- 作成日 : 2024年9月27日
準委任契約とは?請負契約や委任契約との違い、契約書の書き方、注意点を解説
準委任契約とは業務委託の一種で、労働力や労働時間に重きが置かれるタイプの業務を依頼するときに用いられます。
社内リソースを確保するために自社の業務・システム運用などを外部に依頼したいとお考えの方に向けて、準委任契約の基本情報や契約書の作成について詳しく解説いたします。
目次
準委任契約とは?
準委任契約とは特定の業務遂行を委託する契約であり、法律行為以外の業務の遂行を目的としています。発注する方を委任者、依頼を受ける方を受任者と呼び、受任者には結果の達成義務や法的責任(契約不適合責任)が課せられないことが特徴です。
これは「結果」よりも「業務の遂行」を重視する契約で、企業などが行う業務を外部委託する際に契約が行われます。例えば、監査やコンサルティング業務などがこれに該当します。
ただし、準委任契約だからといって成果を挙げなくていいというわけではありません。準委任契約はどの分野であっても一定の事務処理を行うため、民法644条の「善良な管理者の注意を持って、委任事務を処理する義務(善管注意義務)」が発生します。
善管注意義務とは、受任者の職業・能力・地位・経験などによって通常期待される注意義務のことです。例えば、医療従事者には一定以上の安全意識や注意義務が求められ、システムの運用保守を受託する場合は少なくとも安定してそのシステムが運用できるよう業務を遂行しなければなりません。
同じく業務を委託する契約形態として「請負契約」や「委任契約」がありますが、準委任契約とはどのような違いがあるのか見ていきましょう。
準委任契約と請負契約の違い
準委任契約と請負契約はいずれも業務委託の形態ですが、違いは「結果の責任」にあります。
民法632条には、
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
と定められています。
つまり請負契約では受託者が成果物や結果を提供する義務を負いますが、準委任契約では業務の遂行そのものが重視され、結果の達成は必須ではありません。例えば、形が明らかとなる建設工事は請負契約に該当し、業務改善について相談するコンサルティング業務は準委任契約を結ぶことが多いです。
他にも準委任契約がよく用いられる職種としてシステムエンジニアがありますが、システム開発の中でもどの業務を依頼されるかによって契約形態は異なります。設計やプログラミングなど完成品を作る工程は請負契約、要件定義・システムテスト・運用保守など労働力がメインの工程は準委任契約が適しています。
準委任契約と委任契約の違い
準委任契約と委任契約は非常に似ていますが、厳密には異なる契約形態です。委任契約は法律行為に関する業務を委託する契約であるのに対し、準委任契約は法律行為以外の業務を委託する契約です。
例えば、弁護士に代理人や訴訟を依頼する場合は委任契約を締結し、データの分析作業などは準委任契約に該当します。
準委任契約と業務委託契約の違い
準委任契約と業務委託契約はしばしば混同されますが、業務委託契約は包括的な概念であり、その中に準委任契約が含まれます。
つまり、業務委託契約は会社や組織等が外部に業務を依頼する契約全般を指し、その一部に準委任契約があるという形です。
業務委託契約には、
- 請負契約
- 委任契約
- 準委任契約
などの種類があります。
準委任契約と労働者派遣契約の違い
準委任契約と労働者派遣契約は、労働者の扱いが大きく異なります。
準委任契約では、受託者が業務を遂行するために必要な作業を行いますが、労働者派遣契約では派遣先の指揮命令下で労働者が働きます。同じ作業でも契約形態が異なるとこのような違いがあります。
【準委任契約】
- 業務の指揮命令権は自社(個人の場合は自分)
- 業務のスケジュールなどを比較的柔軟に決められる
- 業務を行う場所などに決まりはない
- 業務以外の社内ルール(服装や就業規則等)は守る必要はない
【労働者派遣契約】
- 業務の指揮命令権は派遣先にある
- 派遣先の就業規則などを守らなければならない
- 業務のスケジュールや場所は派遣先が定めたものを守る
つまり、労働者派遣契約では受託者が派遣先の業務指示に従い、準委任契約では受託者が独立して業務を行います。
準委任契約の種類は?
準委任契約には、業務の遂行方法果完成型の契約は特定の業務やプロジェクトが完了した時点で報酬が支払われる契約形態です。この種の契約では、受託者は業務の進行や成や目的に応じて契約内容が異なります。主に「成果完成型」と「履行割合型」の2つに大別され、それぞれ業務の進行状況や目的に基づいて報酬が支払われるタイミングや方法が異なります。それぞれの特徴についてご紹介していきます。
成果完成型の準委任契約
成果完成型の準委任契約は特定の業務やプロジェクトが完了した時点で報酬が支払われる契約形態です。成果完成型の契約では受託者は業務の進行や成果に関する責任を負い、契約の最終的な成果物が完成した時点ではじめて報酬を受け取ることができます。システム開発プロジェクトや特定の調査業務などが成果完成型の代表例です。
履行割合型の準委任契約
履行割合型の準委任契約は業務の進捗に応じて報酬が段階的に支払われる契約形態です。このタイプの契約では、契約開始時に業務の区分や進行の目標が設定され、それに応じた割合で報酬が支払われます。
例えば、長期的なコンサルティング業務や段階的なプロジェクト管理がこれに該当し、業務遂行の過程で複数回にわたり報酬が支払われることになります。
準委任契約を締結するメリットは?
