• 作成日 : 2024年1月5日

不動産登記法改正とは?2024年施行の相続登記義務化など解説

不動産登記法改正とは?2024年施行の相続登記義務化など解説

不動産登記法は不動産に関する権利を公に示すためのルールをまとめた法律です。不動産登記法改正により相続登記が義務になるなど、2024年以降は大きな変化が起こるため、土地や建物を持っている・取得する方は新設されるルールや変更内容について一度チェックしておく必要があるでしょう。

本記事ではその改正内容を解説します。

2024年施行の不動産登記法改正のポイント

2024年から施行される改正不動産登記法のポイントは、次の3点です。

  • 相続登記が義務になる
  • 外国にいる登記名義人についての国内連絡先が登記事項になる
  • DVの被害者等を保護する特例措置が設けられる

従来の登記制度では所有者が不明なまま放置される物件があったり、登記制度を逆手に取ってDV被害者等の情報を取得したりできてしまうなど、問題点がいくつかありました。

そこで法改正が実施されることになりました。今回の改正で多数のルールが変更され、段階的に施行されていく予定です。2023年4月1日からはすでに「形骸化した情報の抹消手続」についての施行がなされており、すでに実体のない権利について登記の抹消が簡単にできる仕組みが整えられています。

2024年、2026年にも施行が予定されており、まずは直近の2024年改正について理解を深めておきましょう。

相続登記申請が義務化

2024年4月1日から、相続登記の申請が法的義務となります。

相続や遺贈で不動産を取得したことの登記を「3年以内」に、遺産分割で取得する人物が定まったときはその内容を反映させる登記を「3年以内」に実施しないといけません。

そのため、遺産分割ができていなくても、相続があったことについての登記はしないといけなくなります。この場合の登記は「相続人申告登記」とも呼ばれています。

例1)遺産分割が3年以内に成立した場合

「遺産分割協議の内容を反映した登記」を行うだけでよいです。先に「相続人申告登記」をすることも可能ですが、その場合は遺産分割後にその内容を反映させるための登記も行う必要があります。

例2)遺産分割が3年以内に成立しない場合

「相続人申告登記」をしておく必要があります。その後、遺産分割ができればその内容を反映するための登記もさらに必要です。

この義務を履行しない場合、10万円以下の過料をペナルティとして課される可能性があります。ただし、登記をするにも多くの必要書類の取得が必要になるなど負担が大きいことから、相続人申告登記については手続きを簡略化する仕組みも創設されます。

共同相続人全員で申出をする必要はなく、「相続が開始されたこと」「自らが相続人であること」を示せば手続きが進められるようになるのです。必要書類も、相続人自らの戸籍謄本を用意するだけで足ります。

外国に居住する所有権の登記名義人の国内連絡先の登記

2024年4月1日から、不動産の所有権を持つ方が外国で住んでいる場合の登記事項として「国内の連絡先」が追加され、①連絡先となった方の氏名②連絡先となった方の住所等を登記する必要があります

例えば、外国に住所をおいている方の家族についての情報を登記したり、あるいは連絡先として定めた企業や専門家についての情報を登記したり、自然人でも法人でも連絡先として定めることができます。

日本国内に居住する方が登記名義人であれば住基ネット等の連携により連絡先をつかむこともできるのですが、外国に居住しているとなれば連絡が取れなくなることも起こり得ます。近年は国際化が進展しているということもあり、外国に住所をおく方も増えています。この状況を放置していると公示機能に支障をきたすことから、円滑に連絡を取るための仕組みが作られるのです。

DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例

登記情報は誰でも閲覧できるため、その仕組みを使えば特定の名義人についての氏名や住所を調べることもできてしまいます。不動産取引を円滑に行うためにはこれら基本的な情報を調べられる仕組みも必要である反面、DV被害者などは住所を知られてしまうと身体への危害、場合によっては命の危険が及ぶ可能性もあります。

そこで、特定の被害者を対象に、実際の住所を見えなくする措置が特例として認められるようになります。

特例措置の適用対象者は、DV防止法・児童虐待防止法・ストーカー規制法上の被害者です。これら対象者が法務局に申出を行うことで「当該人物の情報が載った登記事項証明書等について、現住所に代わる事項を記載することができる」ようになります。

現住所に代わる住所としては、例えば弁護士事務所や法務局、被害者支援団体の住所などが挙げられます。

改正の背景

相続登記の義務化や国内連絡先の登記、また今後予定されている改正内容についても、「所有者不明の土地が発生するのを防ぐ」のが大きな目標です。

所有権者が誰かわからない土地、所有権者に連絡が付かない土地があると、そのまま放置されて民間取引の阻害や土地利活用の阻害につながってしまいます。所有者を探すのも大変な作業で、相続が何度も繰り返されていると共有者が膨大な数になってしまうこともあり、より作業にかかる時間と費用が増大してしまいます。

さらには公共事業、復興事業などが進められない事態に直面すること、適切な管理がなされていないことで隣接する土地への悪影響も起こり得ます。所有者不明というのはこれだけ社会に対しても大きな影響を与えることであるため、法改正により防ごうという流れが進んでいるのです。

そもそも不動産登記法とは?

