- 更新日 : 2025年1月31日
データ解析業務委託契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
データ解析業務委託契約書とは、データ解析業務の受委託に関して、委託者と受託者の間で締結する契約書です。委託するデータ解析業務の内容や、報酬などの契約条件を定めます。本記事では、データ解析業務委託契約書の書き方や条文の具体例、レビュー時のポイントなどを解説します。

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目次
データ解析業務委託契約書とは
データ解析業務委託契約書とは、データ解析業務を委託する者(=委託者)と、その委託を受けて実際にデータ解析業務を行う者(=受託者)の間で締結する契約書です。業務委託契約書の一種に当たります。データ解析業務の受委託に関する契約条件を明確化して、委託者と受託者の間のトラブルを予防することがデータ解析業務委託契約書の主な目的です。
データ解析業務委託契約を締結するケース
データ解析業務委託契約書は、データ解析業務を外部委託したい委託者側のニーズと、同業務を受注して報酬を得たい受託者側のニーズが合致した場合に締結されます。
データ解析業務は、その内容にもよりますが、専門的な技術を要するケースが多いです。自社においてデータ解析を行う技術を持たない場合は、外部の専門業者に委託するニーズが生じます。この場合、委託者と受託者が報酬などの契約条件を交渉したうえで、データ解析業務委託契約を締結します。
データ解析業務委託契約書のひな形
データ解析業務委託契約書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際にデータ解析業務委託契約書を作成する際の参考にしてください。

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※ひな形の条項と本記事で紹介する条項は、異なる場合があります。
データ解析業務委託契約書に記載すべき内容
データ解析業務委託契約書に記載すべき主な事項は、以下の通りです。
②報酬
③成果物の納入・検収
④秘密保持
⑤再委託の可否
⑥契約の解除
⑦合意管轄
それぞれの項目を、具体例とともに詳しく見ていきましょう。
委託する業務の内容等
甲は乙に対し、甲が展開している○○事業に関するデータの解析業務(以下「本件業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
2 本件業務の内容は、甲が乙に提供する仕様書(以下「本件仕様書」という。)に従うものとする。
3 甲は、乙に対し、本件業務の遂行に必要な○○事業に関する資料を提供し、また、乙から協力を要請された場合には、適宜これに応ずるものとする。
委託者が受託者に対して、実際に委託するデータ解析業務の内容を定めます。「○○事業に関するデータの解析業務」などと概括的に記載するとともに、実施すべき具体的な解析業務の内容は、別途仕様書などで定めることが考えられます。
報酬
甲は乙に対し、本件業務遂行の報酬として、金○○円を支払う。
2 甲は、前項の金額を、第○条に規定した検査完了日の翌月〇日までに、乙の指定する金融機関の指定口座に振り込む方法で支払う。振込手数料は、甲の負担とする。
データ解析業務の報酬について定めます。金額またはその算出方法、支払期日、支払方法および振込手数料の負担者などを定めておきましょう。
成果物の納入・検収
乙は、令和〇年〇月〇日までに、本件仕様書所定の方法により本件業務の成果物(以下「本成果物」という。)を乙に引き渡す。
2 甲は、前項の引渡し後直ちに本成果物の内容を確認し、その結果を引渡し後〇日以内に乙に通知する。なお、当該期間内に甲からの通知がない場合は、本件業務は完了したものとみなす。
3 甲は、本成果物に不具合(以下「瑕疵」という。)があった場合、乙に対して当該瑕疵の修正を請求することができ、乙は、当該瑕疵を無償にて修正するものとする。ただし、瑕疵が軽微であって、本成果物の修正に過分の費用を要する場合はこの限りではない。
4 瑕疵が甲の提供した資料等又は甲の与えた指示等乙の責に帰することができない事由によって生じたときは、前項に基づく修正を要しない。
データ解析業務の成果物を受託者が委託者に納入する手続きと、納入物を委託者が検査(検収)する手続きについて定めます。成果物の納入に関しては納期や納入方法など、検収については検収期限や再納品(修正)の手続きなどを定めましょう。
秘密保持
乙は、本件業務の履行上知り得た甲の業務上及び技術上の一切の秘密情報を、第三者に開示又は漏洩してはならない。ただし、甲の承諾を得たときは、この限りでない。
2 乙は、成果物を他人に閲覧させ、複写させ、又は譲渡してはならない。ただし、甲の承諾を得たときは、この限りでない。
3 乙は、本件業務遂行のため甲から提供された資料等について、甲の指示により返却又は廃棄するものとする。
データ解析業務において取り扱うデータには、委託者の秘密情報が含まれるケースが多いです。そのため、データ解析業務委託契約書において、受託者の秘密保持義務を定めましょう。
再委託の可否
乙は、本件業務の全部又は一部を、甲の事前の同意を得ることなく第三者に再委託してはならない。
データ解析業務に関しては、取り扱うデータの秘密保持を徹底しなければなりません。そのため、再委託は委託者の承諾を得た場合に限定するのが一般的です。
契約の解除
甲は、乙が本契約の条項に違反した場合、又は次の各号の一に該当した場合には、催告を要することなく、書面、電子メール又は口頭による通知をもって、即時に本契約を解除できるものとする。
⑴ 乙が故意又は重大な過失により、甲に重大な損害を与えた場合、又は重大な損害を与える恐れがある場合。
⑵ 乙が本契約の締結又は本件業務の遂行に関して虚偽の事実を申告した場合
⑶ 乙が正当な理由なくして本契約に基づく義務の履行を怠った場合
……
データ解析業務に関して受託者が不適切な行為をした場合には、委託者が契約を解除できる旨を定めます。具体的な解除事由は、委託業務の内容などに応じて適宜調整します。
合意管轄
本契約に関する一切の法律上の紛争については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
契約書において専属的合意管轄裁判所を定めておけば、委託者と受託者の間で紛争が生じた際に、訴訟を提起する裁判所がそこに限定されます。予期せぬ場所で訴訟を戦わなければならない事態を避けるためにも、専属的合意管轄裁判所を定めておくのがよいでしょう。
データ解析業務委託契約書を作成する際の注意点
データ解析業務委託契約書を作成する際には、委託するデータ解析業務の内容を明確に特定することが大切です。受託者が納入すべき成果物の内容や、不具合等について対応すべき範囲などを、仕様書などにおいて明確に記載しましょう。
また、データ解析業務において取り扱うデータには、個人情報が含まれるケースもあります。その場合には、個人情報保護ガイドラインに沿ってデータを取り扱わなければなりません。
特に委託者は、受託者を適切に監督する必要があります。データ解析業務委託契約書において、受託者側が安全管理措置を講ずべき旨や、委託者が受託者側における個人データの取扱状況を合理的に把握できるような報告・検査のプロセスなどを定めましょう。
また、データが仮名加工情報や匿名加工情報に当たる場合は、その取り扱いについても個人情報保護ガイドラインに沿って行う必要があります。
参考:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)|個人情報保護委員会、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)|個人情報保護委員会
データ解析業務委託契約書は契約条件の明確化・情報管理の徹底を
データ解析業務委託契約書においては、報酬をはじめとする契約条件を明確に記載することが大切です。
また、秘密情報や個人情報が含まれるデータの解析を委託する際には、情報管理を徹底する必要があります。データ解析業務委託契約書において、秘密保持義務や個人情報保護ガイドラインに沿ったデータの取り扱いなどを定めておきましょう。
データ解析業務委託契約書を適切に作成すれば、委託者と受託者のトラブルを効果的に予防できますので、契約を締結する前の段階できちんと内容を確認しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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