• 更新日 : 2024年8月30日

滞納賃料請求通知とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

滞納賃料請求通知書とは、賃料の支払いが遅延している賃借人に対して、支払いを督促するための書面です。賃料の滞納は法的措置をとる方法もありますが、その前段階として滞納賃料請求通知書が用いられます。

本記事では、滞納賃料請求通知書のメリットやポイント、作成時の注意点も具体例を挙げて解説していますので、ぜひ参考ください。

滞納賃料請求通知とは

滞納賃料請求通知書とは、賃貸契約において支払いの遅延が発生した際、賃貸人が賃借人に対して督促を通知する書面です。現在の滞納金額や支払期日、支払われない場合の措置について明確にし、それを相手に伝えることを目的に使用されます。

滞納賃料請求通知書を発行するメリットは、時間や労力をかけず貸借人に意思表示ができる点です。賃料の滞納は賃借人の状況変化や資金不足、所在不明などさまざまな理由がありますが、支払い忘れや手続き上のミスも考えられます。そのような場合に、いきなり強硬な手段をとるよりも、まずは書面で双方の認識を合わせることが重要です。

また、賃貸を含む契約解除については、民法540条で「当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。」と規定されています。つまり、滞納賃料請求通知書は、契約解除や法的手段を進める上で重要な位置づけになるといえます。

参考:民法 | e-Gov 法令検索

滞納賃料請求通知を作成するケース

滞納賃料請求通知書を発行するケースとしては、以下のようなものがあります。

支払期日から一定期間が経過した場合

滞納賃料請求通知書は、賃料の滞納が発生した後、一定期間(1週間程度)が経過したタイミングで作成します。

ただし、滞納から間もない場合は単なる支払い忘れや口座の残高不足という可能性もあります。記載する内容は相手に心理的プレッシャーを与えない配慮が必要です。

相手と直接連絡がとれない場合

滞納した賃料の支払いについて、相手と直接交渉できない場合に滞納賃料請求通知書を作成します。通知書を送付しても一向に反応がない場合、2~3週間後を目安に再度送付するようにしましょう。

交渉で約束した期日を過ぎた場合

滞納した賃料について、交渉によって支払期日を決めたにもかかわらず入金されない場合は、意図的な滞納が考えられます。早急に通知書を作成し、契約解除の意思があることを相手に伝える必要があります。

上記各段階や状況に応じて、文面での表現は変える必要があります。1週間程度の初期段階であれば、ただの支払い忘れという可能性も考慮して配慮のある文章が好ましいといえます。

一方で、すでに一度以上滞納賃料請求通知書を送付したり、支払いについての交渉を終えていたりする場合は、賃借人が期日を過ぎていることを知った上で滞納をしていることになります。その場合は、毅然とした文章にて通知することも考える必要があるでしょう。

滞納賃料請求通知書のひな形

以下のページより、滞納賃料請求通知書のひな形をダウンロードできます。滞納賃料請求通知書を作成する際にご活用ください。

滞納賃料請求通知書に記載すべき内容

滞納賃料請求通知書は、賃借人に対して賃貸人の要求を正確に伝えるための書面です。賃借人との認識にずれが生じないよう、最低でも以下の5つを記載しましょう。

契約の特定

どのような内容で、誰と誰がいつ契約したのかなど、契約内容の特定は重要な項目です。たとえば、土地や建物であれば、所在、建物の構造、床面積などを明記し、契約書に記された賃料や支払方法も記載しましょう。

また、契約者の氏名や契約が成立した日付を記すことで認識のずれを防げます。

滞納賃料の支払要求

滞納賃料の合計額を記載し、支払いの要求を行いましょう。具体的には「貴殿は令和〇年〇月分から令和〇年△月までの賃料合計〇万円を支払っておりません。」のように滞納期間を示すことで、いっそう相手に伝わりやすくなります。

支払期限

支払要求と合わせて、支払期限についても必ず記載しましょう。契約の解除権を行使するまでの期限については、民法541条で「相当の期間」を設けることが規定されています。賃借人が支払いを準備する期間として、7~10日以内を指定するのが一般的です。

契約解除の意思

支払いが行われない場合は契約解除の意思があることを記載しましょう。この記載が漏れると、あらためて解除通知を送付する必要があります。

その他

正式な文書として扱うためには、発行した日付と署名捺印も必要です。忘れずに記載しましょう。

滞納賃料請求通知書を作成する際の注意点

滞納賃料請求通知書の作成は、間違った方法で行うと法律に触れる可能性があります。無用なトラブルを避けるためにも、以下の点に注意しましょう。

督促を伝える相手

賃貸借契約の督促方法については、賃金業法の考え方が参考になります。たとえば、債権の取り立てで本人が連絡に応じない場合でも、第三者への通知は禁じられています(賃金業法21条)。そのため、督促を伝える相手は本人もしくは連帯保証人であることが望ましいでしょう。

ただし、本人の自発的な承諾があれば関係者への連絡も可能とされていますが、必ずしも督促について本人以外に知られて良いということではありません。トラブルを発生させないためにも、第三者には督促の事実を伏せた形で通知しましょう。

また、同条文には「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない」とも記載されているため、勤務先や実家などに滞納の事実を知らせる行為も控えてください。

督促するタイミングや頻度

督促するタイミングや頻度についても、賃金業法を参考にすると良いでしょう。賃金業法では正当な理由がないにもかかわらず、社会通念上不適当と認められる時間帯に、滞納者に対して連絡することを禁じています。「不適当と認められる時間帯」とは午後9時から午前8時までのことで、この時間帯に連絡すると法律違反と見なされます(貸金業法施行規則19条1項)。さらに、FAXやメールの連絡も同じ扱いとされているため、「送信」を用いた滞納賃料請求通知書の送付も注意が必要です。

また、執拗に督促を繰り返す行為についても、先に述べた「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない」に抵触する可能性があります。通知書を送付する際は、相手に恐怖心を与えない頻度に留めるよう注意しましょう。

脅迫や威圧するような内容

滞納者への督促では、相手を脅迫したり威圧したりするような言動はすべきではありません。仮に、その内容を滞納賃料請求通知書に記載すると、裁判を起こされた場合、不利になる可能性があります。通知書を作成する際は、相手に恐怖心を与える表現になっていないか確認しましょう。

また、記載項目についても、すべての通知書に同じ内容を記載する必要はありません。たとえば、はじめての滞納や滞納して間もない相手に対しては、契約解除の項目を外して作成するなどの配慮も必要です。

滞納賃料請求通知書を作成して賃借人とのトラブル回避を

賃貸経営において滞納賃料の督促は避けて通れない課題です。支払いに応じてもらえない場合、契約解除の意思があることを相手に伝えなければいけません。そのためには、記載すべき項目が網羅された滞納賃料請求通知書を準備し、正しい方法で督促を進める必要があります。

今回ご紹介したテンプレートや注意事項を確認し、こちらの意思が正しく伝わる滞納賃料請求通知書を準備しましょう。書面を作成することで、契約解除や法的手続きが必要になった際スムーズに進めるための備えとなります。


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