- 作成日 : 2022年10月14日
寄託契約書とは?雛形をもとに記載事項など解説
自社の商品を物流会社に預かってもらう、仕事で使う資材を社外などの倉庫で預かってもらう、知人に自分の荷物を預かってもらうなど、何らかの物を第三者に預かってもらうことを「寄託」といいます。
今回は寄託する、あるいは寄託を請ける際に締結する「寄託契約書」の書き方について、雛形をもとに解説します。
目次
寄託契約書とは?
寄託とは、自分の持っている物を第三者に預かってもらう行為のことです。例えば、美術品をセキュリティが完備されている倉庫に預ける、自社の商品を物流センターに預かってもらう、車を修理してもらうために整備工場に長期間預かってもらう、銀行に金銭を預かってもらうといった行為が寄託にあたります。
預けていた物品が破損・紛失する、盗難に遭う、寄託先から返却されないなど、寄託にはさまざまなトラブルが発生するリスクがありますが、寄託契約書を作成しておけばリスクを軽減することができます。
寄託契約書の雛形
では、さっそくワード形式でまとめた寄託契約書の雛形を見てみましょう。下記リンクから無料でダウンロードできるので、契約書を作成する際に参考にしてください。
ここからは雛形に基づいて寄託契約書に記載すべき項目に関して説明します。雛形をご覧になりながら読み進めると、より理解が深まるでしょう。
寄託契約書に記載すべきこと
ここでは、寄託契約書に最低限記載すべき事項についてまとめました。後々のトラブルを防ぐためにも、これらの項目はしっかり押さえておきましょう。それぞれについて、詳しく説明します。
なお、民法では寄託契約について、「当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」と定めています(657条)。民法改正により要物契約から諾成契約になったことから、物の引き渡しは契約の成立要件ではなくなりました。
契約者
まずは誰が寄託を依頼し、誰がそれを受託するのかを明記します。寄託者(物品を預かってもらう側)を「甲」、寄託先(物品を預かる側)を「乙」とします。
寄託物件
何を預かってもらうのかを、数量も含めて具体的に明記しましょう。寄託物件が多い場合は目録を作成し、「別紙目録記載の物件」としてもかまいません。
保管費用
有償契約の場合は、保管費用の金額と支払時期を明記します。無償契約の場合は、この項目は不要です。
保管場所
どこに寄託物件を保管するのかを明記しましょう。住所及び「◯◯社の倉庫」「◯◯市所在の物流センター」といったように具体的な保管場所の他、第三者への再寄託の可否についても記載すると良いでしょう。
善管注意義務
有償契約の場合は、寄託先に「善管注意義務」が発生します。善管注意義務とは、善良なる管理者の注意義務のことを言い、簡単に言うと、お金をもらう以上、よくよく注意して、預かったものを保管しておく義務があるということです。具体的にどのように物品を管理するのか、もしも物品に何らかのトラブルが発生した場合はどのように対処するのかを記載しておきましょう。無償契約の場合は善管注意義務は生じず、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管すれば足りますが、管理方法については記載しておいてもよいでしょう。
譲渡等の禁止
寄託先に物品を預けた場合、それが無断で第三者に譲渡されることも考えられます。これを防ぐために、譲渡の禁止についても盛り込んでおきましょう。
保管期間
寄託先が、いつまで物品を保管すればよいのかを明記します。保管期間の延長が予想される場合は、更新についても記載します。
返還
寄託した物品を返還する際のルールについても、しっかりと記載しておきましょう。返還を請求した場合の返還期限、返還場所、返還が遅れた場合の損害金についても取り決めておくと、返還拒否や遅延などのトラブルを防ぐことができます。
契約解除
寄託者と寄託先が、寄託契約を解除できる条件について定めます。相手方が契約違反を行った場合や、倒産のおそれがある場合などが考えられます。
反社会勢力の排除
暴力団などの反社会勢力と取引を行うと暴力団排除条例違反に該当し、刑事罰が科せられるおそれがあります。また、これが社会に知れ渡ると企業の信用失墜にもつながります。相手および自身が反社会的勢力でないことを明らかにするために、反社会勢力の排除についても盛り込みましょう。
合意管轄
紛争などのトラブルが発生した際に、訴訟を起こす裁判所について記載します。
寄託契約を結ぶ際の注意点
前述のとおり、寄託という行為はさまざまなトラブルが発生するリスクを孕んでいます。例えば、寄託者には預かってもらった物品が破損したり紛失したりするリスクがあります。寄託先は、「返還された物品が壊れていた」などと言いがかりをつけられるかもしれません。
ここからは、寄託契約を締結する際の注意点について見ていきましょう。
有償で寄託契約を結ぶ場合の義務
前述のとおり、有償で寄託契約を締結する場合は寄託先に善管注意義務が発生します。例えば倉庫や荷物の預かりサービスなど、ビジネスとして寄託を請け負っている業者を利用する場合、寄託者は費用を支払わなければならず、寄託先は預かった物品を適正に管理し、保管期間が終わったら寄託者に返還しなければなりません。費用を支払っている以上、預けた物品が破損・紛失したり盗まれたりすることは、あってはならないことです。寄託先は寄託物がトラブルに遭わないよう、寄託者に返却するまで寄託物を善良な管理者としてしっかり管理する義務があります。
有償で寄託契約を結ぶ際は、善管注意義務の項目に寄託物をどのように扱うのかを明記しておきましょう。
なお、無償の場合は善管注意義務は発生しません。
再寄託が可能な場合
寄託先によっては自社に十分な保管スペースがなく、物品の管理業務を外注するケースがあります。その場合は、再委託についても契約書に盛り込んでおきましょう。再寄託についての記載がないのに勝手に再委託を行うと、トラブルになる可能性があります。
寄託契約書に収入印紙は必要か
印紙税法で印紙税の対象となるのは、金銭や有価証券の寄託契約のみです。物品の寄託契約については、契約書に収入印紙を貼付する必要はありません。
寄託契約書を作成してトラブルを未然に防ぎましょう
自分の物を他人に預ける、他人の大切な物を預かるという寄託という行為にはリスクが伴います。寄託を依頼する際や寄託を請ける際は、後々トラブルにならないよう寄託契約書を作成し、寄託物件の概要や数量、寄託期間、費用などを明記しておくことが大切です。
テンプレートを用意しましたので、本記事を参考にしながら寄託契約書を作成してみましょう。
よくある質問
寄託契約書とはどのような契約書ですか?
寄託者(物を預ける人)と寄託先(物を預かる人)が契約を締結する際に作成する契約書です。詳しくはこちらをご覧ください。
寄託契約書にはどのような事項を記載すべきですか?
契約者、保管費用・場所・期間、善管注意義務、譲渡等の禁止、返還方法、解除条項、反社会勢力の排除条項、合意管轄条項などの項目を記載します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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