• 作成日 : 2024年11月7日

ペーパーレス化(電子化)に関連する法律一覧

ペーパーレス化(電子化)に関して、「e-文書法」「電子帳簿保存法」など知っておきたい法律がいくつかあります。ペーパーレスを進めるにも一部制約がありますので、各種法令の内容を理解し、電子化できる書類・できない書類を整理しておく必要があるのです。

当記事では関連する法律を紹介するとともにペーパーレスの進め方を紹介していきますのでぜひ参考にしてください。

ペーパーレス化(電子化)を進める前に知っておきたい法律

ペーパーレス化を進めるにあたり押さえておきたい法律がこちらです。

  • e-文書法
  • 電子帳簿保存法
  • 電子署名法
  • IT書面一括法
  • デジタル改革関連法

各法について説明していきます。

e-文書法

「e-文書法」は、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」のことです。

本来、書面(紙)で保存することが義務付けられている各種の法定保存文書について電子データでの保存を認める、といった内容を規律しています。

また、上記法律は「e-文書通則法」とも呼ばれ、その法律の施行に関連する法律の整備を行う「e-文書整備法」というものもあります。これらをまとめてe-文書法と呼ぶこともあり、各法の内容は次のように説明することができます。

  • e-文書通則法・・・電子保存に関する共通事項を定めた法。約250の法律における保存義務について電子保存を認める。
  • e-文書整備法・・・一定の場合における特別な手続きに関する規定や、通則法だけでカバーできていない部分の規定を整備する。

具体的な対応方法・適用要件などは以下の記事で解説しています。

電子帳簿保存法

「電子帳簿保存法」は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」のことです。

事業者には国税関係帳簿書類について保存すべきことが法定されているのですが、現代において書面の電子化は技術的に難しいことではありませんし、電子保存した方が効率的です。
そこでこの業務に係る負担を軽減するため、所得税法法人税法などの特例として電子保存を認める旨の規定をおいているのが電子帳簿保存法です。

事業者の業務のうち特に経理業務のデジタル化が同法により進むこととなります。具体的には①電子取引、②スキャナー保存、③電子帳簿等保存の3つの枠組みから構成されています。

  1. 電子取引・・・電子的に授受した取引情報のデータ保存についての枠組み。
  2. スキャナー保存・・・紙で受領あるいは作成した書面をスキャンして保存することについての枠組み。
  3. 電子帳簿等保存・・・電子的に作成して帳簿類をデータのままで保存することについての枠組み。

詳細は以下の記事で解説しています。

電子署名法

「電子署名法」は、「電子署名及び認証業務に関する法律」のことです。

同法は、電子署名の利用を円滑にしてデジタル化を促進することを主な目的としており、そのために①電子署名を施すことで書面における署名・押印と同じ効果が得られるとする規定、②電子署名について行われる認証業務の制度、などを定めています。

電子署名法についてはこちらでも解説しておりますので、詳細を確認しておきたい場合はぜひチェックしてください。

IT書面一括法

「IT書面一括法」は、「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」のことです。

同法では、本来書面での交付や書面での手続きを義務としているものについて、相手方の承諾などを条件に「書面ではなく電子メール等での交付でもいい」と定めており、ペーパーレス化を推進する役割を担っています。

ただし同法によりあらゆる書面交付の義務がなくなったわけではありません。一定の書面については適用対象外であること、また、適用対象であっても要件には注意が必要です。

詳細はこちらのページからご確認ください。

デジタル改革関連法

「デジタル改革関連法」は、デジタル社会形成基本法やデジタル庁設置法、デジタル社会形成整備法、そして預貯金口座の登録や管理に関する法律を総称したものを指しています。

  • デジタル社会形成基本法・・・デジタル社会を形成していくための施策策定に関する基本方針、国・地方公共団体や事業者の責務などを規定している。
  • デジタル庁設置法・・・デジタル社会形成の司令塔として機能する組織を作るための規定をおいている。
  • デジタル社会形成整備法・・・押印手続きの見直しやマイナンバーカード利用の拡大、郵便局での電子証明書の発行等の実現など具体的な手続きに係るルールを整備している。
  • 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律・・・マイナポータルからの登録、緊急時における給付金等における登録口座の利用など、手続きを円滑化するための規定をおいている。

直接的にはペーパーレス化に関わるルールを定めてはいませんが、その基盤となる組織・体制作りに関わる法律といえるでしょう。

ペーパーレス化(電子化)できる書類

基本的にはほとんどの契約書について電子化が認められています。以下のその例を一部紹介します。

電子化が可能な書類書類の内容
雇用契約書労働者を雇用する際、使用者である企業と労働者の間で締結する契約に基づき作成される。

交付が必須である「労働条件通知書」と兼ねて作成することも可能で、電子化も認められている。

ただし労働者側の同意が必要。

売買契約書物を売る側(売主)と買う側(買主)の間で契約を締結するときに作成する。

契約書の作成自体必須ではなく、電子化も認められている。

秘密保持契約書業務上得た情報について漏えいしないことを約束する際に作成する契約書(NDA:Non-Disclosure Agreement)とも呼ばれる。
業務委託契約書ある業の外注時に作成する契約書。作成自体必須ではなく電子化も認められている。
保証契約書主たる債務者(借金をする人など)が債務を履行できない場合に、保証人が代わりに債務を履行することを約束するときに交わす契約書。

