• 作成日 : 2023年12月22日

反社条項(暴力団排除条項)とは?契約書での書き方も具体例とともに紹介

反社条項(暴力団排除条項)とは?契約書での書き方も具体例とともに紹介

反社条項とは、契約を締結する際、双方が反社会的勢力に関係しないことを保証する条項です。企業が反社会勢力との取引を防いでコンプライアンスを遵守するために、契約書には反社条項を盛り込みましょう。今回は、反社条項が契約書に必要な理由や記載時のポイント、反社条項を遵守するために必要な反社チェックなどについて解説します。

反社条項(暴排条項)とは?

反社条項とは、契約を締結する際に反社会的勢力でないことや暴力的な要求行為などをしないことを相互に示し、保証するための条項です。暴排条項(暴力団排除条項)とも呼ばれます。

契約書に反社条項を定めておくことで、相手が反社会的勢力とわかった場合は、契約を直ちに解除し、損害賠償請求できるのがメリットです。

取引先が反社会的勢力だった場合、世間からバッシングを浴び、社会的信用が失墜してしまうリスクがあります。反社会勢力との取引を防ぎ、コンプライアンスを遵守するためにも、契約書の中には反社条項を盛り込むことが推奨されています。

そもそも反社とは?

そもそも反社は、反社会的勢力の略です。暴力や威力、詐欺的手法を駆使して、経済的利益を追求する集団や個人のことを指します。

反社会的勢力の具体例は以下のとおりです。

  • 暴力団
  • 暴力団構成員
  • 暴力団準構成員
  • 暴力団員でなくなってから5年を経過しない者
  • 暴力団関係企業(フロント企業)
  • 総会屋
  • 社会運動等標ぼうゴロ
  • 特殊知能暴力集団

暴力団と関係がある企業も反社に含まれるため、取引先選定の際は注意が必要です。

反社条項を契約書に入れるべき理由

契約書に反社条項を記載する理由としては、以下が挙げられます。

  • コンプライアンスを徹底するため
  • 社会的責任を果たすため
  • 自社が反社条項に違反するリスクを防ぐため
  • 反社会的勢力からの不当要求を回避するため

反社会的勢力と取引することは、反社会的勢力の活動を助長することにつながりかねません。また、反社会的勢力と取引をしてしまうことで、ほかの取引先と締結している契約書における反社条項に違反するリスクがあります。

さらに、取引中に暴行や強迫、詐欺などの手法で不当な要求をされるリスクも否定できません。不当要求を回避するためには、そもそも反社会的勢力との取引を拒否することが大切です。

このように、コンプライアンスを徹底して社会的責任を果たすだけでなく、自社をさまざまなリスクから守るためにも、契約書に反社条項を記載することが求められます。

反社条項を入れるべき契約書の種類

ここでは、反社条項を入れるべき契約書の種類とその理由などについて解説します。

  • 売買契約書
  • 賃貸借契約書
  • 請負契約書
  • 雇用契約書
  • 労働者派遣契約書
  • その他の契約書

売買契約書

売買契約書では、売主と買主が互いに反社会的勢力ではないこと、反社会的勢力に自己の名義を利用させて契約を締結していないことなどを表明するために、反社条項を記載します。

また、物件の引渡しや売買代金の支払いのいずれかが終了するまでに、以下の行為をすることを禁止することが大切です。

  • 相手に脅迫的な言動や暴力を用いる行為をする
  • 偽計または威力を用いて相手方の業務を妨害したり、信用を毀損したりする

万が一、相手が反社条項に違反していることが判明した場合は、事前の催告なしに契約を解除、損害賠償請求できることも定めましょう。

賃貸借契約書

賃貸借契約書では、特に反社会的勢力が賃借人となって当該物件を活動の拠点にすることを防ぐため、反社条項を記載しましょう。物件周辺で暴力的な行為等を行い、近隣住民とトラブルを起こすリスクもあるため、必ず反社条項を盛り込んでください。

条項に違反した場合は無催告で契約を解除できる旨、損害賠償請求しうる旨も記載し、トラブルに対処できるように備えましょう。

請負契約書

請負契約書でも、売買契約書と同様に双方が反社会的勢力ではないことを表明しておいた方が良いです。

請負契約は、請負人が仕事の完成を約束し、注文者がその対価として報酬を支払うことを約束するものです。個人事業主(フリーランス)と締結する業務委託契約の1種でもあります。

反社条項を記載し、万が一違反があった際はすぐに契約を解除、損害賠償請求できるようにしましょう。

雇用契約書

反社会的勢力を自社の従業員として雇用しないよう、雇用契約書にも反社条項を盛り込むべきです。

企業の社会的責任や企業防衛の観点から、反社会的勢力に関係がある人材を採用すべきではありません。従業員が反社会的勢力であると判明した場合は、直ちに雇用契約を解除する必要があります。そのためには、雇用契約書に反社条項を盛り込みましょう。

労働者派遣契約書

雇用契約書と同様に、労働者派遣契約書にも反社条項を入れるべきです。

労働者派遣契約は、人材派遣会社が雇用する従業員を、派遣先(受け入れ事業者)のもとで労働させるために締結するものです。

双方が反社会的勢力ではないこと、そして、人材派遣会社が反社会的勢力に関係する人材を派遣させないことを表明・確約するために、反社条項を記載しましょう。

その他の契約書

反社条項は、基本的にはあらゆる契約書に盛り込むべきです。

2007年の犯罪対策閣僚会議では、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」において、反社条項を契約書に盛り込むことが推奨されています。

