• 作成日 : 2024年1月5日

販売仲介契約とは?締結するケースや書き方をひな形とともに紹介

販売仲介契約とは?締結するケースや書き方をひな形とともに紹介

販売仲介契約とは、商品の販売について仲介をしてもらうときに交わす契約のことです。コストはかかるものの、メーカーにとっても効率的に商品販売ができるという利点が得られます。

当記事ではこの販売仲介契約について言及し、契約書のひな形を紹介するとともに書き方も解説していきます。

販売仲介契約とは?

販売仲介契約とは、商品の開発・製造等を行うメーカーが、その商品の販売についての仲介を委託するための契約です。

ある商品を販売するとき、商品を作った企業が直接店舗を持ったりオンラインショップを持ったりして、直接販売することができます。直接一般消費者とつながって販売をしたり、事業者に対して営業をかけて販売をしたり、販売のやり方は様々です。

その販売方法の1つとして「販売仲介契約」があります。他社に販売の仲介をしてもらうため、費用の支払いが必要です。しかし販売仲介を業として行っている企業に依頼することで、メーカー自身だけだと接点を持つことのできなかった顧客とつながれる可能性も出てきます。

販売仲介契約の利用シーンとしては「販路拡大をしたい」というシチュエーションが考えられます。また、「販売に対する人員を割くことが難しい」「効率的に販売をしたい」といった場面で販売仲介契約を検討するケースも考えられます。

販売委託契約との違い

販売仲介契約と似た言葉に「販売委託契約」というものがあります。

販売委託契約は第三者に商品の販売という業務を委託する契約を意味し、業務委託契約のひとつと考えられています。業務委託契約自体にも広い意味があり、請負契約など、法律上定義されているどの契約に該当するのかは契約内容を読み取ったうえで判断しなくてはなりません。

販売仲介契約と比べると販売委託契約は解釈の余地が広いと言うことができ、実質において販売仲介契約と差がないケースもあれば、「商品販売の代理」としての意味合いが込められているケースもあります。

販売代理店契約との違い

「販売代理店契約」という契約もあります。こちらは「代理」という言葉が使われているように、メーカーの代理として商品の販売を行うことになります。

販売仲介契約と販売代理契約のどちらも最終的にはメーカー自身が買主と契約を締結することになりますが、その過程に違いがあります。

あくまで「仲介」にとどまる販売仲介契約で仲介業者が行うのは、メーカーと買主の契約が成立するためのサポートです。顧客の紹介などを仲介業者が行い、その先の契約締結はメーカーが行います。
しかし「代理」までできる販売代理店契約では、メーカーの代わりに契約締結まですることができます。

販売仲介契約を締結するメリット

販売仲介に際しては金銭のやり取りも発生しますが、仲介をしてもらうことにはそれ相応のメリットがあります。メーカー側が得られるメリット・仲介業者が得られるメリットを簡単に紹介していきます。

メーカー側のメリット

メーカー側にはコストの負担が発生しますが、その反面、大きく次の3つのメリットが得られます。

  • 販路の拡大がしやすい
  • 自社で人員確保をしなくていい
  • 効率的に販売ができる

販路開拓を一から自社で対応するのは大変な作業です。認知されていない商品をどうアピールしていくのか、どのように消費者・事業者に訴求していくのか、商品開発や製造の業務をこなす傍らでこれら販売に係る業務も進めていかなくてはなりません。
しかし販売仲介契約を交わして他社に依頼を出せば、仲介業者の持つ流通網を利用することができ、素早く販路開拓が目指せます。販売業務も効率化が図れます。

また、販売のために必要な人員も少なくすることができます。契約にかかるコストとの兼ね合いも考慮する必要がありますが、人件費がカットできて全体としてのコストが下げられる可能性もあります。

販売の「代理」を依頼したほうが自社で対応すべき範囲は狭くなるのですが、その分依頼コストが高くなってしまいます。一方、「仲介」にすることで依頼自体にかかるコストは抑えることができます。

仲介業者のメリット

仲介業者は、仲介を委託されて業務を行うことで対価を受け取れます。また、取引先がひとつ増えることによってさらに自社の持つネットワークが広がり、今後の営業活動の幅が広げられます。

販売仲介契約書のテンプレート(ひな形)

販売仲介契約書のひな形は下記のページから無料でダウンロード可能です。実際に契約書を作成するときはひな形のままではなくカスタマイズする必要がありますが、ひな形をベースにすると効率的に契約書を作成できます。

販売仲介契約書の基本条項

上記リンクからダウンロードできるひな形では表題を「商品販売仲介契約書」と記載していますが、表題は簡潔に、契約の内容がわかるように記載されていれば問題ありません。また、前文にも簡単に当該文書がどんな契約書であるのかを記載しておきましょう。

その際、「○○株式会社(以下「甲」という)と、■■株式会社(以下「乙」という)とは、本日、甲の商品の販売に関して次の通り販売仲介契約(以下「本契約」という)を締結した」などと当事者を「甲」と「乙」で定義しておくと契約書全体をすっきりさせられます。

