- 更新日 : 2024年8月29日
標準貨物自動車運送約款とは?ひな形をもとに基本項目を解説
標準貨物自動車運送約款とは、貨物自動車運送取引についての約款のことです。運送事業者は、同一の内容を自社の運送約款とすることで、国土交通大臣の認可を受けたものとみなされます。今回は、概要や基本項目をひな形をもとに解説します。便利なテンプレートも紹介しているため、運送約款を設定したい運送事業者は必見です。
目次
標準貨物自動車運送約款とは?
標準貨物自動車運送約款(ひょうじゅんかもつじどうしゃうんそうやっかん)とは、貨物自動車運送の取引に関する基本的な事項が定められた約款のことです。国土交通大臣が定める標準運送約款のうち、一般貨物自動車運送事業用の標準運送約款のことを指します。
荷主の正当な利益を保護し、事業者が適正に運賃や料金を収受できるよう、さまざまな事項が定められているのが特徴です。
標準貨物自動車運送約款は、各事業者が定めるものではなく、国土交通大臣が定めた見本のようなものであると理解しておきましょう。そのため、必ずしも標準貨物自動車運送約款と同様の運送約款を定める必要はありません。
しかし、多くの貨物自動車運送事業者が、標準貨物自動車運送約款と同一の内容を、自社の約款と定めています。
貨物自動車運送事業者は、貨物自動車運送事業の許可を受けて、運送約款を定めて国土交通大臣の認可を受けることが必要です。その際、国土交通大臣が定める「標準貨物自動車運送約款」と同一の内容を、自社の運送約款として定める場合は、国土交通大臣の認可を受けたものとみなされます。
参考:国土交通省 標準運送約款
そもそも運送約款とは
そもそも運送約款とは、運送人と荷主との間で、運送契約の内容を定めたものです。
また、約款とは、同種の取引を迅速かつ効率的に行うために作成された、定型的な内容の取引条項のことです。大量の取引を行う場合、一つひとつに契約条件を定めて契約を締結していると、手間がかかってしまいます。約款を作成することにより、スムーズな取引が可能です。
個別に契約条件を取り決めていない取引については、約款で定めた内容が共通して適用されます。
標準貨物自動車運送約款の改正
標準貨物自動車運送約款は、過去に2回改正されています。
2018年11月には、運送の対価としての運賃と運送以外の役務等の対価としての料金を適正に収受できる環境を整備するために、以下のような改正が行われました。
- 運送状の記載事項として、「積込料」、「取卸料」、「待機時間料」等の料金の具体例を規定する
- 料金として積込み又は取卸しに対する対価を「積込料」および「取卸料」とし、荷待ちに対する対価を「待機時間料」と規定する
- 付帯業務の内容として「横持ち」等を明確化する
そして、2019年4月にも改正されています。商法および国際海上物品運送法の一部を改正する法律の施行に伴い、改正の趣旨を反映させるためです。商法改正を反映させた標準貨物自動車運送約款を使用するためには、以下の2つが必要です。
- 新標準約款を主たる事務所その他営業所に掲示する
- 運賃および料金の変更届出を行う(改正の趣旨を含まない約款を使用している事業者が、改正後の標準約款を使用する際)
標準貨物自動車運送約款のひな形・テンプレート(ワード)
前述のとおり、国土交通大臣が定める標準貨物自動車運送約款と同一の内容を自社の運送約款として定めることにより、国土交通大臣の認可を受けたものとみなされます。
運送事業者が独自の運送約款を作成することも可能ですが、その際は国土交通大臣の認可を得る必要があります。負担が大きく、適切な運送約款を自社だけで作成することはハードルが高いでしょう。
そのため、標準貨物自動車運送約款と同一の内容を運送約款とすることが効率的です。
標準貨物自動車運送約款に従った約款のひな形・テンプレートは、以下よりダウンロードできます。運送約款の作成に、ぜひ活用してください。
標準貨物自動車運送約款の主な条項
標準貨物自動車運送約款は、3つの章から成り、第一章は総則、第二章は運送業務、第三章は附帯業務について記載されています。
ここでは、 標準貨物自動車運送約款の主な条項と、その内容について見ていきましょう。
- 標準貨物自動車運送約款第4条:運送の順序
- 標準貨物自動車運送約款第6条:貨物の種類及び性質の確認
- 標準貨物自動車運送約款第7条:引受拒絶
- 標準貨物自動車運送約款第8条:送り状等
- 標準貨物自動車運送約款第31条:運賃、料金等の収受方法
- 標準貨物自動車運送約款第44条:免責
- 標準貨物自動車運送約款第47条:損害賠償の額
標準貨物自動車運送約款第4条:運送の順序
第4条は、運送する順序について定められた条項です。
基本的には、運送の申込みを受けた順番に運送します。
ただし、腐敗しやすいものや変質しやすいものを運送する場合や、そのほか正当な事由がある場合はその限りではない、と定められています。
