• 更新日 : 2024年11月14日

電子契約の文書管理はどうする?ルールや一元管理の方法を解説

電子契約書を管理する際には、さまざまなルールがあります。企業の法務担当者としては、それらのルールを把握して適切に管理しなければなりません。

本記事では、電子契約の文書管理の要件や重要性、紙の契約書が混在する場合の注意点などについて解説します。

契約書類の文書管理はなぜ重要なのか

契約書類の文書管理は法律で定められています。契約書が関係する法律によって保管の義務期間が異なり、保管期間は会社法関連であれば10年、経理関連なら7年、人事・総務関連であれば2年~5年などです。

契約の効力が継続している間は契約書を捨てることは許されませんが、契約期限が経過後も保存期間が法律によって決められているため注意しましょう。

以下では、代表的な契約書類と保存期間についてまとめています。

保存期間契約書・文書
2年健康保険・厚生年金保険雇用保険に関する書類
3年労災保険に関する書類
労働保険の徴収・納付等の関係書類
派遣元管理台帳
4年雇用保険の被保険者に関する書類
5年会計監査報告
有価証券届出書等の写し
7年領収書などの証憑類
請求書、契約書、見積書など
源泉徴収簿(賃金台帳
10年帳簿(仕訳帳総勘定元帳他)
計算書類および附属明細書

では、なぜ契約書を適切に管理する必要があるのでしょうか?主な理由は次の2点です。

  • 法律上の義務を果たすため
  • リスクマネジメントのため

前述したように、法律によって契約文書の保管が義務付けられています。さらに、経営者にも内部統制の一環として「その職務の執行に関する情報を管理する義務」が課されています。

さらに、 適正なリスクマネジメントのためにも適切な保管が欠かせません。契約書は、想定されるトラブルにスムーズに対処できるように作成し締結しているため、いつでも契約上の権利義務を確認できるようにしておくことは重要です。

また、トラブルが発生した場合や普段の業務効率化のためには、契約書を適切に管理し効率的に運用できる体制を構築しておくことも求められます。法務の契約管理の実態をみると、Excelでの管理や紙の契約書のキャビネット・書庫での保存などが多いことが現状です。

過去の契約書についての確認を依頼された際に、すぐに取り出して提供できなければ効率的に運用できているとはいえません。管理方法がずさんな場合は、どこにどの契約書類があるのかわからない、探し出せないといったこともあり得るでしょう。

そういったリスクに備える意味でも、電子契約書への移行が進んでいます。次項では、電子契約における文書管理について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

電子契約の文書管理の要件

電子契約とは、インターネット等の情報通信技術を利用して、電子ファイルに電子署名やタイムスタンプなどの電子データを付与して締結する契約のことです。

電子契約では、契約書の作成から送信、締結といったすべてのプロセスをPCやタブレットなどを利用して電子的に完結できる点が紙の契約書との違いといえます。

ここでは、電子契約の基本的なルールについて解説します。

電子データのまま保存する

電子契約においては、2021年に改正された電子帳簿保存法において、電子取引で授受した契約書は電子データのまま保存することが義務付けられています。

電子帳簿保存法とは、紙媒体での保存が義務付けられていた国税関係帳簿書類を一定の要件を満たすことで電子化による保存を認める法律です。契約書も該当するため、電子データとしての保存が義務付けられています。

電子データのまま保存する必要があるのは、2022年1月以降にメールやクラウドサービスなどの電子取引で授受した契約書の電子データです。なお、2022年1月以降に電子取引でやり取りした契約書の電子データを紙に出力して保存することは認められていないため、注意しましょう。

保管期間と保存場所の義務化

電子契約のファイルは、次のように定められています。

保存義務:納税地において7年間

保存場所:書類が作成、受領された日本国内の納税地

自社では海外のサーバーを利用しているという場合もあるでしょう。サーバーが海外にあっても問題はありませんが、日本国内で閲覧可能な環境に置くことが求められます。

過去の電子契約書を検索できるようにする

電子契約においては、過去に締結した電子契約のデータを検索して閲覧できるようにしておく必要があります。次のうち、2つ以上の項目を組み合わせて検索できるシステムを利用しなければなりません。

