• 更新日 : 2024年9月10日

OEM契約書とは?テンプレート付きでライセンス契約との違いや記載事項を解説

OEM契約は、自社ブランドの商品を作る際、製造工程を他社に委託する場合に締結するものです。製造にかかるコストを削減できたり、製造量を短期間で増加できたりするなど、OEMの活用には多くのメリットがあります。今回は、OEM契約の概要やライセンス契約との違い、契約書に記載すべき事項や便利なテンプレート、注意点などを解説します。

OEM契約書とは?

OEM契約とは、自社ブランドの商品を作る際、製造過程を他社に委託する場合に締結する契約です。

そもそもOEMは「Original Equipment Manufacturing」の略で、メーカーが自社ブランドではない商品を製造することや、そういった製造を請け負う企業を指す言葉です。

以下では、OEM契約と混同しやすい、ライセンス契約と製造委託契約との違いについて解説します。

ライセンス契約との違い

ライセンス契約とは、自社ブランド商品の製造や販売、商標の使用などを、指定の時期やエリアにおいて包括的に許諾する契約のことです。主に、商品の特許や商標など、知的財産権の利用を許諾する契約といえます。委託側は、その対価としてライセンス料を受け取ります。

一方、OEM契約はあくまでも製造を委託する契約です。委託側が、OEMメーカーに販売を許可するわけではありません。

製造委託契約との違い

製造委託契約とは、商品の製造を委託する契約全般のことであり、OEM契約も、製造委託契約の一種です。

製造委託契約には、ほかにも、ODM(Original Design Manufacturing)契約があります。ODM契約は、製造だけでなく、商品の企画・開発から他社に委託する契約のことです。

ODM契約を締結することで、販売以外のほとんどの工程を外注できます。そのため、商品開発や製造の技術やノウハウがない企業も、気軽に自社ブランド商品を販売できるのがメリットです。

OEM契約を結ぶメリット

ここでは、OEM契約を締結するメリットを、委託側と受託側(OEMメーカー)、それぞれわけて解説します。

委託側から見たOEM契約のメリット

委託側がOEM契約を締結すること、つまり製造をOEMメーカーに委託するメリットは、以下のとおりです。

  • 製造機能がなくても自社ブランドの商品を製造・販売できる
  • 製造にかかるコストを削減できる
  • 短期間で商品の供給量を増加させられる
  • 製造以外の業務に注力できる

自社で工場を持たない企業も、OEM契約を締結することで、自社ブランドの商品を製造・販売できます。自社で新たに製造設備を用意したり、人員を確保したりする必要がないため、製造コストを削減できるのもメリットです。

自社で製造設備を有している場合も、OEMを活用することで、短期間で商品の供給量を増加できます。一時的な需要増加に対応したい企業にもおすすめです。

さらに、製造過程をすべて委託できるため、商品開発やマーケティング、広報など、製造以外の業務に注力しやすくなるというメリットもあります。

受託側から見たOEM契約のメリット

受託側、つまり製造を請け負う側から見たOEM契約のメリットは、以下のとおりです。

  • 安定した収益を得られる
  • 製造ラインの稼働率アップが期待できる
  • 製造技術を向上させ、ノウハウを蓄積できる

OEM契約では、まとまった期間、一定量を受注できるケースが多く、安定した収益を得やすいでしょう。製造ラインが稼働していない時間帯に他社商品を製造できれば、稼働率をアップさせ、効率よく収益を確保することも可能です。

さらに、委託側が指定する方法や技術で製造を行うため、製造技術の向上やノウハウ蓄積にもつながります。

OEM契約を結ぶデメリット

一方、OEM契約を締結することにはデメリットもあります。メリットとデメリットを比較して、OEM契約を結ぶかを判断しましょう。

以下では、委託側と受託側、それぞれにとってのデメリットを解説します。

委託側から見たOEM契約のデメリット

委託側にとってのデメリットは、以下のとおりです。

  • 商品に関する重要な情報が流出する恐れがある
  • 品質が落ちてしまうリスクがある
  • 製造技術やノウハウを自社で蓄積するのが難しい

OEMメーカーに依頼する際は、商品に関する重要な情報を開示する必要があります。情報の流出や不正利用を防ぐためには、OEM契約書の中で、情報漏えいや目的外使用を禁止する旨を定めなければなりません。

品質管理体制が不十分なメーカーに依頼してしまい、不具合品が相次ぎ、品質が落ちてしまうリスクもあります。OEMメーカーの見極めが重要です。

また、自社で製造を行わなくなるため、製造技術やノウハウを自社で蓄積するのが難しいのも課題です。OEMメーカーに依存しすぎないよう、製造技術を持った人員の育成や、技術力向上に向けた取り組みを行う必要があります。

