• 作成日 : 2023年11月2日

製造物責任法(PL法)とは?対象となる製造物や欠陥の定義を解説

製造物責任法(PL法)とは?対象となる製造物や欠陥の定義を解説

製造物責任法(PL法)とは、製造物に関する損害賠償の責任を規定した法律です。製造物の欠陥等が原因で事故が起こったとき、製造業者は賠償責任を負う可能性があるため、企業は同法についての理解を持つことが重要です。

どのような製造物が対象なのか、どのような事業者に適用されるのか、同法の内容をわかりやすく説明していきます。

製造物責任法(PL法)とは

「製造物責任法」とは、製造物の欠陥が原因で起こる事故について、被害者を救済するための法律です。その上で「国民生活の安定向上」と「国民経済の健全な発展」をも目指す法律であると明示されています。

この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

引用:e-Gov法令検索 製造物責任法第1条

同法はわずか第6条のコンパクトな法律ですが、世の中に流通する様々な製品・商品に適用される重要な法律です。特に重要な条文が第3条の「製造物責任」で、同条は民法規定の「不法行為責任」の特則として位置づけられています。

製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

引用:e-Gov法令検索 製造物責任法第3条

条文の内容をわかりやすく説明すると、「企業が製造したものの欠陥によって被害が出たときは、原則としてその企業が損害賠償責任を負う」という内容になっています。

本来、事故などにより損害賠償請求をするときは、民法の規定に従って被害者が加害者側の過失を立証しないといけません。しかし同法の規定によって、製造物の欠陥が原因であるときは、被害者が立証しなくても損害賠償請求ができることになっています。

※同法は製造物[Product]に関する責任[Liability]を規定した法律であることから「PL法」とも呼ばれる。

製造物責任法の対象となる製造物

製造物責任法では、「製造物」に関して民法の特則を適用しています。そこで何が同法のいう「製造物」にあたるのかが問題となります。

条文では次の通りに規定が置かれています。

この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。

引用:e-Gov法令検索 製造物責任法第2条第1項

条文だけだとわかりにくいですが、この製造物は「人為的な操作・処理が加えられ、引き渡された動産」と解釈されています。次の3要件を満たすときは同法の対象となる製造物になります。

「製造物」の要件詳細
有体物である有体物」とは、人が実際に手で触れるような物のこと。
逆に電気やソフトウェア、サービスなどは「無対物」であって製造物に該当しない。
動産である動産」とは不動産以外のものであり、「不動産」とは土地やその定着物のことを指す。宅地、家屋、樹木などは不動産であり、それらは常に製造物に該当しない。
製造または加工されている製造」とは、製品の設計~加工~検査~表示に至るまでの一連の行為を指す。あるいは原材料を加工して新たな物品を創出することとも説明できる。
加工」とは、動産を材料にしてその本質を保持しつつも、工作を加えることで新たな属性を付加し、価値を加えることと説明できる。

「製造」または「加工」の要件についてはその判断が難しいケースもあります。

例えば、製造途中の部品や半製品に関しては完全に製造されてはいませんが、同法の対象になると考えられています。
また、加熱や味付けなどをしたものは加工に該当するため、ジュースやハムなどは加工されたものとして扱われますが、単に原材料を冷凍したもの、切断しただけの魚や肉などは未加工であると解釈されます。

さらに、修理・修繕に関しても基本的には元の性質を回復させる行為であり、新たな属性を加えたりするものではなく、製造または加工のいずれにも当たらないと考えられています。しかしながら改良・改造により新たな属性が加えられると製造または加工に該当し得ます。

「製造物」かどうかについては個別の評価が必要ですので、弁護士等に相談しておくことが大事です。

製造物責任法を負う事業者

製造物責任法は、同法の適用を受けて賠償責任を負う者を「製造業者等」と定義しています。

この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

引用:e-Gov法令検索 製造物責任法第2条第3項

ポイントは、企業が同条項第1号の「業として製造・加工・輸入をした」と呼べるかどうかにあります。

基本的には製造物の欠陥の創出に関わったかどうかで判別できます。例えば、製造に一切関わっていない設計事業者は製造業者等にはあたりません。

しかしながら、自ら製造物の欠陥を生み出していない輸入業者については、製造業者等に含める取り扱いになっています。外国の事業者に一般消費者が訴えを提起するのは困難ですし、輸入業者は国内市場に危険のある製造物を供給したとも考えることができるため、製造・加工する事業者と同等に扱われています。

なお、「業として」とは反復継続していることを意味し、必ずしもその行為が利益目的である必要はありません。そのため無償で製造している事業者でも製造業者等に該当することはあります。

