• 作成日 : 2024年12月24日

健康診断同意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

企業が従業員を対象に健康診断を実施するときは、従業員から健康診断同意書を取り付けなければなりません。従業員に同意してもらう内容は、健康診断結果の利用目的や情報提供先です。

本記事では、健康診断同意書について解説します。同意書のひな形や記載すべき内容、注意点のほか、健康診断の実施義務や検査項目についても紹介します。

健康診断同意書とは

健康診断同意書とは、健康診断結果の利用目的や情報提供先について企業が従業員の同意を取り付けるために使用するものです。健康診断結果は個人情報の中でもとくに慎重な取り扱いが求められる情報(センシティブ情報、個人情報保護法条の要配慮個人情報)であり、本人の許可なく企業が勝手に利用できないため、同意書により本人の了解を得ます。

企業は、健康診断結果を基に従業員の健康状態を把握して、必要に応じて健康指導を行ったり勤務時間を調整したりして対応を図ります。企業には従業員の健康や安全に配慮する義務があり、法律に基づいて健康診断を実施しその結果に基づいて適切に対応しなければなりません。

健康診断同意書を作成するケース

健康診断同意書を作成するのは、従業員の健康診断を実施するときです。企業が健康診断実施機関(健康診断専門の企業やスポットで健康診断を行う医療機関など)から情報提供してもらうために、同意書が必要になるからです。

健康診断の検査項目には、法律で実施が定められた「法定項目」と企業が任意で実施する「法定外項目」があります。法定項目は従業員の健康管理のために企業が把握しなければならない情報であるため同意書は必要ありませんが、健康診断実施機関から法定外項目の情報を得るには同意書が必要です。

実際の健康診断では法定項目に法定外項目を加えて検査するのが一般的であるため、健康診断実施前または実施時は従業員から同意書を取り付けます。法定外項目についてのみ同意書を取り付けるという方法もありますが、法定項目を含めて同意書を作成したほうがトラブル防止に役立つでしょう。

なお、企業が実施する健康診断の代わりに従業員が自分で受けた人間ドックの結果などを提出する場合も、同意書を作成して従業員からの取り付けが必要です。

健康診断同意書のひな形

健康診断同意書には健康診断結果の利用目的や情報提供先などを記載しますが、個人情報保護法に抵触しないように適切な文言で作成することに不安を感じる人もいるでしょう。このような場合、健康診断同意書のひな形を利用するのがおすすめです。

マネーフォワード クラウド契約では、無料でダウンロードできる健康診断同意書のテンプレートを用意しています。同意書の新規作成時や見直しするときに参考にしてみましょう。

健康診断同意書に記載すべき内容

健康診断同意書に記載すべき主な内容は次の通りです。

  • 健康診断結果の利用目的
  • 健康診断結果の情報提供先

健康診断結果の利用目的は、「従業員の健康状態の把握」や「健康指導」、「就業面での配慮」、「労働基準監督署への報告(※)」などです。情報提供先については、「健康診断機関から企業へ情報提供すること」を明記しましょう。

※常時50人以上の従業員を使用している事業場は、健康診断結果を労働基準監督署長に報告する義務があります。

健康診断同意書のひな型は企業が作成しますが、従業員が署名するなどして同意の旨を明らかにして勤務先などへ提出します。

健康診断同意書を作成する際の注意点

健康診断同意書を作成するときの主な注意点は次の2つです。

  • 利用目的や情報提供先を漏れなく記載する
  • 利用目的は安全配慮義務に基づく内容に限定する

健康診断結果が同意書に記載のない利用目的に使われたり、情報提供先として登録されていない個人や団体に提供されたりした場合、個人情報保護法違反になる可能性があります。利用目的や情報提供先を漏れなく記載するように注意しましょう。

また、利用目的は、企業の従業員に対する安全配慮義務に基づく内容に限定しなければなりません。健康診断の実施は従業員の安全管理や衛生管理を目的に法律で定められたものであり、商業利用など他の目的での情報利用は主旨に沿わないだけでなく、従業員全員の理解も得られないでしょう。

なお、企業は健康保険組合などの保険者(健康保険を運営する主体者)の求めに応じて、健康診断結果の情報提供が必要になるケースもあります。提供された情報を分析・活用して疾病予防対策に役立てるために、所定の検査項目については従業員の同意なしでの情報提供が認められています。

健康診断の実施は義務?