原則的には書面を作成しないと契約は成立しないが、電子化も認められている。

定期借地契約書土地を一定期間貸し借りするときに作成する契約書。

一定の場合、書面作成が必要になるが電子化も認められている。

更新の定めのない定期建物賃貸借契約書一定期間を定め、そのうえ更新については定めをおくことなく建物の貸し借りを行う場合に作成する契約書。

借地借家法の適用を受け書面が必要とされるが、電子化も認められている。

会計帳簿企業の会計処理において作成される帳簿書類も、一定要件のもと、電子帳簿保存法により電子化が認められている。

具体的には、仕訳帳総勘定元帳、補助簿、決算書などが該当する。

請求書などの証憑(しょうひょう)類請求書、領収書納品書、注文書、見積書などの証憑類についても、電子帳簿保存法に基づき、一定要件を満たせば電子化による保存が認められている。

契約書の電子化に関してはこちらでも解説しております。

ペーパーレス化(電子化)できない書類

ペーパーレス化ができないものもいくつかあります。その例を紹介します。

電子化ができない書類書類の内容
公正証書公証人が作成する公文書であり、契約当事者が依頼することで法的な証拠力が高い書類として作成できる。

ただし、公正証書は法律上、紙での作成が欠かせない。

任意後見契約書将来的に判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ後見人を選任し、財産管理や身上監護などに関する事項を取りまとめた契約書。

任意後見契約書は公正証書で作成しなければならないため電子化ができない。

事業用定期借地権設定のための契約書事業用の建物を所有するため、土地を借りる場合に交わす契約。

借地権を設定するために公正証書が必要となるため、電子化ができない。

農地の賃貸借契約書農地または採草放牧地の貸し借りで交わす契約。電子化を認める法令が適用されておらず、また書面の作成が義務とされているため、電子化は不可。

なお、電子化ができるもの・できないもの、いずれにしてもすべて手書きが求められているわけではありません。PC上で作成し、電子化が可能ならそのままデータで保存し、電子化が不可ならプリントアウトするなどして原稿案を用意するのもよいでしょう。

法務関連の書類であればこちらのページからテンプレートをご確認、ダウンロードできますのでご活用ください。

ペーパーレス化(電子化)の進め方

ペーパーレス化を成功させるためには、事前に計画を立て、段階的に進めていくことが重要です。ここではその具体的な進め方について解説していきます。

ペーパーレス化の目的を設定する

まず、ペーパーレスとすることで何を実現したいのかを明確にしましょう。

「コスト削減」を目的とするなら、印刷費や用紙代、保管スペースの削減などについて具体的な目標値を設定することが重要です。

「業務効率化」を目的とする場合は、書類の検索や承認にかかる時間をどれくらい短縮したいのか、その数値目標を設定することで効果を測定しやすくなります。

ほかの内容とする場合でも、目的が明らかになることで何をどうすべきかがわかりやすくなり、漠然とペーパーレスにする場合に比べて効果を得やすくなるでしょう。

現在使用している書面の使用頻度・量を確認する

次に、現在どのような書面をどれくらいの頻度で使用しているのかを把握しましょう。

例えば、契約書であれば1ヵ月月に何件作成し、それぞれ何ページ程度のものが保管されているのかを調べます。請求書であれば、1日に何件発行し、保管期間はどのくらいなのかを明確化します。稟議(りんぎ)書や報告書など、社内で回覧される書類についても作成頻度や保管量を把握することで、電子化による効果を具体的に見込むことができるでしょう。

対象とする書面と優先度を決定する

目的や書面の使用頻度・量を踏まえ、どの書面から電子化していくのか、優先順位を付けましょう。

例えば、毎日使用する請求書や頻繁に参照する契約書などは、電子化することで業務効率化の効果が大きく期待できるため、優先的に取り組むべきといえます。

また、過去の帳簿や人事関係書類など、保管スペースを多く占めている書面についても電子化によって保管スペースの削減効果が見込めるため、優先度が高くなります。

ツールを選定する

続いて、電子化を実現するためのツールを選定しましょう。

紙の書類をデータ化するにはスキャナーが必要となります。スキャナーには、高速度・高画質なものから、持ち運び可能な小型のものまでさまざまな種類があるため、処理する書類の量や種類、設置場所などを考慮して適切なものを選びましょう。

また、スキャンした画像データから文字情報を抽出するなら、OCRソフトが役立ちます。こちらも、手書き文字に対応しているものや特定の書式に特化したものなど、さまざまな種類があります。

そして電子化した文書を保管・管理・検索するための「文書管理システム」の導入も検討しましょう。文書管理システムは、アクセス権限の設定やバージョン管理など、セキュリティ機能が充実しているものが多く、データ化された重要書類についても情報漏えいのリスクを軽減することができます。

段階的に導入・運用する

すべての書面を一挙に電子化しようとせず、まずは一部の種類の書面、あるいは一部の部署から段階的に導入していくことをおすすめします。

特定の部署で運用方法や課題を検証しておくと、全社的な導入時には勝手がわかっていることからスムーズに運用することが期待できます。
また、特定の種類の書面、例えば請求書のみを電子化し、運用に慣れてからほかの書面へ対象を広げていくことも有効といえるでしょう。

現場の従業員にかかる負担も軽減されますし、より効率的なペーパーレス化を進めることができます。

電子化の前に法律上の決まりや要件をチェックしよう

基本的には仕事で使っている多くの書類は電子化しても問題ありません。しかしながら、作成や保存が法律に基づいて行われているのであれば、「電子化してもいいのだろうか」「どのように電子化する必要があるだろうか」という点をチェックしておく必要があります。

法改正も頻繁に行われていますし、対応に不安がある場合は弁護士などの専門家にも相談しながら進めていくことをおすすめします。もしくは最新の法令に準拠した契約書管理システム、電子契約サービスを利用することで適切に電子化へ対応することもできるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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