• 作成日 : 2025年1月31日

委託とは?意味や委任・請負との違いなどを簡単にわかりやすく解説

「委託」は、特定の業務や行為を第三者に任せることです。特に、専門性の高い業務を外部に依頼する際は、委託する側と受託する側が締結する業務委託契約が重要な役割を果たします。

この記事では、委託の定義や他の類似した概念、業務委託契約で注意するべきポイントについて解説します。

委託とは

「委託」は、個人間やビジネスの取引において、特定の業務や行為を第三者に任せることであり、効率性や品質の向上を目的として頻繁に利用される方法です。

しかし、委託が具体的に何を意味し、どのような同義語が用いられるかを理解しておかなければ、適切に活用できません。

ここでは、委託の定義や同じ意味として用いられる用語について解説します。

委託の意味

「委託」とは、契約の一形態を示す言葉で、特定の業務や役割を第三者に任せることです。企業が業務委託をする場合、作業効率が高められるだけでなく、外部の専門的な知識や技術によって品質の向上も期待できます。委託を利用する際は、依頼者(委託者)と受託者(委託を受ける者)の間で契約を結び、業務の内容や範囲、期限、報酬などを明確にすることが重要です。

委託の言い換え

委託は、個人やビジネスを問わず多くのシーンで用いられ、その呼び方もさまざまです。例えば、人件費の削減や専門技術の活用を目的とした「外注」や、コア業務への集中や外部の高い専門性を活用するための戦略「アウトソーシング」も、委託と同じ意味をもちます。また、使用場所や状況によっては「委任」「準委任」「請負」といった言葉も用いられ、いずれもなんらかの行為を第三者に依頼する手法です。

委託の英語表記

委託と同じ意味合いをもつ英語表記には、「Contract of Delegation(委託契約)」「Entrustment Agreement(委託契約書)」「Outsourcing Agreement(業務委託契約書)」などがあります。海外ビジネスにおいても、委託は効率化とコスト削減に有効なため、グローバル展開を考えるなら押さえておくべき言葉です。

また、委託先や利用シーンによって表現が異なる場合もあり、「Delegation Contract(委任契約)」「Service Agreement(サービス契約)」「Agency Agreement(代理店契約)」といった表記も用いられます。

委託と委任の違い

「委任」は、委託と類似した概念をもちますが、一般的に考えられている委託とは定義や権限、扱われる契約書が異なります。法的な定義としては、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力が生じる契約のことを委任といいます(民法643条)。

委任契約の具体例としては、企業が法的手続きを弁護士に依頼する場合や、税理士に決算処理を任せる場合、司法書士に書類作成を依頼する場合などが挙げられます。

受任者(弁護士等)は法律行為の権限をもちますが、その結果に対して責任を負うのは委任者側(企業等)です。また、委任は必ずしも完成義務があるわけではなく、履行された業務(履行割合型)もしくはその結果(成果完成型)のいずれかに対して報酬が発生します。

なお、委任を含めた業務委託契約では、業務委託契約書の作成は必須ではありません(民法522条)。しかし、業務範囲や期間、報酬、禁止事項などを明確にしなければ、後々のトラブルにつながる可能性があります。そのため、委任契約の際は、具体的な取り決め内容を委任契約書に記載し、民法644条に定められた「善管注意義務」(善良な管理者の注意義務)とあわせて書面に残すことが一般的です。

<委任契約のポイント>

  • 特定の法律行為や意思決定を第三者に依頼すること
  • 法律行為を行う権限は受任者(弁護士等)が保有する
  • 依頼内容には、履行割合型と成果完成型の2つがある
  • 業務範囲や期間、報酬、禁止事項、善管注意義務などを記載した委任契約書を作成する

委託と準委任の違い

2つ目の類似した言葉として「準委任」があり、こちらも委託契約の1つです。準委任は、民法656条によって「法律行為でない事務の委託」と定義されており、具体的には以下のような業務が該当します。

