• 作成日 : 2024年9月27日

金銭消費貸借契約(連帯債務)とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

金銭消費貸借契約書とは、お金の貸し借りについて定めた契約書です。複数の債務者が連帯してお金を借りる場合には、その旨を金銭消費貸借契約書に明記する必要があります。本記事では、連帯債務型の金銭消費貸借契約書の書き方やレビュー時のポイントなどを、条文の具体例を示しながら解説します。

金銭消費貸借契約(連帯債務)とは

金銭消費貸借契約書とは、貸主が借主に対してお金を貸し、借主がこれを借り入れる旨の合意を定めた契約書です。

多くの金銭消費貸借契約書では、借主は1人とされています。しかし、複数の借主が連帯して貸主からお金を借りることも可能です。その場合、連帯債務である旨を金銭消費貸借契約書に明記することが大切になります。

金銭消費貸借契約(連帯債務)を締結するケース

連帯債務型の金銭消費貸借契約書を締結するのは、複数の人が連帯してお金を借りる場合です。

事業に関する借金については、例えば中小企業とそのオーナー経営者が共同で事業用の資金を借り入れる場合などに、連帯債務型が選択されることがあります。

金銭消費貸借契約書(連帯債務)のひな形

連帯債務型の金銭消費貸借契約書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に連帯債務型の金銭消費貸借契約書を作成する際の参考としてください。

※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。

金銭消費貸借契約書(連帯債務)に記載すべき内容

連帯債務型の金銭消費貸借契約書には、主に以下の事項を記載します。

①借入日・借入金

②元本の返済・利息の支払い

③期限の利益喪失事由

④遅延損害金

⑤その他

借入日・借入金額

(例)

第1条

甲は、乙および丙に対し、本契約締結日において、金○○万円(以下「本貸付金」という。)を次条の条件で貸し付け、乙および丙はこれを連帯して借り入れる。

「甲」は債権者、「乙」と「丙」は連帯債務者を表しています。債権者が連帯債務者に対して金銭を貸し付ける旨、および連帯債務者がこれを連帯して借り入れる旨を明記しましょう。

借り入れに関する情報として、ここでは借入日と借入金額を記載しています。その他の詳細な条件については、別に条文を設けて定めています。

元本の返済・利息の支払い

(例)

第2条

本貸付金の弁済期は、令和○年○月○日とする。

2 本貸付金の利息(以下「本利息」という。)は、本貸付金の額に対し、年〇パーセントの割合によって計算するものとする。

3 乙および丙は、甲に対し、本条第1項の期限までに、本貸付金および本利息の全額を、持参または銀行振込の方法により連帯して返済する。返済に要する費用は、乙および丙の負担とする。

元本の返済および利息の支払いにつき、弁済期・利息の計算方法・支払方法などを定めます。債務者が連帯して元本と利息を支払う旨も明記しておきましょう。

上記は弁済期に元本を一括で返済するという条件ですが、分割払い(毎月払いなど)を定めることも考えられます。

なお貸付けの利息には、利息制限法の上限利率(下表)が適用されます。上限利率を超える利息の定めは、超過部分について無効となるのでご注意ください(同法1条)。

元本の額利息の上限利率
10万円未満年20%
10万円以上100万円未満年18%
100万円以上年15%

期限の利益喪失事由

(例)

第3条

乙および丙は、次の場合には、甲の催告を要せず当然に期限の利益を失い、甲に対して、本貸付金および本利息の全額、並びに第5条に定める遅延損害金を直ちに弁済する。

⑴ 乙若しくは丙のいずれかまたは双方につき、破産手続開始の申立てがなされたとき。

⑵ 乙若しくは丙のいずれかまたは双方が、その財産について差押若しくは仮差押を受け、または競売の申立てを受けたとき。

⑶ 乙若しくは丙のいずれかまたは双方が、公租公課の滞納処分を受けたとき。

・・・・・

「期限の利益喪失」とは、弁済期が到来していなくても、貸付金などの全額を直ちに返済する必要があることをいいます。

借主の信用不安が生じた場合には、貸主は直ちに債権回収を試みる必要があります。そのため、借主の信用不安につながる事由を、期限の利益喪失事由としてできる限り網羅的に列挙しましょう。

遅延損害金

(例)

第5条

乙および丙が、本契約に基づく債務の履行を遅滞したときまたは第3条に基づき期限の利益を喪失したときは、甲に対して、遅滞に陥った日または期限の利益を喪失した日の翌日から支払い済みまで、遅滞金額に対して年〇パーセントの割合による遅延損害金を支払うものとする。

