- 更新日 : 2025年4月8日
自動更新時に契約書の再作成は必要?自動更新条項の記載項目や例文を解説
契約時に自動更新条項をつけると、契約期間満了後に更新手続きなどの手間を省けます。ただし、必要に応じて更新拒絶する方法も理解することが重要です。
本記事では、契約書の自動更新条項について解説します。自動更新条項を設けるメリットやデメリット、条項の記載項目や例文も紹介しますので、契約内容を検討するときの参考にしてみましょう。
目次
契約書の自動更新とは
契約書の自動更新とは、契約書に「自動更新条項」を設けることで、契約期間の満了と同時に自動的に契約期間を更新するというものです。契約期間満了後に、再度契約期間を更新する手続きが不要となるため、自動更新によって手続きの負担を軽減できます。
ただし、契約期間が満了する前の一定期間内に契約者の一方が更新しない旨の意思表示をすれば、自動更新されません。契約内容を見直して契約更新するか、契約を終了することになります。
契約書の自動更新が利用されるのは、同じ契約内容で継続的に契約期間の更新が見込まれる場合などです。契約内容を頻繁に見直す場合、契約書を自動更新にすることは避けましょう。
自動更新と法定更新との違い
法定更新とは、借地借家法第26条に定める建物賃貸借に関する契約の自動更新のことです。借家契約の契約更新時に、契約者の一方が一定期間内に「契約を更新しない」または「条件を変更しなければ契約更新しない」旨を通知しない場合、これまでと同じ条件で契約を更新したとみなされます。
自動更新は契約者双方が合意して自動更新条項を設けますが、法定更新では一定条件を満たす場合、法律的に契約が自動更新されます。また、自動更新はさまざまな契約が対象になりますが、法定更新の対象は建物賃貸借契約だけです。
自動更新時に契約書の再作成は必要?
契約を自動更新するときには、契約書の再作成は必要ありません。更新時に契約書を再作成、再契約する手間を省ける、契約の自動更新が設けられているためです。
契約締結時に、更新拒絶がなければ自動的に更新するという「自動更新条項」を付した契約書を作成し契約者双方が合意・契約締結すれば、契約書の再作成・再契約なしで契約は有効に更新されます。
契約書に自動更新条項を設けるメリット・デメリット
契約書に自動更新条項を設けるメリットとデメリットについて解説します。メリットとデメリットを理解したうえで、契約内容などに応じて自動更新条項を設けるかどうかを判断しましょう。
自動更新条項を設けるメリット
自動更新条項を設けるメリットは、更新時の手間を省けることです。自動更新条項があれば、契約書を再作成したり、契約者双方が契約更新(または再契約)したりすることなく、契約が有効に更新されます。
また、更新の手続き漏れを防げることもメリットと言えるでしょう。契約期間が長い場合や担当者が変わった場合など、契約期間が満了になったことに契約者双方が気づかないことも考えられます。自動更新条項を設けておけば、更新漏れの心配はありません。
自動更新条項を設けるデメリット
自動更新条項を設けるデメリットは、一定期間内に更新拒絶の申し出をしないと、自動的に契約更新されてしまうことです。更新時期を忘れた、更新拒絶または契約内容の変更を検討中に一定期間が経過したなどのケースが考えられます。
自動更新条項を付した契約を締結するときは自動更新でいいと判断しても、契約期間中に状況が変わることもあります。契約期間(または満了時期)を適切に管理するとともに、更新拒絶の申し出ができる期間を長めに設定することも検討してみましょう。
自動更新条項の記載項目と例文
契約書に自動更新条項を設ける場合、記載しなければならない項目と自動更新条項の例文を紹介します。
記載項目
自動更新条項には、「契約者の一方が一定期間内に更新拒絶の申し出をしない限り、これまでと同じ条件で契約を更新する」旨の記載が必要です。また、次の事項も必ず記載して、自動更新や更新拒絶する場合の取扱いを明確にしておきましょう。
- 更新拒絶が申し出できる期間
- 更新拒絶するときの申し出方法
- 更新後の契約内容・契約期間
更新拒絶の申し出方法は契約者双方で決めますが、書面による通知など申し出の事実を客観的に証明できる方法が望ましいでしょう。
例文
自動更新条項の記載例を紹介します。更新拒絶が申し出できる期間は「契約期間満了日の◯かヶ月前まで」、更新拒絶するときの申し出方法は「書面による申し出」、更新後の契約内容・契約期間は「同じ条件・1年間」です。
(記載例)
第〇条 契約期間
本契約の期間は、2025年1月1日から2025年12月31日までの1年間とする。
ただし、契約期間満了日の1か月前までに当事者のいずれからも契約を終了する旨の書面による申し出がない場合、本契約は同じ条件でさらに1年間更新されるものとし、その後も同様とする。
