• 作成日 : 2024年9月27日

懲戒解雇通知書(不正行為)とは ?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

懲戒解雇通知書は、不正行為等をはたらいた従業員に対して懲戒解雇処分について通知する文書です。

懲戒解雇は大きな問題が起こった場合の処分であり、その後トラブルが起こるおそれもあるため、懲戒解雇通知書の作成についても十分に注意しましょう。具体例を交えてここで書き方を紹介しているため、解雇を言い渡す前にぜひご一読ください。

懲戒解雇通知書(不正行為)とは

懲戒解雇通知書は、会社が、不正行為等をはたらいた従業員に対して、懲戒解雇に処する旨を通知するときに作成する文書です。

懲戒処分としての解雇を言い渡すとあとになって従業員ともめることもありますので、「言った」「言わない」の問題を起こさないためにも文書として形に残しておく必要があるのです。

また、解雇は特に重たい処分であることから会社も自由にできるものではなく、適正な手続きに則り解雇を行わなければいけません。その意味でも懲戒解雇通知書を作成し、そこに「なぜ懲戒解雇となったのか」「どのような根拠で処分を下すのか」「いつから解雇となるのか」といった情報を伝える必要があります。

懲戒解雇通知書(不正行為)を作成するケース

従業員が不正行為をはたらき懲戒解雇通知書を作成するケースとしては、次のようなシチュエーションが考えられます。

  • 現金や物品など会社の財産を盗み取った

    権限なく勝手に盗み取った場合は刑法に規定されている「窃盗罪」に該当する。その財産について保管を任されていた場合は窃盗にはあたらないが「横領」に該当する犯罪行為であり、懲戒解雇もあり得る。

  • 他の従業員とのトラブルで暴行・傷害の事件を起こした

    暴力を振るう行為も刑法規定の「暴行罪」、さらに傷害(ケガ)を負わせたときは「傷害罪」にあたり、懲戒解雇もあり得る。

  • 部下に対して悪質なパワーハラスメントがあった

    優越的な地位を悪用して業務上必要とはいえない言動があった場合、それが特に悪質だと懲戒解雇もあり得る。パワハラのほか、セクハラでも同様のことがいえる。

  • 業務を遂行するうえで特に重要な指示や命令に従わず業務に支障をきたした

    顧客情報や会社の機密情報を故意に漏洩させるなど、今後の業務や会社の存続に関わるほどの重大な違反行為があった場合は懲戒解雇もあり得る。

このような行為をした者に対して懲戒解雇を知らせるときに、懲戒解雇通知書を作成します。

懲戒解雇以外で解雇を行うケースとは

解雇の仕方にも種類があります。

前項で説明したように犯罪行為や情報漏洩などの不正行為を理由する解雇が「懲戒解雇」であり、これは従業員側に原因があるケースの解雇です。

一方で、会社側の都合で解雇を行う場合を「整理解雇」と呼び、事業の縮小やコストカットを理由とする人員削減などの場面で行われます。人員削減の必要性や解雇基準に合理性があることなど、いくつかの要件を満たしたうえで整理解雇は有効となります。

その他の理由であれば、能力不足や成績不良、病気等による長期休職など従業員側に原因があるものの、懲戒処分には該当しない場合を「普通解雇」と呼びます。

懲戒解雇通知書(不正行為)のひな形

懲戒解雇通知書を作成するときはこちらのひな形をご利用いただければと思います。ゼロから通知書を作成するより効率的に作業を進められ、必要な情報も忘れず盛り込みやすくできるでしょう。

懲戒解雇通知書(不正行為)に記載すべき内容

上で紹介したひな形も参照しつつ、懲戒解雇通知書に記載すべき内容についてそれぞれ書き方を説明していきます。

記載事項書き方
表題「懲戒解雇通知書」など、一見して何の文書かわかるように記載。
交付年月日交付した日付がわかるように記載。
被解雇者の氏名懲戒解雇の対象となっている従業員を特定するように記載。
会社名・代表者名および印社名と代表者の氏名を記載し、捺印する。
懲戒解雇とする旨「当社が定める手続きに則り、貴殿に対する処分について審議を重ねた結果、懲戒解雇処分とすることに決定しました。」など、懲戒解雇処分を下す旨を記載。
不正行為・違反行為の内容「貴殿は、当社が保有する金○○万円を私的使用のため着服したにもかかわらず、当社が使途の説明を求めた際に、・・・と虚偽の説明をした」など、具体的に不正行為等の内容を記載。
処分の根拠就業規則第〇条違反」など、不正行為等の内容を就業規則等の社内規則に照らし合わせて、なぜ懲戒解雇となったのかを記載。
解雇日および解雇予告手当「〇年〇月○日をもって、・・・」と解雇になる日付を具体的に記載。
併せて「〇日分の平均賃金として金○○万円を、貴殿の口座に振り込みます」などと、予告から解雇日までが30日に満たないときは、解雇予告手当についても記載。

