• 更新日 : 2023年8月1日

不動産売買の基礎知識を紹介!売却の流れや注意点は?

不動産売買の取引は複雑であり、取引価格も大きいため、知識を備えて臨むことが大切です。この記事では不動産売買について、売却・購入の流れ、必要書類や費用のことなど基礎知識を説明しています。一読し、今後の不動産売買を安全に、スムーズに進められるように備えておきましょう。

不動産売買の基礎知識

「不動産売買」とはその名の通り、不動産を売り買いする取引のことです。土地や建物を所有している方はそれを売却することもあるでしょう。逆に、住まいや事業に使うため、土地や建物を購入することもあります。これらをまとめて不動産売買と呼びます。

以下でこの取引の基礎知識を整理していきます。

不動産売買は名義人本人による対応が原則

売買の対象が不動産である場合、日常的に行っている売買契約に比べて取引価格がかなり高くなることが予想されます。日用品などであれば1つあたり数百円、高くても数万円程度です。しかし不動産の取引となれば1件あたり数千万円以上になることも珍しくありません。

慎重に取引を行う必要があり、不動産売買においては、物件を所有する名義人本人が対応することが基本です。名義人でない人物が交渉の場に現れ、「本人の代わりに私が契約をします」といっても簡単に認められるものではありません。委任状を作成し、正式に代理人を選任しておかないとまともに取り合ってはくれないでしょう。

名義人の家族でも同様です。名義人の配偶者や子どもだからといって無条件に不動産売買の代理人として受け入れられるものではなく、委任状による授権が必須となります。

法人・個人事業主が不動産売買を行うケース

一般の方が行う不動産売買の大半は、自宅の土地・建物が対象となっています。これに対して法人や個人事業主の場合は目的が異なることも多いです。

例えば法人が不動産売買を行うケースとして次のような例が挙げられます。

  • 事業の拡大
    会社の成長、規模の拡大により広いスペースが必要となって、新たな物件を購入するケース
  • 投資
    資産を増やすため、オフィスビルやアパートなどを購入し、賃貸業を行うケース
  • 事業所の移転
    顧客や従業員のアクセスを改善するため、オフィスの立地を見直すケース

また、個人事業主が不動産売買を行うケースとしては次のような例が挙げられます。

  • 自宅兼事業所の確保
    個人事業主の場合、事業所と自宅を兼ねることもあります。そこで、自宅としても仕事場としても使える物件を確保するケースも挙げられます。
  • 事業専用スペースの確保
    専用のオフィススペース、店舗が必要となって不動産を購入するケース。従業員の雇用をきっかけに、自宅を兼ねるのではなく事業専用の物件を購入することもあります。
  • 投資
    個人事業主も不動産投資を収入源とするために不動産を購入することがあります。マンションの一室を購入するなど法人に比べると規模は小さくなる傾向にあるものの、投資目的による不動産売買のケースも挙げられます。

不動産売却の方法は主に3パターン

不動産売却にはさまざまな方法がありますが、大きく3つのパターンに分けることができます。それぞれの特徴、メリット・デメリットを理解して、状況や目的に最適な方法を選択することが重要です。

仲介による売却

「仲介による売却」は、不動産会社を通じて第三者に物件を売却することを意味します。不動産会社が売却を手助けし、売却額の一部は手数料として支払うことになります。仲介してもらうことで多くの買い手とマッチングできる可能性が高まり、適正な市場価格での売却が期待できます。しかしながら、物件の売却に時間がかかることも多いです。

  • メリット
    広告の掲載や契約手続きなどを業者がサポート・代行してくれます。また、多くの買い手と接触するため、需要の多い物件であれば高額での売却も十分に期待できます。
  • デメリット売却までに時間がかかることがあります。また、仲介手数料の支払いが必須です。

不動産会社による買取

「不動産会社による買取」とは、一般に広く取引の募集をかけず、不動産会社に直接物件を売却することを意味します。仲介ではなく直接不動産会社に売却をするため手続きを完了するまでの期間が短いです。売却した物件は、不動産会社が再販売したり賃貸物件として活用したりします。

  • メリット
    短期間で売りやすく、急務の資金調達にも対応できます。また、不動産会社が多くの手続きを進めてくれるため手間も少なくて済みます。
  • デメリット
    買取価格が市場価格より低くなる傾向にあります。

業者を利用しない個人売買

「業者を利用しない個人売買」とは、不動産会社などの専門の業者を間に挟まず、直接買い手となる個人に対して売却を行うことを意味します。仲介手数料を節約することができ、価格設定なども自由にできる一方、交渉や契約手続きなどすべてに対応しなければなりません。