参考:法務省 企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について

反社条項の具体例とポイント

ここでは、反社条項に記載する以下の必要事項について、それぞれポイントや例文を紹介します。

  • 反社会的勢力の定義/反社会的勢力に該当しないことの表明・確約
  • 反社会的勢力と密接な関係性を有しないことの表明・確約
  • 暴力的な要求行為等をしないことの確約
  • 違反時の契約解除
  • 違反時の損害賠償

反社会的勢力の定義/反社会的勢力に該当しないことの表明・確約

反社条項には、反社会的勢力の定義を示したうえで、現在から将来にかけてそれらに該当しないことを相互に表明・確約しましょう。

暴力団員でなくなってから5年を経過しない者についても、反社会的勢力に該当するため注意が必要です。

法人と契約する場合は、「本契約の当事者は、各自が相手方に対し、自身または自身の役員が〜〜」というように、表明・確約の範囲を拡大することがポイントです。

例文)

甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。

  1. 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。
  2. 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。

反社会的勢力と密接な関係性を有しないことの表明・確約

相手自身が反社会的勢力ではなくても、反社会的勢力と密接な関係を有している場合、取引には大きなリスクを伴います。

反社条項では、契約の締結日において、反社会的勢力と関係を持っていないことを相互に表明することが必要です。そして、将来にわたっても関係性を持たないことを確約する旨を定めましょう。

例文)

甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。

  1. 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。

暴力的な要求行為等をしないことの確約

反社会的勢力やその関係者に該当しないことだけではなく、暴力的な要求行為等をしないことも表明・確約することが必要です。

暴力的な要求行為等としては、具体的に以下のような行為が挙げられます。

  • 暴力的な要求行為
  • 法的な責任を超えた不当な要求行為
  • 取引に関して脅迫的な言動をしたり、暴力を用いたりすること
  • 風説を流布して相手の信用を毀損したり、業務を妨害したりすること

例文)

甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。

  1. この契約の有効期間内に、自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。

ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為

イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為

違反時の契約解除

反社条項に違反した場合、事前予告をすることなく直ちに契約を解除できる旨を定めておきましょう。

例文)

甲又は乙の一方について、この契約の有効期間内に次のいずれかに該当した場合、その相手方は、何らの催告を要せずして、この契約を解除できる。

  1. 前項1又は2の確約に反する申告をしたことが判明した場合
  2. 前項3の確約に反し契約をしたことが判明した場合
  3. 前項4の確約に反する行為をした場合

違反時の損害賠償

反社条項の違反があった際、契約解除を行った側からの損害賠償請求は可能としておきましょう。一方、契約解除された側、つまり違反した側から、契約解除について損害賠償請求をすることは禁止してください。

違約金を定める場合は、金額についても定めておくことが大切です。

例文)

第○項や前項の規定によりこの契約が解除された場合、解除された者は、相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として金○○○○円(売買代金の○%相当額)を支払うものとする。

反社条項を遵守するための反社チェックとは?

反社チェックとは、取引しようとしている相手が反社会的勢力に関係していないかを見極める調査のことです。

反社チェックを行った結果、取引先が反社会的勢力と判明した場合は、取引をストップしなければなりません。そのうえで、弁護士や警察に相談しましょう。その際は、「反社会的勢力と判明したため」という事実は伝えないようにすることが大切です。

反社チェックには、自社で行う方法と外部の機関に依頼する方法があります。

以下では、それぞれの方法について解説します。

自社で反社チェックを行う方法

自社で反社チェックを行う場合は、インターネットや新聞のデータベース検索が便利です。

会社名や代表の名前などとともに、「暴力団」「逮捕」「摘発」「違法」「脱税」といったネガティブなワードを入れて検索しましょう。相手が過去にトラブルを起こしていないかをチェックできます。

また、契約書の内容を確認する際の相手の反応も判断材料になるでしょう。相手が反社会的勢力ではない場合、反社条項の内容を変更しようとはしないはずです。一方、修正や削除を求められた場合は、反社会的勢力の疑いがあると考えられます。

そのほか、相手が提示する取引条件や内容に不審な点がある場合は、念の為詳細を確認することが大切です。

外部の機関に依頼する方法

信用調査会社や興信所など、外部の専門の機関に依頼することも可能です。

自社で反社チェックを行った結果、反社の可能性があると判断した場合は、外部機関の力を借りて詳細な調査を進めましょう。

また、警視庁の組織犯罪対策第三課や、公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターにも相談できます。

反社チェックについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

契約書に反社条項を記載しコンプライアンスを徹底しよう

反社条項は、反社会的勢力との取引を防止して自社をリスクから守るために欠かせない条項です。反社会的勢力と取引をしてしまうと、相手から不当な要求をされたり、社会的信用が失墜したりする恐れがあります。基本的には、すべての契約書に反社条項を盛り込むようにしましょう。また、契約前に反社チェックを行い、信頼できる相手であるかを見極めることも大切です。


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