• 作成日 : 2023年1月27日

持ち回り契約とは?契約の手順や注意点を解説

不動産売買契約では、売主・買主が同席して契約締結するのが一般的です。しかし、何らかの事情で同席できないこともあるでしょう。当事者が同席できない時には持ち回り契約という手段があります。ただし、通常の対面契約よりもリスクがある方法といわれています。

この記事では、持ち回り契約手続の流れや起こりうるトラブルについて解説します。

持ち回り契約とは?

持ち回り契約とは不動産売買契約の手続方法の1つで、仲介する不動産会社が、売主・買主を別々に訪問して契約を締結する方法です。

不動産売買契約では対面契約が基本です。しかし、何らかの理由で売主と買主が同席できない場合に持ち回り契約という手段がとられます。近年では、特に新型コロナウイルス感染拡大の影響などで契約時に当事者が同席できないケースが増えています。

感染症対策以外にも、以下のようなケースでもよく利用されます。

  • 離婚後の夫婦の財産分与
  • 当事者が海外在住の場合
  • 仕事で多忙である場合

ただし、売主と買主が直接顔を合わせないことによるトラブルも多く発生します。また、仲介する不動産業者の手数料が高くなるなどのデメリットもあるため、あくまでも例外的な方法と考えられています。

持ち回り契約の手順

不動産売買契約では、当事者が同席して同時に契約するのが一般的です。しかし持ち回り契約では、仲介業者が売主、買主と別々に契約を進めます。

その際、どちらから先に手続をするかで契約の手順が変わるため、以下で手続の流れを詳しく解説します。

買主が先に手続をする場合

買主から先に手続をする場合の手順は以下のとおりです。

  1. 仲介業者が買主の元へ行き、買主が契約書等に署名、押印
  2. 買主から仲介業者に手付金を渡す
  3. 仲介業者が手付金の預かり証を買主に発行
  4. 仲介業者が売主を訪問、売主の本人確認をする
  5. 売主が契約書等に署名、捺印
  6. 仲介業者が手付金を渡し、売主が領収証を発行
  7. 仲介業者が買主へその領収証を渡す

買主から先に契約する場合、買主は売主が契約書に署名する前に手付金を仲介業者に渡さなければなりません。トラブルを避けるためにも、手付金を預けた仲介業者から預かり証を受け取っておきましょう。

後日、売主が発行した領収証を仲介業者が買主に届け、預かり証と交換することで手続は完了します。

売主が先に手続をする場合

売主から先に手続をする手順は以下のとおりです。

  1. 仲介業者が売主を訪問、売主の本人確認を行う
  2. 売主が契約書に署名、捺印
  3. 売主が手付金の領収証を渡し、仲介業者から領収証の預かり証を受け取る
  4. 仲介業者が買主を訪問、買主が契約書等に署名、捺印
  5. 買主が仲介業者に手付金を渡し、仲介業者が買主から預かった領収証を渡す
  6. 仲介業者が売主の元を訪れ、手付金と預かり証を交換

売主から手続をする際、売主は手付金を受け取る前に領収証を発行しなければなりません。トラブル回避のために、必ず仲介業者から領収証の預かり証を受け取っておくようにしましょう。

なお、持ち回り契約を行う際は、本人確認を徹底するためにも売主から先に手続をするべきです。詳細は「持ち回り契約をする際の注意点」の章で解説します。

持ち回り契約のメリット・デメリット

持ち回り契約は、売主・買主が対面せずに契約ができる便利な方法です。ただし、契約当事者が顔を合わせないまま大きな金額が動く不動産売買には、常にリスクが伴うことを忘れないようにしましょう。

以下で、持ち回り契約のメリット、デメリットを解説します。

メリット

持ち回り契約のメリットは以下のとおりです。

  • 場所やスケジュールの調整がしやすい
  • 感情的ないさかいが起きにくい
  • 契約当事者のコスト削減になる

対面契約の場合、買主と売主のスケジュールを調整しなければなりません。しかし、持ち回り契約なら、多忙で時間が取れない方や、海外在住などでなかなか帰国できない方でも相手とスケジュールを合わせる必要がないため、手続を進めやすいでしょう。

