- 更新日 : 2024年8月21日
リーガルチェック(法務確認)とは?やり方や依頼費用を解説
リーガルチェック(法務確認)とは、企業活動における契約書内容の妥当性や法的な問題を確認することです。本記事ではリーガルチェックの意味に加えてリーガルチェックを行うメリット・行わないデメリットを解説し、チェックを受ける方法や注意すべきポイント、費用相場についても解説します。
目次
リーガルチェックとは?
リーガルチェックとは、取引先などと交わす契約書の内容が妥当であるか、法的な問題点はないかを事前にチェックすることをいいます。
ビジネスシーンでは数多くの契約書を交わし、それによってさまざまな権利や義務が発生します。細心の注意を払って契約書を作成したつもりでも、法的に見ると自社に不利益な内容となっていたり、違法な内容となっていたりすることがあります。
契約書の不備によるトラブルや損害を未然に防止するためには、事前に契約書の内容を弁護士や社内の法務部にチェックしてもらう必要があります。これがリーガルチェックであり、法務チェックと呼ばれることもあります。
リーガルチェック(法務チェック)は、ビジネスをスムーズに進める上で非常に重要です。
リーガルチェックを行うメリット
契約前にリーガルチェックを行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、リーガルチェックによって得られる具体的なメリットをご紹介します。
正確な契約書を作成できる
契約条件の不備や言い回しが不明瞭、不適切な点を事前に洗い出して修正することで、契約したい内容に則した正確な契約書の作成が可能になります。
契約書には簡潔な文章が用いられ、一言一句が法的な意味を持ちます。そのため、言い回し次第では思いもよらない法的義務を負うことになったり、逆に得たい法的効果が得られなくなったりすることがあります。
文言の法的な意味合いを正確に見極めることは、専門家でなければ難しいため、専門家によるリーガルチェックを強くおすすめします。
安心して取引ができる
契約内容は当事者の合意によって自由に定められるとはいえ、法律に違反する内容であれば無効になります。
ビジネスはさまざまな法律によって規制されていますが、契約を結ぶたびに「この契約内容は法律に違反していないか」と不安になっていては、円滑に取引を行うことができません。
自社の事業に関する法律には精通していたとしても、法律はたびたび改正されます。自信を持って作成した契約書でも、最新の法律に対応していないケースも少なくありません。
ビジネスをスムーズに進めるためにも、法律上の問題は専門家にチェックしてもらいましょう。
トラブルや損害を未然に防げる
自社で契約書を作成する際、自社の利益を追求するあまり、相手方にとって不利益な条項を多く記載してしまうことがあります。このようなことが重なると、相手方との信頼関係が崩れ、トラブルに発展しかねません。
逆に、相手方が作成した契約書には自社に不利益な条項が盛り込まれていることがあります。細部まで確認しないままサインしてしまうと、自社が損害を被るかもしれません。
契約書を自社で作成する場合も相手方が作成する場合も、事前に第三者的立場の専門家に内容のチェックをしてもらうと、トラブルや損害を未然に防ぐことができます。
リーガルチェックをしないとどうなる?