  • メリット
    仲介手数料が不要となり、利益を大きくしやすいです。
  • デメリット
    不動産売買に関する専門知識が必要です。経験もないと手続きに不備が起こりやすく、買い手との間でトラブルも起こりやすいです。また、取引にかかる手間もとても大きくなるのもネックです。さらに、幅広く買主候補を募ることができないので、買主が見つかるまでに時間を要する場合があります。

売却方法を選択する際は、売却の目的や確保できる時間などを考慮することが大事です。法人や個人事業主の場合は、事業戦略や課税の問題も考慮に入れるべきでしょう。

不動産売買の流れ:売却

買い手個人と直接交渉することにはリスクが伴いますし、一般的に選択される手段ではありません。そこで「仲介で売却する場合」と「買取で売却する場合」に分けてその流れを説明していきます。

仲介で売却する場合

不動産売却が急務ではなく、適正な価格での売却を望むのであれば、仲介による不動産売却を次に示す手順で進めると良いでしょう。

  • 仲介業者の選定
    まずは、実績があり信頼できる仲介業者を探します。口コミや取引実績などをチェックすると良いでしょう。
  • 査定の依頼
    選定した仲介業者に物件の査定を依頼しましょう。物件の状態や立地、市場状況を考慮して売却価格の目安を提示してくれます。
  • 媒介契約
    査定額に納得できれば、仲介業者と媒介契約を締結します。なお、媒介契約には次の3種があります。

    • 専属専任媒介契約:仲介業者を1社のみとする媒介契約。売り手自身が売却先を見つけてきても、仲介業者を介して売却する必要があります(仲介手数料が発生する)。
    • 専任媒介契約:仲介業者を1社のみとする媒介契約。売り手自身が売却先を見つけてきた場合は、仲介業者を介さずに売却できます(仲介手数料が発生しない)。
    • 一般媒介契約:複数の仲介業者と媒介契約を結んでも良い媒介契約。
  • 物件情報の公開
    物件情報を公開。広告も打ち、買い手が見つかるまで待ちます。
  • 買い手との交渉
    買い手が見つかれば、内覧を実施し、価格等の交渉を仲介業者が行います。
  • 売買契約
    交渉成立となれば売買契約を締結します。
  • 引き渡しと決済
    契約通りに引き渡しを実行し、買い手から代金を受け取ります。

仲介業者を活用すると売買の契約のみならず、その前に媒介契約も締結することになります。踏むべき手順は増えますが、多くの対応は仲介業者が行ってくれます。

買取で売却する場合

不動産の買取売却の場合、比較的手続きは簡易で、迅速な資金化が実現できます。基本的には次のような手順となります。

  • 買取業者の選定
    買い取りに対応している不動産買取業者を探すことから始めます。買取価格にも関わってきますので、複数の候補を挙げておくと良いでしょう。
  • 査定の依頼
    買取業者に物件の詳細情報を提示し、査定依頼を出します。物件の状態などその他さまざまな事情を考慮して買取価格を決定します。
  • 買取契約
    提示された価格が納得のいくものであれば、買取契約を締結します。買取契約書に記載された買取価格や物件の引き渡し日、その他詳細な条件などもすべて目を通してからサインをしましょう。
  • 引き渡しと決済
    契約に従う、指定の日に物件の引き渡しを行います。引き渡しと同時に買取業者から買取金額の振り込みを受けます。

買取の場合は比較的スピーディに手続きが進みます。業者とのやり取りではありますが、仲介ではないため仲介手数料は必要ありません。ただし買取価格は、市場価格より低くなる傾向にあります。

不動産売買の流れ:購入

次に、不動産を購入する立場で必要になる対応、手続きの流れを以下に示します。

  • 購入目的や予算の確認
    取引価格が大きい分リスクも大きいです。そこで不動産を購入する目的を整理し、なぜ必要なのか、その目的達成のためにどのような条件を満たす物件が必要なのかを検討します。予算との兼ね合いも重要であり、取引価格のみならずリフォーム費用や固定資産税などの維持費についても考慮して検討を進めます。
  • 物件の調査
    条件に合う物件を探します。Webサイトを使って探すこともできますが、不動産業者に相談して探してもらうと効率的です。
  • 内覧の実施
    気になる物件は直接見に行きます。その内覧で物件の状態や近隣の環境などをチェックしておきます。また、物件の将来的な価値、事業への影響なども考えます。
  • 購入の申し込み
    物件購入の方針が固まれば、申し込みを行います。
  • 売買契約の締結
    条件の詳細を定め売買契約を結びます。その際、物件についての重要事項についての説明を受けます。また、個人が住まいとして利用する場合は住宅ローンの申し込みを行うことになるでしょう。事業者の場合も必要に応じて金融機関に借入等の申し込みを行います。
  • 引き渡し
    金融機関の審査に通れば残りの代金を支払い、物件の引き渡しを受けます。同時に登記手続きも進めて物件の名義人となります。

