- 作成日 : 2024年12月3日
反社(反社会的勢力)とは?定義や種類、見分け方などを簡単に解説
「反社(反社会的勢力)」は、社会の秩序を乱して違法な活動を行い、経済や日常生活に多大な悪影響を及ぼします。反社との関わりを避けるためには、反社について基本的な知識や種類を理解し、正しく見分けることが重要です。
この記事では、反社の定義や種類、排除すべき理由、見分け方などについて解説します。反社への対策でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
反社(反社会的勢力)とは?
反社とは、反社会的勢力の略で、社会秩序・ルールを無視して違法な活動を行う集団や個人です。
代表的な例としては暴力団や詐欺グループ、極端な思想をもつ団体などがあります。これら反社団体は暴力や恐喝、詐欺といった犯罪行為を通じて利益を得るための活動を行います。
反社に対しては、行政や警察による取り締まりが行われており、関わりをもつ企業にも厳しい処分が下される可能性があります。そのため、社会的信用を保つ上でも、企業や個人として反社を厳格に排除することが重要です。
政府による反社会的勢力の定義
反社会的勢力の定義として、日本政府が示しているのが「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」です(犯罪対策閣僚会議幹事会「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」平成19年6月19日)。この定義には、暴力的もしくは法を超えた不当な要求に値する行為も含まれており、暴力団や暴力団関係企業といった属性にも言及されています。
また、日本政府が近年の傾向として懸念しているのが、反社が自らの組織の実態を隠ぺいする動きです。例えば、企業活動を装ったり、不動産取引などの経済活動を行ったりすることで、実態の不透明化と手口の巧妙化が進んでいるとされています。そのため、企業・個人側として反社会的勢力との関わりを避けるためには、法令などの遵守体制やリスク管理体制を整備する必要があります。
警視庁による反社会的勢力の定義
警視庁が反社会的勢力として主に挙げているのが、暴力団、暴力団員、暴力関係者などです。これら反社の団体・個人は、東京都暴力団排除条例にもとづいて定義され、排除するための指針や規制が示されています。
条例の基本理念として掲げているのが、「暴力団と交際しない」「暴力団を恐れない」「暴力団に資金を提供しない」「暴力団を利用しない」の4つです(同条例第3条)。「暴力団追放三ない運動+1」というスローガンとしても掲げられています。
具体的には、企業が契約する際は相手方が暴力団に関係していないことを確認し、暴力団関係者と判明した場合は催告なく契約を解除できる旨の特約を定めること、といった努力義務が示されています(同条例第7条)。
反社(反社会的勢力)の種類は?
反社(反社会的勢力)にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる方法で違法な活動を行っています。
以下、代表的な反社について解説します。
暴力団
暴力団は、日本において最も知られている反社会的勢力です。暴力や恐喝、違法薬物の売買、詐欺などの犯罪行為を通じて利益を上げるなど、社会に深刻な影響を与えています。
暴力団はピラミッド型の組織体系を有していて、上位の幹部から下位の構成員に至る指揮系統によって、組織的に活動するのが特徴です。
暴力団準構成員
暴力団準構成員とは、暴力団の正式な構成員ではないものの、暴力団の活動に関与する個人のことです。暴力団準構成員は暴力団の威力を背景に、詐欺や恐喝、薬物取引といった不法行為を行い、暴力団の活動や維持に加担します。
暴力団関係企業
暴力団関係企業とは、暴力団員などが運営に関与したり、利益を得るために協力したりする企業です。
特徴として、表面上は建設業や不動産業、飲食業などで合法的なビジネスを展開していますが、実際には暴力団の資金洗浄や利益獲得の手段として機能します。
総会屋
総会屋とは、企業の株式を買い集め、株主総会を通じて金銭や利益を得るための活動を行う反社会的勢力です。株主総会で企業に対して批判的な発言を行い、脅迫などによって利益を引き出そうとします。
総会屋に関わることで企業は経営に不当な介入をされ、社会的な信頼を失う可能性があります。
社会運動標ぼうゴロ
社会運動標ぼうゴロとは、社会運動や政治活動を装いながら金銭や権力を得るために活動する反社会的勢力です。社会運動標ぼうゴロは、環境保護や人権擁護、労働運動といった名目で抗議活動を行うことで組織の威力を示し、企業や個人に対して不当・違法に金銭を要求することがあります。
特殊知能暴力集団等
特殊知能暴力集団とは、特殊な知能や技術を駆使した高度な手口によって犯罪行為を行う反社会勢力です。例えば、インターネットを利用したオンライン詐欺やサイバー攻撃、資金洗浄や情報漏洩、特殊詐欺などがこれにあたります。
半グレ集団
半グレ集団は、従来の暴力団とは異なり、明確な組織構造をもたない若者を中心とした反社会的勢力です。半グレ集団はインターネットやSNSを通じてメンバーを集め、暴力や恐喝、詐欺などの犯罪行為を通じて利益を得ます。
暴力団が暴力団対策法や暴力団排除条例といった法令の適用対象となるのに対し、半グレ集団はそれら法令の適用対象となっていません。取り締まり強化に向けた法整備が待たれます。
反社(反社会的勢力)に対する国や地方自治体の対策は?
