• 作成日 : 2024年12月3日

契印とは?割印との違いや正しい押し方、失敗した時の注意点などを解説

契印とは、契約書など重要な文書が2枚以上の書面にわたる場合に、契約書が連続している1つの文書であることを証明するために押す印鑑のことです。契印は文書の綴り目、または継ぎ目にかけて押します。

この記事では契印の押し方のコツや、失敗してしまった際の対処法について詳しく解説します。

契印とは

契印(「ちぎりいん」または「けいいん」)とは、契約書などの文書が1件で複数のページになった場合に、文書の綴り目または継ぎ目にかけて押された印影のことです。契印を残すことにより契約書の連続性が証明でき、文書の紛失や差し替え・改ざんを防止できます。

契印の目的

契印の一番の目的は、文書の一体性を確認することです。契約書や重要書類が複数ページにまたがる場合、それぞれのページが1つのまとまりとして扱われることを契印で証明します。契印があることにより、契約書の差し替えや、ページ抜け落ちの見落としなどを防げます。逆に言えば、契印がなければ、契約書の信頼性を疑われる可能性があります。

契印に使用する印鑑

契印に使用する印鑑の種類には法的な規定はありません。一般的に個人が契印を行う場合には実印が使用され、法人(会社)が契印を行う場合には、会社の実印である法人印か代表社印が使用されるケースが多いです。

契印に使用する印鑑は、契約書の署名部分に捺印したものと同じ印鑑を使用するのが一般的です。

契印と割印の違い

契印とよく似たものに割印がありますが、契印と割印には明確な違いがあります。契印とは、1つの契約書が複数枚にわたる場合に、ページの連続性を証明するものです(下記画像の右側)。一方の割印は、原本と写しなど2部以上の契約書を作った場合に、各文書が同一の内容であることを証するために押されます(下記画像の左側)。

契印と割印の違い

公文書には契印が必要

公文書とは、国や地方公共団体の機関、または公務員が職務上作成した文書のことです。公文書における契印は公印とも呼ばれ、文書の信頼性を証明する重要な役割を果たします。国や地方自治体が一般の市民・事業者に対して発行する各種証明書や通知文書などにも、契印があります。

しかし、昨今ではデジタル化への対応と、事務の効率化に向けて押印自体が見直されつつあります。法令上発行が必要なものや、相手方の権利義務などに直接影響するものなど重要度の高い文書以外への契印を省略する取り組みが進められています。今後はさらにデジタル化が進み、契印が省略されることが考えられるでしょう。

一方、公文書ではありませんが、行政機関に提出する書類にも契印が必要となるものがあります。商業・法人登記の申請書やその添付書類など、法律で押印が義務付けられている書類については、提出書類が2枚以上の綴りになる場合に契印が必要です。

契印を押す位置や正しい押し方

契印には使用する印鑑の種類だけではなく、契約書の形状でも、押す位置や押し方が異なります。

以下で、契印を押す位置や正しい押し方について詳しく解説します。

ホチキス止めの場合

ホチキス止めの契約書に契印を押す場合は、すべてのページの見開き部分に、両ページにまたがる形で押します。

ただし、発起人が1人で定款を作成する場合など、契印の数が少ない場合は、前ページを真ん中あたりで縦に半分に折り、前ページの裏面と次のページの表面をまたぐように押印する方法もあります。この方法ではページに折り目がつきますが、契印の効果に問題はありません。

袋とじ製本されている場合

製本の契約書とは、複数枚の契約書をテープで綴じて本の形にした形式です。製本した契約書の場合、契印はすべてのページにではなく、表面か裏面のどちらかに押します。製本テープと契約書の境目をまたぐ位置に押すため、製本テープは白などの薄い色を選ぶようにすると、契印がはっきりと見えます。

A3用紙一枚刷りの場合は契印不要

通常、契約書に契印を押す場合は、開いたページの両方にかかるように押印するのが一般的です。これにより、左右のページが一体であることを示し、改ざんやページ差し替えを防ぐ効果があります。

ただし、A3サイズを2つ折りした一枚刷りの契約書の場合は、折れ目に契印をする必要はありません。契約書がA4サイズ4ページ以内に収まる場合に用いられる形式です。

契印をうまく押すためのポイント

契約書を見開きにした際に左右の段差が大きかった場合や、境界部分の印影がページをまたがっていない場合など、うまく押印ができないことがあります。契印はきれいに押されていることで、契約書の信頼性が高まり、取引相手にも良い印象を与えるため、丁寧に行うことが大切です。

ここでは、契印をうまく押すためのポイントについて解説します。

押印する用紙の高さを合わせる

契印をきれいに押すには、見開きにした際の左右のバランスをしっかりとそろえ、押す位置に段差ができないよう工夫することが重要です。厚紙などを使って段差の高さをそろえ、押印する箇所を平らに近づけることで、契印をきれいに残すことができます。

印鑑マットや捺印マットを使う

契印を押す際に印鑑マットや捺印マットを使用すると、紙に均等に陰影を残せます。ページの境目など段差が大きい箇所で契印を押す際には、マットがあると押しやすくなり、かすれやズレを防ぎやすくなります。

一般的な印鑑マットでもきれいに押せますが、中央部がやや盛り上がった形状のマットもあるので、活用してみてください。

契印に失敗した時の訂正方法

契印に失敗した場合は、失敗した印影から少しずらして、重ねて訂正印を押印します。その際、失敗した印影に二重線を引いて訂正する必要はありません。

訂正印を押印した後に、隣に契印を押し直します。この時に、修正テープや修正液を使った修正をしないでください。修正テープや修正液を使用して訂正すると、契約書の信ぴょう性が疑われたり、修正する前の記載内容がわからなくなったりするため、注意しましょう。

電子契約なら契印が不要に

電子契約を利用すると、契印が不要になります。

電子契約とは、契約の内容を紙の書類ではなく、インターネット上のデジタルプラットフォームを通じて締結する契約です。契約当事者は、電子署名や電子証明書を使って契約内容に同意します。

電子契約により、契約書の物理的な契印の必要がなく、すべての手続きがオンラインで完結します。契約書は紙の書面である義務はなく、電子化されたものも法的に有効となります。

電子契約書は製本などの作業や、契印が不要になるだけではなく、印紙代や郵送コストも削減可能です。

電子契約書を発行できるクラウドサービスにはさまざまな種類があります。

マネーフォワード クラウド契約であれば、契印の手間がなくなるだけではなく、契約書の一元管理が可能なため、契約書データの保管場所をすぐに確認できます。また契約書の社内申請から締結までをスムーズに行えるため、社内決裁にかかる時間の節約にもつながります。

契印の正しい使い方を身につけて契約締結を円滑に

契印は、契約書の形態によって押す位置が異なることがあります。法律上定められたルールはありませんが、一般的なビジネスマナーとして覚えておきましょう。また、契印をきれいに押すためのコツや、失敗した時の対処法も身につけておきたいところです。

とはいえ、昨今はデジタル化がどんどん進み、紙の契約書のあり方が多くの企業や団体で見直されています。契約書を電子化すると、契印は不要となります。また、契約書の電子化は業務の削減や作業フローの効率化なども期待されます。

この機会に、契約書を電子化するツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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