- 更新日 : 2024年11月7日
不動産売買契約書に印紙は必要?どちらが負担する?金額や貼り方を解説
不動産契約書には、収入印紙(印紙)が必要です。ただし、契約金額によって額が変わったり、印紙なしの扱い(非課税)となったりすることもあります。
また、印紙は貼る場所や割印の位置にも注意しましょう。本記事では、印紙の貼り方や割印の押し方、不動産売買の売り手・買い手どちらが負担するかなどについて、詳しく解説します。
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目次
不動産売買契約書に印紙は必要?不要?
不動産売買契約書は課税文書に該当するため、原則として収入印紙(以下、印紙)の貼り付けが必要です。ただし、記載された金額が1万円未満の場合は非課税(印紙なし)となります。
課税文書とは、印紙税法で課税対象として規定されている契約書や受取書などのことです。不動産売買契約書は、土地賃貸借契約書や金銭消費貸借契約証書などと並び、第1号文書として貼付する印紙額が定められています。
第1号文書に限らず、第2号〜第20号文書にも印紙を貼り付けなければなりません。貼付する印紙の額は、文書の種類や契約金額によってさまざまです。印紙が必要な契約書の種類や金額について、より詳しく知りたい場合は以下の記事を参考にしてください。
参考:国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
不動産売買契約書に貼る印紙の金額
貼り付ける印紙の額は、契約書や受取書に記載された額によって異なります。本来、不動産売買契約書や金銭消費貸借契約証書などの第1号文書に対してかかる印紙税額は、以下のとおりです。
第1号文書に記載された契約金額 | 1通あたり印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1千円 |
100万円超500万円以下 | 2千円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
ただし、2014年4月1日から2027年3月31日に作成された第1号の1文書のうち、記載された契約金額が10万円を超えるものについては、以下の軽減措置が適用されます。
第1号の1文書に記載された契約金額 | 1通あたり印紙税額 |
---|---|
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1千円 |
500万円超1,000万円以下 | 5千円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
第1号の1文書とは、不動産・鉱業権・無体財産権・船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書のことです。つまり、不動産売買契約書には、軽減措置が適用されます。
不動産売買契約書に貼る印紙税はどちらが負担する?
不動産売買契約書に貼る印紙を売り手・買い手どちらが負担するかについて、明確な決まりはありません。
印紙税法第3条には、課税文書の作成者が印紙税を納付する義務を負うことが規定されています。また、複数で作成した場合は連帯して納付しなければなりません。
不動産売買契約書は、売り手・買い手がそれぞれ保管できるように2通作成することがあります。2通作成する場合は、売り手と買い手がそれぞれ1通ずつ印紙を負担することが一般的です。
なお、売り手・買い手の一方が原本を保管し、他方が写しを保管するようにすれば、印紙を1通分にして節約できます。ただし、万が一原本と写しに異なる記載がある場合にトラブルにつながる可能性が高いです。
不動産売買契約書の印紙の貼り方
印紙を貼る場所について、法律などによる明確な決まりはありません。一般的には、以下のように不動産売買契約書の左上に貼ります。
また、不動産売買契約書を作成するにあたって、あらかじめ必要な額分の印紙を準備しておかなければなりません。コンビニエンスストアでは主に200円印紙のみしか販売されていないため、郵便局や法務局で購入しましょう。
貼る際は、印紙にあらかじめのりが付着しているため、切手と同じように水で濡らします。印紙税額に合致する印紙がない場合は、複数枚貼り付けることにより、合計額を納付したことになります。
なお、不動産売買契約書に印紙を貼り付けた後は、割印(消印)も必要です。割印のやり方については、後ほど詳しく解説します。
不動産売買契約書に印紙がないとどうなる?
