• 更新日 : 2026年7月13日

民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)とは?わかりやすく解説

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Point民法717条のポイントまとめ

土地の工作物の設置・保存に瑕疵があるとまず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意を尽くしていたときは所有者が損害賠償責任を負います。占有者が免責されても所有者は無過失であっても責任を免れません。

  • 占有者は損害防止に必要な注意を尽くすことで免責される余地がある
  • 安全設備の欠如も工作物の瑕疵と判断されることがある
  • 自然災害でも、瑕疵と損害の因果関係が認められれば責任を負う

工作物の状態を定期的に確認し、瑕疵が生じた際はすみやかに対処することが重要です。

民法717条は、建物・道路・電柱といった土地の工作物の設置・保存に欠陥(瑕疵)があった場合に、占有者や所有者が損害賠償責任を負うと定めた規定です。占有者には免責の余地がある一方、所有者には過失の有無を問わない無過失責任が課される点が特徴で、土地や建物を所有・管理する方にとって理解しておくべき内容といえるでしょう。

民法717条(工作物等の占有者・所有者の責任)とは?

民法717条は、土地の工作物に起因する損害について、被害者が損害賠償請求をしやすくするため、占有者と所有者の責任を特別に定めた規定です。加害者(工作物の管理者)の特定や立証の負担を軽減し、被害者保護をはかる趣旨で設けられています。

民法717条1項の内容は?

民法717条1項は、土地の工作物の占有者が第一次的に損害賠償責任を負い、占有者が免責されたときは所有者が責任を負うという二段階の構成をとっています。

条文では次のとおり規定されています。

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

参考:民法|e-Gov 法令検索

同項本文は占有者の責任を、ただし書は所有者の責任を規定しており、被害者が損害賠償請求の相手方を特定しやすくする制度として機能しています。

民法717条2項の内容は?

民法717条2項は、竹や樹木の栽植・支持に瑕疵がある場合にも、1項と同様の損害賠償責任が生じることを規定しています。

「前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。」とのとおり、土地の工作物ではない植物についても工作物責任と同様の規律が及びます。敷地内の樹木が倒れて隣人の建物や車に損害を与えた場合なども対象となります。

民法717条3項の内容は?

民法717条3項は、損害の原因となる責任者が他にいる場合、賠償責任を果たした占有者または所有者がその者に対して求償権を行使できることを定めています。

たとえば、工事業者の施工不良が原因で建物に瑕疵が生じ、それによって第三者に損害が発生した場合、所有者がいったん被害者に賠償した後、施工業者に求償することができます。被害者の迅速な救済を確保しつつ、最終的な責任の帰属先を調整するための規定です。

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民法717条における工作物責任の成立要件は?

工作物責任が成立するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 損害の原因が「土地の工作物」であること
  2. 工作物に「設置又は保存の瑕疵」があること
  3. 瑕疵と損害の間に因果関係があること

「土地の工作物」の範囲は?

「土地の工作物」に該当するかどうかは、工作物と土地と接着し、人為的に設置された工作物であるかによって判断されます。

直接土地に接着している道路・石垣・電柱はもちろん、建物も土地の工作物に含まれます。さらに、建物に付着している屋根・看板・エスカレーターなども土地の工作物として扱われています。地面に直接触れていなくても、土地または建物と一体として機能するものは広く対象となりえます。ブロック塀や外壁なども対象となり、地震による倒壊で隣人や通行人に損害を与えた場合も工作物責任が問われるケースがあります。

「設置又は保存の瑕疵」とは?

「設置又は保存の瑕疵」とは、工作物がその種類に応じて通常備えているべき安全性を欠いている状態を指します。

設置時から欠陥があった場合だけでなく、維持・管理の過程で安全性が損なわれた場合も瑕疵に該当します。また、工作物そのものに物理的な欠陥がなくても、内在する危険性への対策が講じられていない場合や安全設備が不足している場合も、全体として瑕疵と評価されることがあります。

瑕疵と損害の因果関係は?

工作物責任が成立するには、工作物の瑕疵と生じた損害の間に相当因果関係が必要です。

生じた損害が「瑕疵があることによって」もたらされたものであることが求められます。自然災害など外部の要因が重なる場合には、工作物の瑕疵がその損害の発生に寄与したかどうかが慎重に判断されます。

民法717条の占有者と所有者の責任はどう違う?

民法717条では、占有者は損害の発生を防止するのに必要な注意を尽くしたことを立証すれば免責されますが、所有者には免責規定がなく、無過失であっても損害賠償責任を負います。

つまり、工作物の占有者が「十分な管理をしていた」と証明できた場合でも、所有者は責任を逃れることができません。建物や土地を保有しているだけで賠償リスクが生じうる点に注意が必要です。

なお、占有者と所有者が異なるケース(例:賃貸物件)では、まず占有者(賃借人)が免責されるかどうかが問われ、免責された場合に所有者(賃貸人)が責任を負う順序で処理されます。賠償責任の帰属が不明な場合は、弁護士への早期相談が適切な対応につながります。

自然災害が発生した場合の工作物責任の考え方は?