契約前にリーガルチェックをしなければ、契約後にさまざまなトラブルが発生するおそれがあります。場合によっては経営を左右するような重大な問題に発展することもあるので、以下のリスクをしっかり頭に入れておきましょう。
契約が無効になるおそれがある
専門家でない人が契約書を作成する場合、法律で認められていない内容を盛り込んでしまうリスクが伴います。
記載内容が強行法規(※)に違反する場合、契約の全部または一部が無効になってしまいます。その場合、契約により予定していた収益を得られなくなるだけでなく、相手方にも迷惑がかかることになります。
(※ 法令の規定のうちで、当事者間の合意の如何を問わずに強制的に適用される規定のこと)
法律違反の契約をしてしまうおそれがある
取引の際は、相手方も法律の専門家ではないケースがほとんどです。そのため、当事者双方が法律違反に気づかないまま、契約書を交わしてしまうことがあります。
法律違反の契約をしてしまうと、契約が無効になる可能性があることや、一定のペナルティを受けるリスクが生じることにも注意が必要です。
例えば、下請法に違反する契約をすると行政指導の対象となり、企業に対する社会的信頼が失われるおそれがあります。特定商取引法に違反する契約をした場合は、顧客からのクーリングオフに応じる必要があるので、想定外の損害が生じるケースもあります。
不利な条件で契約してしまうおそれがある
ビジネスにおける契約は、双方に対等のメリットがあるべきものです。しかし、相手方が作成した契約書のリーガルチェックを行わなければ、自社に不利な条件で契約してしまうおそれがあります。
例えば、代金や納期についてはしっかり確認したとしても、実費をどちらが負担するか、遅延や損害が発生したときにどちらがどのような責任を負うのか、といった細かい条件について確認しないまま契約書にサインしてしまうこともあるでしょう。
契約書の内容によっては自社に重大な損害をもたらす可能性もあるので、十分注意しなければなりません。
取引先からの信用を失うおそれがある
無効な契約書や法律違反の契約書によって相手方に迷惑をかけた場合はもちろんのこと、相手方が事前に契約書の不備に気づいた場合も、「この会社は信用できない」と不信感を持たれることがあります。
このようなことが重なると取引先からの信用を失い、取引停止になりかねません。取引先を失えば、おのずと自社の収益は悪化してしまいます。
リーガルチェックの方法
リーガルチェックでは法律の専門知識が求められるため、社内の現場レベルの社員がチェックするのではなく、豊富な法律知識を持つ人にチェックしてもらう必要があります。
リーガルチェックの方法として、以下の2つが挙げられます。
- 弁護士に依頼する方法
- 社内の法務部に依頼する方法
以下で、この2つの方法についてご説明します。
弁護士に依頼する
法令や判例に関する網羅的な知識を多く有している弁護士にリーガルチェックを依頼すれば、正確で信用性の高いチェックが期待できます。
また、弁護士はさまざまなトラブルについて、示談交渉や裁判で解決する手続き方法を熟知しています。そのため、取引から生じ得るトラブルを事前に想定し、未然に防ぐための条項やトラブルが発生した際に適切に対処するための条項を契約書に盛り込むことが可能です。
一方で弁護士に依頼する場合は、以下の2つのデメリットを頭に入れておく必要があります。
- 費用がかかること
- 時間がかかる可能性があること
ただし、弁護士と顧問契約を結んで日頃から良好な関係を築いておくことで、金銭的・時間的コストはある程度削減できるでしょう。
社内の法務部に依頼する
社内の法務部によるリーガルチェックは、費用がかからず、迅速にチェックを受けられるのがメリットです。
しかし、法務部の担当者が法律の専門家でない場合は、法令や判例に関する網羅的な知識を十分に持っていない可能性があります。
また、法務部と自社の利害関係は一致するため、第三者的立場で契約書をチェックするのは難しいことも懸念すべきでしょう。
大半のケースでは法務部によるリーガルチェックで問題ありませんが、複雑な案件やリスクの大きい案件、専門的な業法に関する案件の場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
リーガルチェックの費用相場
リーガルチェックを弁護士に依頼する場合に必要な費用は、契約内容や会社の規模、どの弁護士に依頼するかによって変わりますが、相場は1件あたり5~15万円程度です。
売買契約書や請負契約書、賃貸借契約書のように、定型的な取引で契約書の内容が一般的なものである場合、相場は5万円程度です。
業務委託契約書や取引基本契約書のように契約内容が複雑で、リーガルチェックに際して会社の事業内容を理解することが必要になる場合や、チェックだけでなく具体的なアドバイスも求める場合は、10~15万円程度かかるでしょう。
ただし弁護士と顧問契約を結べば、毎月顧問料がかかる代わりにリーガルチェック1件あたりにかかる費用は抑えられます。
弁護士によって異なりますが、顧問契約の相場は以下のとおりです。
- 顧問料:月額5万円程度
- リーガルチェック(月10件程度まで):月額3~10万円程度
- リーガルチェック(月10~20件程度):月額10~20万円程度
