• 作成日 : 2024年11月27日

派遣契約とは?業務委託との違いや3年ルールについて解説

派遣契約とは、派遣会社に雇用される労働者を別企業で労働させる形式の契約です。通常の雇用契約とは異なる法律によって契約をする必要があります。

今回は、派遣契約の基本的な説明をした上で、業務委託や準委任契約との違い、中途解除の条件や契約を続ける上で重要となる3年ルールについて、わかりやすく説明をします。

派遣契約とは?

派遣契約とは、派遣会社に雇用される労働者を、業務を依頼された企業に派遣して労働させる契約です。

派遣される労働者は派遣元会社に雇用されており、派遣先である企業との雇用契約は発生しません。派遣先会社は労働者に対して指示命令権のみをもっており、給与の支払い義務や社会保険の加入義務は派遣元に帰属しています。

派遣契約により企業は、雇用関係を結ばずに必要なスキルや労働力を柔軟に獲得できます。

派遣契約の仕組み

派遣契約の基本的な仕組みは、依頼企業(派遣先)と派遣元会社の間の契約にもとづいて、派遣社員が業務を行う形です。

派遣先は労働者から労務の提供を受ける代わりに派遣元に派遣料金を支払い、派遣元は、派遣料金の中から派遣社員へ賃金を支払います。

派遣社員の交通費や社会保険料も派遣元会社が支払うため、派遣料金はそれらの金額も含まれて計算されます。

派遣社員は派遣先の指示を受けて業務に従事しますが、雇用関係はあくまで派遣元会社との間にあります。

派遣契約と業務委託の違い

派遣契約と業務委託の主な違いは、指揮命令権の所在や成果物の提出が求められるかどうかなどの点です。

業務委託契約では、委託先に業務を依頼し、委託先は自己の裁量で業務を遂行します。業務のやり方に関して、委託企業が指示や命令をすることは認められていません。

派遣契約は派遣先会社に労働者に対する指示命令権があるため、その点が異なります。

さらに、業務委託は完成された成果物に対して報酬が支払われることが多いのに対し、派遣契約では労働時間や業務内容にもとづいて報酬が決まることが一般的です。

派遣契約と準委任契約の違い

派遣契約と準委任契約の主な違いは、指揮命令権の所在です。

準委任契約は、当事者の一方が法律行為以外の事務行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる契約です。

業務委託と同様に、業務のやり方に関して、委任をした企業が指示や命令をすることは認められていないため、派遣先に指揮命令権のある派遣契約とは異なります。

一方、成果物については、準委任契約では必ずしも成果物を提出する必要はないことになっているため、そこは業務委託と異なる点です。

派遣契約に関連する法律は?

派遣契約に関連する主な法律として、労働者派遣法と労働契約法が挙げられます。

労働者派遣法により派遣契約の適正な運営が守られ、労働契約法により労働者が不当な扱いを受けないようルールが決められています。

労働者派遣法

労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣社員の保護などを図り、派遣社員の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とした法律です。

この法律により、派遣元と派遣先の責任や義務が明確化され、派遣社員が安定した雇用環境のもとで働けるためのルールが決められています。

労働者派遣法は、世の中の働き方への価値観の変化や働き方の多様化のニーズに対応するために、数回の改正が実施されています。直近の2020年改正後の労働者派遣法の詳細は以下のページをご覧ください。

労働契約法

労働契約法は、労働者と事業主の間の労働契約に関する基礎的なルールを提供する法律です。この法律では、労働契約の締結、履行および終了の際に守るべきルールを定めており、それにより労働者の保護と適正な雇用関係の維持が図られています。

派遣契約においては、派遣社員と派遣元会社との間に雇用関係があるため、労働契約法が適用されます。

派遣社員の労働条件が不当に低くなることを、労働契約法が防ぐ役割をはたしています。

派遣契約の流れは?

