• 作成日 : 2024年10月3日

法務のキャリアパスが知りたい!必要なスキルやキャリアアップの近道を解説

企業の法務担当の仕事内容について、イメージがつきにくい人もいるでしょう。本記事では、企業の法務担当者の業務内容や、 法務のキャリア形成の選択肢について解説します。

また、法務に必要な資質やスキル、役立つ資格なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

法務担当者の業務内容

まずは、法務担当者の業務内容から見ていきましょう。業務は主に、次の3つに分けられます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ビジネス法務

1つめが、ビジネス法務です。主な業務内容としては、次のようなものが挙げられます。

  • 契約書や利用規約のチェック・作成・交渉
  • 新規事業のためのリサーチ・法的アドバイス
  • 取引先や社員のトラブル対応
  • 許認可の取得などの当局対応
  • ロビー活動 など

法務部の業務においては、契約にかかわるものが多いのが特徴です。法律の知識を有する法務部が、契約書に不備がないか、 契約書は法的に妥当かなどをチェックします。また、契約相手が海外の会社であれば、日本語以外の言語で契約書の作成や審査などを行うこともあります。

そのほか、トラブルや紛争が発生した際の対応も業務です。問題点を正確に把握して解決に向けて対応するうえでも、法務部には 幅広い法律知識が求められます。

コーポレート法務

2つめが、コーポレート法務です。機関法務とも呼ばれ、企業の意思決定を行う株主総会や取締役会など、会社の内部機関活動が適法に行われることを目的とした事務局業務を指します。これらには会社法などが関連しているため、それらの法律知識を持ち合わせる法務部が担当している場合が多いです。

コーポレート法務に含まれる業務内容としては、次のようなものが挙げられます。

  • 株主総会や取締役会の運営業務
  • 組織再編やM&A など

そのほか、定款の変更・発行、株式の分割、子会社の設立手続きなども機関法務に該当します。

コンプライアンス強化

3つめが、コンプライアンス強化です。近年、企業にコンプライアンス強化する動きが求められています。法務部には、 自社の適正な体制や組織作り、ならびに整備を行うことが求められています。

具体的には、社内のルール(社内規程)の整備やコンプライアンスに関する社内研修・教育の実施、 内部通報のための窓口設置、などです。

法務のキャリア形成の選択肢

法務に携わる人は、どのようにキャリア形成をしていくのでしょうか?ここでは、法務担当者のキャリア形成の選択肢について解説します。

スペシャリストを目指す

1つめが、スペシャリストを目指す選択です。スペシャリストとは、特定の仕事に特化して業務を担当する人を指します。

仕事の幅を限定することで特定分野の専門性を上げ、深い知識や技術を習得することが可能です。難易度の高い業務を遂行できるようになるため、非常に重宝される存在といえるでしょう。

法務でスペシャリストを目指す場合、次の3つの分野のいずれかに特化するケースが多くなっています。

  • 契約法務
  • 知財法務
  • 組織法務

契約法務では、契約書の作成と審査、契約により生じた紛争の処理を行います。契約書の合法性を判断して利益をもたらせる契約であるかの判断を求められるため、経営視点も必要です。また、英文契約の理解や交渉力も求められます。

知財法務では、特許や商標、著作権などの知的財産に関する法的業務を担当します。海外展開している企業であれば、語学力や海外の特許に関する知識も必要です。組織法務は、株主総会・取締役会の運営などの法的業務を担当します。

各分野で求められる能力や人物像が異なるため、自分がどの分野に合っているかをまずは判断しましょう。

ゼネラリストを目指す

2つめの選択肢が、ゼネラリストです。ゼネラリストとは、法務部としての業務を軸にしつつ、総務・人事・内部統制・経営企画など、管理部門全体にまたがる業務を担う人を指します。管理部門の幅広い知見や経営的な知見を身につければ、マネジメント職や経営陣へのキャリアも歩めるでしょう。

また、ゼネラリストからチーフリーガルオフィサー(CLO)やジェネラルカウンセル(GC)などを目指すことも可能です。

ただし、ゼネラリストを目指すためには、企業の規模や組織体制が重要になってきます。組織体制が定まっていない中小企業やベンチャー企業であれば、法務以外にも管理部門の幅広い業務を経験できる可能性が高いでしょう。

