• 更新日 : 2022年10月13日

ソフトウェア使用許諾契約についてわかりやすく解説!

ソフトウェアのように他者が保有する知的財産を使用する際、使用目的によっては使用許諾(ライセンス)を受ける必要があります。使用許諾を受ける際に用いられる契約が「使用許諾契約」です。知的財産を無断で使用すると、権利者が持つ知的財産権の侵害になりかねないため、注意が必要です。ここでは使用許諾契約の基本的知識を解説し、ソフトウェア使用許諾契約書のテンプレートを紹介します。

使用許諾契約とは

使用許諾契約(ライセンス契約)とは、著作権や商標権などの権利を持つ人が、第三者にその使用を許諾する際に締結する契約のことです。使用許諾契約の締結を要する場面はさまざまですが、インターネットが普及している昨今では、ソフトウェアに関する使用許諾契約が多く締結されています。

使用許諾とは

使用許諾とは、著作権や商標権などの知的財産権を保有する人が、ビジネスの相手方や消費者に対して権利の使用を許諾することです。使用許諾は、ライセンスと呼ばれることもあります。英語の「license」に由来し、「許諾する」という意味です。

権利の使用を許諾する側をライセンサー、許諾を受ける側をライセンシーと呼びます。

ライセンシーがライセンサーから使用許諾を受ける必要があるのは、知的財産権が持つ性質によるものです。

知的財産権とは「知的財産を他人に無断で使用されない権利」のことで、知的財産の種類に応じて法律で保護されています。

例えば、ソフトウェアに含まれるプログラムは著作物に該当し、著作権法によって保護されています。著作権法では第三者が著作権を侵害した場合、その行為を停止するように請求する権利(差止請求権)や損害賠償を請求する権利が認められています(著作権法 第112条1項・第114条3項 )。

ライセンサーの 著作権を侵害しないように、ライセンシーはライセンサーから許諾を受けます。そうすることで、使用許諾契約で定められた範囲であれば知的財産を利用できるようになります。

使用許諾契約はライセンサーの知的財産を守り、ライセンサーとライセンシーのトラブルを防止する役割を担っています。想定外のトラブルを避けるためにも、ライセンスや使用許諾契約について正しい知識を身に付けることが大切です。

利用規約との違い

使用許諾と利用規約は、どちらも当事者間のトラブルを防止するためのものですが、目的が異なります。

前述のとおり、 使用許諾契約は知的財産権を保有する人の権利を侵害しないために締結するものです。ライセンシーにとっては、差し止め請求や損害賠償請求を受けるリスクを回避するためにあるともいえるでしょう。

一方で 利用規約は、サービスを提供する側が利用者に対して、サービスを利用する際のルールを提示するものです。最近は、アプリやインターネット上のサービスを利用する前に利用規約を提示し、利用者が同意するとそれらを利用できるといったケースが多いでしょう。

利用規約には複数の役割があります。サービス提供者と利用者間でトラブルが生じた際、 サービス提供者または利用者の対応が問題ないことの根拠となることや、状況によってはサービス提供者の問題行為の根拠となることもあります。

使用許諾契約の内容

使用許諾契約を締結する際は、知的財産の対象やライセンシーが利用できる権利の範囲を明確にすることが大切です。ライセンサーとライセンシーの間のトラブルを防止するためにも、使用許諾契約で定める条件と当事者が希望する条件が一致しているかどうかを確認しておきましょう。

ここでは、一般的に使用許諾契約書に記載される項目について順番に解説します。

使用許諾

「使用許諾」では、ライセンシーが契約の対象を利用できる地域や期間、使用範囲など使用許諾契約に関する基本的な内容を記載します。当事者間で認識のずれがないように、すり合わせをしっかり行いましょう。

再許諾

使用許諾契約のポイントの一つに、「再許諾(サブライセンス)が可能かどうか」があります。再許諾とは、ライセンシーが第三者へ契約対象を使用させることをライセンサーが許諾することです。

ライセンサーが再許諾を認める場合は、将来ビジネスチャンスが広がる可能性がありますが、ライセンサーが望まない形で権利を利用されるリスクもあります。

再許諾を認める際は、慎重に判断することが大切です。

目的外使用の禁止

使用許諾契約の対象に対して、ライセンシーによる使用目的の範囲を明確にしておかないとライセンサーが望まない形で使用されるリスクがあります。それを防ぐために、契約で定めた目的以外の使用を禁止する旨を定めておくとよいでしょう。

対価

使用許諾契約は有償のケースも無償のケースもありますが、ライセンシーが対価を支払うケースで内容を曖昧にしておくと、トラブルが生じやすくなります。

以下のような詳細のすり合わせを、当事者間で行っておくことが大切です。

  • 一時金の有無
  • 支払い方法(定額方式・ロイヤリティ方式)
  • 支払いの時期
  • 販売費用の負担者 など

支払い方法の定額方式は「年間〇万円」のように定額を定める方式、ロイヤリティ方式は「ライセンシーが得た売上金額×〇%」と定める方式です。ロイヤリティ方式の算出根拠となる売上金額には、その売上を得るためにかかった費用を含めるかどうか、消費税を含めるかどうかなど、詳細まで定めておきましょう。

権利帰属

権利帰属では、使用許諾契約の対象となっている知的財産の権利の所在を明確にします。この項目を設ける目的は、使用許諾契約を締結した後で、知的財産権も一緒に移転したとライセンシーに捉えられるリスクを回避することです。