契約当事者が顔を合わせることで感情的ないさかいが発生するリスクもありません。特に離婚後の元夫婦の財産整理のため不動産売買を行う際等には、相手と顔を合わせないメリットは大きいでしょう。

また、当事者同士が遠方に居住している場合などには、双方の交通費等のコストカットができます。

デメリット

持ち回り契約は当事者に負担がかからないメリットがある一方で、以下のようなデメリットも発生します。

  • 売主が手付金を受け取るタイミングが遅れる
  • 売買契約成立に時間がかかる場合がある
  • 契約内容の認識に当事者でずれが生じる可能性がある

特に危惧すべきは、契約締結や手付金の受け渡しにタイムラグが発生してしまうことでしょう。

通常、契約成立と手付金の授受は同時に行われるため、契約成立後に売主の気が変わって契約解除したくなった場合、民法上、売主は手付金を返し、その同額をさらに解除金として支払うことで契約を解除することができます。これを「手付倍返し」といいます。

しかし、持ち回り契約では、「やっぱり売らない」と売主の気が変わった場合、仲介業者から手付金をまだ受け取っていなければ、買主は手付金の受け取り拒否して売買契約を解除されてしまう可能性があります。この場合には、手付を支払っていないため「手付倍返し」を受けることはできません。

また、対面契約のようにその場で相手に確認できないため、後から当事者間で認識のずれが発生する場合があることにも注意が必要です。

持ち回り契約をする際の注意点

持ち回り契約では、仲介業者任せにせず、当事者が以下のような注意点を理解したうえで手続を進める必要があります。

  • 手続は売主から行う
  • 手付金授受の際は仲介業者に預かり証を発行してもらう
  • 信頼できる不動産業者に依頼する

手続は売主から行う

持ち回り契約で不動産の売買をする場合、売主から先に手続をすべきでしょう。不動産売買では、なりすまし詐欺を防ぐために売主の本人確認が特に重要だからです。

買主から先に手続を行ってしまうと、仲介業者が売主の本人確認をする前に買主が手付金を支払わなければならないため、リスクが大きくなってしまいます。

手付金の授受の際は仲介業者に預かり証を発行してもらう

手付金の授受の際は、仲介業者に預かり証を発行してもらいましょう。

持ち回り契約は複雑な手続です。特に「共同仲介」のように、売主、買主が双方仲介業者を付けて持ち回り契約をする場合には、さらに煩雑になります。

どこかで書類の紛失や盗難が起こる場合も十分考えられます。書類なら当事者の協力によってまた作り直すこともできるでしょう。しかし、手付金を紛失してしまったら取り返しがつきません。

買主が仲介業者に手付金を預ける際は手付金の預かり証を、売主が先に領収証を渡す際は領収証の預かり証を発行してもらうことで、トラブル回避につながるでしょう。

信頼できる不動産業者に依頼する

持ち回り契約では、売主の本人確認や手付金の授受など、仲介業者の果たすべき責任が重くなります。確実に売買契約を進めるためには、信頼できる不動産業者に依頼することが重要です。

スケジュール調整がしやすく、相手と顔を合わせたくない時に便利であるなど、持ち回り契約は当事者側にメリットの多い手続です。しかし、対面契約よりリスクも大きいことを認識し、十分に注意して業者選定を行うべきでしょう。

持ち回り契約は信頼できる仲介業者選定が重要

ち回り契約を選択することもできます。売買契約の当事者にとっては便利な方法ではありますが、直接顔を合わせない分、トラブルが発生するリスクも高くなります。

持ち回り契約で不動産を売買する場合は、契約内容や手続の手順、起こりうるリスクを十分に理解したうえで、信頼できる不動産業者に依頼して手続を進めましょう。

よくある質問

持ち回り契約とは?

不動産売買契約方法の1つで、売主・買主が同席して同時に契約するのではなく、仲介業者が別々に契約当事者を訪問して契約を締結する方法です。詳しくはこちらをご覧ください。

持ち回り契約のメリットは?

持ち回り契約には、当事者にとって場所や予定の調整がしやすく、対面しないことで感情的な衝突を避けられるなどのメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事