法務に必要な資質やスキル

法務に必要な資質やスキルを紹介します。

法律知識

なによりも、法務の仕事には高度な法律知識が欠かせません。法務担当者が正しい知識を持っていなければ、トラブルに対処したり、法令遵守のための適切な対応を行ったりできません。

コミュニケーション能力

法務では、コンプライアンス研修のほか、社外の人との交渉など、さまざまな人とコミュニケーションをとる場合があります。そのため、コミュニケーション能力も必要です。

また、法律や契約関連の用語には専門用語が多いため、専門用語をかみ砕いてわかりやすく説明する能力も求められます。

情報収集力

社内や外部の情報を収集する能力も必要です。たとえば、コンプライアンスに対する意識が自社に浸透しているか、違反者がいないかといった状況を把握するためには、内部および外部の情報を収集する情報収集スキルが欠かせません。

問題解決力

情報収集能力に加えて、問題点を分析し解決に導くスキルも必要とされます。

法的問題は、目に見える状態では存在しないことがほとんどです。見えない問題を解決するためには、日頃から情報収集し、集められた内容を分析して問題点や改善策がないか整理する必要があります。

また、問題や課題が生じた場合には、それらに対してどのように解決するのか、問題の解決策を提案するスキルも必要です。優れた解決策を提案するためには、法律はもちろん経営やマーケティングといったビジネス上の知識・判断力も欠かせません。

問題解決には、さまざまな能力が絡みあっているため、日頃から情報収集能力や提案力、ビジネススキルを意識しながら行動するようにしましょう。

倫理観・誠実さ

法務のコンプライアンス担当は、企業の法的リスクを管理する以外にも、企業の社会的責任を果たす役割も担っています。

そのため、法務担当者には自らが模範となって行動できるような高い倫理観や誠実さが必要です。

自己研磨の継続力

自己研磨の継続力も法務担当には必要です。法務では、法改正があるたびに新しい情報を取り入れる必要があります。また、自社のビジネス領域の最新情報を取り入れる努力も必要です。

自ら進んで勉強を継続できる人材こそ、法務に向いている人材といえるでしょう。

法学部出身でなくとも法務で活躍できる

法務は法律を扱う仕事柄、法学部出身でないといけないと思われがちですが、そんなことはありません。法学部の出身でない場合でも法務担当者として活躍できます。

法務に必要な法律知識は学ぶことで身につくほか、コミュニケーション能力は学部に関係はありません。ただし、法律の基礎的な知識を身につけることは避けられないため、必要最低限の知識を身につける努力は必要です。ここでは、法律の知識を身につける方法について解説します。

書籍を活用して契約書に慣れる

書籍を活用すれば、契約書や法律関連の用語に慣れることが可能です。現在、法律にまつわる書籍や実務雑誌、論文は多数存在します。そういった文献を読むことで、法務の実務において必要な契約書や用語などとの距離を縮められるでしょう。

実務に近い法律から学んでいく

自分の取り組みやすい、興味関心のある分野の法律から学ぶことも重要です。さまざまな法律が存在するため、闇雲に勉強しても、頭に入らないこともあるでしょう。少しでも興味のあることや実生活に関連する法律から勉強することで、法律に対するハードルも少しずつ下がっていくはずです。

また、各省庁や法務関連団体などが開催しているセミナーに参加する方法もあります。ある特定の分野や法律などについてわからないことがある場合、それらの解説をしてくれるセミナーに参加することで、より理解を深められるでしょう。

法務×別のバックグラウンドがあれば市場価値が上がることも

法務としての知見はもちろん、その他の業務領域などへのバックグラウンドがある場合は、より市場価値を上げられるかもしれません。

たとえば、海外生活が長くて英語が堪能であったり、海外の企業に勤めていた経験があったりした場合は、すでに法務としての知見を持ち合わせていれば、国際舞台で活躍できる可能性が広がります。

法務としてのキャリアを積むと同時に自分ならではのキャリアを並行して詰めると、ほかの人にはない武器となって、市場価値をより向上させられるはずです。

法務のキャリアアップの近道

法務のキャリアアップにおいての近道を紹介します。

法律に関する専門知識を高める

どんな仕事でも共通していえることですが、とくに法務においては、専門知識の向上が欠かせません。法律は日々変わり続けるもので、最新の情報をキャッチアップしておくことが求められます。

