• 作成日 : 2025年1月31日

稟議とは?意味や使い方、稟議書の書き方・例文などわかりやすく解説

稟議とは、組織内で新たな決定をするために、関係者に書面などを介して承認を得るためのプロセスのことです。

稟議をする際は稟議書を作成して関係者に回覧します。回覧をして承認を得ることで、提案が関係者全体に共有され、最終的に決裁されて実行となります。

この記事では、稟議の言葉の意味や使い方、稟議書の例文や社内稟議の方法についてわかりやすく解説します。

稟議とは

稟議は、組織内で新たな事項に関する決定を行う際に、会議を省略して書面にて関係者に承認を得ることです。

会社などの組織の中で新たに導入したい事項が生じた際、その内容を説明する書類(稟議書)を作成して、下位の階層から順に関係者全体の承認を受ける流れが一般的です。

次に、稟議という言葉の意味や決裁との違いを説明します。

稟議の意味

稟議(りんぎ)という言葉の成り立ちとして、「稟」は「申し出る」を、「議」は「相談する」を意味しています。組織の中で新たに何かしらの計画を立てる際に、関係者全員の承認を受けて実行に移すために相談を申し出る、という意味の言葉です。

稟議の発案者が内容を説明した文書を作成して、関係者へ承認を受けるための回覧を回す流れが一般的です。

稟議と決裁の違い

稟議と決裁は、両者共に新たな事項について決定をするためのプロセスを指しますが、両者には明確な違いがあります。

稟議は複数の関係者全員に対して提案内容を回覧し、申請事項の内容の共有をした上で承認を求める手続きです。稟議は、関係者全員が関与するものといえます。

一方で決裁は、承認が必要な申請事項に対して、最終的な決裁者が意思決定をする行為を指します。決裁は、決裁者一人によって行われるものです。

稟議の言い換え

稟議の言い換えとしては、「書面決議」や「合意形成」などが近い表現です。

書面決議は、ある決定事項を書面によって関係者全員の同意を得ることにより決定することで、合意形成は関係者の合意を得るまでのプロセスを指します。

関係者の合意や承認を得るという面で稟議と同様の意味合いをもちますが、ニュアンスが異なるため違いにも注意しましょう。

稟議の英語表記

稟議を英語で表現する際には、「internal memo(内部の情報)」や「submit for approval(提案の提出)」などの言葉が用いられます。

ただし、稟議という承認制度自体が、あまり外国では馴染まないプロセスのため、直接的に稟議を表す言葉は存在しません。そのため、日本の稟議という言葉を用いて「the ringi system」と表現をして、内容については別途説明を行うこともあります。

社内稟議が決裁されるまでの流れ

社内稟議は、会社内で関係者に承認を受けて最終的な決定をするために行われます。以下、稟議を起案してから決裁されるまでの一般的な流れを解説します。

稟議書を起案する

稟議の最初のステップは、稟議書を起案することです。

起案とは、提案する内容を記載した稟議書を作成することをいいます。起案者は、提案内容の概要、目的、予算、期間などを詳細に記載して、稟議を回す関係者が理解しやすいようにまとめます。

修正や差し戻しのない稟議書にするために、必要事項を網羅した不備のない書面を作成することが必要です。

稟議書を回覧する(稟議を上げる)

起案された稟議書は、次に関係者へ回覧されます。これは「稟議を上げる」ともいわれ、社内の関係者に対して稟議書を確認してもらい、意見を募ります。

稟議書には承認をもらうための回覧者リストが付けられ、一般的に最初に直属の上司に稟議を上げ、その後に何人かの回覧を経て最終的な決裁者に回されます。

回覧された者は、稟議書に起案された提案内容を検証し、必要があれば起案者や他の承認者に対して確認を行います。確認の際に修正が必要となった場合には、修正の上、再度回覧されます。

稟議が承認される(稟議が下りる)

稟議書が回覧された後、各回覧者による内容の検証が完了し、問題がないものとして同意を行うのが承認です。承認とは、回覧された稟議書の内容について、不備なく進めて良いものと認めることを指します。サインや押印などの方法で承認されるのが一般的です。

承認された稟議書は、次の回覧者へ回され、すべての関係者が同意した後、決裁者に提出されます。

一方で、内容に不備や不明点があって解消されない場合、稟議が却下されたり差し戻しされたりする場合もあります。

稟議が決裁される

最後のステップが決裁です。決裁とは、稟議書に起案された提案内容に対して最終的な意思決定を下すことを指します。決裁者は、他の回覧者の承認後、稟議書に起案された内容を最終確認し、会社として提案の採否を判断します。

決裁が完了すると、稟議書で起案した計画を実行に移せます。

稟議のプロセスを経て決裁がされることにより、内容の不備や不正を防げるだけでなく、関係者全員に提案内容が共有されるためスムーズに始動できるメリットがあります。

承認プロセスを通じて、提案内容に関する各部署の理解と協力を確保できます。

紙の稟議書を使用する場合の課題

これまで、社内稟議をする際は書面による手続きが一般的でした。紙の稟議書を使用する場合は、以下のような課題があります。

印刷・保管のコストがかかる

紙の稟議書を使用する場合、印刷と保管に関連するコストがかかります。稟議書の印刷には用紙代やトナーインク代などの費用が発生し、また、長期保存が必要な場合には書庫の確保や管理費用が必要となります。

