• 作成日 : 2024年11月27日

契約書作成はどの部署が行う?契約法務の業務やリーガルチェックの流れを解説

企業における契約書作成は、法務部門が中心となって行うことが一般的です。法務部門は契約書の法的妥当性を確認し、企業の利益を守るために必要な契約法務手続きを担います。

本記事では、契約法務の内容やリーガルチェックの流れを詳しく解説するとともに、契約書作成プロセスを効率的に進めるためのポイントを紹介していきます。

契約書作成はどの部署が担当する?

企業における契約書作成業務は、おもに法務部門により担当されることがほとんどです。

なぜなら法務部門には、法律に対する深い知識や、契約法務に必要なスキルを兼ね備えた人材が配置されることが一般的であるためです。法務部門は、契約書の作成やリーガルチェックを通じて、企業の利益を守り、リスクを最小限に抑える役割を担っています。

一方、営業や開発、経理などの各事業部門が契約書の初期ドラフトを作成するケースもあります。この場合、各担当部署が自部門の専門知識を活かして契約内容を策定し、法務部門が法的観点からの確認を行うことで、効率的かつ適切な契約書作成が可能です。

契約法務の業務内容

契約法務の業務は、契約書の作成、リーガルチェック、契約に関するトラブル対応の3つに大別されます。以下で契約法務の業務内容について詳しくみていきましょう。

契約書の作成

契約書の作成には、取引内容を正確に反映させるための詳細なヒアリングが必要です。また、法律上必要な条項を盛り込み、将来のトラブルを未然に防ぐ工夫が求められます。

なお、営業や開発などの取引担当部署が契約書の初期ドラフトを作成し、法務部が最終的なチェックを行う体制を採用している企業もあります。この場合、各部署が専門知識を活かして契約内容を策定し、法務部が法的観点からの確認を行うことで役割分担し、効率的かつ適切な契約書作成が可能です。

契約書のリーガルチェック

契約書のリーガルチェックとは、契約内容が法令に適合し、企業の利益を確保できるか確認するプロセスです。自社で作成した契約書以外にも、相手先から提示された契約内容のチェックまで含みます。

リーガルチェックは、おもに法務担当者や顧問弁護士が担当し、法令違反や不利な条件によるリスクの回避を目的とするものです。また、契約相手先との将来のトラブルを未然に防ぐことや、自社のビジネスの意図に沿った契約内容が反映されているか確認する役割も担います。

契約関連のトラブル対応

契約法務におけるトラブル対応では、まず契約書の条項に基づき、当事者の権利や義務を明確にします。そのうえで、相手方と協議し解決策を探るプロセスが一般的です。

また、法的手続きが必要な場合は、内容証明や調停、訴訟などの検討が必要です。場合によっては、弁護士と連携しながら問題解決に向けた準備を進めます。法務部門を中心として迅速かつ適切なトラブル対応を行えば、企業のリスクを最小限に抑え早期解決につながる可能性が高まります。

契約書作成におけるリーガルチェックの流れ

リーガルチェックは契約書の作成から締結までにおいて非常に重要なプロセスです。なぜなら、リーガルチェックが適正に機能することが、企業のリスク管理を高めることにつながるためです。本章では、契約書作成におけるリーガルチェックのステップを詳しく解説していきます。

取引担当部署からリーガルチェック依頼を受ける

契約書のリーガルチェックは、取引担当部署からの依頼で始まります。法務部門に対し契約書の作成から依頼するケースもあれば、自部門で素案を作成することや、取引先から提示された草案のレビューを、法務部門へ依頼するケースもあります。

契約主体となる取引担当部署からの依頼を受けてまず必要なのは、契約の目的や背景、相手方の情報、契約内容の概要などを詳細にヒアリングすることです。法務担当者が契約内容を確認・理解し、重要な条項やリスク要因を検討します。

法務担当者がレビューしてフィードバックする

法務担当者による契約書レビューでは、法律的観点からの確認はもちろん、ビジネス上のリスクや相手先との交渉ポイントも考慮しなくてはなりません。この段階で、契約書の条項が法律に適合しているか、リスクが適切に管理されているか、取引ないように齟齬がないかといった点をチェックし、すべてのリスクを洗い出すことが必要です。

レビューの結果、不明点や改善点について取引担当部署へフィードバックを行い、修正案とともにその根拠理由を提示します。

取引担当者が先方と契約交渉を行う

法務担当者からのフィードバックを受けた取引担当部署は、相手先と契約内容について交渉を行います。法務部が提供した修正案やリスク管理の観点を踏まえ、相手方の意見や要求に対して交渉を重ねるプロセスです。

交渉が進む中で新たな問題が発生した場合も、再度法務部と協議しながら解決策を探る粘り強さが求められます。リーガルチェックの中でも、契約締結に向けて両者の妥協点に落とし込む重要なプロセスといえるでしょう。

契約を締結する

最終的に、両者が合意に達した後、正式に契約書を締結します。締結時には、署名や捺印が必要となり、正式な文書として法的効力を持つことを確認しなくてはなりません。

ここで注意すべき点は、契約書の原本を適切に保管し、後のトラブル防止や必要時に迅速にアクセスできるよう管理することです。くわえて、契約内容の履行状況を定期的に確認し、必要に応じて更新や再交渉を行うことも忘れてはなりません。

契約書作成に関して部署間のコミュニケーションをスムーズにするには?