不動産登記法は、建物や土地といった不動産についての情報を記録し、これを公に示すための制度を根拠づける法律です。

登記制度があることによって、その土地はどのような土地なのか、誰が所有権なのか、その他付いている権利はないのか、などが記録され、基本的に誰でも内容を確認することができるようになります。

こうした情報を公示することには「安全で、円滑な取引」を実現する役割があります。

不動産についての情報が不足していると安心して取引ができません。多額の金銭が動くことも多いところ、必要な情報を公示する仕組みがあることで安全な取引が担保され、円滑化が図られるのです。

不動産登記法改正による事業者への影響は?

今回の一連の法改正は主に個人に対する影響が大きいです。

例えば、「相続登記の義務化」は相続の当事者となる自然人に関わる改正です。企業で相続が発生することはなく、企業が相続人になることもありません。ただし、事業として不動産を取り扱っている企業には一定の影響が出ることも考えられます。

相続した不動産をそのまま放置する例はこれまで少なくありませんでしたが、今後は処分や利活用に対する意識が多少なりとも高まるものと思われます。そこで売却される物件が増えるなどの変化が起こるかもしれません。

「国内の連絡先の登記」「DV被害者等を保護するための特例」についても直接的に事業者に影響を与える改正ではありません。しかしながら、国内連絡先については法人の情報を登記することもできますので、外国に住所がある方の不動産を管理している企業については登記手続がこれまでと変わる可能性も考えられます。

今後施行が予定されている不動産登記法改正

2024年の改正法施行以降も、次の通りスケジュールが組まれています。

  • 2026年2月2日施行
    • 所有不動産記録証明制度の新設
  • 2026年4月1日施行
    • 登記名義人の死亡等の表示
    • 住所変更登記等の義務化

いずれも所有者不明土地が発生するのを予防することが目的です。簡単にそれぞれ紹介していきます。

所有不動産記録証明制度の新設

2026年2月2日には、登記漏れを防ぐために「所有不動産記録証明制度」が新設されます。

簡単に説明すると「ある方が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行することができる制度」のことです。この制度が創設されることで、登記義務のある不動産を把握しきれていないときでも容易に確認できるようになります。

自分自身が持っている不動産を確認するためにも活用できます。事業者も無関係ではありません。所有する不動産を適切に把握し、管理していくために同制度が役に立つことでしょう。

登記名義人の死亡等の表示

「登記名義人が死亡した」という事実について、登記官が職権で登記上表示できる制度が新設されます。こちらは2026年4月1日から施行されます。

現行法だと登記名義人が亡くなってもその事実が登記簿で公示されず、登記記録から死亡の有無は確認ができません。しかし、死亡の有無が確認できると土地の取得にかかる交渉や調査の手間が削減され、取引の円滑化が期待できます。

事業者としても事業に使う土地の選定がスムーズになり、余計な手間やコストをかける必要がなくなるため、今回の法改正により恩恵を受けられることでしょう。

住所変更登記等の義務化

不動産の所有権を持つ登記名義人に対し、住所等の変更についての登記申請が義務付けられます。2026年4月1日から施行され、住所等の変更があってから「2年以内」に申請しないと5万円以下の過料に処されてしまいます。

個人にも、法人である事業者にも法改正の影響は及びます。

ただし、法人である事業者の場合は名称や住所を変えたとき商業登記を行うことになりますので、登記官がその変更情報を受けて職権で変更登記をできます。このとき事業者は別途手続きを行うことなく当該義務を履行したこととなります。

なお、新たに所有権を取得した不動産については、登記申請時に法人番号を登記事項として申請しないといけません。その前提を満たせば、商業登記から不動産登記への連携ができるようになります。

不動産登記法改正は不動産を所有するすべての方に関係する

2024年以降に施行される不動産登記法改正により相続登記が義務化されるなど、所有者不明の土地が発生するのを防ぐため、多数の改正法が適用され始めます。

これら法改正の影響は個人に対して特に大きいものですが、事業者への影響もゼロではありません。不動産登記が適切に行われることによる影響を間接的に受けることも考えられ、法人についても住所変更等の登記申請が必要になること、所有不動産記録証明制度が利用できるようになることなど、今後さまざまな変化が起こります。


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