• 更新日 : 2024年8月29日

著作権契約書とは?ひな形をもとに文例や事業者向けの注意点を解説

「著作権契約書」とは、著作権の譲渡や著作物の制作・利用に関わる契約書のことです。事業者が競争力を高め、維持していくには、知的財産にも留意することが大事ですので契約書を交わして厳重に取り扱い方法を定める必要があります。

当記事ではテンプレートを用い契約書の書き方について解説していきますので、作成時のポイントをおさえておいてください。

■「著作権譲渡契約書」のテンプレート/ひな形はこちら

■「著作権利用許諾契約書」のテンプレート/ひな形はこちら

著作権契約書とは

著作権契約書とは著作権に関わる契約を取りまとめた契約書のことです。具体的にはライセンス契約や譲渡契約、著作物の制作に関わる契約などを文書にまとめていくことを指します。

そのため著作権契約書は著作権に関する契約の総称であって、契約内容を特定するには中身をよく見る必要があります。著作権を譲渡してしまうのか、それとも使用する権利の許諾にとどまるのか、内容はさまざまです。

なお、著作権については「著作権法」で規律されており、当事者間の契約締結だけでなく同法のルールにも留意しなくてはなりません。

譲渡ができる権利もあれば譲渡ができないものもあり、たとえ契約書に定めたとしても同法に抵触してしまうことで特定の条項が無効になってしまう恐れもあります。契約書を作成する前には知的財産に詳しい専門家のアドバイスも受けておくことも検討しましょう。

事業者が著作権契約を結ぶケース

著作権は法律上も譲渡することが認められています。著作権を譲り受けることで著作物の使用についてほとんど制限を受けることがなくなり、さらには第三者による使用を制限できるなどの利点を得られます。逆に、制作された物を受け取るだけでは著作権法による制限を受けてしまいます。

そこで著作権契約は、「すでに制作されている著作物を使用したいとき」「新たに著作物の制作依頼を出したいとき」などに結びます。

一方、クリエイター目線では「小説・デザイン・漫画・写真・楽曲・Web記事・演劇を譲渡するとき・制作依頼を受けるとき」に著作権契約を結ぶことになります。

著作権契約書のテンプレート/ひな形

契約書を作成するとき、著作権に関わる契約に限らず、ひな形をそのまま流用することは避けるべきです。ただ共通する部分も少なからず存在しますし、カスタマイズすべきことを覚えておけばひな形の利用も有益です。

また、契約書のイメージをつかむ意味でもひな形を見ておくことは効果的といえるでしょう。当記事でも下記の通り2種類のひな形をダウンロードできるようにしておりますので、ぜひ一度目を通していただければと思います。

■「著作権譲渡契約書」のテンプレート/ひな形はこちら

■「著作権利用許諾契約書」のテンプレート/ひな形はこちら

著作権契約書に記載すべき内容

著作権に関わる契約一般に共通する、記載しておきたい条項を紹介します。もちろん、契約内容(権利の譲渡や利用許諾の違いなど)によって盛り込むべき条項は異なりますので、契約の目的に応じて適切なルールを設けていくことが大事です。この点に留意しつつ、以下の内容をチェックしてください。

著作物の特定

契約の目的物は何か、何を対象とした契約なのか、「著作物の特定」は確実に契約書内でしておきましょう。

例えば著作権譲渡契約であれば、次のように定めるケースがあります。

甲は、乙に対し、本件契約締結日に、下記の著作物に関し、甲が有する全ての著作権を譲渡し、乙はこれを譲り受けた。

著作物名  ○○

著作者   甲

利用許諾を求める契約においてもやはり著作物名や著作者の明記は必須です。

対価の金額・計算方法

著作権のやり取りは事業上の必要性があるから行うのであり、事業者としては当然「対価」が気になるところです。

著作者でない側なら対価の支払いによって著作権などを譲り受けることになりますし、著作者側としては納得できるだけの対価を支払ってもらいたいものです。
対価に関するルールが明記されていないと双方の認識にずれがあるまま契約が締結されてしまい、後々大きなトラブルにつながる危険性があります。