不動産売買契約書に印紙が貼られていなくても、契約内容自体は無効となりません。ただし、過怠税が徴収されるリスクがある点に注意が必要です。
ここから、詳しく解説します。
契約内容は無効にならない
あくまで印紙税を納付していないことに対する違反のため、印紙なしでも契約内容は無効になりません。印紙税と契約の効力自体は無関係です。
しかし、契約内容が無効にならなくても、印紙なしの契約書は印紙税法に違反するものとみなされるため、作成者に対してペナルティが課されます。課税文書を作成する際は、必ず印紙を貼りましょう。
過怠税が徴収されるリスク
印紙なしの契約書を作成することによる主なペナルティが、過怠税です。
課税文書を作成するときまでに印紙税を納付しなかった場合に、本来納付する必要のある印紙税額に加えてその2倍相当の印紙税額が徴収されます。
所定の額の印紙を貼っていても、正しく割印(消印)していなければ過怠税を徴収されるため、注意しましょう。意図的ではなく、単純に消印を忘れていた場合も同様に過怠税が徴収されます。
印紙を貼る必要のない契約書について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
不動産売買契約書の割印の押し方
印紙税を納付するためには、不動産契約書に貼った印紙に正しく割印(消印)をしなければなりません。一度契約書に貼り付けた印紙の再利用を防ぐことが、割印が必要とされる主な理由です。
なお、不動産契約書が複数にまたがる場合にも各ページを重ね合わせて割印をすることがありますが、本記事では印紙に対する割印について、認められるケースと認められないケースを紹介します。
割印として認められる方法
割印として認められるためには、不動産売買契約書と印紙の彩紋にかけてはっきりと印紙を消さなければなりません。文書の作成者・その代理人・従業員などが以下のように印紙の右下などに印鑑を押すことで、割印できます。
使用する印鑑の種類は、実印や認印、シャチハタや会社名の入った角印、日付印、ゴム印など幅広いものが認められています。
作成者が複数人いる場合、割印する人はそのうちのひとりで構いません。また、印鑑がない場合は、作成者などの署名で印紙を消すことによっても、割印として認められます。
割印として認められない方法
印紙に印鑑を押しても、かすれて不鮮明な場合は割印として認められない可能性があります。その場合は、同じ箇所に重ねて押さずに、別の箇所で印紙にかかるように押しましょう。たとえば、すでに右下に押印したのであれば、左下などに押し直します。
また、ボールペンなどで「印」と表示したり、斜線を引いたりする場合も割印として認められません。印鑑がない場合は、必ず氏名や商号などを自筆しましょう。
参考:国税庁 印紙の消印の方法
不動産売買契約書の印紙税を節税するポイント
不動産売買契約書の印紙税を節税するための主なポイントは、以下のとおりです。
- 契約金額を税抜きで表示する
- 印紙税の軽減措置を活用する
それぞれ解説します。
契約金額を税抜きで表示する
不動産売買契約書に記載する契約金額を税抜きで表示することにより、印紙税を節約できる場合があります。なぜなら、納付すべき印紙税額の判断基準は「契約書に記載された契約金額」であるためです。
たとえば、不動産売買契約書に記載された契約金額が1,100万円の場合、2万円の印紙を貼付しなければなりません。一方、契約金額が1,000万円であれば、1万円分の印紙で済みます(いずれも本則税率を想定)。
節税を意識して記入する際は、契約金額1,100万円(うち消費税額等100万円)のように記載することがポイントです。消費税額を明らかにしているため、その分を契約金額に含めないようにできます。
なお、消費税額を印紙税の記載金額に含めない扱いにできるのは、第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)・第2号文書(請負に関する契約書)・第17号文書(金銭または有価証券の受取書)のみです。
参考:国税庁 No.7124 消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額
印紙税の軽減措置を活用する
印紙税の軽減措置を理解し、活用することも節税のポイントです。租税特別措置法により、2027年3月31日まで不動産売買契約書(契約金額が10万円を超えるもの)には、本則税率よりも印紙税の額が低い軽減税率を適用できます。
たとえば、不動産売買価格が3,000万円の場合に、本則税率を適用すると2万円の印紙を貼付しなければなりません。それに対し、軽減税率を適用すれば、1万円で済みます。
不動産売買契約書の無料ひな形・テンプレート
不動産売買契約書の種類はさまざまです。そのうち、建物売買契約書や土地売買契約書のひな形は、以下のページから無料でダウンロードできます。最初から自分で作成するよりも楽に作成できるため、ぜひお気軽にご活用ください。
また、建物売買契約書・土地売買契約書の概要や契約書の書き方について詳しく知りたい方は、以下の記事で確認できます。
電子契約なら不動産売買契約書の印紙は不要に
契約金額を税抜きで表示する、印紙税の軽減措置を活用するなどの方法以外に、電子契約を締結することで不動産売買契約書の印紙を不要にする方法があります。電子契約とは、紙を使わずにオンライン上で契約を完結させることです。
印紙税は、課税文書を作成した際に納税義務が成立し、作成者がその義務を負います。そして「作成」とは、課税文書となるべき用紙などに課税事項を記載し、文書の目的に従って行使することです。
電子契約は、一般的に課税文書の「作成」には該当しないとされています。そのため、電子契約で不動産売買の契約を締結した場合、印紙がかかりません。
電子契約には印紙がかからない法的根拠についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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