- 作成日 : 2024年11月13日
記事で読むいいださん×よしださんセミナーレポート「自分の強みを生かしたキャリア形成と自己実現」
法的人材不足が嘆かれる昨今。ひとりや少人数で法務業務を担う企業さまも多いと思います。そんな法務の現場で日々奮闘する若手法務担当者たちが、自分の強みを見つけ、それを生かしてキャリアを築くための具体的な方法や心がけを語るセミナーを開催いたしました。
ブログやSNSで積極的に法務業務について情報発信をし続けている“法務のいいださん”こと、LAPRAS株式会社 法務部門責任者の飯田裕子氏と、弊社マネーフォワードの法務コンプライアンス部リーダーである吉田成希が、法務パーソンとしてのキャリア形成や自己実現について対談し、これまでの経験から得た教訓や学びを共有しました。
普段より交流のある二人のかけ合いが大変好評だった本セミナーの内容を書き起こし、ダイジェスト版をお届けいたします。(書き起こしにあたり、内容を一部補完・改変しています。)
若手法務担当者の等身大のキャリアの悩みや、自己実現に向けた取り組みについて知りたい方にとって、貴重なヒントになれば幸いです。
ぜひ肩の力を抜いて、リラックスしながらご一読ください。
※レポート内話し手の表記は「いいださん・よしださん」で表記させていただきます。
◾️本セミナーのアーカイブ配信では全講演内容、当日のセミナー中に受けた質問への回答もご視聴いただけます。ぜひこちらからご視聴ください!
目次
法務担当者の日常の心がけ・リアルな悩み
まずはお二人のことを知ってもらうべく、自己紹介や日常の心がけ、社内での取り組みから伺いました。
いいださん:
私はベンチャー企業で一人で法務を担当しています。具体的にどのくらいの範囲を一人でやってるかというと、契約書審査から事業側からの相談対応、新規事業の法務的な連携で株主総会の対応で契約書類の管理、あと商標の管理までを他部署と連携しつつも、一人で担当するというのが私の役割です。
よしださん:
商標までやってたんですね。知財まで幅を広げているのはさすがだなと思いました。
私は法務内でリーダーのポジションで、数名のチームを運営しています。プレイングマネージャー的に働いていて、主に、法人向けのクラウドサービス事業の法務の担当をしています。その他株主総会事務局、取締役会事務局、下請法等のコンプライアンスの対応をしています。
普段業務で心がけてたり、大事にしていること
幅広く業務を対応されているお二人が普段業務で心がけてたり、大事にされてることはどんなことなのでしょうか。
いいださん:
業務で大事にしていることは二点あります。一点目は期待値の調整を頑張ること、二点目がユーザー満足度を大事にすることです。
一点目に関しては、やはりひとり法務なので、リソースに限界はあるけど、やらなきゃいけないことが多いです。その際に、依頼者や経営層がイメージしているものと、自分の成果物とか動き方にズレが出てしまうとそれだけで無駄になってしまいますよね。ズレが出ないように期待値をちゃんと揃えてから動くというのは、心がけています。
二点目のユーザー満足度に関してですが、私にとっての「ユーザー」は1に当社で働くメンバー、2に法人としての弊社、そして3が弊社のお客様です。それぞれの満足度があると思うのですが、すべての満足度が高くなるような法務にしたいというのが私の目標なので、この3つの満足度が高く、いい感じの三角形になるように意識しています。
よしださん:
大事にしていることってあげ始めたらきりがないなと思っています。なので、「吉田って、普段何を大事にしてそう?」ってメンバーに聞いてみたんですよ。そうしたら、「吉田さん、どの案件でも圧倒的に自分ごと化してますよ!あと圧倒的スピードです」って言われて。いや、確かにこの二つめっちゃ大事にしているなと思いました。