紛失やセキュリティのリスク

紙の稟議書は物理的な書類であるため、紛失や盗難、損傷といった保管上のリスクが伴います。重要な情報が記載された稟議書が紛失した場合、再作成に時間がかかるだけでなく、情報漏洩や信頼低下などの問題を引き起こすおそれがあります。

また、稟議にかける内容が増えて書類が多くなるほど、該当の書類を探し出すための人件費や時間が余計にかかるようになります。

リモートワークに不向き

紙の稟議書は、リモートワークやテレワークを行う会社には不向きです。承認する者が同じ場所にいない場合、稟議書の回覧や承認に時間がかかるため、決裁が遅れることになります。それにより、稟議内容である業務の進行なども遅くなり、業務や事業全体に支障が生じるおそれがあります。

これは、回覧者が出張中である場合や、別支店などにいる場合も、同様に考えられます。

このように、紙媒体のやりとりは場所や時間の制約を受けやすいため、柔軟な働き方に対応するのは難しいといえるでしょう。

稟議書を電子化するメリット

現在では、従来は紙で作られることが一般的だった稟議書を電子化する動きがみられています。稟議書を電子化することで、次のようなメリットが得られます。

稟議が通るまでのスピードが向上する

稟議書を電子化することで、決裁までのスピードが向上します。

電子化された稟議書は、回覧者がどこにいてもオンラインで確認や承認ができるため、出張中やリモートワーク中でもスムーズに承認までの作業が進みます。

さらに、確認事項のコメントや修正そのものもオンラインで行えるため、修正したものをさらに回覧するまでの時間も短縮され、稟議を早く通せます。

紙の稟議書を印刷・保管するコストを削減できる

電子化により、紙の稟議書を印刷・保管するコストを削減できます。

印刷のための用紙やトナーインク、保管スペースを確保する費用などが不要になるため、経費削減につながります。保管スペースが不要となるため、社内の空き面積の確保もできるでしょう。

セキュリティを強化できる

電子化された稟議書は、セキュリティの強化にも役立ちます。

紙の稟議書は誰でも触れる上に記録も残らないため、不正な改ざんや漏洩、盗難などのリスクがあります。

電子化することで承認状況や修正履歴を可視化し、更新データを記録することも可能です。

保管の際もシステム上に閲覧者の履歴が残るため、改ざんやコピーなどの不正利用を防止し、内部統制を強化できます。

出社の必要がなくなりテレワークを促進できる

電子化された稟議書は、オンラインで作成から確認、承認までの手続きができるため、関係者全体のテレワークの促進につながります。

社内での印刷や承認の判子を押印するためだけに出社をする必要がなくなり、業務の柔軟性が上がります。

稟議書に使えるテンプレート・例文

稟議書の記載内容は、承認を得たい事項について回覧者に納得が得られるように漏れなく記載する必要があります。一般的に件名・目的・理由・内容・予算・期間などが記載されます。

次に、状況に応じた稟議書の例文を3パターン紹介します。

【例1.新規人員の増員を希望する稟議書】

件名:新製品開発プロジェクトを開始するための人員2名増員申請

目的:新製品開発プロジェクトが開始されることに伴い、開発部門の業務負荷が増加することが想定されるため、滞りなくプロジェクトを進行するためのシステムエンジニアを2名増員。

予算:¥1,500,000(内訳: 採用コスト¥1,000,000、教育訓練費¥500,000)

時期:202×年3月15日(プロジェクトの開始が6月)

申請者:田中太郎、開発部

【例2.備品購入に関する稟議書】

件名:新PC購入申請

購入目的:現在使用しているPCのサポート終了のため、新PCの購入

購入物品:PC Model X、10台

購入金額 :¥600,000(内訳: 1台¥60,000 × 10台)※見積書添付

注文会社:株式会社ABC

申請者:佐藤一郎、総務部

【例3.新プロジェクト立ち上げに関する申請】

件名:新製品「XXX」開発プロジェクト立ち上げ申請

プロジェクト概要:新製品「XXX」の開発のため、マーケティング、試作開発を行った上で、202×年内の市場販売を目指します。

添付書類:商品概要(価格設定・原材料・デザイン案など)、スケジュール

プロジェクト期間:202×年9月1日~202×年6月30日

必要予算:¥10,000,000(内訳: 試作費¥×××、人件費¥×××)

チーム構成:田中正義、渡辺祐介、佐藤花子

申請者:田中正義、開発部

これらの例を参考に、状況に応じた必要事項を記載した稟議書を作成してみてください。

また、下記のURLからいくつかのテンプレートからダウンロードをすることも可能です。

稟議は組織内での意思決定プロセス、電子化で効率化も

稟議は、組織内で新しい事項について意思決定を行う上で重要なプロセスです。「申し出て相談する」という稟議本来の意味が示すように、周りに承認を得るための手順を指します。

稟議書を作成する際には、受け取る人が理解して納得できるように、提案内容に関する必要事項を漏れなく記載することが大切です。

さらに、これまで主に使われてきた紙の稟議書を電子化することで、業務の効率化やセキュリティの向上が図れます。紙での稟議を続けている企業は、電子化を検討してはいかがでしょうか。


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