• 作成日 : 2022年6月24日

法令とは?条例や規則などとの違いを解説!

「法令」とは法律と命令を合わせた呼称です。「法令」と聞いて、「何となくはイメージできる」という方は多いでしょう。しかし、「法令とは具体的に何を指す言葉なのか」ということを知っている方は少ないのではないでしょうか。「法律」「規則」「条例」など似た意味を持つ言葉が多くあるため、これらを使い分けられるように解説します。

法令とは?

「法令」という言葉に厳格な定義はありませんが一定の守らなければならないルールと表現できます。そして、「法令」には、後述する「法律」「施行令」「施行規則」「条例」などさまざまな形式があり、どこまでが守るべき「法令」に含まれるのかをよく意識しておく必要があります。

法律や施行令、施行規則は、法令に含まれると考えられています。また、自治体が制定する条例や規則も法令に含まれると考えられています。

一方でルールとして機能するものであっても、ガイドラインや指針、単に事実を告知するものは、通常は法令とは呼びません。

法令についてより深く理解するために、それに含まれる法律や命令等について説明します。

各法令については、下表で簡単にまとめています。

法令
国の法令
法律
国会が定めるルール
政令
内閣が定める命令で、「施行令」という名称でも呼ばれる。法律の下位に位置するルール
法律による委任の範囲で細目を定める場合などに制定される
省令
大臣が定める命令で、「施行規則」という名称でも呼ばれる。政令より下位に位置するルール
法律や政令を施行するために制定される
自治体の法令
条例
国の法令の範囲内で自治体の議会が定めるルール
規則
国の法令の範囲内で市町村長・知事が定めるルール

法律との違い

法令の代表格が「法律」です。ただし、法令は命令などのルールも含んでいる点で法律そのものとは異なります。また、法律は法令の中でも上位に位置します。

そもそも、法律とは国会が定めたルールのことです。国会では国民が選んだ国民の代表が話し合って法律を制定し、国民は国会で制定された法律というルールによって権利を制限されたり、義務を課されたりします。

施行令との違い

「施行令」とは政令のことです。法律の下位に「○○施行令」などと題される政令が位置します。
法律だけではその目的を果たすことが十分でない場合などに、その内容をさらに具体化し、より実効性を確保するために制定されるルールです。

例えば、ある法律に「○○に関して政令で定める」といった規定が置かれることがあります。これは委任規定と呼ばれ、委任規定に基づいて定められる施行令は「委任命令」と呼ばれることもあります。

これに対し、法律による個別の委任を受けず、法律の内容を実施するために置かれる「執行命令」と呼ばれるものもあります。ある制度に関する申請書の提出期間を定めるようなケースです。

施行規則との違い

「施行規則」とは大臣が定める「省令」や「府令」のことです。施行令と似た趣旨で置かれるものですが、施行令より下位に位置する法令です。大臣らの合議体である内閣が定める政令に対し、省令は各大臣が定めるという違いがあるため、このように位置づけられています。

命令との違い

「命令」とは、行政機関により制定される法規全般を指す言葉です。そのため、施行令や施行規則も命令に属するルールといえます。しかし、法律は立法府が制定するものであり、行政が定める命令には含まないため、法律も含めて考える法令とは異なると考えられます。

命令には施行令や施行規則の他、庁の長や委員会が法律に基づいて定める「規則」も含まれます。人事院規則や会計検査院規則などがその例です。

条例との違い

ここまでで挙げたルールは、国が制定する法令です。
これに対して自治体が定める法令もあります。特に区分せずまとめて法令と呼ぶこともありますが、自治体の法令に着目した場合は「条例」と「規則」に分けられます。

条例は、自治体の議会によって制定される法令です。国でいえば、国会が定める法律のような存在です。しかし、法律から完全に独立したルールを定められるわけではありません。

規則との違い

「規則」とは、市町村長あるいは知事が定めるルールのことです。
議会が定める条例との比較では、法律に対する命令に近い性質を持ちますが、法律と命令のような縦の関係にはありません。