準委任契約を締結することで、企業や個人には多くのメリットがあります。例えば、業務遂行の柔軟性、業務上のリスク分散、業務や報酬支払いの透明性などが挙げられます。ここからは準委任契約を結ぶことのメリットを3つご紹介します。
柔軟な業務遂行
準委任契約は、業務の進行方法や内容が変更される可能性があるプロジェクトに適しています。契約者間で業務内容を適宜調整することが可能なため、急な仕様変更や追加の要望にも柔軟に対応できる点が魅力です。
この柔軟さによりクライアントのニーズに応じたカスタマイズが可能となり、プロジェクトの成功率が高まります。
リスクの分散
準委任契約では業務の成果に対して責任を負うことが求められますが、完全な成果物の提供が求められる請負契約とは異なり、業務の遂行に重点が置かれています。
そのため、成果が期待通りに達成されなかった場合でも責任が全面的に受託者にかかることは少なく、リスクが分散されます。受託者側は過度なリスクを負わずに業務に取り組むことが可能です。
契約の透明性
準委任契約は契約内容や業務範囲が明確に定められる点が特徴です。契約書において業務内容や進行状況に基づいた報酬の支払い方法が明示されることで、契約者間のコミュニケーションが円滑に進み、トラブルの発生を防ぐことができます。業務の透明性が確保され、委任者と受託者の間で信頼関係が構築されやすくなります。
準委任契約を締結するデメリットは?
準委任契約には多くのメリットがあることが分かりましたが、その一方で事前に知っておくべき注意点も存在します。こちらでは、準委任契約ならではのデメリットについて3つご紹介します。
成果が不明確になりがち
準委任契約では業務の遂行そのものが重視され、具体的な成果物の提供が必ずしも求められるわけではありません。このため、成果の基準が曖昧になりがちで、契約者間で期待していた結果が異なることがあります。
プロジェクトの進行状況や最終的な成果物の評価や品質、扱いに関して明確な合意がない場合、納品後にクライアント側に不満が生じるケースもあります。
コストの予測が難しい
準委任契約は業務の遂行に対して報酬が支払われます。契約期間に厳密な決まりなどがないのでプロジェクトの進行状況によってはコストが膨らむ可能性があります。委任者は進行管理などを指示することが難しいため、業務が予想以上に時間を要した場合や追加の作業が発生した場合に最終的なコストが当初の見積もりを大幅に上回ることがあります。
そのため、業務によっては契約締結時に明確な見積もりを出すことが難しく、予算管理が複雑になることが多いです。
業務管理の負担増加
準委任契約では受託者が業務を進めるうえでの裁量を持つ反面、委任者が業務の進捗状況を常に把握し、管理する必要があります。プロジェクトの進捗が遅れる場合や品質が期待通りでない場合、クライアント側の監督負担が増加します。
こうした管理の手間が発生することで、企業内部でのリソースの割り当てや関連するプログラムの進行状況に影響を与えることがあります。
準委任契約を締結するまでの流れは?
準委任契約を締結する際にはいくつかの重要なステップを踏む必要があります。ここからは準委任契約を締結する際の一般的な流れを解説します。
1. 業務内容の明確化
まず、準委任契約の対象となる業務内容を明確に定義します。齟齬が生じて後のトラブルを防ぐために業務の範囲や目的、具体的な作業内容について双方が合意することが重要です。
2. 契約条件の調整
報酬や支払い条件、業務の進行管理方法などの具体的な契約条件を調整します。契約書には業務内容、報酬、進捗管理方法などが詳細に記載されていることが求められます。業務の遂行状況や品質基準についても明確にしておきましょう。
3. 契約書の作成・締結
上記の条件が調整できたら合意した内容を契約書として文書化します。すべて自社で行うこともありますが、法律などの専門知識が必要なので契約条件の調整や契約書の作成は弁護士など専門家に依頼する、あるいはチェックを受けるケースもあります。委任者と受任者が契約内容を確認し、双方が署名することで契約が正式に成立します。
準委任契約の業務委託基本契約書の無料テンプレート
準委任契約の業務委託基本契約書の作成には専門的な知識が必要です。自分たちで一から作成すると項目が漏れる恐れがあるので、必要な項目が記載されたテンプレートをダウンロードして契約内容に応じて内容を調整するのがおすすめです。
こちらでは業務委託基本契約書(準委任契約)のテンプレートを無料で配布しておりますので、ぜひお役立てください。
エクセルのテンプレートもご用意しています。以下のリンクから無料でダウンロードできますので、ご活用ください。
準委任契約の業務委託基本契約書の書き方は?
