- 更新日 : 2024年8月30日
会計参与契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
会計参与契約書のひな形会計参与契約書とは、株式会社で会計参与を選任する際に締結される契約書で、その職務や作成書類の詳細などを定めます。締結は法律上の義務ではありませんが、責任範囲の明確化や、後々のトラブル防止のためにも定めておくことが望ましいです。
本記事では、会計参与契約書の書き方や、会計参与そのものについて解説します。
目次
会計参与契約とは
会計参与契約とは、株式会社で会計参与を設置し任命する際に、会計参与となる者との間に締結する契約書です。
会計参与とは、2006年5月に施行の会社法で定められた役員の1つで、株式会社の計算書類などを作成するための機関です。株式会社で会計参与を選任する目的はいくつかありますが、大きな所では決算書の信頼性を高めることを目的に選任されます。
なお、会計参与には資格要件があり、なれるのは公認会計士(監査法人を含む)、または税理士(税理士法人を含む)のみです(選任する株式会社、またはその子会社の役員は会計参与になれないなど、欠格要件あり)。
本来、中小企業においての業務実施を目的とした制度ですが、大企業から中小企業まで企業規模に関係なく設置できます。なお一部の例外を除き、会計参与を設置することは義務ではありません。
会計参与契約を結ぶケース
また会計参与契約書では、業務の範囲やその責任を明確に記載しなくてはなりません。これは、就任している株式会社の業務に対して、会計参与がより重大な責任を負うことになるためです。
例えば、顧問税理士が会社の外部の担当者として、財務諸表などの各種書類の作成に関する事務を担当することに対して、会計参与は会社法により取締役と共同して計算書類を作成することが定められています。つまり会計参与は、会社の計算書類について作成責任を負うことになります。
会計参与契約書のひな形
会計参与契約書について、ゼロから作成すると大きな手間がかかります。作成の際は、ひな形をもとに、自社の状況や選任予定の会計参与との認識も擦り合わせながら、適宜修正を加えて作成するのがおすすめです。会計参与契約書のテンプレートは、以下のページからダウンロード可能ですので、ぜひご利用ください。
会計参与契約書に記載すべき内容
契約の締結は、法律上必須とされているわけではありません。しかし、会計参与の職務や権限、責任の大きさを考慮すると、あらかじめ契約書でその範囲を明確にしておくことが望ましいでしょう。以下の内容について、できる限り明確に定めておくのがよいでしょう。
- 職務の範囲
- 任期
- 作成すべき計算書類
ここでは、前述のテンプレートに基づいて解説いたします。
職務
会計参与の職務について定めます。テンプレートでは以下の通りに定めています。
本契約における乙の職務は以下のとおりとする。
⑴ 会社法第374条に基づき甲の取締役と共同して、会社法施行規則第2条第3項第11号ロに定める計算書類、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表及び附属明細書を作成すること
⑵ 会計参与報告を作成し、当該計算書類及び会計参与報告を会社とは別に備置き・開示すること
なお「計算書類の取締役との共同作成」および「会計参与報告書の作成」については、会社法における会計参与の義務として定められています。
任期
任期について定めます。なお、会計参与の任期は原則として取締役と同一であり、選任されてから2年以内に終了する事業年度における最終の定時株主総会の時までです。ただしこの任期は、定款または株主総会の決議により、短くしたり、長くしたりすることも可能です。
作成する計算書類
会計参与に作成してもらう計算書類の詳細(作成対象となる事業年度や、作成の期限など)を明確にしておきます。会計参与が計算書類などの作成を怠り、会社に損害を与えた場合は、過失責任を問われます。万が一、双方の認識に食い違いがある場合、紛争に発展する可能性もあるため、事前に内容を明確化して契約書の文面として落とし込みましょう。
書類の備置き及び閲覧・交付の請求
契約に基づき会計参与が作成した書類の備置きと、閲覧・交付に関する内容を定めます。具体的に、テンプレートでは以下のように定めています。
第4条
本件書類および会計参与報告の備置きおよび開示に関する詳細は、以下の通りとする。
⑴ 本件書類および会計参与報告の備置き開始日 令和〇年〇月〇日
⑵ 本件書類および会計参与報告の備置場所 ○○
⑶ 本件書類および会計参与報告の閲覧・交付可能時間 ○○
第5条
本件書類および会計参与報告の閲覧・交付の請求については、以下のとおりとする。
⑴ 資格者を証する書類の有効期限
⑵ 資格者を証する書類を発行する会社の担当者氏名及び役職「○○(役職○○)」
⑶ 株主又は債権者であることの資格を証する書類発行までの一定期間は、会社に対する請求から○日以内とし、それ以降は会計参与が請求者の閲覧・交付の請求に応ずるものとする。
⑷ 交付請求については、1枚当たり〇円を請求者の負担とする。
なお会社法では、各事業年度に係る計算書類と会計参与報告について、会社とは別に5年間備え置いて、株主や債権者から閲覧の要求等があった場合には対応するように義務づけられています。
報酬
会計参与の報酬について定めます。なお、会計参与としての報酬は役員報酬となるため、定款に定めがない場合、株主総会の決議によって定めます。契約によって定めることも可能ですが、株主総会の決議により承認を得なければなりません。
本契約における乙の報酬は金○円とする。
2 甲は、前項の金額を、本件書類作成後より〇日以内に、乙の銀行口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
なお、テンプレートでは上記のように一括の支払いを想定したものとなっていますが、毎月一回の支払いとして定めることも可能です。自社で選任している他の役員と合わせる形でよいでしょう。
損害賠償
損害賠償について定めます。会計参与が職務に際して会社に損害を与えた場合は、損害賠償が発生します。損害賠償の上限については、選任予定の会計参与にとっても非常に重要なポイントだといえるため、双方話し合いをしながら定めましょう。テンプレートでは以下のように定めています。
乙は、本契約の履行に伴い会社に損害が生じた場合において、乙に故意又は重大な過失がない限り、別紙計算表における金額を、年度ごとの合計額のうちもっとも高い額に2を乗じて得た額のいずれか高い額をもって、会社に対する損害賠償責任の限度とする。
会計参与契約書の作成ポイント
会計参与の職務・権限・責任について十分理解した上で、職務や責任の範囲を協議し明確にすることが、会計参与契約書作成のポイントです。会計参与に関しては、その業務の重大さに起因し、さまざまな責任が生じるものとされています。
例えば、計算書類作成等の業務を怠り会社に損害を与えた場合は、過失責任として会社に対して損害賠償責任を負わなくてはなりません。また、その職務を行うについて悪意、または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害賠償責任を負う可能性もあります。
正しい理解で会計参与契約書の締結を
決算書等の信頼性を高めることや、その他の役員がより経営に専念できるようになるなど、会計参与を選任することには多くのメリットがあります。その一方で、選任される会計参与側にも訴訟リスクなどが生まれてしまうため、会社側はその職務・責任などを把握することが重要です。
会計参与としての機関の役割や責任を正しく理解した上で、後々、双方にトラブルが生じないように契約書を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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