  • 税務調査対象年度
  • 取引年月日
  • 取引金額
  • 取引相手

あわせて、日付・金額については範囲指定で検索できることも必須条件とされます。

見読性を確保する

電子契約のデータは、必要時に確実に見られる状態にしておくことが必要です。具体的な例としては、次のようなことが挙げられます。

  • パソコンなどのディスプレイで画面表示できる
  • プリントアウトした書面にて確認できる

なお、用いた機器に関する操作説明書も必要です。これらにしっかり対応したとしても、画像データの品質が悪くて文字が解読できないといった場合などには、見読性の確保は認められないため注意しましょう。

タイムスタンプが必要

電子契約においては、タイムスタンプが必要です。タイムスタンプは、電子化された契約書が刻印された時刻にたしかに存在していたことを証拠づける役割を持ちます。

タイムスタンプがないと、電子データが契約以降に改ざんされていないということが証明できません。そのため、タイムスタンプは第三者機関でなされる必要があります。

マニュアルを準備する

電子契約書の保存や紙の契約書を電子的に保存する場合には、マニュアルを必ず準備しなければなりません。前述した機器の操作方法が確認できるものに加えて、電子契約システムが自社開発の場合にはそれらの概要書や仕様書等も必要です。

セキュリティ対策を講じる

電子契約においては、次のようなセキュリティリスクを伴います。そのため、セキュリティ対策が必要です。

  • 改ざんリスク
  • 情報漏洩・破損リスク

契約書を電子化することによって、アクセスさえできれば誰でも文書の変更ができるため、改ざんされるリスクも上昇します。契約締結後に内容が書き換えられていたり、必要な項目が削除されたりといったことも想定されるでしょう。

また、システムのセキュリティ自体が脆弱だと、情報漏洩リスクやファイルの破損リスクも高まります。

これらのリスクを低減させるためには、ウイルス対策ソフトなどの導入以外に次のような対策を講じるとよいでしょう。

  • アクセス権限の設定
  • タイムスタンプの活用
  • 改訂履歴の徹底管理

契約書によって重要度が異なるため、必要な人間にだけアクセス権限を付与するような工夫が必要です。

また、前述したタイムスタンプの活用も効果的です。さらに、必要に応じて契約書の内容を修正・削除等することもあるでしょう。その場合、修正内容と修正者、修正時点の日時が記録されて残る仕組みがあると便利です。

紙の契約書をPDF化した場合の文書管理方法

契約済みの紙の契約書を電子化した場合の管理方法について解説します。

契約書の原本は残す

紙の契約書をPDF化して保存する場合には、契約書の原本を残しておく必要があります。これは、原本はあくまでも紙の契約書であるためです。また、裁判に発展した場合、PDF化した契約書は原本のコピーとして扱われる可能性があり、証拠として採用することが難しいことがあります。

たとえ契約書をPDF化したとしても、紙の契約書を保存する必要があることには変わりはありません。

電子帳簿保存法の要件を満たす

紙の契約書をPDF化する場合、法的な有効性が認められるためには電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。要件は、次の2つです。

  • 真実性の確保
  • 可視性の確保

真実性の確保とは、元の記録が改ざんされていないことが証明できる方法を確保しておくことを指します。たとえば、スキャナ保存であれば、契約書に関する業務にかかる期間(最長2ヶ月)を過ぎたあと、おおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与しなければなりません。もしくは、記録事項の入力を受領後、おおむね7営業日以内です。

可視性の確保とは、保存されたデータが検索・表示できる状態にあることです。帳簿とそれに関連する書類の関連性がわかるように保存しておく必要があります。さらに、検索機能の確保、要件を満たした見読可能装置の備え付けなども必要です。