反社(反社会的勢力)は、一般社会に多大な影響を及ぼすことから、国や地方自治体によってさまざまな対策が実施されています。
「暴力団対策法」や「犯罪収益移転防止法」などの法整備
反社に対する対策は、国と地方自治体の協力のもと進められており、国レベルで実施されているのが「暴力団対策法」や「暴力団排除条例」などの法整備です。
暴力団対策法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)とは、暴力団による不当な行為を制限し、社会の安全と秩序を維持するために制定された法律です。この法律では、暴力団が行う恐喝や詐欺をはじめとした27類型の禁止事項が示されており、これに違反すると刑罰の対象になります。
一方、犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)は、犯罪によって得られた収益を合法的な資金として流通させる「マネーロンダリング」を防ぐための法律です。
金融機関や不動産業者、宝石商など、特定の事業者に対して顧客の本人確認や取引の記録保存などを義務付け、犯罪により得た金品のマネーロンダリングを防ぎます。
各都道府県による「暴力団排除条例(暴排条例)」の制定
反社への対策として、各都道府県で「暴力団排除条例(暴排条例)」が制定されています。暴力団排除条例では、地域社会から暴力団の活動を排除し、安全な環境を確保するための規制内容が記載され、加えて、各地域の実情に応じた対策も定められています。
例えば、企業や個人が暴力団との取引を行わないことや、公共施設の利用制限、暴力団関係者の居住地制限などが含まれ、これに違反すると罰則が科される規定が盛り込まれています。
「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の公表
反社から企業を守るための対策として、法務省によって公表されたのが「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」です。反社との関係を遮断するための基本原則や対応方法が示されており、企業にはこの指針に沿った対策が求められます。
具体的な対策方法としては、反社との関係遮断を宣言することや、それを実現するための社内体制の整備、従業員の安全確保、外部専門機関との連携などがあります。また、反社からの不当要求を防止するため、取引先との契約書には、反社と関わりをもたないことを保証する「暴力団排除条項」も必要です。
企業が反社(反社会的勢力)を排除すべき理由は?
反社会的勢力(反社)との関わりは、企業にさまざまなリスクをもたらします。
以下で、反社を排除すべき主な理由を解説します。
資金が反社へ流れるのを防ぐため
企業が反社を排除すべき理由は、資金が反社に流れるのを防ぐためです。
反社は、暴力や恐喝、詐欺といった違法行為で利益を得ようとしますが、その資金源が企業との取引であることも少なくありません。そのため、企業が反社と取引をしないことで犯罪行為の助長を防ぐことが、社会的に求められる責任でもあるのです。
企業の社会的信用やコンプライアンスを守るため
企業の社会的信用やコンプライアンスを守るという点においても、反社の排除は重要です。
反社との関わりは法的なトラブルに巻き込まれる可能性があり、コンプライアンスの観点からも重要な課題となります。
また、反社との取引は社会的な信用失墜につながり、ビジネス機会の損失や売上の減少を招くリスクもあります。
従業員が犯罪に巻き込まれるリスクを回避するため
従業員が犯罪に巻き込まれるリスクを回避することも、反社を排除すべき理由の1つです。
企業が反社との関わりをもつと、反社が行う脅迫や恐喝、詐欺などの犯罪行為に、従業員が巻き込まれる可能性があります。
従業員が反社と関わると、身の安全性が脅かされ、精神的なストレスや労働環境の悪化を招きます。
企業が反社(反社会的勢力)を見分ける方法は?