“圧倒的自分ごと化”という点では、相手の立場に立ったら今どうしてほしいんだろうかというところを考えることをすごく大事にしています。会社の従業員の一人なので、事業部がクライアントではなくて、会社がクライアントです、みたいな法務の話って、よくあるかなと思ってるんですけど、両方クライアントだなと私は思っていて。両方の視点を行ったり来たりして、自分がこの会社の社員の一人として、目の前の案件を進めようと思ったらどうする?みたいなところは結構考えてます。
スピードに関しては、法務はどうしてもコスト部門と言われてしまったりするので、法務がボールを止めてしまうことはないようにしたいと思っています。そのため、なるべく早く返すように心がけています。具体的には、5分で返せる案件は絶対にその場で返信してしまうようにしています。
これはしないように気をつけていること
よしださん :
「これって法務の仕事ですか?」って、できるだけ言わないようにしていますね。
「別に法務だろうがなんだろうが、会社のひとつの部門としてやってるんだから、越権行為にならない範囲で、どの部門が担当してもよいのでは?」という話はメンバーにも伝えるようにしています。あとは、法的なNGです!とだけ言って、何も代替案を出さない、みたいなのはやめていますね。できるだけ代替案を出すようにしているし、出せないときは、自分では思いつかなかったので、一緒に考えさせてくださいというようなコミュニケーションをしてます。
いいださん :
私は少し違う視点なのですが、ひとり法務って社内に法務が一人しかいないので、自分が言ったことが正解になってしまうのが結構難しくて。誰も間違いを指摘してくれないんですよね。
なので、そういう意味で、「裸の王様」や「井の中の蛙」にならないようにすることを結構気をつけています。
社外に出ていく動きやコミュニティをやってるのも、自分が裸の王様になるのが怖いからで。とにかく他社の人と交流して情報を入れて、必要なインプットや勉強もして、会社にとって必要な法務の役割をひとりでも果たせるように頑張る、といった部分は結構気にしていますね。
法務スキルの継続的な向上方法
普段から法務スキルを身につけるために努力していることは?
いいださん:
努力って難しいですよね。「こんな努力してます」って言うと、ちょっと恥ずかしいんですけど、私はとにかくいろんな人に会う、情報を集めるということをしています。その人たちからの情報があればなんとかなると思っていますし、とにかく自分のところに情報をきちんと集めるという意識で、いろんな本を読んだり、いろんな人にも会ったり、仲間を集めたりしています。
それからSNSとかで発信していると、キラキラしたイベントばっかりやってる人って思われがちなんですけど、土日のどちらか一日は勉強をしていて、勉強会をやったり、最近だと会社法の条文を一から全部素読し直しています。そういう地味な努力も怠らないようにしたいなと思っていますね。
あと、最近コーチングを受け始めて、自分がどうなりたいか、そのために今何をすべきかをちゃんと言語化して、一ヶ月間の目標に向かって走ること、PDCAを回すことをこの数ヶ月やっています。コーチングのおかげで、単なる努力ではなく、正しい努力になってるなと感じています。
よしださん:
私は、結構目の前で“努力”っていうとなかなか難しいなと思うんで、翌週の自分を助けるために週末勉強しよう、みたいな意識を持っています。来週あたりこの件で個人情報のやばい相談が来るんじゃないかと思ったら、基礎的な薄い本を読んだ後、重めの分厚い本を一、二冊調べておくみたいな勉強の仕方をしています。
その次の週は取締役会の運営について、会社法の勉強をし直しておこうとか、そういう感じでインプットすることが多いですかね。条文の素読は久しくやってないので、飯田さんの話を聞いて今やらないといけないなって思いました。(笑)
法務業務の生産性向上のためにしていること
一人や兼務をする法務担当者が多い法務業界、忙しい法務業務をやっていく上で、業務の生産性を上げるためにリーガルテックを導入している企業も多いですが、お二人はどのように生産性をあげていますか?