自動更新条項が無効になるケース
契約者の一方または双方からの更新拒絶申し出がなければ自動更新条項は原則有効ですが、次のケースでは無効となり契約は自動更新されません。各ケースについて解説します。
- 自動更新条項について錯誤または詐欺がある
- 不能な停止条件が付されている
- 公序良俗違反
- 消費者契約法違反
自動更新条項について錯誤または詐欺がある
自動更新条項に「錯誤」または「詐欺」がある場合、条項は無効となり契約は自動更新されません。民法第95条では錯誤による意思表示、民法第96条では詐欺による意思表示を取り消せると規定されています。自動更新条項に関する意思表示(=合意)が錯誤または詐欺によってなされた場合、意思表示を取り消すことが可能です。
自動更新条項の内容を誤って認識(錯誤)したり、契約相手の詐欺行為によって条項に合意したりした場合、錯誤または詐欺が認められれば自動更新条項、または契約自体を取り消せます。取り消された場合、条項は無効です。
不能な停止条件が付されている
「停止条件」とは、法律的な効力を発生させるための条件です。「契約を終了する旨の書面による申し出をすれば「自動更新条項付きの契約を更新拒絶できる」と定められている場合、「書面による申し出をする」ことが停止条件です。
停止条件が達成不可能な場合、自動更新条項または契約自体は無効となります。民法133条では、「不能の停止条件を付した法律行為は無効とする」と定められているためです。不能な停止条件例は、以下の通りです。
- 契約相手の同意がないと更新拒絶できない
- 「甲(契約相手)の定める方法」を停止条件と定めているにもかかわらず甲がその方法を明示しない
- 海外在住の甲(契約相手)の代表と面談して意思表示しないと更新拒絶できない など
公序良俗違反
自動更新条項の内容が公序良俗に反する場合、条項は無効となります。民法第90条では「公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は無効とする」と定められているからです。
公序良俗に反する可能性のある具体例は次の通りです。
- 更新拒絶した場合、法外な違約金の支払いを義務づける
- 更新拒絶した場合、事業にかかわる権利の放棄を義務づける など
消費者契約法違反
企業と個人消費者が交わす契約(消費者契約)において、消費者契約法に違反した自動更新条項は無効です。消費者契約法第10条では、消費者契約について次の通り定めています。
- 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたものとみなす条項であって、消費者の利益を一方的に害するものは無効とする。
たとえば、一定期間無料の音楽配信サービスを利用した後、知らない間に自動更新されて課金されたケースです。更新拒絶の意思を表示しないこと(消費者の不作為)によって、消費者の利益が一方的に害されたと判断される可能性もあります。
契約更新拒絶の申入れ期間はどのくらいが適切?
自動更新条項に定める一般的な契約更新拒絶の申入れ期間は、おおよそ「契約期間満了の2週間~1ヶ月前」までです。
ただし、最適な申入れ期間は、契約内容や契約者双方の事情などによって異なります。契約の更新に備えて2ヶ月前から仕入れや準備を始める場合、申入れ期間は「契約期間満了の2ヶ月以上前」とする必要があります。最初の契約時に、契約者双方がよく話し合って決めましょう。
契約更新期間前に通知義務はある?
契約更新期間または契約更新拒絶の申入れ期間の前に、契約の相手方に契約更新を通知する義務はありません。最初の契約時に、更新拒絶する方法や申入れ期間を定め、更新拒絶がなければ自動的に更新されることに双方が合意しているためです。
ただし、契約相手が失念している可能性もあるため、今後のトラブルを避けるために相手方に確認しておくほうがいいでしょう。契約相手とのコミュニケーションや取引拡大の機会としても活用できます。
契約内容に応じて自動更新条項の内容を慎重に検討しよう
契約書に「自動更新条項」を設けることで、契約期間が満了と同時に自動的に契約期間を更新できます。契約期間満了後の更新手続きが不要となるため、手続き負担の軽減や手続き漏れを防げます。
ただし、契約期間中に事業環境に変化が生じ契約更新できないこともあるでしょう。不測の事態に備えて更新拒絶が申し出できる期間や申し出方法などをよく検討して、自動更新の可否判断や条項内容の決定を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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