遅延損害金とは、金銭の支払いに遅れた場合の損害賠償金です。貸付金や利息の支払いが弁済期に遅れたとき、または借主が期限の利益を喪失したときは、遅延損害金が発生する旨を明記しましょう。

なお、金銭消費貸借上の債務不履行による遅延損害金は、利息制限法の上限利率(下表)が適用されます。上限利率を超える遅延損害金の定めは、超過部分について無効となるのでご注意ください(同法4条、7条)。

元本の額遅延損害金の上限利率
10万円未満年29.2%
10万円以上100万円未満年26.28%
100万円以上年21.9%
営業的金銭消費貸借の場合元本の額にかかわらず、年20%

その他

上記のほか、連帯債務型の金銭消費貸借契約書には、以下の事項などを定めます。

  • 通知事項(住所の変更など)
  • 反社会的勢力の排除
  • 誠実協議
  • 合意管轄

    など

金銭消費貸借契約書(連帯債務)を作成する際の注意点

連帯債務型の金銭消費貸借契約書を作成する際には、特に連帯債務であることを明記することと、返済条件を明確化することが大切です。

連帯債務であることが明記されていないと、各債務者の返済義務の範囲が曖昧になり、トラブルの原因となるおそれがあります。借り入れや返済に関する規定において、連帯債務である旨を確実に記載しましょう。

返済条件については、弁済期、利息や遅延損害金の計算方法、返済方法、期限の利益喪失事由などが重要な事項です。これらの事項について、貸主と借主の間で漏れなく協議し、金銭消費貸借契約書に明記しましょう。

連帯保証と連帯債務の違い

複数の人が返済の責任を負うタイプの金銭消費貸借契約には、連帯債務型に加えて「連帯保証型」もあります。連帯保証とは、主たる債務者が債務を弁済しなかった場合に、代わりに債務を弁済する責任を負うことをいいます。

連帯保証と連帯債務の主な違いは、下表の通りです。

連帯保証連帯債務
債務不履行が生じていない段階における弁済義務者主たる債務者のみすべての連帯債務者
債務者等の間の内部的な負担割合主たる債務者が100%、連帯保証人が0%連帯債務者間の合意による

債務不履行が生じていない段階における弁済義務者

連帯保証と連帯債務の大きな違いは、債務不履行が生じていない段階において、誰が弁済義務を負うかという点です。

連帯保証の場合は、債務不履行が生じない限り、主たる債務者のみが債務を弁済する義務を負います。連帯保証人の弁済義務は、主たる債務者が債務不履行を起こした場合に初めて生じます。

これに対して連帯債務の場合は、債務不履行が生じていない段階から、すべての連帯債務者が債務を弁済する義務を負います。

なお債務不履行が生じた後は、連帯保証であっても、主たる債務者と連帯保証人の双方が債権者に対する弁済義務を負うことになります。

債務者等の間の内部的な負担割合

連帯保証の場合、主たる債務者と連帯保証人の間の内部的な負担割合は、主たる債務者が100%、連帯保証人が0%です。したがって、連帯保証人が債権者に対して弁済した場合には、その全額を主たる債務者に対して求償できます。

これに対して連帯債務の場合、連帯債務者間における内部的な負担割合は、その合意によって決まります。自己の負担割合を超えて債務を弁済した者は、他の連帯債務者に対して求償することが可能です。

金銭消費貸借契約に貼付する収入印紙

金銭消費貸借契約を書面で締結する場合には、契約金額に応じて下表の額の収入印紙を貼付する必要があります。

契約金額印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上10万円以下200円
10万円超50万円以下400円
50万円超100万円以下1,000円
100万円超500万円以下2,000円
500万円超1,000万円以下1万円
1,000万円超5,000万円以下2万円
5,000万円超1億円以下6万円
1億円超5億円以下10万円
5億円超10億円以下20万円
10億円超50億円以下40万円
50億円超60万円
契約金額の記載のないもの200円

所定の額の収入印紙を貼付しないと、税務調査で発見された際に過怠税が課されるほか、刑事罰の対象にもなり得るのでご注意ください。

これに対して、電子契約によって金銭消費貸借契約を締結する場合には、収入印紙の貼付は不要です。

連帯債務型の金銭消費貸借契約では、連帯債務である旨と借り入れの条件を明確化しましょう

連帯債務型の金銭消費貸借契約は、複数の債務者の誰に対しても返済を請求できる点で、債権者にとって安心感があります。連帯債務である旨と借り入れの条件を明確化して、貸主・借主間のトラブルを防ぎましょう。


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