以上が大まかな不動産購入の流れですが、具体的な手続きは物件の種類や利用する金融機関によって変わることがあります。不明点、心配事がある時は、不動産の専門家や税理士、弁護士などのアドバイスを得ることをおすすめします。

不動産売買に必要な書類や手続き

不動産売買に際してさまざまな書類を準備する必要があります。また、所有権は目に見えるものではありませんので、登記申請により名義人であることを外部に示す必要があります。そのための登記手続きについても簡単に紹介します。なお、不動産売買は電子契約で締結することも可能です。

近年は法改正によりこれまで書面が必須とされてきた契約でも、電子契約が認められるようになってきています。まだすべての契約がオンラインで完結させられるようにはなっていませんが、不動産業界にも電子契約が普及しつつあります。

不動産売買や賃貸借における電子契約の活用については、こちらの記事も参照ください。

必要な書類

不動産売買で必要になる基本的な書類をリストアップします

<売主・買主共通>

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど。法人の場合は商業登記簿謄本など)
  • 実印
  • 印鑑登録証明書(法人の場合は印鑑証明書)
  • 住民票

<売主のみ>

  • 登記済権利証(または登記識別情報)
  • 固定資産税評価証明書(または固定資産税納税通知書)
  • パンフレット・管理規約・管理組合総会議事録など(マンションの場合)
  • 建築確認通知書・検査済証
  • 測量図・建物図面・境界覚書など

また、法人や個人事業主の場合は定款や事業計画書、決算書の準備が必要になるケースもあります。特に取引価格を大きい場合や金融機関から融資を受ける時には、これらの提示が求められる傾向にあります。

所有権移転登記の手続き

売買契約が成立すると所有権も移転します。しかし安全のため、今後の円滑な取引のため、売買代金の授受と同時に所有権移転登記も行うのが通常です。そこで登記申請書を作成して法務局に提出する必要があります。その他にも、売買取引の時と同様、多様な必要書類を準備する必要があります。また、登記申請にも費用がかかります。費用も備えておきましょう。

所有権移転登記の手続きには専門的な知識が求められます。登記が適切に行われていないことで権利関係をめぐる大きなトラブルが起こる可能性もあります。そこで登記を取り扱う専門家の司法書士に依頼して対応するのが通例です。

不動産売却時の税金や費用

不動産を売却することに成功すれば、大きな資金が得られます。しかし取引価格がそのまま利益になるわけではありません。譲渡所得税や登録免許税、印紙税などの税金の負担がかかりますし、仲介手数料や広告費などが発生するケースもあります。

不動産売却でかかることのある税金や費用を簡単に下表にまとめます。

税金や費用概要
譲渡所得税売却価格から取得費(購入代金等から減価償却費相当額を差し引いたもの)と譲渡費用(仲介手数料や登記費用など)を差し引いた金額に対して課税される。
登録免許税所有権移転登記の際にかかる手数料。契約内容により負担者は自由に設定できるが、実際には購入者が負担するケースが多い。
印紙税売買契約書などの書類に対して課税される税金。契約金額により印紙税額が異なる(例:1,000万円超5,000万円以下なら2万円、5,000万円超1億円以下なら6万円)。なお、印紙税は書面を必要としない電子契約には課税されない。
仲介手数料仲介業者に依頼した時に支払う手数料。「売買価格の〇%+〇万円(消費税別途)」などと設定されることが多い。上限は「売買価格の3%+6万円(消費税別途)」。
広告費物件情報の広告を出す場合に発生する費用。
測量費不動産の面積や位置を測る時発生する費用。
立退料売却対象の物件を借りている人がいる場合に発生する費用。

その他専門家に相談したり手続きの代行を依頼したりする時は、別途報酬の支払いが必要です。例えば司法書士に登記手続きを代行してもらう時、数万円から十数万円ほどが発生します。

不動産売買はプロに相談して慎重に進めよう

当記事で説明したように売買の方法はさまざまあります。必要な手続き、流れ、価格なども取引の方法により異なります。費用の負担についても忘れてはいけませんが、コストカットばかりを意識してもいけません。リスクも伴う取引ですので、不動産会社、税理士、弁護士、司法書士などの専門家の意見も取り入れつつ、慎重に検討を進めていくようにしましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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