• 更新日 : 2024年8月29日

賃金返還請求とは?発生するケースと催告書のひな形を紹介

賃金を過払いしたときは、従業員に対して賃金返還請求(不当利得返還請求)できます。ただし、従業員が過払いの事実を知っていたときと知らないときでは、請求できる金額や利息が異なるため注意が必要です。賃金返還請求の方法や書き方についてまとめました。また、無料で利用できる賃金返還請求催告書のテンプレートも紹介します。

賃金返還請求とは?

賃金返還請求とは、従業員に賃金を過払いしたときに、雇用者側が従業員に対して過払い分の返還を請求することです。従業員が本来受け取るものではないため、不当利得返還請求に相当します。

たとえば、以下のようなケースにおいて、返還請求できることがあります。

  • 休職中の従業員に普段と同じ給料を振り込んだ
  • 有給休暇以外で休んだ従業員に対して、全日勤務したものとして給料を振り込んだ
  • 基本給や時給を本来よりも高く計算した
  • 該当しない手当を支給した

賃金返還請求をする際に適切な対応は?

賃金返還請求には、次回以降の賃金から過払い分を相殺する方法と、現金で返還してもらう方法があります。

相殺する場合は、あらかじめ「過払い分は翌月以降の給料と相殺して返還してもらう」などの労使協定を締結しておくことが必要です。相殺に関する労使協定を締結していない場合は、現金で返還してもらう方法を選択します。

現金での返還を請求したものの、従業員が支払わない場合には、催告書が必要になることもあります。従業員の生活に配慮し、無理のない返還スケジュールを立てることで、催告書が必要になるケースを回避するようにしましょう。

賃金返還請求催告書のひな形・テンプレート(ワード)

賃金返還請求をしても従業員が返還しない場合は、従業員に催告書を渡し、既定の時期までに返還するように請求することもあります。

なお、賃金返還請求時の催告書に記載する事項はほぼ限られています。テンプレートを使って催告書を作成すると、必要事項の漏れがなくなり、スムーズな返還請求につなげやすいでしょう。

以下から賃金返還請求催告書のテンプレートをダウンロードできます。ぜひご利用ください。

賃金返還請求催告書に記載すべきこと

賃金返還請求催告書には、次の2点を記載します。

  • 過払い金発生の経緯・過払い金の金額
  • 過払い金の返還方法

それぞれの記載時に注意すべきポイントを紹介します。

過払い金発生の経緯・過払い金の金額

過払い金が発生して返還を請求したものの、期日までに返還されていない経緯を明確に記載します。

たとえば、〇月分の給与に過払い金が〇円含まれており、〇月〇日までに返還するようにと請求したものの、催告書作成時点において返還されていないといった内容を記載できます。第三者が見ても、何についての催告書で、相手に対して何を求めているかが一目でわかるように記載してください。

過払い金の返還方法

過払い金の返還方法についても記載します。返還の事実の記録を残すためにも、金融機関口座への振込による返還を指定することが一般的です。新たに設けた返還期日を明記し、振込先の金融機関名と口座情報も記載しておきましょう。

過払いした賃金を請求できる範囲

過払いした賃金全額について返還請求できるとは限りません。従業員が過払いの事実を知らない場合と知っている場合では、返還請求できる過払い金の範囲が変わります。

従業員が過払いの事実を知らない場合

多くの企業では、従業員の賃金を金融機関口座への振込によって支払います。給料日などに記帳をして、振り込まれた金額を確認する従業員もいますが、入金額を確認せずに必要な金額だけを引き出すなどして使用する従業員もいると考えられます。

そのため、従業員によっては、雇用者側が「過払いがあった」と伝えるまで、過払いの事実に気付かない可能性もあるでしょう。このようなケースでは、過払い分の賃金のうち、従業員の手元に残っている金額のみを返還請求できます。

従業員が過払いの事実を知っている場合

雇用者側が過払いの事実を伝える前に、従業員自身が気付くこともあるかもしれません。このような場合には、雇用者側は従業員に過払い金を全額返還請求できます。また、請求しても従業員が返還しない場合には、年3%の利息を上乗せすることも可能です。

ただし、従業員が過払いに気付いているかどうかにかかわらず、雇用側が過払いに気付いたときから5年、過払い金を支払ったときから10年で時効が成立します。従業員側が時効を援用したときは、返還を請求できなくなる点に注意が必要です。

時効について、詳しくは下記記事でも紹介しています。

賃金を支払う前に勤務日数やベースの金額を確認しよう

賃金の過払いは人為的なミスです。勤怠管理を正確に行い、勤務日数や基本給の金額、手当額などを確認しておくことで回避できます。

トラブルを回避するためにも、賃金を支払う前に再確認するようにしましょう。また、勤怠管理や給与計算をシステム化することでも、人為的なミスを回避できます。


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