そこで次のように対価の明記をしておくことが望ましいです。

本著作権譲渡の対価は金○○円とする。

単純に一定額を示すことが適さないシーンもあるでしょう。そのような場合は次のように計算方法を明記するやり方もあります。

乙は、本著作物の利用許諾の対価として、実売部数1部ごとに金〇円を支払う。

著作者人格権の行使

著作権には「著作者人格権」も含まれています。これは著作者の精神的利益を保護するための権利であって、財産的利益を保護する「著作権」とは異なる性質を持ちます。

例えば著作物を公表する権利、原作品に著作者名の表示に関わる権利、改変に関わる権利などが著作者人格権には含まれており、著作権のように他人に譲渡することができません。契約で著作者人格権の譲渡について定めても無効になってしまいます。

そこで「譲渡をする」旨を定めるのではなく、「権利を行使しない」旨を定めることで対処します。

甲は、乙または乙が指定する第三者に対し、著作者人格権を行使しないものとする。

利用方法

契約にて、著作物の利用方法について定めることもできます。特に著作権利用許諾契約を締結する場面では、利用方法に関する規定が重要な役割を担います。

どのように著作物を利用するのか、第三者への権利義務の譲渡の禁止や著作物利用に関する報告義務など、さまざまなルールを検討していきます。

利用許諾を受ける側を規制したり著作者側の行為を規制したり、利用の目的に合わせて必要な規制は何かを考えなくてはなりません。

その他一般条項

著作権に関する契約でも、その他契約と同じように設けておきたい条項がいくつかあります。万が一に備えて、次に掲げるルールは設けておきましょう。

  • 契約の解除ができるケースとその条件
  • 損害賠償義務が発生するケース
  • 紛争が生じた場合に利用する裁判所の特定
  • 反社会的勢力の排除

著作権契約書の作成ポイント

著作権契約書を作成するとき、以下のポイントをおさえておきましょう。

対価の詳細と手数料の負担記載された金額に消費税が含まれているのか、源泉徴収は行うのか、振込⼿数料等の負担はどちらが負うのか、についての明記。
譲渡する範囲著作権の譲渡をする場面では「⼆次的著作物を創作する権利」や「⼆次的著作物を利⽤する権利」が譲渡対象になるのかを明記する。記載がなければ譲渡の対象には含まれないものとして推定される。
譲渡を受ける側は利用目的達成のためにそれが必要なのか、譲渡をする側は必要以上に制限を受けることにならないかをよく評価する。
納入物の所有権制作依頼が行われるとき、著作権に加え制作した物の所有権が問題になることもある。例えば手書きで作ったオリジナルの原稿などはそれ自体が価値を持つケースもあるため所有権をどちらが持つのか、契約で定めておくことが大切。
なお、電子データとして納入するときは所有権の問題は生じない。

著作権に関連する他の契約

ここまでは主に「著作権譲渡契約」や「著作権利用許諾契約」をもとに解説しましたが、著作権に関しては「著作物の制作委託契約」も存在します。

例えばあるクリエイターにイラストの作成を依頼したいとき、写真の撮影をしてほしいとき、作曲をしてほしいとき、動画コンテンツの作成をしてほしいときなど、さまざまなシーンで制作委託契約は締結されます。

なお、制作依頼を出すときは契約書内に「保証」の条項を設けることも検討します。これは、著作物が第三者の権利を侵害していないことの保証をしてもらうための条項です。他人の権利を侵害している著作物が制作され、事業者がこれを譲り受け、利用していると、制作自体は行っていない事業者でも損害賠償請求を受ける立場となってしまうことがその理由です。

著作物の利用目的に応じた契約条項の調整が大事

著作権契約書と一口にいっても、実態は各契約内容に応じて異なります。同じ使用許諾を得る契約・著作権の譲渡を求める契約であったとしても利用目的に応じて契約書を最適化しないといけないので、契約書の作成も簡単ではありません。

当然著作権法や各種の関連法令にも留意する必要があり、契約だけであらゆるルールを設定できるとも限りません。そこで弁護士や弁理士など、知的財産権に詳しい方の助言も受けつつ契約条項を調整していく姿勢が重要といえます。


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