  • コンサルタントによる経営改善
  • プロジェクト管理の依頼
  • システムの設計、及び運営
  • 広告代理店への企画、実施依頼
  • 事務、コールセンター業務の依頼

準委任は、受任者に対して業務遂行の権限が与えられますが、その結果に対して全面的な責任を負うのは委任者であることが通常です。報酬の対象は労務の提供または労務提供の成果となるため、委任者は業務が完了しなくても報酬を支払う義務があります。また、委任契約と同じく、契約書の作成義務はありませんが、業務の透明性やコミュニケーションの円滑化を図る上で委任契約書の取り交わしは重要です。

<準委任契約のポイント>

  • 法律行為ではない事務を第三者に依頼すること
  • 業務遂行の権限は受任者(委託先)が保有する
  • 依頼内容には、履行割合型と成果完成型の2つがある
  • 業務範囲や期間、報酬、禁止事項、善管注意義務などを記載した委任契約書を作成する

委託と請負の違い

「請負」も委託契約の1つですが、委任や準委任とは定義が異なります。請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束することによって、その効力を生ずる契約です(民法632条)。

請負契約の具体的な使用例としては、主に以下のような業務が挙げられます。

  • 工事の請負契約
  • コンテンツ制作
  • ソフトウェア開発
  • デザイン制作

請負契約の大きな特徴は、仕事の完成を目的としている点です。例えば、ビル建設や工事、デザイン制作といった業務の場合は、その結果に焦点が当てられているため、完成しなければ報酬が発生しません。また、業務を依頼された請負人は、完成までの工程や作業方法が全面的に任せられ、成果物の品質や納期について責任を負います。

請負契約で注意したいのが、成果物に伴う契約不適合責任(瑕疵担保責任)です。契約不適合責任とは、引き渡された目的物が契約内容に適合しないものであるときは、依頼人は請負人に対して履行の追完(契約内容の不備を補い、仕事を完了させること)を請求できることを意味します(民法562条、559条)。

この責任は請負契約書に記載がなくても効力を発揮するため、請負側の企業は注意が必要です。

<請負契約のポイント>

  • 仕事の完成を目的として請負人に業務を依頼すること
  • 請負人は、業務遂行の工程や方法、成果物に関わるすべての責任を負う
  • 請負人は、成果物に対して契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負う

業務委託契約を締結するときの注意点

業務委託契約の締結では、業務委託契約書の作成が重要です。契約内容や条件やその他の詳細なルールを明記することで、認識のズレや誤解によるさまざまなトラブルを回避できます。

その際、重要な確認事項として挙げられるのが、以下の項目です。

  • 契約内容
  • 納品物・納品期限
  • 報酬
  • 契約解除の要件
  • 再委託について

特に、契約内容は、「委任」「準委任」「請負」のどれに属するのかによって、適用される法律やルールが変わります。報酬面でも、具体的な金額や計算方法、支払時期、支払方法、業務の遂行にかかる費用の負担などを記載することで、双方が同じ認識で契約を進められます。

また、お互いの不利益を避けるためにも、どのような場合に業務委託契約を解除できるかの記載が必要です。

業務委託契約についてはこちらの記事もご参考ください。

参考:業務委託契約を締結する際の注意点は?特にチェックすべき項目を紹介

委託の意味を理解し、適切な業務委託契約でトラブル回避

委託を適切に活用するためには、その定義や言い換えの言葉、他の類似した概念について理解を深めることが重要です。本記事で紹介した契約類型の違いを知ることで、法的なリスクを回避し、適切な委託契約を締結できます。

その際、注意したいのが業務委託契約書の締結です。業務委託契約書では、契約内容や納品物・納品期限、報酬、契約解除の要件、再委託に関わる取り決めが記載され、その他の詳細なルールも明確化されます。これらを事前に確認することで、契約者間の認識が同じものとなり、委託契約におけるトラブルを未然に防げます。


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