- 更新日 : 2024年8月29日
社内規程の役割は?作り方や運用方法を解説
各企業にはさまざまな社内規程が存在しています。就業規則はその代表例であり、他にも各社が必要に応じて社内規程を設けています。この社内規程にはどのような役割があるのでしょうか。
当記事では社内規程について、作成方法や運用方法などを解説します。
目次
社内規程を定める目的
就業規則は社内規程の一種であり、常時10人以上の従業員を雇用する事業場では作成が義務付けられています。しかし「社内規程」と呼ばれるものの多くは法的に作成が義務付けられているわけではなく、各社が任意に作成をしています。法的義務がないにも関わらずなぜ社内規程を作成するのでしょうか。
その理由としては、まず「社内規程を使って組織の方針や考え方を形成・共有できる」ということが挙げられます。どの会社にも存在する定款はその最たるものですが、より具体性のあるルールや方針をまとめたものとして社内規程は機能します。
次に、「不確実性や曖昧さを減らせる」ことも挙げられます。職務遂行の手順を明らかにし、疑問を解消する上で、社内規程が役立つケースがあります。トラブルが起こったときの備えとしても役立ち、一貫した判断に基づく行動が起こしやすくなります。
そして「組織内での公平性を保つため」にも役立ちます。会社が出す命令、社内での措置、評価やペナルティに関するルールなどを社内規程として定めておくことで、公平さを維持しやすくなります。根拠に基づいて判断を下すことができるようになり、従業員としても受けた指示に対する納得感が得られます。
「コンプライアンスを強化する」ことも、社内規程の重要な役割です。法令で求められる水準を上回るルールを自らに課すことで、法令違反のリスクを抑えることができます。
社内規程の種類
社内規程の多くは作成が義務付けられているわけではありません。法的な定めがない以上、その名称やカバーする内容、範囲についても統一されているわけではありません。ただ、よくある社内規程もあります。その例を一部以下にまとめます。
社内規程の種類 | 概要 |
---|---|
取締役会規程 | 取締役会の運営方法や役員の役割、会議の手続、権限などを定めるもの。「取締役会規則」「取締役会議事規程」「取締役会運営規程」と呼ばれることもある。 |
株式取扱規程 | 株式の譲渡や取得、消却、分割、株主との関係管理等について定めるもの。 |
稟議規程 | 意思決定や承認、重要事項の決裁をするための手続を定めるもの。 |
旅費規程 | 出張や外勤時の交通費、宿泊費等の経費精算に関して定めるもの。「出張旅費規程」と呼ばれることもある。 |
給与規程 | 従業員の給与の計算方法、支給方法、賞与の条件など、給与に関する詳細を取りまとめたもの。「賃金規程」と呼ばれることもある。 |
人事規程 | 従業員の採用、評価、昇進、退職など人事に関する手続や基準を定めるもの。「人事管理規程」と呼ばれることもある。 |
育児・介護休業規程 | 育児や介護に伴う休業、短時間勤務、復帰に関する手続や条件を定めるもの。 |
経理規程 | 経理処理の基準や帳簿の取り扱い、決算等についての手続や基準を定めるもの。「会計処理規程」「会計規程」と呼ばれることもある。 |
文書管理規程 | 社内の文書作成、文書の保管、廃棄に関する手順や基準を定めるもの。「記録管理規程」「文書保管規程」と呼ばれることもある。 |
個人情報取扱規程 | 個人情報保護法に従った、個人情報の収集、利用、提供、管理等のルールをまとめたもの。「個人情報保護規程」「個人情報取扱方針」と呼ばれることもある。 |
コンプライアンス管理規程 | 法令遵守や企業の倫理規範についての方針、管理体制、教育等について定めたもの。 |
ハラスメント対策規程 | 健全な職場環境を維持するため、ハラスメントの定義や予防、ハラスメント発生後の対応などをまとめたもの。 |
社内規程の作り方
社内規程の一般的な作成手順は次のとおりです。
- 社内規程の作成目的を明確化する
何のために規程を作成するのか、その目的や背景を明確にして方向性を定め、効率的に作成ができるようにする。 - 情報の収集
関連する法令や業界の商慣習、当該社内規程の影響が及ぶ関係者など、情報を収集する。 - 草案の作成
集めた情報を基に社内規程の草案を作成する。その際、関係部署や専門家の意見も取り入れながらブラッシュアップしていく。 - 社内規程の制定を決定する
規程内容の最終確認を行い、取締役会決議などで決定する。 - 社内規程の周知
作成された社内規程の内容を、従業員に対して周知させる。特に関連の深い部署にはしっかりと説明し、必要に応じて研修を行い、質疑応答に対応する。 - 社内規程に基づく運用の開始
作成した社内規程に基づく実務運用を始める。運用開始後も定期的な見直しを実施する。従業員からのフィードバックを収集し、より良いものへと更新していく。
就業規則を作るときの注意点
就業規則に関しては、10人以上の従業員を常時雇用している事務所を対象に労働基準法で作成・届出の義務が規定されています。そのため就業規則を作成する際には、労働基準法の規定を遵守しなければなりません。
主に注意すべき点として、次の事柄が挙げられます。
- 記載しないといけない事項が決まっている
- 労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない
- 就業規則は労働基準監督署に提出しないといけない
- 減給の懲戒処分について制限がある
また、労働基準法に反した就業規則の規定は無効になります。
就業規則の概要や作り方について、詳しくは下記記事で紹介しています。
就業規則のひな形・テンプレート
就業規則の作成、見直しを行う際は、以下にひな形をご用意しておりますので、自社に合わせてカスタマイズしてご活用ください。
社内規程に法的拘束力はある?
