- 作成日 : 2023年10月6日
特許年金とは?金額や支払い方法、減免制度を解説
特許年金とは、特許権を維持するために特許庁に支払う料金のことです。取得経過年数によって費用が変わり、年数が経つほど高くなりす。納付期限を過ぎると特許権が消滅することもあるため、注意しなければなりません。
本記事では特許年金の概要や特許(登録)料の料金、納付書の提出方法、減免制度などを解説します。
目次
特許年金とは
特許年金とは正式には「特許(登録)料」といい、特許権を維持するために特許庁に支払う料金のことです。特許権が設定登録された年を第1年目として、存続期間が満了(出願日から原則20年)するまで毎年納付しなければなりません。特許権維持のために毎年支払う必要があるため、俗に特許年金と呼ばれています。
特許年金を納付できる期間に納付しなければ、原則として特許権は消滅します。
特許庁からは年金の納付期限前に事前連絡は行わないため、納付期限の通知書はなくさないよう注意が必要です。料金は権利あるいは納付年分によって変動するため、金額の誤りにも気をつけましょう。
特許(登録)料の金額
特許料の金額は、特許を取得してからの期間に応じて定められています。はじめの3年間は、特許権の付与から30日以内にまとめて支払わなければならず、第4年以降にも特許権を保持したい場合、各年ごとに支払う必要があります。
特許料は、以下の表のように存続期間が長期にわたる場合は段階的に高額になるよう設定されています。
(2004年4月1日以降に審査請求をした出願の金額)
各年の区分 | 金額(毎年) |
---|---|
1年目から3年目まで | 4,300円+(1請求項目につき300円) |
4年目から6年目まで | 10,300円+(1請求項目につき800円) |
7年目から9年目まで | 24,800円+(1請求項目につき1,900円) |
10年目から25年目まで | 59,400円+(1請求項目につき4,600円) |
特に7年目から急に高額になり、10年目以降は、1つ取得しているだけでも、毎月5,000円以上の出費です。期間が経過してきたら、必要かどうか検討するとよいでしょう。支払いをやめれば権利を放棄したことになります。
特許(登録)料の支払い方法
特許(登録)納付書を使った特許料の支払いは、以下の6つのうちいずれかの方法で行います。
- 特許印紙
- 予納
- 現金納付
- 電子現金納付
- 口座振替
- クレジットカード
支払い方法の特徴や、納付書を使わずに支払う方法を解説します。
支払い方法
支払い方法のうち、特許印紙とは納付書に特許印紙を貼り付ける方法です。事前手続きの必要がなく、迅速に納付書の提出ができます。
予納とは、特許庁に予納台帳を開設し、必要な金額を引き落とす方法です。予納台帳に支払う金額を用意しておくことで、いつでも手続きができます。
現金納付は特許庁専用の振込用紙を使い、銀行で入金します。料金を振り込んだ証明書は。特許庁へ提出しなければなりません。電子現金納付はPay-easy対応のネットバンクもしくはATMで入金する方法です。
口座振替はその都度引き落としの手続きをして支払いをします。クレジットカードの支払いは、「3Dセキュア」登録済のクレジットカードが必要です。
特許(登録)納付書の提出形態
納付書を使った提出形態は、書面とオンラインの2種類です。それぞれの支払い方法で対応の可否が異なります。
支払い方法 | 書面 | オンライン |
---|---|---|
特許印紙 | 〇 | × |
予納 | 〇 | 〇 |
現金納付 | 〇 | × |
電子現金納付 | 〇 | 〇 |
口座振替 | × | 〇 |
クレジットカード | 〇 | 〇 |
電子現金納付の書面提出は、事前手続きをするために電子出願ソフトが必要です。クレジットカードの書面提出は、特許庁窓口で手続きする場合のみとなっています。
納付書を提出せずに支払う場合
納付書を提出せず、包括納付や自動納付ができる制度もあります。包括納付制度は納付手続きの簡素化を図るため、出願を特定しない「包括納付申出書」を特許庁に提出して申出人の予納台帳または指定銀行口座から料金を引き落とし、設定登録を自動的に行う制度です。
自動納付制度は、納付時期の失念などによる権利失効の防止を目的とした制度です。設定登録後「自動納付申出書」を特許庁に提出することにより、予納台帳または指定銀行口座から料金を引き落とします。
特許料の減免制度
特許料は特許料納付書の提出時に申請することにより、金額を抑えられる減免制度があります。主に中小企業や個人、大学等が対象です。
代表的な対象者と措置内容は、以下のとおりです。
主な対象者 | 措置内容 |
---|---|
中小企業(会社、個人事業主、組合・NPO法人) | 第1年分から第10年分を1/2に軽減 |
個人(市町村民税非課税者等) |
|
中小スタートアップ企業(法人・個人事業主) 小規模企業(法人・個人事業主) | 第1年分から第10年分を1/3に軽減 |
特許庁に特許料納付書を提出する際、特許料納付書に「特許料等に関する特記事項」欄を設け所定の記載事項を記入して、料金の減免申請を行います。特許料納付書の提出時と同時に行う必要があり、事後の申請をはできません。
参考:特許庁「2019年4月1日以降に審査請求をした案件の減免制度(新減免制度)について」
特許(登録)料の支払いを忘れたら?
