- 更新日 : 2024年11月7日
産廃契約書に印紙は必要?200円と4000円の違いや負担者、不要な場合を解説
産廃契約書には、基本的に印紙の貼付が必要です。ただし、産廃契約書は3つに分類でき、それぞれ該当する課税文書が異なるため、印紙税額も変わります。本記事では、産廃契約書の種類ごとの印紙税額や、いくらの印紙が必要か判断する方法を解説します。印紙をどちらが負担するか、消印の方法や消印なしの場合の取り扱いなども押さえましょう。
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目次
産廃契約書に印紙は必要?不要?
産廃契約書(産業廃棄物処理委託契約書)には、基本的に収入印紙が必要です。
産業廃棄物を処理する手順は、廃棄物の収集・運搬と、廃棄物の処分に分けられます。収集・運搬と処分は別の事業者が行うことが一般的です。
産廃契約書を交わすにあたっては、三者間契約は原則禁じられており、収集・運搬業者と処分業者のそれぞれと二者間での契約を交わさなければなりません。そのため、それぞれ「収集運搬委託契約書」と「処分委託契約書」を交わし、これらを合わせて「産業廃棄物処理委託契約書」と呼んでいます。
個別の依頼とは別に、収集・運搬業者や処分業者と継続的に取引を行うために、基本的な事項の取り決めに関する契約を交わすこともあるでしょう。こうした契約書も、産廃契約書と呼ばれることがあります。
それぞれの契約書にいくらの印紙を貼付するかは、印紙税法で定められています。契約書の種類や内容によって印紙の金額が異なるため、3つの契約書における印紙に関する決まりを見ていきましょう。
印紙の貼付が必要な契約書については、以下の記事でも詳しく解説しています。
収集運搬委託契約書:運送に関する契約書(1号の4文書)
収集運搬委託契約書は、印紙税法における1号の4文書「運送に関する契約書」に該当し、印紙税額は以下のように定められています。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 不要 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
金額の記載がないもの | 200円 |
参考:印紙税額|国税庁
印紙税額は、契約書に記載されている契約金額によって決まります。たとえば、産業廃棄物の収集・運搬を契約金額80万円で委託する場合は、印紙税額は400円です。
処分委託契約書:請負に関する契約書(2号文書)
処分委託契約書は、印紙税法における2号文書「請負に関する契約書」に該当し、印紙税額は以下のように定められています。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 不要 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
金額の記載がないもの | 200円 |
参考:印紙税額|国税庁
収集運搬委託契約書と同様に、処分委託契約書の印紙税額も、記載されている契約金額によって変わります。
ただし、契約金額の区分は収集運搬委託契約書と同じでも、印紙税額が異なる点には注意しましょう。たとえば、産業廃棄物の処分を契約金額80万円で委託する場合は、印紙税額は200円です。
継続的取引の基本となる契約書(7号文書)
収集運搬業者や処分業者との継続的な取引における、基本的な事項を記載した契約書は、印紙税法の7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に該当します。7号文書に貼付すべき印紙税額は一律4,000円です。
産廃契約書に貼る印紙税の200円と4000円の違い
産廃契約書が1号の4文書または2号文書に該当し、1万円以上で契約する場合は、少なくとも200円以上の印紙を貼付しなければなりません。一方で、7号文書に該当すれば4,000円の印紙を貼付する必要があります。
まずは、作成する契約書が7号文書にあたるかどうかを判別しましょう。7号文書は、契約期間が3か月以内であり、なおかつ更新についての定めがないものは含みません。3か月以上の契約である場合や更新の定めがある場合は、契約内容が収集運搬であれば1号の4文書、処分であれば2号文書と判断できます。
上記の方法で判断できなければ、契約金額を明確に計算できるかがポイントです。契約金額は、「排出量×単価×契約期間」で計算します。単価は、重さごと(1キロ・1トンなど)や面積ごと(1平米など)、または1車あたりや1回あたりなど、自由に決められます。
たとえば、月に10トンの産業廃棄物の収集・運搬を1年間契約する場合を考えましょう。1トンあたりの単価を1万円とすると、契約金額は以下のように計算できます。
10トン×1万円×12か月=120万円
収集・運搬の金額であるため、印紙は2,000円必要であることがわかります。一方、処分について同様の契約をした場合は、必要な印紙は400円です。
また、契約金額の記載方法にも注意しましょう。税込みと税抜きの金額を記載するか、かっこ書きで消費税額を記載することで、税抜きの金額を契約金額と考えて印紙税額を判断できます。たとえば、契約金額110万円で収集・運搬の契約を交わす場合に、以下のように記載すれば、印紙税額は1,000円で済みます。
- 契約金額110万円、税抜き金額100万円
- 契約金額110万円(消費税10万円を含む)
しかし、税抜き金額や消費税を記載しなければ、110万円を契約金額として判断するため、2,000円の印紙を貼付しなければなりません。
産廃契約書に貼る印紙税はどちらが負担する?