受託側から見たOEM契約のデメリット

受託側から見たデメリットは、以下のとおりです。

  • 自社ブランドの商品としては販売できない
  • 製造技術が流出する恐れがある
  • 委託側より立場が弱くなってしまう傾向にある

OEMメーカーのブランドの商品としての販売はできないため、自社ブランドの育成や認知度アップにはつながりません。

また、自社が持つ製造技術が、委託側に流出するリスクもあります。委託側と同様に、秘密保持義務に関する条項を契約書に盛り込むことが大切です。

さらに、発注の有無や数量などを委託側がコントロールするため、委託側に比べて立場が弱くなりやすい点にも注意しましょう。

OEM契約書のひな型・テンプレート(ワード)

OEM契約書をスムーズに作成するためには、ひな型(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。

ひな型は、そのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな型を選ぶのがおすすめです。

以下より、OEM契約書のテンプレートをダウンロードできます。適宜加筆修正して活用してください。

OEM契約書の記載事項や作成ポイント

OEM契約書には、以下のような条項を盛り込む必要があります。

  • 取引内容・目的
  • 商標の使用
  • 発注方法や数量
  • 検査や不合格品の扱い
  • 商品の損害時の責任や負担
  • 代金の支払い
  • 工業所有権に関する損害
  • 秘密保持
  • 権利の譲渡
  • 契約の有効期間や解除

ここでは、OEM契約書に記載する主な事項と、それぞれのポイントについて見ていきましょう。

取引内容・目的

OEM契約書には、OEMメーカーに製造を依頼する商品の内容やサイズ、材料、製造方法、商標の表示方法といった取引内容や、OEMの目的を記載します。

OEMでは、他社に製造してもらった商品を自社ブランドとして売り出すため、取引内容については細かく決めておかなければなりません。

仕様が複雑な場合や、複数製品の製造をまとめて委託する場合は、別途仕様書を作成し、詳細を記載するケースが多く見られます。

商標の使用

商品に商標を表示できる旨や、使用する商標の種類、商法の使用方法についても規定が必要です。

また、契約で決めた商品以外に商標を使用することを禁止する旨や、商標を付した商品を、許可なく第三者に販売・譲渡してはならない旨も、定めておきましょう。

発注方法や数量

発注方法や数量についても記載します。

OEM契約では、全体の数量だけでなく、期間ごとの最低発注数を定めるケースがほとんどです。一定以上の発注がなければ、OEMメーカーが負担するコストがかさんでしまうためです。

依頼側が最低発注数を守らなかった場合、後述のとおり下請法違反に該当する可能性があります。

また、大量に発注することを前提に通常よりも安い単価で契約し、実際は少ししか発注しない、という行為も、OEMメーカーの利益を損なうため避けてください。

検査や不合格品の扱い

納入された製品が、一定の品質や規定の使用を満たしているかを検査するため、検査内容や検査結果の通知期限などを決めておきましょう。

同一商品の製造を大量に依頼する場合は、一部を抜き取る検査や、商品に傷や汚れなどがないか、外観をチェックする検査を行うことが多いです。

さらに、検査によって発生した不合格品の取り扱いについても記載しましょう。

商品の損害時の責任や負担

当事者に責任のない理由によって、完成した商品が損害を受けるリスクを想定し、どちらが損害を負担するかのルール(危険負担)を決めておかなければなりません。

たとえば、自然災害が発生して商品が破損し、納品できなかったとします。民法では、債務が履行されなかった場合、それが債務者の責任ではなかった場合でも、債権者は反対給付の履行を拒めるものとされています。つまり、自然災害の発生はOEMメーカーの責任ではないものの、委託者は費用を支払う義務を負わない、ということです。

万が一の事態に備え、危険負担についても定めておく必要があります。

参考:e-Gov法令検索 明治二十九年法律第八十九号 民法

代金の支払い

代金の支払い方法や期日についても明記しましょう。

特に、OEM契約に下請法が適用される場合は、納入日から60日以内に代金を支払う必要がある点に注意が必要です。

また、銀行振り込みの場合、振込手数料をどちらが負担するかについては、トラブルを防ぐためにも忘れずに記載してください。

工業所有権に関する損害

工業所有権については、「OEMメーカーが、製造にあたって第三者の工業所有権を侵害しないこと」を保証する旨を記載するケースが多いです。

工業所有権には、以下の4つがあります。

  • 特許権:発明を保護するための権利
  • 商標権:商品やサービスに使用する商標(ブランド名やロゴなど)に対して与えられる権利
  • 実用新案権:物の構造や形状、組み合わせなどのアイデアを保護するための権利
  • 意匠権:物や建築物などのデザインに対して与えられる権利

秘密保持

OEM契約には、秘密保持に関する条項も含めることが必要です。

OEM契約では、製品に関する情報や製造に関するノウハウなど、双方が重要な情報を開示することになります。情報の流出や不正利用を防ぐために、秘密情報の定義や、目的外使用を防ぐ旨、秘密保持義務を履行しなかった場合の対処法などを定めておきましょう。

