- 更新日 : 2026年3月31日
【テンプレ付】契約書の損害賠償条項はどう書く?有利・不利を見極める例文や上限設定を解説
損害賠償条項は発生条件・責任範囲・上限額を定め、契約違反時のリスクを制御する規定です。
- 受注者は契約額上限と特別損害除外が鉄則
- 発注者は安易な上限を認めず例外規定を交渉
- 故意・重過失は免責不可とする但し書きが一般的
民法では原則全額賠償となるため、受注者側は「直接かつ通常の損害に限る」と責任範囲を限定し、賠償額の上限(キャップ)を設けることが倒産リスク回避に不可欠です。
「契約書に損害賠償の金額上限は設定すべき?」
「相手から提示された損害賠償条項が、自社に不利かどうかわからない……」
ビジネス契約書において、トラブルになりやすい重要な条項の一つでかつ重要なのが「損害賠償条項」です。
もしこの条項が曖昧だと、万が一のトラブル時に想定外の賠償金を請求されたり、逆に十分な補償を受けられなかったりするリスクがあります。
この記事では、契約書の損害賠償条項の正しい書き方や、自社を守るための上限設定(リミテーション)、責任範囲の考え方について、具体的な例文(テンプレート)を交えて解説します。契約書チェックの初心者でも、リスクの所在がひと目でわかるようになります。

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目次
契約書の「損害賠償条項」とは何か?
損害賠償条項とは、契約違反(債務不履行)によって相手に損害を与えた場合、その損害をどのように、いくらまで賠償するかを定めたルールのことです。民法の原則を修正し、リスクをコントロールするために設定されます。
民法の原則と契約書の役割
民法では、相手の契約違反によって損害を受けた場合、通常生ずべき損害や、特別の事情によって生じた損害のうち予見可能なものについて、損害賠償請求が認められるとされています(同第416条)。
とはいえ、ビジネスにおいては「全額賠償」のリスクを回避したいのは当然のことです。例えば、数万円のシステム開発案件でバグが発生し、数億円の損害賠償を請求されては、受注側は倒産してしまいます。
そこで契約書では、民法の一般原則を踏まえて、「賠償額の上限(リミテーション)」や「賠償する範囲」をあらかじめ合意しておくのです(同第420条)。
条項がない場合のリスク
損害賠償条項を記載しなかった場合、民法の一般原則に従って、通常生ずべき損害や予見可能な特別損害の範囲で損害賠償が問題になります。受注者(ベンダー)側にとっては賠償範囲が契約で限定されないリスクとなり、発注者(ユーザー)側にとっては、どこまで請求できるかを事前に見通しにくくなるリスクがあります。
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損害賠償条項に記載すべき3つの要素と例文
損害賠償条項には、「1. 発生条件(どんな時に払うか)」、「2. 責任範囲(どこまで払うか)」、「3. 賠償額の上限(いくら払うか)」の3点を明記する必要があります。
1. 損害賠償の発生条件
「相手が契約に違反し、それによって損害が発生した場合」に賠償責任が生じることを明記します。
甲または乙は、本契約の履行に関し、自己の責めに帰すべき事由により相手方に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う。
2. 責任範囲(通常損害・特別損害)
ここが攻防のポイントです。民法では「通常損害」と、予見可能な「特別損害」が賠償対象ですが、契約書では「特別損害」や「逸失利益(本来得られたはずの利益)」を賠償対象から外す例が多く見られます。
前項の損害賠償の範囲は、相手方に現実に発生した通常かつ直接の損害に限るものとし、予見の有無を問わず、特別損害、逸失利益、間接損害は含まないものとする。
- 通常損害:その行為から通常発生する損害(例:修理費、代替品購入費)。
- 特別損害:特別な事情から生じた損害(例:システム停止による営業機会の損失)。
- 逸失利益:トラブルがなければ得られたはずの利益(例:転売利益など)。
3. 賠償額の上限(リミテーション)
賠償額に天井(キャップ)を設ける条項です。当事者間で利害が分かれやすく、交渉になりやすい部分です。