いいださん:
実はリーガルテックのツールは結構入れています。一人じゃ回らないので(笑)。電子契約も入れていますし、契約書審査にはリセさんの「LeCHECK」をずっと使っています。
「LeCHECK」で特によく使うのは文書比較機能です。契約書審査の際に、細かい修正が入って来たりお客様側から契約書を振り出ししたいという依頼が多かったりすると、受け取ったものが前のバージョンと変わっていないかという比較業務が1日繰り返し発生します。「LeCHECK」を使うことでその分の時間短縮になっていますね。
それ以外のツールとしては、下請法やフリーランス新法などの対応が大変なので、業務委託の発注管理のツールも入れてもらっています。あとはナレッジマネジメントのためのドキュメントツールも使っています。
よしださん:
色々使ってますね。羨ましい。弊社の場合は、電子契約や契約書の管理には自社の「マネーフォワード クラウド契約」という電子契約や契約書の保存・管理をワンストップで行うことができるツールを使ったり、あとSlackのワークフロー機能を使ってタスク管理ツールとを連携させて対応してやっています。
あとは、最近流行ってる法律専門家向け文書エディタも使っていますね。業務量管理からドキュメンテーションや、稟議の効率化を意識して幅広く利用しています。
ちなみに、「マネーフォワード クラウド契約」は、プロダクトフィードバックもやっていて、現場の法務担当から意見を言えるっていうのが楽しくて。法務担当者にとってより便利で使い勝手がいいツールにしていかなあかんなみたいな感じで思って頑張っています。製品開発に関われるのも法務としての知見を活かせるのでキャリアとしても結構やりがいに感じています。
目指せキャリアアップ!自分の道を切り開くための戦略立て
よしださん:
はい、目指せキャリアアップ、というところで、私たちの考えていることをお話させていただきます。皆さんそれぞれにあったキャリアを見つけるための参考にしていただきたい、という前提でお話をできればなと思います。
今までのキャリアを振り返って想像通りに進んでいますか?
よしださん:
私はもともと街弁になりたくて、小学校の頃の卒業文集に「弁護士になります」と書きました。今、企業内法務をやってる時点で全然想像通りに行ってないのですが、自分のキャリアを意識し始めたタイミングが大学院ロースクールの時代や司法試験が終わった後の就職活動の時期に、インハウスロイヤーっていう道を考え始めました。
プレイングマネージャーという意味だと、これぐらいの年齢で、プレイングマネージャーになってたいな、メンバー持ってたいなみたいなところは思っていたので、そういう意味では少しずつ思っていた通りになってきたかもしれないなと。
なりたい、やってみたいという想いを言語化して、言葉にしていたので、そのおかげで少しは想像通りに進められてきているかなと思っています。
いいださん:
そうですね。“想像通り”という言葉はすごく難しいのですが、結論から言うと、「法律と物書き、文章を書くことでご飯を食べていきたい」とはずっと思ってたので、そういう意味だと今は本当に法律と物書きでご飯が食べれていて、いろんな人と友達になれてて、かなり幸せに働いているので、想像していたよりうまくいったなと思っています。
ただ、過程としては正直、こんな凸凹すると思っていませんでした。弁護士資格がない方は多分共感いただけると思うのですが、新卒の就活の時は何になろうとかではなくて、どこに入れるかという感じでの選択でした。法務になりたかったけど、最初は法務になれず、「法律でご飯を食べていく」ってルートが私はそこで一回閉ざされているので、なんとかして法務になりたいけど、どうしたらいいんだろう?とずっと試行錯誤をしてきました。
最初から大企業の法務部に入って、ずっと法務で着々とステップアップしていく戦略を立ててたはずが、全然違う方向でぐるっと回り道をして、今法務をやっているというのはありますね。
でも、計画的偶発性理論みたいなもので、最初からこう決めた道を歩くのではなくて、その時起こったところでベストを尽くした結果、キャリアができていく流れも、私はいいなと思っています。なので、全力尽くした結果、今ここにいられることは幸せだけども、その過程が全然想像通りじゃないなと思っています。
この先のキャリアはどんな風に考えていますか?