契約書作成は、法務部門だけでなく、営業や経理、開発、人事など多くの部署が関与する重要な業務です。契約書作成から締結までのプロセスを最適化するためには、部署間のスムーズなコミュニケーションが不可欠です。ここでは、契約書作成プロセスにおいて、円滑なコミュニケーションを実現する具体例を6つ紹介します。

役割と責任の明確化

各部署の役割と責任を明確にすることが重要です。契約書作成に関与する各部署の役割を明確にし、誰がどの部分を担当するのかをはっきりさせることで、業務の効率化が図れます。

たとえば、法務部門が契約書の法的内容を確認し、署名、押印などの締結手続きは担当部署ごとに対応するなど、契約法務の業務分担を明確にします。

定期的なミーティングの実施

定期的なミーティングの開催は、各部署間のコミュニケーションを促進します。たとえば、週次や月次の進捗報告会を設けることで、契約書作成に関する現状の共有や問題点の早期発見が可能です。

また、ミーティングでは、各部署の担当者が直接意見交換を行うことで、誤解や行き違いを防げます。

問い合わせ窓口の設置

契約書作成に関する問い合わせ窓口を設置することも効果的です。専任の窓口を設けることで、各部署からの質問や相談を一元管理し、迅速かつ適切に対応できます。その結果、問題解決までの時間が短縮され、業務の効率化が図れます。

教育とトレーニングの実施

契約書作成に関する教育とトレーニングを実施することは、各部署の担当者のスキル向上につながります。法務部門だけでなく、営業や経理の担当者も基本的な契約書知識や最新の法務知識を身につけることで、スムーズなやり取りが可能です。

共有ツールの活用

共有ツールを活用することも、各部署間のコミュニケーションの円滑化に有効です。契約書管理ツールやプロジェクト管理ツール、クラウドベースのドキュメント共有サービスなどを利用すれば、各部署がリアルタイムで情報を確認し、更新できる環境が整います。契約書のバージョン管理も容易になるため、契約情報の齟齬を防ぐことにもつながります。

契約書テンプレートの整備

あらかじめ統一された契約書テンプレートを整備することで、各部署間のコミュニケーションがスムーズになります。テンプレートを使用すれば、契約書のフォーマットや共通条項が統一され、確認や修正の手間が軽減されるためです。また、テンプレートには必要な条項があらかじめ盛り込まれているため、漏れのない契約書の作成につながります。

契約書作成の担当部署に求められるスキルは?

ここでは、法務部門に代表される、契約書作成の担当部署に求められるスキルを紹介します。これらのスキルを備えることで、契約書作成の質を高めながら企業のリスクを低減することが可能です。

法律知識

最低限の法律知識は、契約書作成に不可欠なスキルです。なぜなら、契約書は法的拘束力を

持つ文書であり、関連する法律や規制を理解していなければ、無効な条項や法的リスクを含む可能性があるためです。とくに企業の契約法務には、民法や会社法などの基本的な法律知識が業務に直結します。

リスク管理能力

契約には常にリスクが伴います。潜在的なリスクを予見し、適切な条項を設けてリスクを最小限に抑える能力が求められます。普段からリスクに対する感度を上げて経験を積むことが重要です。

分析能力

契約書には複雑な条項や条件が含まれることが多く、これらを正確に理解し、分析する能力が求められます。リスクの特定や回避策の提案、契約の内容が企業の方針や戦略に一致しているかを確認できる分析力が必要です。

コミュニケーション能力

先述したように、契約内容を明確にし、相手方との合意を得るためには効果的なコミュニケーションが不可欠です。とくに、契約法務の業務には専門用語を使う機会が多いため、明瞭かつ的確に説明するスキルが求められます。

交渉力

契約条件の交渉では、自社の利益を最大化しつつ、相手方との合意を形成するバランス感覚が欠かせません。さらに冷静かつ論理的に交渉を進める能力が求められます。普段の業務を通じて、柔軟な思考と説得力を養う努力が必要です。

細部への注意力

契約書の細かな条項や文言の違いが、後に大きな影響を及ぼすことがあります。細部に注意を払い、誤解や曖昧さを排除する慎重さが重要です。

最新情報の収集能力

法律や規制は頻繁に改正されます。最新の法令や業界動向を常に把握し、契約内容に反映させるための情報収集能力が求められます。

契約書のひな形・テンプレート

契約書作成に取りかかる前に、まずは目的に合った契約書テンプレートが存在するかを探してみるのがおすすめです。

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リスク回避に不可欠な契約書作成スキルを身につけよう

契約書作成を担当する部署には、法律に関する専門スキル以外にも、分析力や交渉力、コミュニケーション能力など、さまざまなスキルが求められます。企業の法務担当者は、これらのスキルを絶えず向上させながら、企業の利益最大化とリスク管理を実現しなくてはなりません。

安定した企業経営を継続するためには、法務部門だけでなく契約に関与するすべての部署が法令知識を身につけ、リスク回避の意識を高めることが不可欠といえるでしょう。


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