- 作成日 : 2025年1月30日
撮影承諾書とは?例文や書き方、注意点をひな形つきで解説
撮影承諾書とは、写真や映像の撮影および使用を承諾する文書です。承諾する撮影の範囲や、撮影対象者の同意事項などを明確に記載しましょう。本記事では、撮影承諾書の書き方やレビュー時のポイントなどを、文言の具体例を示しながら解説します。
目次
撮影承諾書とは?
撮影承諾書(さつえいしょうだくしょ)とは、写真や映像を撮影することや、撮影した写真・映像を一定の目的のために使用することを承諾する文書です。被写体となる者、または撮影の対象となる施設などを管理している者が、撮影を行う者に対して提出します。
承諾がないまま撮影を行うと、被写体や施設管理者がプライバシー権や管理権の侵害などを主張し、トラブルに発展する恐れがあります。口頭で承諾を得ていたとしても、文書がなければ承諾があったことを証明するのは困難です。
そのため、他人や他人が管理している施設などを撮影する際には、必ず撮影承諾書を取得しましょう。
承諾書と同意書の間に違いはある?
「承諾書」と「同意書」は、実質的に同じです。
法令や契約によって「承諾」が必要とされている場合は「承諾書」、「同意」が必要とされている場合は「同意書」を締結するのが通例となっています。
撮影に関しては特に決まっていないので、「撮影承諾書」でも「撮影同意書」でも、どちらでも構いません。
撮影承諾書の提出を受けるべきケース
撮影承諾書の提出を受けるべきなのは、他人や他人が管理している施設などを撮影する場合です。撮影対象者などとのトラブルを防ぐため、撮影を行う前にあらかじめ撮影承諾書を提出してもらいましょう。
撮影承諾書の例文・ひな形
撮影承諾書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に撮影承諾書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
撮影承諾書の書き方
撮影承諾書には、主に以下の事項を記載します。
- 撮影に関する承諾
- 撮影を承諾する範囲(対象、場所、期間、日時など)
- 知的財産権や編集方法などに関する同意
- 個人情報の利用に関する同意
- 免責事項に関する同意
撮影に関する承諾
(例)
私(当社)は、下記の承諾範囲内において、貴社が写真及び映像を撮影すること、並びに当該写真または映像を、貴社が行う〇〇活動のために使用することを承諾します。また、当該撮影に関して、下記の同意事項及び免責事項に同意します。
写真や映像の撮影を承諾すること、および撮影した写真や映像を一定の目的のために使用することを明記します。撮影の具体的な条件については、承諾範囲・同意事項・免責事項などによって定めます。
撮影を承諾する範囲(対象、場所、期間、日時など)
- 撮影の対象:○○
- 撮影の場所:○○
- 撮影の期間:○年○月○日~○年○月○日
- 撮影の日時:月曜~金曜の午前9時~午後5時
撮影を承諾する条件として、対象・場所・期間・日時などを具体的に明記します。撮影をする側は、承諾範囲に記載された事項を遵守しなければなりません。
知的財産権や編集方法等に関する同意
- 私は、承諾範囲内で貴社が撮影した写真及び映像を、貴社が広告、SNS、Webサイトその他の媒体において使用若しくは利用し、または改変その他の翻案をしたうえで使用若しくは利用することに同意します。
- 私は、承諾範囲内で貴社が撮影した写真及び映像について、貴社に対し、肖像権、パブリシティ権、著作権、著作者人格権その他の知的財産権を行使しません。
- 私は、承諾範囲内で貴社が撮影した写真及び映像を、貴社が使用または利用するに当たり、事前の通知なしに説明文などの加筆または修正などがなされる場合があることに同意します。
撮影した写真や映像については、被写体の肖像権(人格権)やパブリシティ権が認められることがあります。また、写真や映像において被写体が表現行為をしている場合は、著作権・著作者人格権・著作隣接権などが発生することも想定されます。
撮影対象者からこれらの権利を行使されると、写真や映像の使用差し止めや損害賠償などを巡って深刻なトラブルが生じる恐れがあります。このようなトラブルの発生を防ぐため、撮影対象者が撮影者側に対して知的財産権を行使しない旨を明記しましょう。
個人情報の利用に関する同意
(4)私が貴社に対し提供する個人情報は、貴社のプライバシーポリシーに定める利用目的に従って利用されることに同意します。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たり、その利用目的をできる限り特定することが義務付けられています(個人情報保護法第17条第1項)。
また、本人との間で契約を締結するに当たり、契約書その他の書面に記載された本人の個人情報を取得する場合には、原則として、あらかじめ本人に対してその利用目的を明示しなければなりません(同法第21条第2項)。
上記の個人情報保護法の規定を踏まえて、撮影承諾書においても、個人情報の利用目的を明示したうえで、撮影対象者が同意する旨を明記しましょう。
個人情報の具体的な利用目的は、撮影承諾書において列挙するか、または別途公表しているプライバシーポリシーなどにおいて明示する方法が考えられます。
免責事項に関する同意
