- 作成日 : 2023年11月24日
商標とは?登録のメリットや出願方法を解説
商標とは、自社の商品やサービスを他社のものから区別するために事業者が使用する文字・図形・記号・立体的形状・色彩・音などを指します。45種類の指定商品・指定役務から区分を選んで出願し、特許庁の審査で認められると商標権を取得できます。
この記事では商標の意味や機能、商標権取得のメリットや出願手続き、登録商標の検索方法などを解説します。
目次
商標とは
商標とは、自社の商品やサービスを他社のものから区別するために事業者が使用する、文字・図形・記号・立体的形状・色彩やこれらの結合、および音を指します。
商標の機能
商標には、自社の商品やサービスを他社のものから区別する機能があります(=識別力)。商標の識別力により、商標を見たユーザーなどは、ひと目で自社の商品やサービスを他社のものから区別できます。
識別力を前提として、商標は以下の3つの機能を発揮します。
①出所表示機能
商品やサービスの提供者を、ユーザーなどに対して表示する機能です。
②品質保証機能
同じ商標を使用した商品やサービスには、同等の品質があることを保証する機能です。
③宣伝広告機能
ユーザーに対して購買意欲を喚起する機能です。
商標の種類
商標には、以下の種類があります。
①文字商標
文字のみからなる商標です。
②図形商標
図形のみから構成される商標です。
③記号商標
暖簾記号、文字を図案化して組み合わせた記号、または記号的な紋章です。
④立体商標
立体的形状からなる商標です。
⑤統合商標
異なる意味合いを持つ文字と文字を組み合わせた商標や、文字・図形・記号・立体的形状のうち2つ以上を組み合わせた商標です。
⑥動き商標
文字や図形などが時間の経過に伴って変化する商標です。
⑦ホログラム商標
文字や図形などがホログラフィーその他の方法により変化する商標です。
⑧色彩のみからなる商標
単色または複数の色彩の組み合わせのみからなる商標です。
⑨音商標
音楽・音声・自然音などから成り、聴覚で認識される商標です。
⑩位置商標
図形などを商品などに付す位置が特定される商標です。
商標登録できないもの
商標登録は、拒絶事由がない場合に限って認められます(商標法16条)。
主な拒絶事由としては以下の各点が挙げられ(商標法15条)、これらのいずれかに該当する商標については商標登録を受けることができません。
①自己と他人の商品・役務を区別することができないもの(商標法3条)
(a)商品または役務の普通名称のみを表示する商標
(b)商品または役務について慣用されている商標
(c)単に商品の産地、販売地、品質等または役務の提供の場所、質等のみを表示する商標
(d)ありふれた氏または名称のみを表示する商標
(e)極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
(f)その他何人かの業務に係る商品または役務であるかを認識することができない商標
※上記(c)~(e)に該当しても、需要者が誰の業務に係る商品または役務であるかを認識できるものについては、商標登録を受けられます(同条2項)。
②公共の機関の標章と紛らわしいなど、公益性に反するもの(商標法4条1項1号~7号、9号、16号、18号)
(a)国旗・菊花紋章・勲章または外国の国旗と同一・類似の商標
(b)外国・国際機関の紋章・商標等のうち経済産業大臣が指定するもの、赤十字の名称・マークと同一・類似の商標等
(c)国・地方公共団体等を表示する著名な標章と同一・類似の商標
(d)公の秩序・善良な風俗を害するおそれがある商標
(e)商品の品質・サービスを誤認させるおそれのある商標
(f)博覧会の賞と同一・類似の商標
(g)商品・商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標
③他社の登録商標または周知・著名商標等と紛らわしいもの(商標法4条1項8号、10号~12号、14号、15号、17号、19号)
(a)他人の氏名・名称、著名な芸名・略称等を含む商標
(b)他人の広く認識されている商標(周知商標)と同一・類似の商標であって、同一・類似の商品・役務に使用するもの
(c)他人の登録商標と同一・類似の商標であって、指定商品・指定役務と同一・類似のもの
(d)他人の商品・役務と混同を生ずるおそれのある商標
(e)他人の周知商標と同一・類似であって、不正の目的により使用する商標
(f)他人の登録防護標章と同一の商標
(g)種苗法で登録された品種の名称と同一・類似の商標
(h)真正な産地を表示しないぶどう酒・蒸留酒の産地の表示を含む商標
商標権を取得するメリット
商標権を取得すると、登録商標の指定商品または指定役務について、他社が登録商標または同一・類似の商標を使用することを防げます。もし他社がこれらの商標を使用している場合は、差止めや損害賠償の請求が可能となります。
また、他社に登録商標の使用を許諾してライセンス料収入を得ることが可能となるほか、商品や企業のブランドイメージの向上も期待できます。
商標出願の手順・費用
商標出願は、特許庁に対して行います。商標の出願時には出願料、商標権の登録時と更新時には商標登録料が必要です。
商標出願の手順
商標出願の手順は、以下のとおりです。
①事前調査
すでに同一または類似の商標が出願されていないことを確認します。
②商標登録の出願
特許庁長官に対して願書を提出し、商標登録の出願を行います。
③特許庁による審査
特許庁の審査官が、拒絶事由があるかどうかをチェックします。拒絶事由があると思われる場合は、出願人に意見陳述の機会が与えられます。
④拒絶査定または登録査定
拒絶事由がある場合は拒絶査定、拒絶事由がない場合は登録査定が行われます。
⑤登録料の納付・設定登録
登録査定の送達を受けた日から30日以内に登録料を納付すると、商標権の設定登録が行われます。
商標登録の出願は、紙の書類のほかオンラインでも行うことができます。オンライン出願を行う際には、電子出願ソフトサポートサイトをご利用ください。
商標権の取得にかかる費用
商標の出願時には出願料、商標権の登録時と更新時には商標登録料がかかります。
出願料 | 3,400円+区分数×8,600円 |
---|---|
商標登録料 | ①登録時 区分数×3万2,900円 ②更新時 区分数×4万3,600円 |
商標を検索する方法
日本における登録商標は、「J-PlatPat」を通じて検索できます。商標出願の際には、事前調査を綿密に行いましょう。また、海外の商標を調査する必要がある場合は、現地法の専門家に相談しましょう。
参考:特許情報プラットフォーム|独立行政法人工業所有権情報・研修館J-PlatPat
商標と意匠の違いは?
商標は自社の商品やサービスを他社のものから識別するマークなどであるのに対して、意匠は物の「デザイン」を意味します。
意匠権は、商標権と同様に知的財産権の一つです。
ただし商標権とは異なり、意匠権については工業上利用できること(=同一のものを複数製造できること)が登録要件とされているほか、保護される行為にも違いがあります(商標権は「使用」、意匠権は「実施」)。
意匠権について、詳細は下記記事で解説しています。
商標登録によって自社商品・サービスの差別化を
商品名やロゴなどについて商標登録を受けると、自社の商品・サービスを他社から差別化できます。他社による模倣の防止やブランドイメージの向上に役立つので、必要に応じて商標登録の出願を検討すると良いでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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