準委任契約の業務委託基本契約書には契約の目的や業務内容、報酬、秘密保持などの基本事項を明確に記載しなければなりません。こちらでは主な項目と、内容についてご紹介します。
契約の目的
委託する業務の具体的な内容と目指す成果を明確に記載する必要があります。
個別契約の成立
契約が成立するための具体的な手続きや条件を詳細に記載します。 連絡方法や受任者がとるべき対応など分かりやすく記載しておきましょう。
契約の性質
この契約が準委任契約であることを明示し、請負型・委任型のどちらなのか、法的な位置づけを正確に記載します。
本件業務の内容
委託する具体的な業務内容やその範囲、期待される成果を明確に記載します。
本件業務の確認
業務完了後の確認方法について、報告書の提出や必要な承認手続きなどを記載します。
委託料
委託料の金額や支払い条件、支払い方法などを詳細に記載し、契約者双方が合意できる内容にします。
秘密保持
秘密保持に関する事項は、契約期間中および終了後において守るべき情報の取り扱い方を記載します。 秘密情報に含まれる情報、含まれない情報を明確に記載しておきましょう。
再委託の禁止
準委任契約では業務の再委託を原則禁止にするケースが多いです。例外的に再委託が許される場合の条件や手続きを明確に記載します。
反社会的勢力の排除
反社会的勢力との関係を排除するための措置や、発覚した場合の契約解除条件を記載します。
権利義務の譲渡等の禁止
契約に基づく権利義務の譲渡を禁止し、例外的な場合についての条件を明記します。
契約期間
契約の有効期間を記載し、契約の開始日と終了日、または更新手続きの詳細を記載します。
解除
契約の解除条件や通知方法、解除に必要となる手続きについて明確に記載します。
契約の中途終了の場合の報酬請求
契約が中途終了した場合の報酬請求に関する取り決めを、具体的な基準や方法、報酬の割合とともに記載します。
紛争処理
紛争が生じた場合の解決方法や、管轄裁判所の指定、または仲裁手続きについて記載します。
協議
契約に関する問題が発生した場合、契約当事者間での協議を行う手続きを記載します。
準委任契約を締結するときにかかる費用や印紙代は?
準委任契約を締結する際、原則として印紙は不要です。ただし、「印紙税法別表第一 課税物件表」における第1号文書、第7号文書等に該当する内容は印紙が必要です。
【第1号文書】
第1号文書とは、「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書」などに該当する文書です。
準委任契約であっても、システム開発、ソフトウェア業務、アプリ業務などシステムエンジニアに依頼する業務内容によっては、第1号文書の「無体財産権の譲渡」に該当すると判断され課税対象となる可能性があります。
印紙税は200円~で、契約金額に応じて変動します。(契約金額が記載されていない場合は一律200円)
【第7号文書】
アフィリエイト契約、ECサイト運営などの売買に関するの業務を継続(3ヵ月以上)して委託する場合、準委任契約であっても第7号文書に該当し課税文書として判断されます。
1通あたり4,000円の印紙税が必要です。
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
No.7104 継続的取引の基本となる契約書
その他契約書作成にかかる費用としては、専門家による契約書作成支援やチェックなどを依頼する料金などがあります。
準委任契約を締結するときの注意点は?
準委任契約を締結する際には以下の点に注意しましょう。
契約内容を詳細まですり合わせる
業務内容の共有ができていないと、「依頼したのに希望していた結果がなかった」「明確な範囲が伝えられなかったのでどこまで対応したらいいか分からない」といったトラブルが起こりかねません。業務の範囲や成果物、納期などを具体的に記載し、双方の認識のズレを防ぐことが大切です。
報告義務
業務完了後の確認方法や報告の期限を明確に定めておきましょう。民法645条では、受任者は委任者への報告義務を以下のように定めています。
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
契約書では報告のタイミング、頻度、報告方法まで記載しておくと双方納得したうえで進行の把握が可能です。
費用面の取り決め
事業に対する報酬額はもちろん、支払い方法、支払いサイト、振込手数料の負担など、業務を遂行するにあたって必要となった経費の扱いについても契約書に記載しておきましょう。
また、備品購入、通信費、交通費等業務に関する雑費の扱い、清算方法についても齟齬がないようにルールを決めておきましょう。
準委任契約書は細部まで注意して作成しよう
準委任契約は医療、エンジニア、サイトやシステムの運用保守などさまざまな職種で用いられている契約形態です。業務を柔軟に行うことができ、瑕疵担保責任が貸せられないなど受任者側にとっても多くのメリットがある準委任契約ですが、契約内容やルールが十分に共有されていないとトラブルに発展するリスクもあります。
契約書作成の際には、本記事でご紹介したポイントを押さえて漏れのないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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