• 作成日 : 2025年1月31日

役務とは?意味や読み方、役務提供型契約の注意点などを簡単に解説

役務提供とは、自分や自社以外のために労働することなど、相手にサービスを与えることをいいます。IT業界や建築業界など、業界によって役務の認識が異なる場合もあり、注意が必要です。本記事では、役務とはなにか、どのようなサービスを指すのかを解説します。読み方や英語の表記方法といった簡単なことから、契約締結における注意点などを確認しておきましょう。

役務とは

役務とは、他人や他社のために行う労働やサービスのことです。役務によって、相手に快適性や利便性を提供します。ここでは「役務」についての基本的な知識や、混同しやすい「商品」との違いなどを解説します。役務について基礎的なことから知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

  • 役務の読み方
  • 役務の意味
  • 役務(サービス)と商品の違い
  • 役務の英語表記

役務の読み方

「役務」の読み方は「えきむ」です。「役」を「やく」と読み間違える場合が多くあるため、注意しましょう。「役務提供」や「役務的保証」など、関連する言葉も全て「えきむ」と読みます。

「えき」と読むのは「役」の音読みです。「役(えき)」の読み方には、「労役」や「兵役」、「荷役」などもあり、労働や戦争に関連する言葉が多くあります。

役務の意味

役務とは、他者へサービスを提供するために行う労働などを指します。法律的には、売買契約での商品などの有形物の提供との対比としてサービス提供すること全般を「役務」と表現することが多いです。役務には、目に見えない価値を提供するものも多くあります。

たとえば、弁護士や税理士による依頼人への法的なサポートや、警備会社による他社の建物の警備などが当てはまります。一方で、自社が販売する商品を自社工場で製造したり、自分のために法務手続きを行ったりすることは、役務に該当しません。

ただし、役務が指す業務やサービスには幅広い捉え方や個々の認識があるため、役務かどうかは個別で判断する必要があります。

役務(サービス)と商品の違い

役務と商品の違いは、提供する価値や形状です。役務は清掃や警備などの労働や、法的な手続きといった、他者のために行う目に見えないサービスをいいます。一方で商品とは、食材や電子機器、車や不動産など有形の物品です。

役務と商品は混同して認識されやすい言葉ですが、内容の違いを理解することで正しく区分できます。商標登録においても、商品は「商品商標」に登録され、役務(サービス)が登録されるのは「役務商標」です。相手に提供するものの内容からどちらに区分されるのかを判断しましょう。

役務の英語表記

役務の英語表記は「service」です。役務は自分以外の人に対するサービスを意味しており、そのまま英語で表記します。

また、役務はサービスを提供するための「労働」を指すこともあるため、労働を意味する「labor」と表記することも可能です。ただし、「service」と比べるとあまり使用されることはないと考えてよいでしょう。

役務の使い方

「役務」は、業界によって使い方や認識が異なる場合があります。業務全般が役務に該当する業界もあれば、業務内容によって細かく区分している業界もあり、注意が必要です。ここでは、IT業界と建築業界における役務の使い方を解説します。役務を発注または受注するうえで、正しい使い方ができているか確認しておくとよいでしょう。

  • IT業界における役務とは
  • 建設業界における役務とは

IT業界における役務とは

人が行うサービスを役務とする業界が多いなかで、IT業界ではコンピューターなどといった電子機器による作業も役務に当てはまります。また、コンピューターなどに対してサービスを提供するケースもあります。

たとえば、クライアント企業のデータをコンピューターが解析したり、アプリケーションの誤作動を修復したりするようなサービスです。IT業界における、他業界と違った役務の使い方や特徴を理解しておきましょう。

建設業界における役務とは

建設業界の役務には、調査や製図、情報処理などのサービスが該当します。ただし、建物や物質を製造したり加工したりする作業は「建設工事」に区分され、役務には当てはまらないものとして表されることもあります。

物を加工する業務を「建設工事」、それ以外のサービス業務が「役務」と認識するのがよいでしょう。なお、請け負った役務の一部または全てを外部に委託する場合は、建設業法の規定に沿った対応が必要です。

役務提供とは

役務提供とは、個人や企業の労働によって役務を供給することです。譲渡や貸付、無償のサービスも含まれます。たとえば、飲食店が料理を配膳したり、運送会社が荷物を顧客に配送したりすることは、役務提供です。