いいださん:
私はひとり法務なので、今の会社からポンと転職するということは今のところは考えていません。今の会社をベンチャーからちゃんと成長させることに全力でコミットしたいなと思っています。そのためには一定期間はひとり法務で自走する必要があるので、並行して法務のコミュニティや、自分のイベントなど社外活動もしています。そういう活動と社内の自分の法務としての業務は、相互にいい影響を及ぼすので、いい影響の循環でどんどん仕事もできるようになるし、社外でもいろんな人と仲良くなれる状態を作り出すということを、これからも目指したいなと思ってます。
最終的にどういう人になりたいかは、もう少し遠い視点で行くと、私はビジネスマンとして強い人になるというところに憧れがあります。何をやらせてもこの人だったらうまくいくよねみたいな、いわゆる会社のエース社員みたいな人になりたいです。その上で、エース社員が法務をやってるって格好良くないですか?(笑)まずはビジネスマンとしてすごく強くなりたい。何でもできるようになりたい。そして売り上げもそうだし、バックオフィスだけじゃなくて、事業のポジションもできるようになりたいです。その上でやはり好きな法務を武器にして生きていけたらいいなっていうことを考えてます。
よしださん:
今までずっとジェネラルカウンセルとかCLOのような役職にこだわったようなことを考えていたのですが、もうちょっと柔らかく考えようかなと思っていて、最近は自分のチームをちゃんと持って、仲間も集められる人にまずはなりたいなと思っています。
そのために最近リファラルを積極的に頑張ってみたり、外部イベントに顔出してみたり、法務界隈の方と飲みに行ったりして、つながりを大切に生きていけると楽しいのかなと思っています。
あと信頼できる仲間と一緒に仕事していて、相互にありがとうと思えような働き方はすごく幸せだなと感じています。仲間やチームを作れる力であったりとか、自分のブランディングがきちんとされて、私の言ってることやったら信じてみよう、って思ってもらえるようなキャリア形成や人格を形成していきたいということはずっと考えています。その先に法務責任者になっていけるといいなと感じています。
私も強いビジネスマンに憧れがあるので、法務のCLOではなくGCになりたいなっていうのも、何でも相談乗れる人になりたいなと感じているからです。
最後にひとこと
いいださん:
さきほど吉田さんも言っていましたが、我々が決して同世代の最先端を行ってるわけでも、理想のキャリアを歩んでいるわけでもないので、他の法務の人は脳内こんな感じなんだなと思っていただいけたらと思います。
私も今聞いてくれている法務の皆さんの話もすごく聞きたいなって思ってるので、今後とも仲間としてぜひ切磋琢磨していけたらなと思ってます。ありがとうございました。
よしださん:
私も一言だけ、今日強みのお話も結構軸にと思ってたんですけど、話していて、2人ともやっぱり発信するところや、仲間と一緒に頑張るところは強みだなと思っています。
私も飯田さんも自分に合ったやり方を見つけられたから、こうやって頑張れてるのかなって、苦労や辛さがあまりない中で頑張れてるのかなと思ってます。
自分に合ったやり方・自分に合ったスタイルを身につけてもらえるとキャリアが開かれていくと思います。ぜひぜひ一緒に皆さんと色々なお話をしながら、私もキャリア形成していきたいと思っています。
よしださん ・いいださん:
本日はありがとうございました!
最後まで読んでくださりありがとうございました。法務ご担当者様のキャリアや業務に活かせるヒントがありましたら幸いです。
またセミナーの中でも言及がありましたが、少人数で多忙な法務の方は、リーガルテックツールを導入して業務の生産性向上を図ることも大切です!
弊社吉田も開発に携わっている「マネーフォワード クラウド契約」では、生産性の向上だけでなく、ひとつのツールで契約業務を一元管理することで、情報が集約され、証跡の管理もでき、コンプライアンスの強化にも繋がります。
ぜひこの機会にお問い合わせください!
本セミナーのアーカイブ配信では全講演内容、当日のセミナー中に受けた質問への回答もご視聴いただけます。ぜひこちらからご視聴ください!
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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