- 更新日 : 2024年6月14日
売買契約書とは?わかりやすい書き方とひな形をご紹介
売買契約書とは、売主と買主の間で商品やサービス等の売買取引を行う際に作成する書類のことです。当事者間で合意した内容を書面にまとめることでトラブル防止する、またはトラブル発生時のリスクを最小限にとどめる役割を担っています。今回は、売買契約書のひな形を紹介するとともに書き方をわかりやすく解説します。
目次
売買契約書とは
売買契約書とは、売主と買主が売買契約を成立させる際に、当事者間で合意した内容を書面にまとめたものです。
実際は売買契約書を作成しなくても、口頭のみの約束で売買契約が成立します。そのため、売買契約書の作成自体に契約の効力が発生するわけではありません。民法522条では、契約の成立と方式について以下のように定められています。
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。引用:民法|e-GOV法令検索
売買契約書を作成する目的は、トラブルを未然に防ぐ、またはトラブル発生時のリスクを最小限にとどめることです。
例えば以下のような事態が発生した場合、口約束のみでは契約内容を証明できず、被害を受けた側が損をしてしまいます。
- 売主が商品を納品後、約束した期日に決済が行われない
- 買主が代金を前払いしたが、商品の引き渡しが実行されない
契約時に売買契約書を作成しておくことで、上記のようなトラブル発生時に契約内容を証拠として提示することができます。
当事者に責任がなくても、自然災害や火災などの不可抗力で損害が発生することもあるでしょう。売買契約書は、そのような場合に売主と買主のどちらが危険を負担し、どのように損害を填補するのかを明確にする役割も担っています。
売買契約書の種類
売買契約書には、不動産など高額な取引を行う際のもの、企業間や企業と個人間等で商品の売買を行う際のもの、企業間等で継続的な取引を行う際のものなど、さまざまな種類があります。
ここでは、以下の代表的な3種類の売買契約書について解説します。
- 不動産の売買を行う際の売買契約書
- 商品の売買を行う際の売買契約書
- 企業間等で継続的な売買の取引を行う際の売買契約書
不動産の売買を行う際の売買契約書
高額で取引される不動産の売買契約も、法的には口頭のみで成立します。
ただし、実際にはほとんどのケースで契約書を作成します。登記や住宅ローンの借入などの際は売買契約書が必要ですし、契約書がないとトラブルにつながるからです。
不動産売買契約では、権利関係や税金、建築など広範囲の専門知識が必要で、契約までの手続きも複雑です。そのため、買主と売主の認識の違いからトラブルになるケースが少なくありません。そのため、不動産の売買契約では売買契約書を作成するのが一般的です。不動産の売買を行う際の売買契約書のパターンは、取引内容によって異なります。よく作成される売買契約書は、以下のとおりです。
土地・建物に関する売買契約書
- 不動産売買契約書
- 土地建物売買契約書
- 土地売買契約書
- 土地売買予約契約書
- 農地売買契約書
- 建物売買契約書
- 区分所有建物売買契約書
借地権・抵当権付きの不動産に関する売買契約書
- 借地権付底地売買契約書
- 借地権付建物売買契約書
- 抵当権付売買契約書
商品の売買を行う際の売買契約書
商品の売買を行う際の売買契約書は、企業間だけでなく対個人用に作成されることも多いでしょう。商品の売買を行う際の売買契約書を作成する場合は、原則的に当事者が自由に契約内容を決定できます。
ただし、対象物を特定しやすい不動産とは異なり、一般的な商品は目的物の特定が難しい場合があります。そのためトラブル防止を目的として名称や製造番号、仕様などを記載し、当事者間で認識が一致するように目的物を明確にする必要があります。
以下は、商品の売買を行う際の売買契約書の例です。
- 商品売買契約書
- 物品売買契約書
企業間等で継続的な売買の取引を行う際の売買契約書
企業間等で継続的な売買の取引を行う場合、毎回同じような契約を締結するのは手間がかかるため、取引の共通事項について基本契約を締結するのは一般的です。基本契約の締結後は、基本契約の内容と異なる個別の取引についてのみ、個別契約を締結することができます。
基本契約とは別に個別契約を締結する場合、それぞれの記載が異なっていると、どちらの内容が適用されるのかをめぐってトラブルが生じるリスクがあります。当事者間で認識のずれが生じないように、どちらの契約が優先されるかを明確にしておくことも大切です。
以下は、企業間で継続的な売買の取引を行う際の売買契約書の一例です。
- 継続的商品取引基本契約書
売買契約書の書き方
ここからは、売買契約書に必要な項目やひな形を用いて、売買契約書の書き方を解説します。
売買契約書の項目
売買契約書では、当事者や売買の目的物、引き渡しや代金決済など売買契約に関する詳細を記載しなければなりません。売買契約書に記載する主な項目と内容は、以下のとおりです。
売主、買主がそれぞれ誰か、売買契約書である旨 | |
売買の目的となる物の商品名、個数 | |
代金の金額、支払期日、支払い方法(手形、銀行振込など) | |
買主へ引き渡す期日と場所、引き渡し場所までの運送費や引き渡し日までの保管費用を売主・買主どちらが支払うかの取り決め | |
売主から買主に所有権が移転する時期(引き渡しまたは決済時が一般的) | |
買主による目的物の検査方法、検査期間 | |
期日までに代金が支払われなかった場合や損害賠償を行う際に付加される遅延損害金の利率 | |
自然災害など当事者に責任がない事由で目的物が滅失した場合の代金の支払いに関する定め | |
商品に欠陥、不良があった場合の対応の定め | |
売主または買主が契約違反した場合に契約解除できる旨 | |
契約違反行為等により損害が生じた場合の損害賠償について | |
契約書に記載がない事案が生じた場合、話し合いで解決する旨 | |
トラブルが発生し、裁判になった際に、どこの裁判所で争うか |