また、専門的な知識や技能を持つ弁護士やスポーツ選手などによる、専門知識に基づいた本の執筆や講演会、コンサルティングなどのサービスも、役務提供に該当します。

参考:国税庁 役務の提供の具体例

役務提供型契約の種類

役務提供型契約とは、役務を依頼または提供するにあたって、発注者と受注者が締結する契約のことです。役務提供型契約には、以下のような種類があります。

  • 雇用契約
  • 請負契約
  • 委任(準委任)契約

ここでは、それぞれの契約について解説します。契約によって、働き方や報酬が発生するポイントが異なるため、違いを理解しておきましょう。

雇用契約

雇用契約とは、企業や組織と労働者が契約し、定められた業務を行うことで報酬が支払われる契約です。雇用契約には、正社員や契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態があります。

雇用契約を結ぶことで、企業や組織は労働者に対して労働場所や勤務時間、業務内容を指定することが可能です。労働者は定められた規定を守り、役務を行います。

労働者にとって雇用契約を結ぶメリットは、社会保険制度が適用されたり、労働基準法などの労働法規によって企業や組織の一方的な都合で解雇されることがなかったりすることです。

請負契約

請負契約とは、労働者が定められた期日までに成果物を納品することで報酬が発生する契約です。作業におけるプロセスは重視されず、成果物に対して報酬が発生します。たとえば、作業したものの依頼された製品が完成しなかった場合などは報酬が支払われないことになりかねません。

請負契約が交わされる役務には、ホームページの作成などといったWeb制作やイベント設営、建築などがあります。請負契約は、目に見える明確な成果物がある場合に用いられることが多いでしょう。

委任(準委任)契約

委任契約・準委任契約とは、業務を遂行することに対して報酬が支払われる契約のことです。法律行為を委託することを委任契約と呼び、法律行為ではない事務(業務)を委託することを準委任契約といいます。

たとえば、弁護士が裁判の弁護を引き受けたり、税理士が会計業務を任されたりするのは委任契約です。一方で、ECサイトの管理やピアノ講師によるレッスン、介護サービスなどでは契約書で「委任契約」となっていても、法律的には準委任契約に分類されます。ただ、委任契約と準委任契約は同じ民法が適用されますので、どちらかを厳密に区別する意義は乏しいです。

業務を遂行する契約となるため、弁護士が裁判に負けたり、管理を依頼されたECサイトの売れ行きが悪かったりしても、報酬が支払われます。

役務提供型契約を締結するときの注意点

役務提供型契約における注意点は、消費税が課税されることです。ただし、以下のサービスは非課税となります。

  • 信用の保証、保険、登記・検査・裁判などの公共サービスといった消費税の性格からみて課税対象とすることになじまない役務の提供
  • 一定の医療、教育といった社会政策的な配慮から課税することが適用でない役務の提供

契約内容の役務が課税対象かどうかを確認し、正しく手続きを行いましょう。

また、建設業法が適用される業務以外の役務において、請け負った役務提供を外部に委託する場合は、下請業者との資本金関係などによっては下請法、下請業者がフリーランスである場合にはフリーランス保護法が適用されることになります。下請法、フリーランス保護法では発注者には受注者に対する支払いや対応方法について禁止事項が設けられているため、各法について確認しておきましょう。

参考:国税庁 役務の提供の具体例

特定商取引法の対象となる特定継続的役務提供とは

特定継続的役務提供とは、特定商取引法の対象となるサービスを提供することです。消費者を守るために定められた特定商取引法には、以下の事業が対象になります。

  • エステティック
  • 美容医療
  • 語学教室
  • パソコン教室
  • 家庭教師
  • 学習塾
  • 結婚相談所

これらは契約が長期化することや、効果や利益を得るのに個人差があることなどから、消費者トラブルが発生しやすい業種です。そのため、クーリング・オフなど消費者を守る仕組みや、事業者に課せられるルールが定められています。

参考:特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供

役務とはなにかを理解して正しく契約しよう

役務とは、自分以外の人や企業に対してサービスを実施することです。役務を提供するにあたって、業務内容などに応じた役務提供型契約を結ぶ必要があります。円滑に役務を受発注するには、業界における役務の認識や役務提供型契約の種類を正しく理解することが大切です。役務の意味やサービス内容、注意点などを確認し、トラブルのない契約を交わしましょう。


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