権利の譲渡

OEM契約では、完成した商品の所有権は委託者に帰属します。

所有権がいつ移転するかは、危険負担にも関わるため、明確にしておくことが大切です。

契約の有効期間や解除

継続的な取引になる場合は、契約の有効期間や自動更新などについて定めておきましょう。基本的に、契約期間が長い方が受託者に有利であり、短い方が委託者に有利となります。

また、契約解除できる事由や、いつまでに解除を申し出るかなども明記してください。正当な理由や同意なく、一方的に契約を解除することは不可能です。しかし、相手に債務不履行があった場合や、契約で定めておいた事由に該当する場合などは、契約を解除できます。

OEM契約書が締結されるまでの流れ

OEM契約書を作成し、契約を締結するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 契約内容を確認する
  2. ドラフトを作成する
  3. 製本する
  4. 記名・押印する
  5. 契約書を保管する

それぞれのステップについて解説します。

契約内容を確認する

まずは、当事者間で合意した内容を明確化し、OEM契約書に盛り込めるようにしましょう。

OEMメーカーに製造を依頼する商品の使用や数量、金額など、契約内容を確認します。

ドラフトを作成する

契約内容の確認後、OEM契約書のドラフトを作成し、双方で確認しながら必要に応じて加筆・修正します。契約書のひな型を活用すれば、スムーズにドラフトを作成できるでしょう。

相手に契約書を作成してもらう場合は、自社にとって不利な契約になっていないか、ドラフトを入念にチェックしてください。

製本する

ドラフトの確認が完了したら、契約書を製本します。当事者双方で契約書を保管できるよう、2部(ほかにも当事者がいる場合は、その数分)用意してください。

契約書が複数ページにわたる場合は、ホッチキスや製本テープを使い、袋とじで製本しましょう。袋とじにすることで、1枚1枚に契印を押す必要がなくなり、改ざんのリスクも防げます。

記名・押印する

2部ともに記名・押印し、契約締結が完了します。

2部の契約書が同一のものであることを示せるよう、割印を押すことが慣例です。契約書を重ねて、2部をまたぐように割印を押しましょう。

また、契約書が複数ページある場合は、改ざんやページの差し替えを防げるよう、つなぎ目や綴じ目にまたがるように契印を押すことが多いです。

契約書を保管する

双方で取り交わしたOEM契約書は、互いに1部ずつ保管しましょう。

紙の契約書の場合は、後で確認できるよう、ファイリングして保管するのが適切です。

持ち出しや改ざんを防ぐために、施錠できる安全な場所に保管してください。

電子契約書なら、システム上で契約書の確認や締結、保管が完結します。自動でデータを保管でき、必要な契約書をすぐに調べて参照できるため、契約書の管理を効率化したい方には、電子契約システムの活用がおすすめです。

OEM契約書に関する注意点

OEM契約書を作成し、契約を締結する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 商標の転用やコピー品が流出するリスクを想定する
  • 契約内容が下請法に違反していないかを確認する
  • 取引を継続する際は、契約内容を見直す

ここでは、それぞれの注意点について解説します。

商標の転用やコピー品が流出するリスクを想定する

悪質なOEMメーカーも存在するため、商標を転用されたり、コピー品が流出したりするリスクがある点には注意が必要です。

たとえば、OEMメーカーが発注数よりも多くの数量を製造し、それを横流しした場合、知らないところで自社ブランドの商品が出回ることになります。

このようなリスクを想定し、商標の使用や工業所有権の侵害のような条項を盛り込み、リスクに備えることが大切です。

契約内容が下請法に違反していないかを確認する

OEM契約では、委託者よりも受託者の立場が弱くなりやすいため、取引に下請法が適用される場合があります。その際は、契約内容が下請法に違反していないかをチェックしなければなりません。

そもそも下請法とは、親事業者と下請事業者間の取引において、立場が弱い傾向にある下請事業者を保護するための法律です。

下請法では、親事業者の禁止行為として、注文した物品の受領拒否、買い叩き、下請代金の減額や支払い遅延などを定めています。

OEM契約に下請法が適用される場合は、下請法の規定に沿って契約書を見直しましょう。

取引を継続する際は、契約内容を見直す

取引を継続する際は、改めて契約内容を見直すことが大切です。

取引が継続的に行われると、途中で取引内容が変わってしまい、契約書の内容と一致しなくなる場合があります。

契約内容を変更する際は、覚書を作成して対応しましょう。契約の大部分を変更する場合は、契約書を新たに作成して、契約を締結し直す必要があります。覚書については、下記記事で詳しく解説しています。

適切なOEM契約を締結してビジネスを加速させよう

OEM契約は、製造を他社に委託して、自社ブランドの商品を生産する場合に締結する契約です。OEM契約を締結する際は、商品や製造技術に関する重要な情報が漏えいしたり、品質が低下したりするリスクを防げるよう、必要事項を契約書に盛り込むことが欠かせません。適切なOEM契約を締結し、OEMをうまく活用してビジネスを加速させましょう。


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