納付期限内に支払いができなかった場合でも、納付期限経過後6ヶ月以内であれば納付して特許の消滅を防止できる救済措置があります。
通常の特許料に加え、同じ金額の割増特許料が必要です。つまり、倍の金額を納付しなければなりません。
ただし、災害など本人に帰責事由のない客観的な理由で納付できなかった場合、割増特許料の支払いは免除されます。6ヶ月の追納期間が経過した場合でも、納付しなかったことについて故意がなかった場合、所定の期間内であれば支払いが可能です。
特許年金の支払いを忘れずに
特許年金とは特許権を維持するために支払う料金のことで、年数の経過により高くなるのが特徴です。納付期限を過ぎると特許権は消滅する場合があるため、納付を忘れないよう注意が必要です。
特許印紙や現金納付など各種支払い方法があり、自動納付など支払いを忘れて権利が失効するのを防止する制度もあります。特許年金の仕組みを理解し、支払いを忘れないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
破産手続開始原因である「支払不能」が認められるケースとは?
会社や個人が、債務超過や支払不能に陥ったとき、破産をすれば、債務の負担から解放されます。破産手続は、裁判所に申立てて行いますが、破産開始決定されるには、一定の要件を満たしていなければなりません。 本稿では、要件となる破産手続開始原因の1つで…
詳しくみるライセンスフィーとは?相場や支払い方法についても解説!
「ライセンスフィー」や「ロイヤリティ」という言葉を耳にすることがありますが、「違いがよくわからない」という人は多いでしょう。そこで今回は「ライセンスフィー」「ロイヤリティ」の定義や、ライセンスフィーの相場、支払い方法(定額支払い、一括支払、…
詳しくみる【2022年9月施行】商業登記規則の改正点を解説
2022年(令和4年)9月1日から、商業登記規則等の一部を改正する省令が施行されました。これにより、従来の商業登記と取り扱いが変更される点がいくつかあります。この記事では、商業登記規則の改正点のポイントと業務への影響を解説します。 改正が進…
詳しくみる心裡留保とは?民法上の定義や契約における有効性などを解説
「心裡留保」とは、真意とは異なる意思表示を自覚的に行うことです。心裡留保による意思表示は原則有効ですが、条件を満たせば無効となる場合もあります。 また、民法では心裡留保以外にも意思表示のルールが定められていますので、その内容も理解しておきま…
詳しくみる公益通報者保護法とは?対象者や保護の内容、罰則について解説
公益通報者保護法とは、企業による不正行為などを通報した従業員を保護するために制定されている法律です。企業による不祥事は社会に広く悪影響を及ぼす恐れがあったり、不正行為を従業員が通報したりすることで未然に防げるケースもありますが、通報を行った…
詳しくみる景品表示法とは?法人や個人事業主が知っておきたい概要まとめ
ECサイトを開設・運営する人が増えています。中には会社員をしながら副業としてECサイトの運営を始めるか検討している方もいるでしょう。 ネットショップに限らず、お店で商品の販売の際に粗品や賞品などを付ける場合、注意すべき法律に「景品表示法」が…
詳しくみる