※懲戒解雇であれば手当なく即時解雇も可能であるが、トラブルになりそうなときは支給も検討。

各事項の順序や書き方・表現については自由ですが、「解雇をめぐってトラブルにならないようにどうすべきか」という視点を持って作成しましょう。

懲戒解雇通知書(不正行為)を作成する際の注意点

懲戒解雇通知書を作成するときは、上で紹介した事項について言及するほか、以下の点にも注意してください。

  • 過去すでにペナルティを課した行為について再度処分を課さないこと
  • 懲戒解雇通知書で伝えた事由以外の事実をあとで追加しないこと
  • 作成者の主観的な評価や感情的な表現は避け、客観的な事実に基づいた記載をすること
  • 解雇予告手当を支給しないときは、その支払いが不要である旨や理由を記載すること

また、「社内で行った審議内容の要約」や「退職金に関する案内」、「会社所有物の返却に関する案内」なども併せて記載しておくと何度もやり取りする手間を省くことができます。

懲戒解雇の要件

懲戒解雇は、会社が従業員に対して課すペナルティ(懲戒処分)の中でももっとも重い処分です。強制的に解雇をすることになりますので、このペナルティを課すにも相当の根拠・理由が求められます。

そこで以下で説明する要件に注意してください。

就業規則に懲戒解雇事由が記載されている

懲戒解雇を行う前提として、不正行為が起こる以前に就業規則で懲戒解雇事由が定められていなければいけません。

どのようなことをすると懲戒解雇となってしまうのか、従業員がわかる状態にしておくことが大事となり、その規定が懲戒解雇の根拠にもなります。

「無断欠勤を〇日以上続けている」「遅刻や早退を繰り返し〇回以上の注意にも応じず改善の見込みがない」「社内での窃盗・横領・傷害等の刑法犯に該当する行為があったとき」など具体的な事由を挙げ、最後には「前各号に準ずる不適切な行為があったとき」などと包括的な条項も設けておくとよいでしょう。

懲戒解雇事由はある程度具体的に定める必要がありますが、包括条項を設けておくことで列挙した事由に類似する、同程度の不正行為にも対応しやすくなります。

懲戒解雇と不正行為の重さがつりあっている

就業規則に定めた事由に該当する行為があったからといって常に懲戒解雇が正当なものと評価されるわけではありません。

実際にあった行為が懲戒解雇事由に該当しそうであっても、その行為の悪質さや被害・リスクの大きさなどを鑑みて「懲戒解雇はやり過ぎだ」と判断されるときは、処分に相当性がないとして不当解雇になってしまいます。

そのため、就業規則への定め方もそうですが、実際に不正行為があったときも「客観的にみて懲戒解雇が相当といえるかどうか」に着目することが大事です。

懲戒解雇の手続きが適切に行われている

解雇相当の所定の事由に該当したとしても丁寧な対応を心がけましょう。

意見を何も聞かず即座に解雇をすべきではなく、まずは当事者から意見を聞くこと、解雇について理由や日付を伝えるなど、適切に手順を進めなくてはなりません。

懲戒解雇をするための手続きが適切でなければ、それが理由で不当解雇となるおそれがあります。

懲戒解雇の理由や根拠を通知書に明記することが大事

懲戒解雇通知書を交付しただけで処分が適法となるわけではありません。しかし、不当解雇とならないようにするには「手続きの相当性」を認められる必要があり、この通知書を使って解雇の理由や根拠、解雇となる日付などを共有しておきましょう。

また、懲戒解雇とする前提として就業規則への定めも欠かせません。厚生労働省がサンプルを公表しているため、そちらも参考にするとよいでしょう。

参照:厚生労働省「モデル就業規則について」


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