- 更新日 : 2026年1月27日
出向契約書とは?ひな形をもとに書き方や事業者向けの注意点を解説
出向契約書とは、従業員を出向させるときに作成する書類の一つです。出向契約書には出向後の働き方に関わる事柄を明記し、事業者・従業員ともに認識の齟齬がないように備えなくてはいけません。出向契約書に含める事項や作成のポイント、ひな形を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
出向契約書とは
出向契約書とは、従業員との雇用契約を維持したまま、関連会社や子会社などの別会社に異動させるときに作成する書類の一つです。
出向した従業員は、出向元の就業規則や雇用契約に基づいて就労しますが、業務上の命令権は出向先が有することが一般的です。出向契約書に出向後の働き方に関わる情報を明記し、従業員・出向元・出向先の三者が適切かつ誤解なく認識を共有しておかなくてはいけません。
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出向契約書を結ぶケース
出向契約書は、従業員が所属する企業に在籍したまま、別企業で働くときに作成します。次のようなケースに該当するときは、出向契約書を締結することが一般的です。
- 従業員が他社の組織に組み入れられるとき
- 従業員が現状の部署・役職で働きながら、出向先の業務にも従事するとき
- 人事異動の一つとして出向先の組織で働くとき
- 出向元を休職し、出向先の組織で働くとき
- 出向という形で働いているが、出向先の希望により転籍するとき
- 出向先の業務に慣れるまでは出向、慣れてからは転籍するとき
- 一定期間後に出向先の組織に組み入れられるとき
出向の種類
出向には、次の種類があります。
- 在籍出向
- 転籍出向
在籍出向とは、雇用先企業に在籍したまま、別企業での業務に従事することです。一般的に「出向」というときは、在籍出向を指します。
在籍出向では、出向元企業に籍を残してはいますが、指揮命令権や賃金支払いの義務は出向先が有します。たとえば、解雇や処分などは出向元の就業規則が適用されますが、労働時間や休日などの実務面については出向先の就業規則が適用されることが一般的です。
転籍出向とは出向元から出向先への転籍を意味します。従業員が勤務している出向元企業との雇用契約を終了し、出向先企業と雇用契約を締結します。そのため、「出向」とはいうものの事実上は解雇(出向元との雇用契約の終了)です。
転籍出向では雇用契約そのものが変わるため、従業員が契約内容に同意することが前提となります。一方、在籍出向では雇用契約は変わらず、勤務先の指示により勤務場所が変わるだけのため、従業員の同意は必要ありません。
出向命令が違法になるケース
以下に該当するときは、出向命令が権限濫用にあたり違法と判断され、無効になることがあります。
- 業務上の必要性や人選の合理性を欠くとき
- 出向者が著しい生活上の不利益を受けるとき
- 出向者の勤務形態が著しく低下するとき
- 出向先での業務が著しく現状業務と異なるとき
- 出向元への復帰が予定されていないとき
- 出向手続きに違反が見られるとき
出向契約書のひな形/テンプレート
出向契約書に記載する内容には抜けや漏れがあってはいけません。オリジナル文書として作成するのでも問題はありませんが、ひな形を活用して作成するほうが、必要な情報を網羅した出向契約書を完成させやすくなります。
Word形式のひな形を紹介します。ぜひ無料ダウンロードをして、出向契約書の作成時にテンプレートとしてご利用ください。
出向契約書に記載すべき内容
出向契約書には、以下の内容を含めることが一般的です。
- 定義
- 出向元および出向先の名称・所在地
- 出向者および出向期間
- 出向期間中の取扱い
- 出向者の業務等
- 出向者の労働条件等
- 社会保険等
- 出向先の給与負担金等
- 復職
- 機密保持
- 個人情報
- 有効期間
- 合意管轄
- 協議事項
順に記載内容と例を紹介します。
定義
出向契約書内で指す「出向」の意味を明確にします。また、出向者と出向元、出向先についても明記します。
なお、契約書内では正式名称の代わりに甲や乙を用い、簡潔に記載することが一般的です。出向契約書においては出向元企業を甲、出向先企業を乙として、出向を「甲の労働者を甲に在籍させた状態で乙の業務に従事させること」、出向者を「乙に出向する甲の労働者」と表現します。
出向元および出向先の名称・所在地
出向元企業と出向先企業の正式名称と所在地を記載します。ここでも「出向元(甲)」「出向先(乙)」と記載しておくと、契約当事者の理解を助け、誤解を回避します。
出向者および出向期間
出向者の氏名と生年月日、出向期間について記載します。また、業務上、出向期間の延長や短縮が必要になった場合に備え、延長時・短縮時の手続きについても記載しておきましょう。たとえば、「甲と乙の協議により、書面による合意により決定する」のように記載します。
出向期間中の取扱い
出向期間中の指揮命令権や籍を誰が有するのかを明記します。出向者の身分(所属部署、勤務・休職)や人事評価、出向期間中の人事管理内容の変更手続きについても記載します。
また、出向期間中の勤続年数の数え方についても記載しておくことが必要です。多くの職場では勤続年数によって退職手当が決まるため、企業側・出向者にとっても欠かせない情報です。
出向者の業務等
出向者の業務について、以下の情報を記載します。