社内規程は法令とは異なりますので、同じ「ルール」という枠組みとはいえ、社内規程に従わないことが直ちに違法とは限りません。ただ、社内規程は従業員の服務規律として労働契約の一部を構成するため、基本的に従業員は社内規程に従わなければなりません。その意味では、社内規程にも法的拘束力が認められます。
適正な手続を経て策定された社内規程に従わない場合、会社側が従業員に対して懲戒処分を行うことも可能です。しかし、懲戒処分を行うことが常に会社のためになるとも言い切れません。従業員とトラブルになり、社会的な評判を落としてしまう可能性があります。また、そもそも懲戒処分が懲戒権の濫用として無効となることもあります。
そこで懲戒処分に関してはより厳格なルール・条件を設け、実際に違反者が出たときには慎重に対応を検討する必要があるでしょう。
社内規程を適切に運用するには
社内規程の適切な運用にあたりまずポイントとなるのは、「周知を徹底すること」です。
すべての従業員が、社内規程をいつでも閲覧できる状態にしておきましょう。社内掲示板、社内システム上での共有など、やり方は自由です。
また、社内規程を定めても、その内容が実際に遵守されなければ意味がありません。研修等を実施して、従業員に社内規程の内容や意義を理解してもらうよう努めましょう。
また、実際に運用しながら見直す姿勢も重要です。社内規程を見直す時期としては、例えば次のようなタイミングが考えられます。
- 社会情勢に動きが生じたとき
- 社内規程に関連する法令の改正があったとき
- 企業の経営方針に変更があったとき
- 社内規程に違反する事案が発生したとき
- 従業員から見直しの要望があったとき
定期的に見直しも行いつつ、会社の実態に合った社内規程を適切に運用することを目指しましょう。
社内規程を変更する際の注意点
社内規程の変更が必要になったときの手順も、社内規程を作成するときの流れと大差はありません。変更内容に関して、法令の情報や社内の状況を把握し、変更案を作成しましょう。変更内容が確定したら、取締役会決議などによって決定し、従業員に周知した上で施行します。
社内規程を変更する際には、特に注意すべき点が2つあります。
1つは従業員の理解を得ることです。現場の実情や意向を踏まえずに、一方的に不合理な形で社内規程を変更すると、従業員に不満がたまるおそれがあります。現場の従業員と十分なコミュニケーションを取り、適切な変更内容を検討すべきでしょう。
また、ルールの変更前後で混乱が生じないようにすべきです。実務に直接影響を及ぼすような内容であれば、変更点に関して親切な情報提供を行いましょう。何が変更され、何は変わっていないのかを明確にすることが大切です。
社内規程を整備して適正な企業運営を目指そう
社内規程にはさまざまな種類があります。就業規則や給与規程の他、文書管理規程など企業独自の規定を設けることも可能です。
これら社内規程を適正に策定して運用することは、会社組織の強化に繋がります。社内規程を通じて組織の方針を共有し、詳細なルールを設定することで業務の曖昧さをなくし、企業内での公平性も保ちやすくなります。コンプライアンス強化の観点からも、社内規程を整備することは非常に効果的です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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