「記載しなくてもわかるだろう」と考えていると、後でトラブルが生じるかもしれません。確認の意味も含めて、ライセンサーの権利がライセンシーに移転しないことを明記しておきましょう。

禁止事項

使用許諾契約では、ライセンサーがライセンシーに対して禁止する事項を定めることもできます。

例えば、ソフトウェアのプログラムは著作権法で保護されていますが、プログラムが正しく作動するためのバグの修正や機種変更に伴う改変は、著作権法による権利保護の対象外です。

その他、ライセンサーがライセンシーに対して禁止したいことがある場合は、別途定めておくとトラブル防止につながります。

保守

使用許諾契約を締結する際は、保守面についても記載しておくことが大切です。

例えば、ソフトウェア使用許諾契約において「使用許諾契約はあくまでも使用許諾に関する契約であり、保守サービスについては別途サポートサービス契約を締結する必要がある」といった内容を記載します。

監査

ライセンサーが許諾した権利の利用状況を確認するため、監査権やライセンシーによる報告義務を定めておく項目です。

【ライセンシーによる報告内容の例】

  • 報告すべき期間
  • 販売数量
  • 総販売額 など

また、ライセンサーが契約対象の利用状況を正確に把握するために、ライセンシーが利用していない場合も報告書を提出するように定めることもあります。

表明保証

表明保証では、使用許諾契約の対象についてライセンサーが保証することや、保証責任を負わないことなどを定めます。

ソフトウェア使用許諾契約の場合は、以下の内容を記載しておくとよいでしょう。

  • ライセンシーがソフトウェアを購入した後、〇日間はライセンサー所定の仕様どおりに稼働することを保証し、機能障害が生じた場合は補修する。
  • ライセンサーの定める仕様どおりに使用しないことで生じたトラブルについては、保証しない。

第三者による権利侵害

使用許諾契約の対象について第三者による権利侵害があった際、どちらが対応するのかを定めておく項目です。

一般的に、ライセンシーが使用許諾契約の対象を用いてビジネスを行う場合、そのビジネスによるリスクへの対策はライセンシーが行うべきと考えるケースが多いです。しかし、第三者による権利侵害が生じた際に、ライセンサーによる手助けが必要になることもあります。

そこで、「問題が生じた場合、速やかに相手方へ通知する」という内容を記載しておきます。

訴訟を行う場合に訴訟費用をどちらが負担するのかも併せて明記しておくと、トラブルが生じた場合でもスムーズに対応できるでしょう。

契約終了の際の措置

契約終了の際の措置では、使用許諾契約で定めた期間が終了した時に、ライセンシーがとるべき対応について定めます。

例えば、使用許諾契約の対象がソフトウェアの場合はバックアップ用の複製を消去する、ソフトウェア関連の資料を廃棄するといった内容が挙げられます。

使用許諾契約書のテンプレート

前章で解説した項目を含むソフトウェア使用許諾契約書のテンプレートを紹介しますので、参考にしてください。

署名ありのテンプレートは下記のページからダウンロードできます。

署名なしのテンプレートは下記のページからダウンロードできます。

使用許諾が必要な時

他者が保有する知的財産を使用する際、使用目的によっては権利者から使用許諾を受ける必要があります。知的財産権は複数の権利に分類されるため、対象の知的財産によって適用される法律が異なります。

例えば、使用許諾契約で用いられることが多いソフトウェアは著作物であるため、著作権法の対象、企業に関わりの深い商標は商標法の対象です。

ここでは、著作物や商標の使用許諾について解説します。

著作物を利用する時

著作物を使用する際は、使用目的によっては権利者から使用許諾を受ける必要があります。著作物は思想または感情を創作的に表現したもので、ソフトウェアの他に写真や美術品、映画なども含まれます。

上の図は、著作物の利用可否を判断するためのチャートです。参考にしてください。

著作権は創作物が創られた時点で自動的に付与される権利なので、権利の取得に申請・登録は不要です。権利者の権利を侵害しないように、許諾を要する場合は必ずお伺いを立てましょう。

商標を利用する時

商標とは、自社が取り扱う商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマークのことで、文字や図形、記号などさまざまなタイプがあります。特許庁に商標を登録することで得られる権利が「商標権」です。

商標権を有する企業には登録商標の使用を専有する権利がありますが、「通常使用権」によって第三者に対してその使用を許諾することもできます。

ライセンサーが通常使用権を第三者へ許諾するとライセンシーから対価を得ることができ、ライセンシーは使用許諾契約の範囲内で使用することができるようになります。

使用許諾(ライセンス)は適切な管理が大切

使用許諾(ライセンス)契約は、ライセンサーとライセンシーの双方が内容を正しく理解した上で締結することが大切です。そうすることで、ライセンサーの知的財産が保護されるだけでなく、ライセンシーにとってもライセンサーによる差し止め請求や損害賠償請求のリスク回避につながります。

知的財産権は目に見えない権利ですが、権利者にとって大切な資産です。使用許諾契約を締結する際はお互いを尊重しつつ、当事者間でしっかりすり合わせを行いましょう。

参照:著作権法|e-Gov法令検索

よくある質問

使用許諾(ライセンス)契約とは何ですか?

使用許諾契約とは、著作権や商標権などの知的財産権を保有する人が、第三者にその使用を許諾するために締結する契約のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

使用許諾契約を締結する際に注意することは何ですか?

使用許諾契約の対象である知的財産権は目に見えない資産なので、契約の対象や利用範囲、ライセンシーの利用目的など詳細を明確に定めることが大切です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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