健康診断の実施は、法律で定められた企業の義務です。健康診断の義務の内容と健康診断の対象者について解説します。

労働安全衛生法により実施が義務付けられている

労働安全衛生法では、企業に対し年に1回以上は従業員の健康診断を行うよう義務付けています。健康診断を実施しない企業に対しては罰金が科されます。

  • 事業者は常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に医師による健康診断を行わなければならない(労働安全衛生法第66条)
  • 次の各号(第66条の健康診断の未実施を含む)のいずれかに該当する者は50万円以下の罰金に処する(労働安全衛生法120条)

健康診断の対象者

健康診断の対象者は、常時使用するすべての労働者です。入社時(または入社前)に実施する「雇入時健康診断」と1年に1回以上実施する「定期健康診断」の2種類があります。

また、特定の業務に従事する従業員などについては、定期健康診断とは別に健康診断の実施義務があります。()内は対象となる従業員です。

  • 特定業務従事者健康診断(深夜業や坑内労働などに従事する従業員)
  • 海外派遣労働者健康診断(6ヶ月以上海外に派遣される従業員)
  • 給食従業者の検便(食堂や炊事場で給食業務に従事する従業員)
  • 有害業務従事者の特殊健康診断 など

「有害業務従事者の特殊健康診断」とは、放射線業務や高圧室内業務、潜水業務など有害性の高い業務に常時従事する労働者に対して実施義務が課せられた健康診断のことです。検査項目が一般の健康診断とは異なり、業務内容により特別の項目について検査します。

健康診断の受診時間は賃金が払われる?

健康診断の受診時間に賃金が払われるかどうかは、各企業が判断して決定します。健康診断は業務ではないため、「ノーワーク・ノーペイの原則」により企業に賃金支払の義務はないからです。

健康診断受診時の賃金は、労使協定によって取り扱いを決定し就業規則などに明記します。従業員の健康診断受診を促す観点からは、有給としたほうがよいでしょう。

職場内で健康診断を実施する場合、一時的に業務を中断して健康診断を受けるため、ノーワークの時間も短く賃金が支払われるのが一般的です。業務の途中で近くの健康診断実施機関で受診する場合も同様です。

ただし、有害業務従事者の特殊健康診断については、賃金を支払わなければなりません。有害業務を遂行するために必要な健康診断であるためです。

健康診断の受診結果の保管

前述の通り、健康診断の検査項目には、法律で実施が定められた「法定項目」と企業が任意で実施する「法定外項目」の2種類があります。それぞれについて、具体的な検査項目と検査結果の取り扱いを解説します。

法定項目

健康診断の法定項目は、労働安全衛生規則第44条で次の通り定められています。

  • 既往歴と業務歴の調査
  • 自覚症状と他覚症状の有無の検査
  • 身長と体重、腹囲、視力、聴力の検査
  • 胸部エックス線検査と喀痰(かくたん)検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 心電図検査

ただし、受診者の年齢や医師の判断によって、省略できる検査項目もあります。40歳未満の従業員の場合、胸部エックス線検査や生活習慣病に関連する検査などが省略可能です。

健康診断結果(法定項目)は、事業場で5年間保管しなければなりません。ただし、有害業務従事者の特殊健康診断については、業務や検査の内容により5年間~40年間です。

法定外項目

法定外項目の検査項目は、法定項目以外で企業が健康診断で行った検査です。がんや生活習慣病に関する検査などが該当します。胃カメラ(胃がん検査)や便潜血(大腸がん検査)、腹部エコー検査(内臓の異常や疾患の検査)などにより、病気の早期発見を図ります。

法定外項目の検査結果を保管する場合は注意が必要です。法定項目の結果保管は労働安全衛生法の健康配慮義務として従業員の同意は不要ですが、法定外項目については従業員の同意を取っておいたほうがよいでしょう。

法律に基づいて健康診断を実施し診断結果を活用しよう

健康診断同意書は、健康診断結果の利用目的や情報提供先について従業員の同意を取り付けるために使用します。企業は従業員の健康に配慮して健康診断結果を基に適切な対応を取ると同時に、個人情報の利用について注意を払わなければなりません。

法律で定められた健康診断をきちんと実施し、法律に基づいて診断結果を適切に活用・管理して、従業員が安心して仕事ができる環境を整えましょう。従業員が健康で活躍することで、組織の活性化や企業の発展が期待できます。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事