派遣契約を締結する際には、派遣元会社と派遣先会社との間でいくつかのステップを踏む必要があります。

これにより、法令に遵守した契約を行うことが可能となり、派遣業務の円滑な実施を確保できるのです。以下では、基本的な流れをご紹介します。

基本契約を締結する

はじめに、派遣元会社と派遣先会社との間で基本契約を締結します。

基本契約とは、派遣元会社と派遣先会社の間で締結する派遣契約において、原則的なルールを決めて明文化した契約です。

具体的には、派遣料金や禁止事項、損害賠償、契約解除事項などが含まれます。

基本契約の締結は、労働者派遣法の義務とはなっていませんが、基本契約を結ぶことにより事業者間で円滑かつ継続的な派遣契約を結ぶことができるようになります。

事業所抵触日を通知する

事業所抵触日とは、1つの事業所が派遣社員を受け入れられる最長期間の制限を超えて、取り決めに抵触する日をいいます。つまり、派遣社員の受入開始から3年間を経過した日の翌日が抵触日となります。

事務所抵触日は派遣先会社の管理下にあり、派遣元会社や派遣社員が変わってもリセットされないため、派遣元会社にはわかりません。そのため、派遣先会社が派遣元会社に対して、派遣契約をする時に通知する義務があります。

※事務所抵触日は、派遣先企業が派遣社員の継続的な受け入れを希望する場合には延長することもできます。

個別契約を締結する

個別契約は、派遣社員ごとに具体的な業務内容や労働条件を定めて締結する契約です。労働者派遣法により、作成することが義務付けられています。

基本契約にもとづき、派遣先会社と派遣元会社の間でそれぞれの派遣就労に関する詳細な条件を決定します。記載内容は労働者派遣法26条に定められており、業務内容や派遣日、就業時間、休憩などが必要です。

個別契約は、派遣社員の労働環境に関して詳細を記載することで、派遣社員を保護することを目的としています。

派遣先管理台帳を作成・保管する

派遣先管理台帳は、派遣先企業が派遣社員の労働状況を管理し、必要な情報を記録するために作成する書類です。

この台帳には、派遣社員の氏名、就労日、就業時間、業務内容などを記載します。作成した台帳は、労働者派遣法第42条にもとづき派遣終了から3年間は保管することが必要です。

派遣先管理台帳に記載された内容の一部は、派遣元会社へ報告をする必要があります。これにより、派遣元会社でも適正な雇用管理ができるようになります。

派遣契約に必要な契約書は?

派遣契約においては、複数の契約書を適切に作成・締結し、それらを基礎として業務を遂行することが求められます。これにより、法的なトラブルを防ぎ、円滑な業務運営が可能になります。

基本契約書

基本契約書は、派遣元会社と派遣先企業との間で長期的な契約関係を築くための枠組みを決めるための文書です。

法律上で決められた記載項目はありませんが、一般的に、会社間での派遣契約に関する事項や派遣社員の労働に関する基本的な事項が記載されます。

基本契約書を作成することで、会社間の契約に対する認識を統一し、その後の個別契約をスムーズに進められます。

基本契約書のテンプレートは以下のページから無料でダウンロードが可能です。

個別契約書

個別契約書は、派遣先に派遣される労働者ごとに締結される、実際に行う業務の詳細を記した文書です。

基本契約書で定めた枠組みにもとづき、各派遣社員に対する個別の具体的な労働に関する情報を記載します。個別契約書には、派遣社員の業務内容や派遣日、就業時間、休憩などの詳細が記載されます。

個別契約書により、労働者に対する派遣労働の詳細に対する認識を、派遣先会社と派遣元会社で一致させることができます。

派遣契約の3年ルールとは?

派遣契約に関して、労働者派遣法では「3年ルール」と呼ばれる期間制限を設けています。労働者の雇用の安定を図り、長期間の不安定な働き方を防ぐための規定であり、事業所単位と個別単位の2種類が存在します。

派遣先の事業所単位の期間制限

派遣先の事業所単位の期間制限とは、同一の事業所が派遣社員を受け入れられる最長期間が3年間である制限規定を指します。

前述「事業所抵触日を通知する」で触れた3年間の制限期間は、この事業所単位の制限のことです。

この制限により、派遣先企業は原則として同じ事業所における派遣社員の受入期間を3年以内に抑えなければなりません。この制限には、臨時的で不安定な雇用が長期間継続することを抑制する目的があります。