地震や台風などの不可抗力といえる自然災害が起因して損害が生じた場合でも、工作物責任が生じることがあります。

ただし、工作物に設置又は保存の瑕疵があり、かつその瑕疵と損害の間に因果関係が認められる場合に限られます。瑕疵がなく、純粋に自然災害の力だけで損害が発生した場合は責任を負いません。

たとえば、地震で建物が倒壊して第三者に損害が生じた場合、建物が耐震基準を満たしていないなどの瑕疵があり、かつその瑕疵が倒壊と損害に結びついているときは工作物責任が生じます。一方、すべての耐震基準を満たしていた建物がきわめて大規模な地震によって倒壊した場合は、瑕疵との因果関係が認められず免責される可能性があります。

自然災害の力と工作物の瑕疵が相まって被害が生じたといえるときは、占有者または所有者が損害賠償責任を負うことになります。

民法717条に関する主要な判例と実務上の解釈は?

工作物責任の適用をめぐっては、瑕疵をどのように認定するか、またいつの時点で安全性を評価するかが争点となることが多くあります。代表的な判例から、実務上おさえておくべき考え方を解説します。

保安設備の欠如と工作物の瑕疵(最判昭和46年4月23日)

踏切に必要な警報器が設置されていなかったことが工作物の瑕疵にあたると判断した事案で、保安設備の欠如が瑕疵となりうることを明らかにした判例です。

この判例では、踏切の軌道施設は保安設備と合わせて一体として考察すべきとされ、必要な保安設備がなければ民法717条1項の瑕疵に該当するとされました。行政指導の設置基準を満たしているかどうかは最低限の基準にすぎず、見通しの悪さや交通量、過去の接触事故件数など具体的な危険性に応じて個別に判断すべきとも示されています。

工作物そのものに物理的な欠陥がなくても、危険予防の対策や安全設備が不十分な場合には瑕疵と評価されうることがわかります。工作物の占有者・所有者には、工作物から生じうる危険を予見して対策を講じることが求められているといえるでしょう。

通常有すべき安全性の評価基準時(最判平成25年7月12日)

工作物が通常有すべき安全性を欠くかどうかは、瑕疵の判断時点における社会通念によって客観的に決まるとした判例で、後発的に瑕疵が生じる可能性を示しています。

この事案では、建設当時は危険性が指摘されていなかった石綿(アスベスト)の吹き付けが、その後の知見の蓄積や規制措置の導入により瑕疵と評価されるようになった経緯が問題となりました。裁判所は、建物の安全性に関する社会通念が変化した時点以降について、石綿と健康被害との間の因果関係を審理する必要があると判断しています。

設置時点では問題がなかった工作物も、社会情勢や科学的知見の変化によって瑕疵が後から生じる可能性があります。「以前から変わっていないから問題ない」という判断ではなく、現在の社会通念に照らして安全性を定期的に確認することが求められます。

民法717条の工作物責任のリスクを低減するポイントは?

工作物責任のリスクを低減するには、占有者・所有者それぞれが状況に応じた対策を講じることが重要です。

占有者にできることとしては、工作物の状態を日常的に点検し、劣化や欠陥のある箇所を早期に発見することが挙げられます。問題が見つかった場合はすみやかに修繕や立ち入り制限措置をとることで、損害発生を未然に防ぎます。万一損害が生じた際も、必要な注意を尽くしていたことを点検記録や修繕履歴として残しておくことで、免責される可能性を高められます。

所有者には免責規定がないため、より根本的な対策が必要です。工作物の設置時から安全性を担保した設計・施工を行い、その後も維持管理に関する契約や賠償責任保険の整備を検討するとよいでしょう。特に賃貸物件では、占有者である賃借人が適切な管理を行っているかを確認できる体制を整えておくことも重要です。

損害を受けた側は、工作物の占有者と所有者を特定したうえで損害賠償請求の相手方を確認しましょう。管理状況に応じて誰が賠償責任を負うかが変わるため、弁護士への相談など専門的なアドバイスを早期に受けることが適切な権利行使につながります。

民法717条の所有者・占有者の責任を正しく理解しよう

民法717条は、土地の工作物の設置・保存に瑕疵があった場合に、原則として占有者が責任を負い、占有者が必要な注意を尽くしていた場合には 所有者が損害賠償責任を負うと定めた規定です。占有者は必要な注意を尽くせば免責される余地がありますが、所有者には無過失責任が課されます。

瑕疵の有無は設置時だけでなく維持・管理の段階でも問われ、安全設備の欠如や社会通念の変化によって後発的に瑕疵が生じる場合もあります。自然災害が絡む場合でも、瑕疵と損害の因果関係があれば責任は免れません。

工作物の設置・保存に瑕疵が生じないよう日常的な管理を徹底し、問題があればすみやかに対処することが、リスクを低減するうえで最も重要な対策です。

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