条例と規則は、原則として対等な存在と考えられています。それぞれの専権事項について定めるルールだからです。しかしながら、条例の実施のために下位法令として規則が定められることもあり、例外的に縦の関係になることもあります。その場合、対等な関係の規則と区別するために「条例施行規則」と呼ばれます。

通達・通知との違い

「通達」や「通知」と呼ばれるものもありますが、これらは法令ではありません。

通達は、法令の解釈や法令の運用に関する注意点等を記したものです。
他にも「要綱」や「要領」といったものや、「ガイドライン」「指針」といった基準や方向性を示すものもあります。

これらは、いずれも一般的には法令に含まれません。

代表的な法令一覧

法律だけでも多くのものが存在します。さらに命令等も含めた法令となれば、列挙したものだけでも膨大な量になるでしょう。

そこで、ここでは法律や施行令などの法令として制定されているもののうち、代表的なものを数点紹介します。

まず、国の法令である法律および施行令・施行規則についてです。

  • 法律
    • 「民法」
      市民生活の関係を規律し、売買や賃貸借といった財産関係から、親子・夫婦・相続といった家族関係まで幅広く規律する一般法
    • 「刑法」
      罪となる行為と、罪を犯したときに科せられる罰に関して規律した一般法
  • 施行令
    • 「建築基準法施行令」
      建物の建築や利用において守るべきルールを定めた「建築基準法」を施行するため細則を定めたもの
    • 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令」
      派遣労働者保護を目的とする「労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)」を施行するための細目を定めたもの
  • 施行規則
    • 会社法施行規則」
      会社の設立から運営、管理のことなどを規律する「会社法」につき、細目を定めたもの
    • 「道路交通法施行規則」
      道路上での危険防止、交通の安全およびその円滑を図る「道路交通法」の細目を定めたもの

自治体の法令である条例や規則は各自治体で異なりますが、類似した条例や規則が置かれているケースもあります。

例えば、名称が若干異なることもありますが「個人情報保護条例」は全国的に制定されている条例です。特に近年は個人情報の取扱いに関して世間の関心が高まっており、その重要性が広く知られるようになりました。条例の大元として「個人情報保護法」という法律が定められており、都道府県庁・市町村役場・公立学校などにおける個人情報の取扱いに関しては、各地で策定する同条例が適用されます。

さらに、その下位にあたる「個人情報保護条例施行規則」もあります。「○○市個人情報保護条例施行規則」などと名付けられ、同条例の施行に必要な細目が定められています。

他にも多くの条例や規則が定められており、具体的な内容については各自治体のWebサイト等で確認することができます。

法令が適用される範囲

法令は、原則として日本国内でのみ適用されます。
具体的には「国内領土の全域」で適用されるのですが、ここでいう「領土」には領海・領空も含まれます。そのため、日本に上陸しなくてもその領空では国内法が適用されるのです。

一方で、一部海外にも適用する旨を定めている法令もあります。
例えば海外で放火や通貨の偽造、収賄などの違反行為を行うと、場合によっては日本の刑法が適用されることが規定されています。その場合は日本人が犯した行為なのかといったことがポイントになります。

また、会社更生法や不正競争防止法なども日本国外での違法行為に国内法を適用する規程のある法令です。

なお、自治体の定める条例や規則は当該県内や市内など限られたエリアで適用され、国が定める法令とは適用範囲が大きく異なります。

「法令」はさまざまなルールを含む言葉である

法令は、法律や施行令、施行規則などを広く含むルールを指す言葉です。国が定めるルールのみならず、自治体が定める条例や規則も法令と呼ぶことがあります。

厳密な定義はないため、「法令」という文言を見かけたときは、文脈などから具体的にどのようなルールを指しているのかを判断するようにしましょう。

よくある質問

法令とは何ですか?

国の定める法律や施行令、施行規則といった命令、自治体の定める条例や規則などを指す言葉です。詳しくはこちらをご覧ください。

法令が適用される範囲について教えてください

国が定める法令については基本的に国内で、自治体の定める法令については当該自治体のエリアで適用されます。ただし、適用範囲について例外規定が置かれていることもあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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