甲または乙が相手方に対して負う損害賠償の額は、本契約に基づく委託料の総額(または金〇〇万円)を上限とする。ただし、故意または重過失による場合はこの限りではない。
【立場別】有利な損害賠償条項の書き方とチェックポイント
「お金を払う側(発注者)」と「仕事を受ける側(受注者)」では、有利な条項が真逆になります。自社の立場に合わせて文言を修正する必要があります。
発注者(ユーザー・買主)に有利な書き方
発注者は、損害を受けた際にしっかり補償してもらいたいため、「範囲を限定しない」「上限を設けない」のが理想です。
甲または乙は、本契約の違反により相手方に損害を与えた場合、当該損害(弁護士費用及び紛争解決に要した費用を含む)を賠償しなければならない。
※「直接の損害に限る」や「上限とする」といった文言を削除する。
受注者(ベンダー・売主)に有利な書き方
受注者は、リスクを限定したいため、「範囲を限定する(直接損害のみ)」「金額に上限を設ける(契約金額まで)」とする例が多く見られます。
乙が甲に対して負う損害賠償責任は、請求の原因を問わず、現実に発生した直接かつ通常の損害に限るものとする。また、その賠償額は、本契約に基づき乙が受領した直近〇ヶ月分の対価の合計額を上限とする。
よくある質問:弁護士費用や遅延損害金は?
通常、契約違反による損害賠償として弁護士費用は当然には含まれません。相手に負担させたい場合は、契約条項で明記しておくのが安全です。遅延損害金(支払いが遅れた場合のペナルティ)は、損害賠償とは別に定めるのが一般的です。
弁護士費用の負担
日本法の下では、裁判にかかった弁護士費用は「各自負担」が原則です。相手に請求したい場合は、条文に「合理的範囲内の弁護士費用を含む」と明記する必要があります。
重過失の例外規定
上限設定(リミテーション)を設ける場合でも、「故意または重過失(わざと、または重大な不注意)」がある場合にまで上限を適用するのは不公平です。そのため、「ただし、故意または重過失による場合はこの限りではない(上限を適用しない)」という但し書きを入れるのが一般的であり、公平性の観点から推奨されます。
契約書における損害賠償条項の確認実態
契約書を取り交わす際、損害賠償の範囲や上限額の設定をどの程度意識しているでしょうか。株式会社マネーフォワードが独自の調査を実施し、担当者の確認実態を明らかにしました。
実務条件が優先され、損害賠償の確認は後回しになりがち
業務委託契約の締結に関与する方を対象に、契約内容を確認する際、特に注意して確認している項目を尋ねました。その結果、最も注意して確認しているのは「業務の内容・範囲」で、32.6%でした。次いで「契約の解除・解約に関する条件」が28.8%、「委託料(報酬)の金額・支払時期」が28.3%と続いています。
一方で、本記事のテーマでもある「損害賠償の範囲・上限」に注意している割合は21.0%にとどまりました。このデータから、多くの担当者が業務内容や金額といった実務に直結する条件を優先して確認している傾向が読み取れます。
損害賠償条項は、万が一のトラブルが発生した際に自社のビジネスを守るための重要な防波堤です。契約締結時には、目先の業務内容や委託料だけでなく、損害賠償の責任範囲が適切か、上限額が設定されているかといったリスク管理の項目も念入りにチェックすることが大切です。
出典:マネーフォワード クラウド、契約内容確認時の重点項目【業務委託契約書に関する調査データ】(回答者:881名(有効回答:業務委託契約に関与する605名)、集計期間:2026年1月実施)
損害賠償条項は「上限」と「範囲」でリスク制御を
契約書の損害賠償条項は、単なる定型文ではありません。自社のビジネスを守るための防波堤です。
- 基本構成:発生条件、責任範囲、金額上限の3つを入れる。
- 受注者側:「契約金額を上限」とし、「特別損害・逸失利益」を除外する。
- 発注者側:安易に上限設定を認めず、重大な損害(情報漏洩など)は例外とするよう交渉する。
雛形をそのまま使うのではなく、「もし最悪の事態が起きたら、自社は耐えられるか?」をシミュレーションし、適切な条文に修正することが重要です。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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