印紙税法によると、1つの課税文書を2者以上で作成した場合には、契約当事者が共同で印紙税を納めなければならないとしています。実際に、産廃契約書は2部作成し、それぞれが1枚ずつ保管することが一般的です。そのため、印紙の金額も双方が負担する場合が多いようです。
ただし、契約書を1部だけ作成して一方が原本を、もう一方がコピーを保管する場合もあります。この場合は、原本を保管する方が印紙税を負担することもあれば、当事者が折半して負担することもあるようです。トラブルの原因を残さないよう、負担割合について話し合い、契約書にも明記しておくとよいでしょう。
産廃契約書の印紙の貼り方、消印の押し方
産廃契約書に収入印紙を貼る場所は、文書の左上が一般的です。また、署名欄の横に貼付する場合もあります。ただし、法律で厳密に決められているわけではありません。
印紙を貼付したら、使用済みであることを示して再利用を防止するために、消印を押しましょう。印紙と契約書にまたがるよう、図のようにはっきりと押印します。契約に使った印鑑を押しても構いませんが、認印やゴム印、インク浸透印でもよいとされています。
ボールペンによる署名も消印として有効ですが、署名を丸で囲んだものは認められません。鉛筆やシャープペンシルなど、消えてしまいやすい筆記用具を使うことも避けましょう。
産廃契約書に印紙がないとどうなる?
産廃契約書への印紙の貼付は、印紙税法によって定められています。そのため、貼付がない場合はペナルティが課せられることもあります。印紙がない場合に、どのように扱われるのかを見ていきましょう。
契約内容は無効にならない
産廃契約書に印紙の貼付がなくても、契約内容自体は有効です。契約の内容ではなく、印紙が貼られていないことに問題があるためです。契約は無効にならないものの、印紙税法に違反したことによるペナルティがあります。
過怠税が発生するリスク
印紙の貼付がなければ、本来必要な印紙税額に加えて過怠税が課せられます。自主的に気付いた場合は、税務署に申告することで過怠税は10%となり、本来貼付すべきであった印紙税額の1.1倍を納付します。しかし、税務調査によって指摘された場合は、本来の印紙税額に加えて2倍の過怠税が課せられ、本来の3倍の金額を納付しなければなりません。契約金額によっては、過怠税が加わり高額な納付が必要になることもあります。
消印の押し忘れにも注意
印紙を貼付するだけでなく、消印も忘れずに押しましょう。貼付した印紙に消印がない場合にもペナルティがあり、貼付した印紙と同額の過怠税を納付しなければなりません。印紙を貼ったら、続けて消印も押すようにしましょう。
契約書に収入印紙が貼られていないケースについては、以下の記事をご確認ください。
産廃契約書の割印の押し方
契約書を作成する際に、不正な複製や改ざんを防止するために「割印」を押すことがあります。割印は契約書に必須というわけではありませんが、上記の理由で広く採用されている商習慣です。
産廃契約書の場合は2部の契約書を少しずらして重ね、印鑑を押します。割印に使う印鑑も、契約に使ったもの以外でも構いません。認印を使う場合もあるほか、割印専用の縦長の印鑑も販売されています。
2人目の割印の際には、1人目の印鑑がずれないよう押印します。また、割印は契約者全員の印鑑が必要です。そのため、一方の契約者だけでなく二者ともが押印するようにしましょう。
産廃契約書の無料ひな形・テンプレート
産廃契約書は、事業で発生する産業廃棄物の処理を委託する際には必須の文書です。法定記載内容を満たし、契約内容を明確に記載したものを作成しなければなりません。迅速かつ簡単に産廃契約書を作成するためには、テンプレートを使うと便利です。以下から無料でダウンロードできるため、ぜひ活用してください。
▼産廃契約書のテンプレートをダウンロード
なお、産業廃棄物処理委託契約書の詳細については、以下の記事もご参照ください。
電子契約なら産廃契約書の印紙は不要に
産廃契約書を紙で作成する場合には印紙が必要ですが、電子契約であれば印紙は不要です。印紙税法では、作成された課税文書に印紙を貼付しなければならないと定められています。この「作成」という言葉は、印紙税法では紙に出力することに対して使われており、紙に出力せずデータによって契約を交わす電子契約は「作成」に該当しません。
電子契約であれば、1号の4文書・2号文書・7号文書を問わず、印紙の貼付は必要ありません。「どの文書に該当するのか」「契約金額はいくらで印紙税額はいくらか」と悩む必要もなくなります。頻繁に産廃契約書を交わす場合はとくに、紙から電子契約に切り替えることで大きなメリットを得られるでしょう。
電子契約で印紙が不要な理由を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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