- 勤務地
- 所属
- 役職
- 業務内容
また、情報の変更が必要な場合に備え、変更時の手続きについても記載しましょう。たとえば、「乙の事情で変更するときには、事前に書面により甲の承諾を得るものとする」の一文を記しておきます。
出向者の労働条件等
通常、出向者の労働条件は出向先企業が決定します。また、福利厚生制度や表彰・懲戒についても、出向先企業に従うことが一般的です。出向契約書では、労働条件を具体的に記載しても、「乙の定めるところによる」とまとめて記載してもどちらでも問題ありません。
また、賃金については出向元と出向先のどちらが支払うのか詳細に記載します。たとえば、次の種類において、それぞれ支払者を明記しておくと、トラブルを回避しやすくなります。
- 基本給
- 時間外労働や休日労働などの割増賃金
- 通勤費、交通費、出張費
- その他の手当など
社会保険等
出向期間中の出向者の以下の保険についても、加入の有無と負担者を明記します。
給与や割増賃金、手当などにおいて、支払者と負担者は異なることがあります。ケースによっても異なりますが、給与や賃金はすべて出向元が支払い、後日、出向先が出向元に同額を支払うことが一般的です。このようなケースでは「甲が出向者に支払った賃金に相当する額を乙が負担する」と明記します。
出向先が出向元に支払うときに使用する口座情報も記載しておくとよいでしょう。また、振込手数料をどちらが負担するかについても明記してください。
復職
どのような条件を満たすと出向者が出向元に復職するのか、具体的に記載します。たとえば、出向期間が終了するときや出向目的を達成したときなどが挙げられるでしょう。
また、「復職させるべき理由があるとき」という条件も加えておくと、想定外の事情が起こり、復職が必要になったときでもスムーズに対応できます。
機密保持
出向をすることで、出向者は出向元以外の内部情報を知る機会を得ます。第三者や出向元に漏えいすると出向先が損害を受けることもあるため、機密保持についても規定しておくことが必要です。
また、出向者が、出向元の情報を第三者や出向先に漏えいするリスクも想定されます。出向元が損害を受けないためにも、機密保持についての規定が必要です。
なお、機密保持は出向が終了しても継続して遵守する必要があるため、「本契約終了後も本条の規定は有効とする」の一文を加えておきましょう。
個人情報
出向により、出向者の個人情報が当初の勤務先(出向元)以外にも知られることになります。個人情報の保護に努めること、また、関連法令やガイドラインを遵守することについても、出向契約書に記載しておくことが必要です。
有効期間
出向契約書の有効期間を記載します。通常は、出向期間と同期間を指すため、「第〇条(出向期間を定める項目)の規定に定める出向期間が終了するまで」と定義することが一般的です。
合意管轄
出向契約に関して、関係者間で紛争が起こる可能性もあります。その場合は、どの裁判所で第一審を実施するのか明記しておきます。
協議事項
協議により、紛争を解決できることもあります。また、契約変更の際にも協議が必要です。どのようなケースにおいて協議を実施するのかについても明記しておきましょう。
出向契約を締結する際のポイント
出向契約を締結するときには、以下のポイントに注意をしてください。
- 署名欄を設ける
- 転籍出向時も出向契約書を作成する
出向契約書は出向元の一方的な命令ではなく、出向者との合意のうえで作成したものであることがわかるよう、署名欄を設けておきましょう。
転籍出向の場合、本来であれば出向者の同意は不要です。しかし、後日、不当に命令したものであるとして紛争に発展する可能性があります。トラブルを回避するためにも、転籍出向時も出向契約書を作成してください。
また、出向時には、出向契約書だけでなく、出向辞令と出向通知書が必要です。出向辞令とは出向を命じる書類です。「就業規則〇条により」と、就業規則に基づいた辞令であることを明記しておきましょう。
出向通知書は出向先の労働条件を具体的に記載した書類です。出向者の氏名と出向元の名称・代表者名も記載してください。
出向期間が終わった際の対応
出向期間や出向期間終了後の処遇については出向契約書に明記するため、出向期間が終わった後に別途契約書を作成する必要はありません。ただし、出向期間終了前に出向を解除する場合は、出向元から出向先に向けて辞令などの書類で通知することが必要です。また、出向者にも十分に説明しておきましょう。
反対に、出向期間終了後も出向を延長させる場合は、就業規則や労働協約であらかじめ定めておくことが必要です。どのようなケースで延長が可能か、更新する際にどのような手続きが必要になるのか、明記しておきましょう。
汎用性の高い出向契約書のひな形を作成しておこう
従業員を出向させることが多い場合は、事前に出向契約書のひな形を作成しておくと便利です。必要情報が漏れなく記載され、汎用性の高いひな形なら、スムーズに出向手続きを進めていけます。
また、出向契約書を作成する前に、出向のルールについて就業規則で定めておくことが必要です。産業雇用安定センターの「出向の進め方」では出向に関する就業規則の例や、出向時に利用できる補助金制度についての情報がまとめられています。ぜひチェックしてみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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