- 私は、貴社が撮影した写真及び映像については、使用されなかった場合でも異議を申し立てません。
- 私は、承諾範囲内で貴社が撮影した写真や映像の使用方法などに関し、貴社に対し、クレームまたは損害賠償請求その他の請求を一切行いません。
撮影した写真や映像の使用方法などを撮影者側に委ね、撮影対象者は一切異議を述べないことなどを明記しましょう。免責事項を定めることにより、撮影対象者からクレームなどを受けてトラブルに発展するリスクを抑えられます。
撮影承諾書の提出を受ける際の注意点
撮影対象者から撮影承諾書の提出を受ける際には、以下の点に注意しましょう。
- 免責事項の同意を受けても、撮影対象者の権利に最大限配慮する
- 撮影承諾書の内容は、撮影対象者に対して丁寧に説明する
- 作成者に署名や押印を求める
免責事項の同意を受けても、撮影対象者の権利に最大限配慮する
免責事項を定める場合でも、撮影者側は承諾範囲を遵守し、撮影対象者の人格権などに配慮したうえで撮影を行わなければなりません。あまりにも無遠慮な方法で撮影を行うと、撮影対象者に迷惑がかかり、トラブルのリスクが高まってしまうので要注意です。
撮影承諾書の内容は、撮影対象者に対して丁寧に説明する
撮影承諾書の内容については、読み合わせを行うなどして、撮影対象者に対して丁寧な説明を心がけましょう。撮影対象者との間で、承諾範囲や同意事項・免責事項などについて認識を共有することにより、トラブルの予防に繋がります。
作成者に署名や押印を求める
撮影承諾書には、撮影対象者に署名や押印をしてもらいましょう。撮影対象者が個人の場合は署名と押印の両方を行う「署名捺印」、法人の場合は記名のうえで押印を行う「記名押印」を求めるのが一般的です。
署名または押印がなされた文章は撮影承諾書に限らず、真正に成立したことが推定されます(民事訴訟法第228条第4項)。後に撮影対象者が偽造や改ざんを主張してきても、その合理的な根拠が示されない限り、撮影承諾書は有効なものとして取り扱われます。
署名や押印はトラブルの予防に繋がるので、紙で撮影承諾書の提出を受ける場合は必ず依頼しましょう。
撮影承諾書の保管年数や保管方法
撮影対象者から提出された撮影承諾書は、適切に保管する必要があります。
撮影対象者との間でトラブルが発生すると、撮影そのものや写真・映像の使用などに関して損害賠償を請求される可能性があります。不法行為の消滅時効期間を考慮すると、写真・映像の使用などを行ってから20年程度は、撮影承諾書を保管しておくことが望ましいでしょう。
撮影承諾書の保管に当たっては、紛失や改ざん、個人情報の漏えいなどのリスクを回避することも大切です。
紙の撮影承諾書は、鍵付きのキャビネットに保管し、その鍵を厳重に管理するようにしましょう。電子データで提出を受けた撮影承諾書は、そのデータへのアクセスを許可する人物を最小限の範囲に絞るため、アクセス権限やパスワードを適切に設定しましょう。
さらに、撮影対象者との間でトラブルが発生したケースに備えて、撮影承諾書をスムーズに準備できるようにすることも大切です。書類の種類や作成日時などに応じたファイルを作成する、システム上で保管場所を記録するなどの方法が考えられます。
撮影承諾書の電子化は可能?
撮影承諾書は、電子化することもできますが、電子データの形式では、撮影対象者の署名や押印を直接もらうことができません。撮影対象者本人が作成したことを証明できるように、撮影承諾書のデータには電子署名を行ってもらいましょう。
撮影承諾書に電子署名を付すメリットと方法
撮影承諾書のデータが撮影対象者本人によって作成されたことを証明するためには、「電子署名」を使用することが有効です。
適切に管理されたパスワードにより、本人しか行うことができない電子署名が行われていれば、その電子データは真正に成立したものと推定されます(電子署名法第3条)。万が一、撮影対象者から撮影承諾書データの偽造や改ざんを主張されても、合理的な証拠が提示されない限り、そのデータは有効と取り扱われます。
紙の撮影承諾書をスキャンして電子化するのはOK?
紙で提出してもらった撮影承諾書は、スキャンしてデータ化することも考えられます。
ただし、署名・押印がなされた撮影承諾書の原本は、スキャンした後でも破棄せず保管しておきましょう。スキャンデータは、電子署名が付されていない限り真正に成立したものと推定されないためです。
撮影対象者との間でトラブルが発生するケースに備えて、スキャンデータとともに、撮影承諾書の原本も確実に保存しておきましょう。
撮影対象者とのトラブルを予防するため、撮影承諾書の提出を受けましょう
他人や他人が管理する施設などを撮影する際には、事前に必ず撮影承諾書の提出を受けましょう。撮影対象者とのトラブルの予防に繋がります。
撮影承諾書には、承諾範囲・同意事項・免責事項などを具体的に明記しましょう。
撮影者側としては、撮影した写真や映像の使用などが制約されないように、できる限り幅広い裁量を確保することが望ましいです。ただし、撮影対象者の人格権やプライバシーなどには最大限配慮しなければなりません。
撮影対象者との間でよい関係性を保ちながら、円滑に撮影が進むように努めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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