製造物責任法における欠陥の定義

製造物が関連する事故であっても、利用者が間違った使い方をしていたり、不安定な場所に置いて落下してきたりしたときは製造業者等の責任とはいえません。

製造物責任が生じるのは、製造物に「欠陥」がある場合です。

条文上の定義

欠陥については同法で次のように規定が置かれています。

この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。

引用:e-Gov法令検索 製造物責任法第2条第2項

欠陥の有無を判断するには、諸事情(製造物の特性、想定される使用方法、製造物を引き渡した時期)を総合的に考慮し、「通常その物が持つべき安全性を欠いている」といえるかが重要になってきます。

欠陥の具体例

同法における欠陥は次の3つに分けて考えられています。いずれかに該当するときは欠陥に該当します。

  1. 設計上の欠陥
    安全性を意識した設計ができていないことにより安全性が欠けること。
  2. 製造上の欠陥
    製造過程での粗悪な材料の混入、組み立て時のミスなど、所定の仕様通りに作られないことで安全性が欠けること。
  3. 指示・警告上の欠陥
    危険を回避・防止するために必要な情報を与えず、安全性が欠けること。危険性の除去ができない製造物において問題となる欠陥。

事例1(京都地裁H18.11.30):折り畳み式の足場台で作業をしていたところ、突然足場台の脚が変形して作業者が転落。傷害を負った。そこで当該足場台を製造した企業は損害賠償を求められた。

この事故では製造物の購入から4年近く経過していましたが、この期間は通常有する安全性が維持されるべき期間であり、また通常の用法に従って使っていたと予測されたことからも、足場台納入時点で脚の変形に関わる欠陥等があったと認められています。

事例2(奈良地裁H.15.10.8):学校で給食食器の片づけをしていたところ、落としたガラス製ボウルの破片が眼に刺さり、被害を受けた生徒の視力が低下した。そこで当該食器を製造した企業は損害賠償を求められた。

問題となったボウルは強化耐熱ガラス製ボウルであったところ、裁判所の判断では、消費者が的確に商品の選択をするには「割れにくさ」だけでなく「割れたときの危険性」の認識も重要と示されています。丈夫で割れにくいことをアピールするのであれば割れたときの具体的態様・危険性の大きさも記載して危険防止のために必要な情報を提供すべき、とも示されました。
その上で本件において十分な表示がされていなかったことを理由に、欠陥が認められました。

製造業者等が取るべき対策

製造や加工を行う企業は、製造物責任法の存在を前提とした体制を整える必要があります。

自社が製造等をする物について安全性を備えるのは法令に関係なく大事なことですが、一見安全に見えても上記の事例のように賠償責任を追及されてしまうケースもあります。

そのため安全性に配慮した設計・製造をすることは当然重要ですが、一般的な感覚で「この作りなら安全だろう」と決めつけてはいけません。

同法に関する過去の裁判例なども参考に、どれだけ厳しく評価されているのか、どのような事柄がよく争点になっているのかなどをチェックしておくことが重要です。
設計・製造のみならず、商品カタログや取扱説明書の記載にも十分注意が必要です。その物を使っていて通常起こり得る事故とは何か、その事故に備えて警告すべき事柄は何かなど、過去事例も参考にして対策を講じる必要があります。

裁判所の判断なども参照する必要がありますし、同法について十分な対策を取るにあたって弁護士に依頼することも重要になってきます。
また、「PL保険」などの保険に加入しておくことでリスクは下げられますし、こちらも有効な対策の一つといえるでしょう。

製造物責任法にもとづいて損害賠償を請求できるケース

「製造物の欠陥がある」こと、その上で「生命・身体あるいは製造物以外の財産に損害が発生した」ことにより、同法に基づく損害賠償請求が可能となります。

「製造物」や「欠陥」の意義については上述の通りです。

また、欠陥による被害が製造物そのものの損害にとどまる場合は同法の適用は受けません。製造物そのもの以外への損害(拡大損害)が発生する必要があります。

※製造物そのものについても民法の規定に基づいて損害賠償請求は可能。

例えば自動車に不具合があり煙が出たものの延焼はせず、運転手にも被害がなかった場合、拡大被害とはならず同法の適用外になります。
しかしながら、自動車の不具合で怪我をしたときは、拡大被害があったとして同法の適用を受けて賠償請求が可能になります。

製造物責任法に準拠して設計・製造・表示をしよう

製品・商品の設計や製造をする企業は、当たり前のことながら消費者に危険が及ぶことのないよう留意しなくてはなりません。しかし十分に配慮をしても事故が起こる可能性はあり、消費者から損害賠償を求められることがあります。

一般的な不法行為とは異なり、製造物責任法に基づく損害賠償請求は企業側が無過失であっても認められてしまいます。そのため賠償金支払いのリスクがあることを認識して、同法でいう「欠陥」がないように設計および製造、そして表示についても注意しましょう。


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