売買契約書のテンプレート・ひな形
売買契約書は、前章の項目に沿って内容を記載します。項目の順番は前後しても問題ないので、当事者間で合意した内容にしたがって作成しましょう。基本的な売買契約書のひな形を紹介するので、テンプレートとして参考にしてください。
売買契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
売買契約書を作成する際の注意点
当事者間でのトラブルを防ぐために、売買契約書作成時に注意するべき点について解説します。
当事者間での公平性を保つ
売買契約書の内容がどちらか一方に不利になっている場合は、後にトラブルに発展するリスクがあります。
税金は売主と買主で公平に負担すべきですから、不動産の売買契約において引き渡し後の固定資産税は、買主が負担するのが一般的です。
ただし、固定資産税はその年の1月1日時点での所有者に課されるため、引き渡しのタイミングによっては、売却後の固定資産税の納税義務者が売主になることがあります。
このような場合は、引き渡し日を基準に売主と買主で年間の納税額を清算するのが一般的です。そのため、契約時に固定資産税の負担方法について取り決めておきます。定めておかないと、買主が税金を負担してくれないおそれがあるからです。
売買契約にかかる費用や税金などを誰がどのように負担するのか、公平性を保った上で売買契約書に明記しておくとトラブル防止に役立つでしょう。
契約不適合責任への対策を取っておく
売主の契約不適合責任について対策を取っておかないと、売主側が大きな責任を負うリスクがあります。契約不適合責任とは、売買取引の目的物について、納品時の検査を終えた後に品質不良、品物違い等が発覚した際、売主が買主に対して補償する責任のことです。
売買契約締結時の売主の責任は、2020年4月の民法改正によって、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変わっています。
改正前の瑕疵担保責任では、買主が購入時に知り得なかった「隠れた瑕疵」については売主の責任となっていました。
隠れた瑕疵とは、売買取引時点で買主が知り得なかった目的物の欠陥や不具合を指します。例えば、不動産の売買取引で言うと、シロアリ被害や雨漏りなどの建物内部の欠陥です。
そのような隠れた瑕疵に対して売主が責任を負うことを「瑕疵担保責任」と言います。
瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」という概念があったため、売買取引時点で買主が知っていた目的物の欠陥や不具合は隠れた瑕疵に当たらないとされていました。
しかし、改正後の契約不適合責任は、売買の目的物の種類や数量が契約内容に適合しない場合、売主が責任を負うというものです。そのため、買主が売買取引の時点で知っていた欠陥や不具合でも、契約書の記載内容と異なっていれば契約不適合責任の対象になり得ます。
特に、中古品や不動産など買主が一定の不備があることを知った上で購入する商品の取引では、「買主が知っていた不備について、売主は責任を負わない」旨を契約書に明記するといった対策が必要です。
条件の内容を具体的に明記する
売買契約の条件があいまいになっていると、当事者間で解釈の違いが生じ、後のトラブルの原因になります。
特に引き渡し、所有権の移転時期、支払い時期、支払い方法はトラブルが起こりやすい項目です。当事者間で詳細まで決めて、売買契約書に具体的に明記しておきましょう。
印紙税について
売買契約時に売買契約書を作成する場合、契約書の種類によっては印紙税がかかります。印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼付することで納める税金です。
以下の表は「不動産の売買を行う際の売買契約書」「企業間等で継続的な売買の取引を行う際の売買契約書」にかかる印紙税額をまとめたものです。
不動産の売買を行う際の売買契約書にかかる印紙税額
※不動産の譲渡に関する契約書のうち、令和4年3月31日までに作成された売買契約書は印紙税の軽減税率が適用されます。
※記載された契約金額が1万円未満の場合は非課税です。
企業間等で継続的な売買の取引を行う際の売買契約書にかかる印紙税額
【参考】国税庁 印紙税額
印紙税についての詳細は以下の記事で解説しているので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
電子契約なら売買契約書の印紙税が不要!
前述のとおり、一部の売買契約書を作成する場合は印紙税がかかります。
契約金額が大きくなりやすい不動産取引や、契約書を作成する機会が多い企業間取引では、売買契約時の税負担が大きくなるでしょう。
印紙税の負担軽減を検討している場合は、電子契約サービスによる売買契約書の作成をおすすめします。 マネーフォワード クラウド契約では、契約書の作成から決裁までワンストップで行うことができる上に、電子契約は印紙税が非課税です。
マネーフォワード クラウド契約なら進行状況の確認、保管・管理など売買契約の締結に関する機能が備わっているので、業務効率化にも大きく貢献します。
コスト・業務時間を削減するために、電子契約サービスのマネーフォワード クラウド契約の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
売買契約書とは?
売買契約を締結する際に当事者間で合意した内容をまとめた書類で、トラブル防止の役割を担います。詳しくはこちらをご覧ください。
売買契約書にはどんな種類がある?
不動産の売買を行う際のもの、商品の売買を行う際のもの、企業間等で継続的な取引を行う際のものなど、さまざまな種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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