non-Disclosure Agreement)」とも呼ばれる
売買契約書
・売主と買主の間で、目的物について売買を行う時に交わす
・不動産関連など特定分野の売買では別途規定があるため注意が必要
下請法第3条書面
・下請法第3条で定められている、親事業者が下請事業者に対し交付すべき書面
・「親事業者と下請事業者の名称」「委託をした日付」「下請事業者による給付内容」などを記載しなければならない
・電子化には下請事業者による事前承諾が必要
雇用契約書
・労働者と使用者が、労働への従事とその対価の支払いを約束する時に交わす
・法的に交付が義務付けられる「労働条件通知書」と兼ねて作成されることもある
・雇用契約書、労働条件通知書いずれも電子化が可能(労働条件通知書の電子化には労働者の希望の要件あり)
業務請負契約書
・成果物の完成、納品を目的とした契約で交わす
・相手方の事務処理や業務遂行自体を目的とする委任契約、準委任契約とは区別される
建設工事の請負契約書
・注文住宅の建設、リフォーム工事などを約する時に交わす
・電子化には相手方の承諾が必要
委任契約書
・法律行為の委託をする時に交わす
・専門家に法的手続きの依頼をする場面などで締結する契約
準委任契約書
・法律行為ではなく、事務処理などの事実行為を委託する時に交わす
・委任契約のように法律行為に限定されないため、依頼先および依頼内容は多岐にわたる
保証契約書
・主たる債務が履行されない場合に備えて保証の約束をする時に交わす
・契約成立には書面作成が必須だが、電磁的記録によってされた時でも、書面によってされたものとみなす旨が規定されており、電子化が可能
賃貸借契約書
・ある物を契約終了まで使用収益させ、その代わりに賃料の支払いを約する時に交わす
・不動産関連では電子化できないものがあるため注意が必要
代理店契約書
・売買契約の当事者とならず、本人の仲立ちとして営業活動を行う際に交わす
・海外メーカー等が日本市場に向けて輸出をしようとする場面などに締結され、この場合は日本国内の企業が代理店として営業活動を行えるようになる
定期借地契約書
・期間の定めを設けて土地の賃貸借をする場合に交わされる
・存続期間50年以上で設定する定期借地契約では、借地借家法第22条の適用を受け書面が必要になるが、電子化が可能に
更新の定めのない定期建物賃貸借契約書
・更新の定めなく、期間の定めを設けて建物の賃貸借を行う場合に交わす
・借地借家法第38条第1項の適用を受ける場合は書面が必要とされているが、電子化が可能に
取り壊し予定の建物の賃貸借契約書
・一定期間の経過後、取り壊すことが決まっている建物について賃貸借する時に交わす
・借地借家法第39条の適用を受ける場合は書面が必要とされているが、電子化が可能に
宅地建物売買等媒介契約書
・家を売ろうとし、不動産会社に間に入って買主を探してもらう時に交わす
・宅地建物取引業法第34条の2第1項の適用を受ける場合は書面が必要とされているが、電子化が可能に
マンション管理業務の委託契約書
・不動産オーナーが、管理会社に管理を委託する時に交わす
・マンション管理適正化法73条の適用を受ける場合は書面が必要とされているが、電子化が可能に

※背景色が付いているものは、デジタル改革関連法施行の影響を受けたもの

電子化できない契約書一覧

以下の契約書は電子化が認められていないため、注意してください。

契約書
内容
任意後見契約書
・判断能力に不安があり、任意後見人を立てたい場合に交わす
・任意後見契約は公正証書によらなければならず、電子化不可
事業用定期借地権設定のための契約書
・事業用に使う建物を所有する目的で土地を借りる場合に交わす
・借地権の設定に公正証書が必要であり、電子化不可
農地の賃貸借契約書
・農地また採草放牧地の貸し借りで交わす
・書面の作成が必要で、電磁的記録でよいとする規定がないため電子化不可

これらの契約書の他、任意で契約書を公正証書として作成したい場合も電子化はできません。公正証書は公証人の下で紙媒体で作成され、そのルールが現在も適用されているからです。

契約書の電子化に関連する法律

契約書などの電子化に関わる法律は、複数あります。

IT書面一括法

「IT書面一括法(書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律)」は、電子取引を促進するために設けられた法律です。

民間で交わされる書面作成が義務付けられている取引について、「相手方の承諾を得ていれば電子取引でもよい」とする内容です。

証券取引法や保険業法、旅行業法、割賦販売法などでは書面の交付が必要になる場面がありますが、送付される側の同意があればメールなどの手段を書面の交付に代えることが認められます。

ただし、公正証書が必要になるケースや対面での取引を前提とするケースなど、書面交付以外の方法が認められていない分野もあります。

e-文書法

e-文書法」では、書面での保管が義務付けられている文書について、一定要件を満たすデータ保管を認めています。

例えば、会計帳簿などの税務関連書類や、株主総会議事録・取締役会議事録などの書類は保存が求められている「法定保存文書」です。しかし、書面での保存だけでなくデータとして残すことも認めたほうが円滑な事業活動を実現しやすいため、同法が定められました。

なお、「e-文書通則法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)」および「e-文書整備法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)」を合わせて「e-文書法」と呼んでいます。

通則法では電磁的記録による保存に関する共通事項が、整備法では文書個別の規定が整備されています。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)」は、前項で挙げた法定保存文書のうち、納税に関わる分野におけるデータ保存などを認める法律です。

納税に関する各種書類保存について、企業の負担を軽減するために設けられました。

ただし、単に「データでもよい」としているわけではなく、各種保存方法に具体的な条件を設けています。
企業の担当者は同法に留意し、データでの保存方法を確認する必要があります。

電子署名法

「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」は、電子署名に対して書面への署名や押印と同等の法的効力を認める法律です。

民事訴訟法第228条第4項では、本人またはその代理人の「署名または押印」があれば私文書の真正性が推定される旨が規定されています。同様の効力を電子契約などにも適用させられるように、「電磁的記録である情報にも本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る)が行われていれば、真正に成立したものと推定する」と定めています。

参考:民事訴訟法|e-Gov法令検索

デジタル改革関連法

「デジタル改革関連法」は、デジタル改革を進めるための法律の総称です。
そのうち、特に契約書の電子化に関わるのが「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」です。
押印や書面交付の見直しを行うべく、48の法改正を取りまとめています。

特定の手続きについて必須とされていた押印を不要にしたり、書面交付を電磁的方法でもよいとしたりするなど、同法によってさまざまな分野での電子化が進んでいます。

例えば、不動産取引に関する契約書は書面で交付することが義務付けられていましたが、同法の施行によって電子化が認められます。

契約書の電子化の流れに対応していこう

書面での作成が義務付けられている契約書についても、電子化が認められつつあります。そのため、現在は電子化が認められていない契約書についても、今後は電子化が認められる可能性があります。

今後電子取引を行う場面は増えると考えられるため、今のうちに契約書の電子化に対応しておくことをおすすめします。

よくある質問

電子化できる契約書には何がありますか?

業務委託契約書や雇用契約書などさまざまな契約書があり、電子化が認められる契約書は増えつつあります。詳しくはこちらをご覧ください。

電子化できない契約書には何がありますか?

公正証書の作成が義務付けられている契約書などは、現在は電子化が認められていません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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