電子契約と紙が混在する場合の文書管理のリスク

企業によっては、電子契約と紙が混在する場合もあるでしょう。ここでは、そのような状態における文書管理のリスクについて解説します。

電子帳簿保存法の要件を満たさないリスク

電子契約と紙の契約書が混在しており、 紙の契約書をPDF化して保存する場合には、前述したように真実性の確保と可視性の確保の要件を満たさなければなりません。

また、保管方法や期間も異なるため、作業も煩雑化します。電子化に統一すれば、契約書管理業務も効率化されるでしょう。

契約書の検索とアクセスの困難さ

電子契約においては、オンライン上に書類が保存されるため、契約書を検索して必要な契約書へアクセスすることが容易に行えます。

しかし、紙の契約書は取引先ごとにあいうえお順などで管理されていなければ、どこにあるかがわかりません。必要なタイミングですぐに確認できる体制を求めるためには、電子契約書への統一がおすすめです。

電子化では検索可能であることも要件であるため、契約書をPC上で簡単に探せて閲覧できます。

情報漏洩や紛失のリスク

紙ベースで契約書を保管している場合、探す際にはすべてが人の手で行うことになるため、ヒューマンエラーが発生しやすいものです。また、確認し終わったあとに適切な場所に戻さないと、次回以降探せなくなったり、紛失したり、情報漏洩につながったりするリスクが高まります。

電子化すれば、このようなリスクを低減させられます。

電子契約と紙の契約書を一元管理するには?

電子契約と紙の契約書を一元管理する方法としては、エクセル台帳での管理と電子契約システムによる管理の2つがあります。

エクセル台帳で管理する

エクセル台帳で管理する方法では、契約書に関する詳細な情報や重要な日付、契約期間などを台帳に記録することで、契約書に関連する情報を管理します。記録する主な情報には、次のようなものがあります。

  • 契約書名(契約類型)
  • 契約日
  • 取引先名
  • 担当者名
  • 契約期間
  • 契約金額
  • 更新時期
  • 契約内容
  • 契約書の保管場所

手軽に導入できるほか、エクセルの機能を使えば、見やすい表示や容易な情報検索が可能な点はメリットです。

しかし、複数人で同じファイルを使用するとデータの整合性が取れなくなったり、最新の情報が反映されなかったりする恐れがあります。また、一般的なオフィスソフトであるため不正アクセスや情報漏洩のリスクが高い点には注意が必要です。

電子契約システムを利用する

電子契約システムは、紙と電子の契約書を一元的に管理するための専用プラットフォームであるため、形式の異なる契約書でも管理できます。

紙の契約書では手作業で契約書を探す必要がありましたが、電子契約システムであれば、契約書の種類や期限、契約内容などの属性に基づいて、簡単に検索が可能です。また、セキュリティ面でも、セキュリティ対策が施されているため、エクセルでの管理に比べると安心感が高まります。

一元管理に最適な電子契約システムの選び方

ここからは、一元管理に最適な電子契約システムの選び方について解説します。

法的効果を満たしているか

電子契約の締結方法には2つあります。当事者間で電子契約を行う「立会人型」と、認証局が発行する電子証明書を利用する「当事者型」です。

それぞれで法的効果が異なるほか、メリット・デメリットがあるため、自社が求める電子契約システムに合致したシステムを選ぶようにしましょう。

既存システムと連携ができるか

自社ですでに導入している既存システムと連携できるかにも注目しましょう。既存システムと連携できれば導入ハードルを下げられるほか、新たに覚える作業なども少なくて済むため、安定運用までの時間を短縮できます。

自社が求める機能を有しているか

電子契約システムを選ぶ際には、自社がシステム導入で解決したい問題や課題、改善したい点などを満たせる機能を有しているかは重要なポイントです。まずは、自社が抱える業務課題を明確にし、それを解決できるシステムを探すとよいでしょう。

電子契約における文書管理には電子契約システムが有効

電子契約の文書管理においては、電子帳簿保存法に考慮して管理を行う必要があります。電子データのまま保存することやタイムスタンプの利用義務、マニュアルの準備などさまざまな要件を満たす必要があるため、法務担当者としては注意が必要です。

また、紙の契約書が混在する場合はさらに取り扱いが煩雑になることが予想されます。契約書管理業務を効率化するのであれば、電子契約システムの導入がおすすめです。

マネーフォワード クラウド契約であれば、電子契約に加えて紙の契約書も一元管理できます。マネーフォワード クラウド契約の詳細については、以下でをご確認ください。


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