継続的にリーガルチェックを受ける必要がある場合は、弁護士と顧問契約を結ぶのが得策です。
リーガルチェックの流れ
ここからは、リーガルチェックを受ける際の具体的な流れをご紹介します。
弁護士に依頼する場合
まずは、弁護士にリーガルチェックを依頼する場合の流れを見ていきましょう。
契約書の原案を作成する
自社で契約書を用意する場合は、まず原案を作成して弁護士に提出します。相手方から契約書を受け取った場合は、それを提出します。
弁護士に要望を伝える
次にその契約の目的や、回避したい事態などの要望を伝えます。
併せて、会社の事業内容やビジネスプラン、資本金や従業員数などの会社情報を伝える必要があります。これらの内容によって法律上の規制内容が異なることがあるため、必ず詳細に伝えましょう。
これらの情報を弁護士に明確かつ効率的に伝えるために、整理されたわかりやすい資料を作成しておくことをおすすめします。
弁護士から問題点の指摘を受ける
弁護士は契約書の内容を精査し、クライアントの要望を踏まえて法的な問題点や改善すべき点などを指摘してくれます。
このとき、弁護士が指摘したとおりに契約書を修正するのがベストとは限りません。弁護士は、取引の実情を熟知しているわけではないことを念頭に置いて、指摘内容を精査します。
弁護士に「リスクがある」といわれた場合でも、それは「その業界の取引における慣例であるため問題ない」というケースもあるでしょう。実際のリスクがないにも関わらず、杓子定規に契約書を修正すると取引開始が遅れ、ビジネスが滞るおそれがあります。
弁護士の意見に対して疑問や要望がある場合は、遠慮なく質問や相談をするようにしましょう。「弁護士の意見を取り入れつつ、最適な契約書を作成する」という姿勢が大切です。
契約書を修正し完成させる
問題点が解消したら、契約書を修正して完成させます。
修正作業は弁護士が行うこともあれば、会社側が行うこともあります。弁護士が修正を加えた場合も、最後に間違いがないか慎重に確認しましょう。
これで、弁護士に依頼する場合のリーガルチェックは完了です。
社内で行う場合
社内でリーガルチェックを行う場合の手順は各社によって異なりますが、通常は法務部や法務担当者などに契約書を紙ベースで提出するか、メールで送信してリーガルチェックを依頼することになるでしょう。
社内といえども、法務部や法務担当者の忙しさは時期によって異なります。担当者のもとにさまざまな部署から依頼が集中し、着手に時間がかかる可能性もあるため、できる限り日程に余裕をもって依頼したほうがよいでしょう。
また、担当者が契約の目的や取引の実情を把握しているとは限らないため、依頼する際には契約の目的や取引内容の概要、その取引によって生じうる自社のリスクなども書面で伝えておくことが大切です。
指摘を受けた問題点の内容を精査し、必要に応じて修正を加えて契約書を完成させましょう。
リーガルチェックで見られるポイント
リーガルチェックでは弁護士から有益なアドバイスを受けられますが、契約書の原案に問題が多いと確認・修正に時間がかかります。すると契約がスムーズに進まず、ビジネスが滞ってしまいます。
そのため、原案を作成する段階で、ある程度のクオリティを意識しなければなりません。
弁護士がリーガルチェックで注目するポイントは多岐にわたりますが、特に重要なポイントは以下のとおりです。
- 契約内容が明確になっているか
- 契約条項が過不足なく記載されているか
- 自社にとって不当に不利な条項はないか
- 相互の利益バランスが適切に取れているか
- 違法や無効な条項はないか
- 内容が矛盾している条項はないか
- トラブルを想定した対策が盛り込まれているか
完璧な原案を作成するのは難しいかもしれませんが、上記のポイントを意識するだけでもリーガルチェックが有意義なものになるでしょう。
リーガルチェックは信頼される企業として必須
リーガルチェックとは、契約書の内容を事前に法律の専門家に確認してもらい、アドバイスを受けることです。
違法・無効な契約を締結したり、トラブルを招くような契約書を作成したりしていては、取引先や顧客、社会からの信頼を獲得できません。
日本企業同士の契約書では、トラブルが発生した場合は「誠実に協議して解決を図る」といった条項が記載されることが多いものです。しかし、この内容では責任の所在や賠償義務の範囲が明確ではないため、裁判に発展するケースも多々あります。
企業が信頼を獲得し、ビジネスをスムーズに進めるためには、想定し得るトラブルについての防止策や解決策も契約書に盛り込んでおきたいところです。そのためには、法律の専門家によるリーガルチェックが欠かせません。
よくある質問
リーガルチェックとは?
契約書の内容が妥当なものであるか、法的な問題点はないか、事前に法律の専門家によるチェックとアドバイスを受けることです。詳しくはこちらをご覧ください。
リーガルチェックの費用相場は?
契約内容や会社の規模、弁護士によって異なりますが、1件あたり5~15万円程度が相場です。弁護士と顧問契約を結べば、割安な費用でリーガルチェックを受けられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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