企業が健全な事業活動を行うためには、反社(反社会的勢力)を見分け、関わりをもたないことです。
以下では、反社を見分ける4つのポイントを解説します。
見た目や特徴から判断する
最も簡単に反社を見分けられるのが、見た目や特徴からの判断です。
反社は、刺青や独特の服装といった特定の見た目、行動パターンをもつことが多く、そういった特徴を観察することで判断ができます。
また、威圧的な態度や強い口調で話すなど、特徴的な言動も判断材料となるでしょう。
ただし、近年はそういったあからさまな特徴をもたず、一般人と見分けのつかない反社が増えているため、見た目だけでは判断できないことに留意する必要があります。
反社チェックツールを活用する
反社を見分けられる方法の1つが、反社チェックツールの活用です。
反社チェックツールとは、取引先やパートナー企業が反社と関係しているかを確認できるデジタルツールです。公的機関などのデータベースを活用することで、相手方の企業や個人の背景情報を調査できます。
指定暴力団リストを活用する
確実に反社を見分けられる方法が、指定暴力団リストの活用です。このリストは、公的機関や警察によって提供されており、法的に暴力団と認定された団体やその構成員の情報がまとめられています。
指定暴力団リストを活用することで、取引先の信頼性を事前に評価でき、反社との関わりを未然に防げます。
外部の専門機関に調査を依頼する
企業が反社を見分けるためには、外部の専門機関に調査を依頼することも有効です。
相手方の企業や個人が反社であるかどうかは、必ずしも素人に見抜けるとは限りません。その点、専門機関の多くは、反社に関わる詳細な情報と知識を有し、独自の調査ネットワークを活用して取引先の背景を調査します。企業が独自に行う調査よりも正確性が高く、取引先の信頼性評価にも役立つでしょう。
反社(反社会的勢力)と関わりのある企業一覧はある?
反社と関わりのある企業を避けるためには、「指名停止等一覧」を利用することが有効です。この一覧は、自治体や公的機関によって公開されており、不正行為を行った競争入札参加資格者について一定期間契約の相手としないことを示しています。公開されている企業が反社とつながっているかは明確に記載されていませんが、契約違反や法に抵触する行為などの事実から、一定の判断基準として利用できます。
具体的な確認手順として、自治体や公的期間のウェブサイトからアクセス可能です。対象企業や個人の名前、住所、違反内容などが記載されており、これを利用することでリスクがあるかをチェックできます。
また、指名停止等一覧は定期的に更新されるため、新たな取引を始める際は最新の情報を確認することも重要です。
反社(反社会的勢力)に対して企業が行うべき対策は?
企業が健全な経営を続けるためには、反社と関わりをもたないことが何よりも大切です。以下で、企業が反社に対して行うべき対策を2つ紹介します。
反社に対するマニュアルなど社内体制の整備
反社との関わりを遮断する上で、反社に対するマニュアルや社内体制の整備は不可欠です。明確な方針を示したマニュアルを準備し、すべての従業員に周知徹底する必要があります。
具体的には、マニュアルに取引先の選定基準や取引先の背景調査方法などを記載し、反社と接触するリスクを減らすことなどです。また、定反社の特徴や兆候を理解させるための定期的な研修や、従業員が同僚の問題行動を早期に報告できる内部通報制度などの環境づくりも求められます。
契約書には反社会的勢力排除条項を設置する
企業が反社と関わりをもたないために最も有効な手段の1つが、契約書に反社会的勢力排除条項を設けることです。
反社排除条項とは、取引先が反社に該当しないことを確認し、もしも関与が発覚した場合は契約を一方的に解除できるというものです。
具体的には、契約書の冒頭や締結部分に反社排除条項を明記し、取引先に対して反社との関係がないことを保証させます。この条項を契約書に含めることで、企業は反社との接触リスクを最小限に抑えられるとともに、取引先との信頼関係を確保できます。
反社との関わりを避けるためには理解と対策が重要
企業が反社との関わりを避けるためには、反社の定義や種類、見分け方について理解を深めることが重要です。反社との関係を断つことで資金が流れるのを抑止でき、社会的責任を果たせます。また、反社に対するリスク管理は、従業員の安全やコンプライアンスを守る上でも必要です。
企業が取るべき対策としては、社内体制の整備や契約書への反社排除条項の設置です。これら対策を講じることで、企業は反社との接触リスクを最小限に抑えられます。安全な社会を築くため、地域社会と協力して反社を排除していくことが、企業に求められています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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