ただし、3年を超えて派遣を継続したい場合、派遣先はその事業所の過半数労働組合などに対して意見聴取をして理解を得ることで、3年を超えて派遣社員を受け入れることも可能です。

派遣社員の個人単位の期間制限

派遣社員の個人単位の期間制限とは、派遣先の同一の組織単位において、同一の派遣社員を受け入れられる最長期間が3年間であるという制限規定を指します。

同一組織とは、同じ企業の同じ部署や課のことを指します。同一の企業内であっても部署や課が異なる場合には、3年を超えて派遣社員を受け入れることも可能です。

同一組織で3年を超えて労働をしてほしい場合には、該当の派遣社員を直接雇用するなどの措置を講じる必要があります。

この制限には、派遣社員が不安定な立場で長期間、同一の業務に携わることを防ぐのが目的です。また、派遣先企業にとっては、適切な人材を自社の社員として登用することや安定した労働力の確保を検討する機会となります。

派遣契約の中途解約はできる?

派遣契約は原則として中途解約が認められません。しかし、やむを得ない事情がある場合には、一定の条件を満たすことにより中途で解約ができます。

派遣先会社が派遣契約を中途解約する場合の条件は以下の通りです。

  • 契約解除の事前申し入れ
  • 派遣先における就業機会の確保
  • 上記の就業機会の確保ができない場合、相当額以上の損害賠償の支払い(相当の損害賠償とは、派遣社員が働くことができない期間に派遣元会社が労働者に対して支払う休業手当相当額、派遣元が労働者を解雇とする場合に支払う解雇予告手当相当額などを指します)
  • 派遣元と協議の上で適切な善後処理方策を講じること
  • 契約解除理由の明示(派遣元からの請求があった場合)

派遣契約の中途解約は、派遣元会社との信頼関係を損ね、派遣社員の雇用の安定を害する行為となります。

基本的には行うことのないように、派遣社員の雇用の安定を図りましょう。

派遣契約に関する注意点は?

派遣契約を行う場合、派遣先となる会社では派遣元会社・派遣社員・派遣先会社自身それぞれに対して注意しなければならない事項があります。

以下に、注意すべき点をいくつか紹介します。

派遣元会社に対する注意点

派遣元会社に対しては以下の点で注意が必要です。

派遣許可を受けている派遣会社であること

無許可の派遣会社との派遣契約は違法となるため注意が必要です。

適切な派遣契約の締結であること

双方で法律を理解して契約を締結する必要があります。

禁止業務に対する派遣ではないこと

法律により派遣が禁止されている業務ではないことを確認しましょう。

派遣社員に対する注意点

派遣社員に対する注意点は以下の通りです。

派遣される労働者に対して事前面接を行っていないこと

派遣先会社による事前面接は法律により禁止されています。

同一企業内の派遣社員以外の労働者と均一な待遇をすること

自社の従業員のみを優遇するなどの扱いは違法となります。

派遣される労働者が派遣先会社を離職して1年以内の労働者ではないこと

離職1年以内の労働者を派遣として受け入れることは違法となります。

派遣先会社自身の注意点

派遣先会社自らのことで注意すべき内容は以下の通りです。

事業所単位・個人単位の期間制限を理解していること

派遣労働者を受け入れる際は事業所単位・個人単位の期間制限を守る必要があります。

派遣先責任者の選任をしていること

派遣社員の管理や労働環境の確保を担う派遣先責任者の選任が法律上必須です。

派遣先管理台帳を作成していること

派遣労働者の管理をするための台帳を作成することは派遣先会社の義務です。

派遣契約を締結する際は、関連する法令を確認しながら、以上の点に注意して進めることが重要です。

派遣契約はルールを守って適切に運用を

派遣契約は、企業のフレキシブルな労働力の確保と、労働者の柔軟な働き方という、現代社会のニーズに適応した労使のマッチング手段です。

しかし、3年ルールや中途解除の条件など、通常の雇用契約とは異なり、派遣契約には特有の法律に則したルールが多く存在します。誤った認識をしていると違法となる可能性もあるため、注意が必要です。

ルールを理解して適切な契約を結ぶことで、企業と労働者の双方にとって最大限に派遣契約のメリットを享受することが可能となります。

派遣契約を検討する際は、ぜひ参考にしてください。


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