その他、条項を設けて細かなルールを設定していきましょう。例えば次のような条項について内容を検討していきます。

  • 販売仲介の方法
  • 契約期間
  • 仲介業務の費用
  • 手数料(取引金額)と支払い方法
  • 再委託の禁止 など

それぞれの詳細を説明していきます。

販売仲介の方法

どのようにして仲介するのかを検討します。具体的な方法は商品の内容などによっても異なるでしょう。仲介業者は自社のノウハウを活かして具体的な提案をすること、メーカー側はその内容について問題がないかどうか、費用対効果の大きさなどをよく考え判断していく必要があります。

トラブルのないよう、契約書には販売仲介をするときの事前通知とメーカー側による了解について、例えば「販売仲介をしようとするときは、事前に買主の住所・氏名・取引内容等を通知し、了解を得るものとする。」などと定めます。

さらに買主との契約の方法については例えば、仲介業者が契約書に買主の署名捺印を受けてこれをメーカー側に提出する旨、商品や売買代金のやり取りはメーカーと買主が直接やり取りを行う旨を記載します。

契約期間

必要に応じて販売仲介契約の期間も設定します。期間の定めをおくときは有効期間について争いが起きないように、「令和○年○月○日から同○年○目○日」などとできるだけ明確化しておくことが大事です。

また、契約期間の更新についても言及しておくとよいでしょう。例えば「期間満了の○ヶ月までに申出のない場合は、本契約と同一条件で更に○年間継続する。」などと記載します。

仲介業務の費用

仲介に対する報酬ではなく、仲介の業務を遂行するにあたり発生した実費について、その費用の負担者も明確化しておきましょう。

例えば、「販売の仲介業務に要する費用」は仲介業者の負担とし、「契約書の作成や物品送付等契約の履行に要する費用」はメーカー側の負担にする旨を記載します。

どちらかが費用の償還を求める場面も想定し、発生が予期される費用に関しては契約書でルールを記載しておくと安全です。

手数料(取引金額)と支払い方法

メーカーが仲介業者に対して支払う手数料の額、あるいはその額の計算方法を記載します。この条項は必須であると捉え、契約書にて明記しておくべきです。

例えば「甲が乙に対して支払う手数料は、契約金額の〇%とする。」などと記載します。

併せて、手数料の支払い方法についても定めておきましょう。「締日はいつか」「期日はいつか」「振り込みあるいはその他の方法なのか」「どの口座か」の情報を定めていきます。さらに、振込とする場合は振込手数料の負担者も定めておきましょう。

再委託の禁止

仲介業者がさらに社外へ販売業務の依頼を出す「再委託」を認めるのかどうか、についても契約書に記載しておきましょう。

基本的には無制限に認めるべきではありません。再委託や再々委託が続くと、自社や顧客の情報が必要以上に外部へと流れてしまい、適切な情報管理も難しくなってしまいます。

とはいえ効率的・効果的な販売仲介を実行するためには一部再委託を認めた方がよいケースもあります。そこで「事前の承諾がある場合を除いて、仲介業務を第三者に再委託してはならない」などと記載するとよいです。

その他

他にも、次のような事項について契約書に書くことを検討するとよいでしょう。

  • 販売地域の限定
    依頼コストなども考慮して地域を具体的に記載することがある。
  • 専任かどうか
    別の仲介業者の利用を認めず「専任」とするのか、別の仲介業者の利用も認める「非専任」とするのかの区別。
  • 仲介業務の禁止事項
    ブランドイメージなども考慮して、仲介業者が遵守すべき事項を定める。商品紹介にあたって必ず伝える事柄、使ってはいけない表現など。

販売仲介契約書作成のポイント・注意点

販売仲介契約書を作成するときは、「手数料の金額や計算方法の明確化」、そして「仲介業務にかかった費用の負担者の明確化」に留意しましょう。金銭のやり取りについてはトラブルが起こりやすいため、解釈違いが起こらないようにはっきりさせておくべきです。

また、仲介業者の行動がメーカー側のブランドイメージに影響を与える可能性もありますので、上記再委託に関するルールや禁止事項の定め、さらに反社会的勢力の排除規定などもよく考えたうえで設定しましょう。

仲介業者側としては、自社のみが当該商品の販売仲介をできること、専任とすべきかどうかについて検討してメーカー側と交渉を進めていきましょう。

なお、契約書の作成で印紙税が課税されることがあります。契約書の表題ではなく実態で評価され、例えば継続的な取引に対して1通4,000円、請負契約をみなされたときは契約金額に対応する印紙税がかかります。
ただし、電子契約書として作成したときは非課税となり、印紙税は発生しません。

費用対効果を考慮して販売仲介契約を締結しよう

販売仲介契約は、商品の開発や製造を行うメーカーが、販売についての仲介を依頼するときに交わす契約です。自社で販売業務すべてに対応する場合に比べて労力が削減されますが手数料の支払いが必要であるため、その負担以上の結果が得られるのかどうかを評価することが大事です。

販売仲介契約書を作成するときはひな形も参考にしつつ、仲介の方法や手数料、その他禁止事項などを一つひとつ考えて設定していきましょう。


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