たとえば、専門書を読んだり、法改正に関するセミナーに参加したりするなどして、知識をアップデートさせましょう。

英語を勉強してグローバルに活躍する

英語が得意なのであれば、国際業務に挑戦してグローバルに活躍する方法もあります。グローバル化が進んでいるため、海外の法律や取引に対応できるスキルは非常に評価されるものです。

海外企業との契約交渉や国際的な法的問題の解決に携わることができるのであれば、積極的にそういった経験を積むようにしましょう。国際業務に取り組めば、グローバルな視野を持てるため、法務としてのキャリアを大きく飛躍させられます。

ロースクールへ通う

企業内弁護士は人気のキャリアです。企業内弁護士を目指すべく、ロースクールへ通って法律の知識をより深める方法もあります。

司法制度改革によって弁護士数が増加したことにともない、一般企業で働く弁護士が増加しています。コーポレートガバナンスやコンプライアンスの強化を図る企業も増えているため、内部から自社を後押しできる企業内弁護士はキャリアアップの近道といえるでしょう。

法務のキャリアに役立つ資格

最後に、法務のキャリアに役立つ資格について紹介します。

弁護士

弁護士は、法律の専門家としてさまざまな事件・紛争の解決にあたることのできる法律の専門家です。司法試験に合格する必要があるため、簡単に取得できる資格ではありません。

近年はコンプライアンスやコーポレートガバナンスの強化を図る企業が増えていることもあり、一般企業で働く弁護士も増加しています。また、弁護士資格があれば、顧問弁護士を目指せるほか弁護士としてキャリアアップする方法もあります。

弁理士

弁理士は、特許権や商標権などの知的財産に関する専門家です。大企業やメーカーにおいては、特許や商標などは企業の財産といえます。弁理士が企業内に存在すれば、自社の知的財産権の保護をスムーズに行えるようになるため、近年弁理士を雇う企業が増えてきています。

知財を扱う企業で働くのであれば、弁理士資格は評価されやすい資格といえるでしょう。

司法書士

司法書士は、不動産登記業務をはじめ、裁判所や法務局などに提出する書類作成を代行する職業です。そのため、不動産業界など一部業界の企業法務においてニーズの高い資格といえます。

もちろん、司法書士の資格取得により法律の知識があることは十分アピールできます。

行政書士

行政書士は、官公庁に提出する書類の作成や提出代行、契約書や遺言書の作成代行などを行う職業です。

行政書士の資格を取得できれば、法律の基礎知識があることをアピールできます。企業法務においては、契約書レビューが業務の1つとしてあるため、行政書士の資格があればアピールできるでしょう。

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定とは、ビジネスで必要な法律知識を習得できる検定試験です。法務部門はもちろん、管理部門や営業職などさまざまな職種で役立つ実践的な法律知識を身につけられます。

法務関連の資格の中でも高い知名度があるため、法務担当を希望するのであればぜひ取得したい資格といえるでしょう。1級~3級まであり、企業で求められるレベルとしては2級以上が望ましいところです。

知的財産管理技能検定

知的財産管理技能検定とは、知的財産を適切に管理・運用できることを証明できる国家資格です。試験を通して、企業が知的財産を管理するうえで必要な知識やスキルについて総合的に学べます。

1級~3級に分かれており、1級は専門分野によって特許専門業務、コンテンツ専門業務、ブランド専門業務の分野が設けられています。企業法務で求められる能力としては、2級以上です。まずは、2級の合格を目指すようにするとよいでしょう。

理想の法務キャリアを歩めるようにスキルアップしよう

法務と一口に言ってもビジネス法務やコーポレート法務、コーポレート強化などさまざまな業務を担当します。どういった分野を担当するか、選ぶかによっても選択肢は異なってくるため、注意が必要です。

たとえ、どのような道を歩むにせよ、法務担当者には法律知識はもちろん、コミュニケーション能力や問題解決力など、さまざまな資質やスキルが求められます。また、法務業務に役立つ資格を取得すれば、理想のキャリアアップを実現できる可能性も高まるはずです。

まずは、法務についての理解を深め、自分に合ったキャリアを選択できるようになりましょう。


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