標準貨物自動車運送約款第6条:貨物の種類及び性質の確認
第6条は、必要に応じて貨物の種類や性質を確認できることを定めた条項です。
運送の申し込みを受けた際、貨物の種類や性質を明示するよう、申込者に求める場合があります。さらに、申込者の申告が疑わしい場合は、申込者の同意と立ち会いのもと、貨物を点検することがある、という内容です。
点検した結果、申込者の申告どおりであった場合は、点検によって生じた損害の賠償を運送事業者が負担しなければなりません。一方、申告と異なる内容であった場合は、点検にかかった費用を申込者に負担させます。
標準貨物自動車運送約款第7条:引受拒絶
第7条には、運送の引受を拒絶する場合についての規定が記されています。この条項に掲げる場合を除き、運送事業者は運送契約を拒めません。
標準貨物自動車運送約款では、以下のように規定されています。
- 当該運送の申込みが、この運送約款によらないものであるとき
- 申込者が、前条第1項の規定による通知をせず、又は同条第2項の規定による点検の同意を与えないとき
- 当該運送に適する設備がないとき
- 当該運送に関し、申込者から特別の負担を求められたとき
- 当該運送が、法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するもの
- であるとき
- 天災その他やむを得ない事由があるとき
標準貨物自動車運送約款第8条:送り状等
第8条には、荷送人が提出する送り状について、必要な記載事項が以下のように指定されています。
- 貨物の品名、品質及び重量又は容積並びにその荷造りの種類及び個数
- 集貨先及び配達先又は発送地及び到達地(団地、アパートその他高層建築物にあっては、その名称及び電話番号を含む。)
- 運送の扱種別
- 運賃、料金(第32条に規定する積込料及び取卸料、第33条に規定する待機時間料、第60条第1項に規定する附帯業務料等をいう。)、燃料サーチャージ、有料道路利用料、立替金その他の費用(以下「運賃、料金等」という。)の額その他その支払に関する事項
- 荷送人及び荷受人の氏名又は商号並びに住所及び電話番号
- 高価品については、貨物の種類及び価額
- 貨物の積込み又は取卸しを委託するときは、その旨
- 第六十条第一項に規定する附帯業務を委託するときは、その旨
- 運送保険に付することを委託するときは、その旨
- その他その貨物の運送に関し必要な事項
そして、上記の事項を記載した送り状を、署名または記名捺印の上、荷送人が1口ごとに提出することが必要です。
なお、運送人の承諾を得れば、送り状を交付する代わりに、上記の記載事項を電磁的方法により提供できます。
標準貨物自動車運送約款第31条:運賃、料金等の収受方法
第31条では、運賃、料金等の収受方法について定められています。
民法633条によると、請負契約において、報酬が支払われるのは仕事が完成した後です。つまり、運送品を引き渡した後に支払われます。しかし、自動車貨物運送事業においては、荷受人に運送品を引き渡すまでに、運賃や料金を収受することが原則とされているのがポイントです。
第31条では、その旨と、運賃や料金の額が確定しない場合の対応について記載されています。最終的な金額が、運送品を引き渡した後に確定するケースは少なくありません。金額が確定しない場合は、概算額をはじめに収受し、確定後、荷送人に対して払い戻しや追徴で過不足分を処理する、とされています。
標準貨物自動車運送約款第44条:免責
第44条では、免責事由について定められています。
運送人の責任については、契約で定めることができます。そのため、免責約款を設けられるのがポイントです。
第44条では、運送人が責任を負わなくてよいケースを類型化して、免責事由として定めています。具体的には、損害賠償の責任を負わない事由について以下のように定められています。
- 当該貨物の欠陥、自然の消耗、虫害又は鼠害
- 当該貨物の性質による発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さびその他これに類似する事由
- 同盟罷業、同盟怠業、社会的騒擾その他の事変又は強盗
- 不可抗力による火災
- 地震、津波、高潮、大水、暴風雨、地すべり、山崩れ等その他の天災
- 法令又は公権力の発動による運送の差止め、開封、没収、差押え又は第三者への引渡し
- 荷送人又は荷受人の故意又は過失
標準貨物自動車運送約款第47条:損害賠償の額
第47条は、損害賠償額の算出方法を定めた条項です。
第44条で定めた免責事由に該当しない場合は、原則として運送人が損害賠償の責任を負うこととなります。第47条では、損害賠償額の算出方法について、以下のように定められているのがポイントです。
- 貨物に全部滅失があった場合は、貨物の引き渡しがされるべき地および時における貨物の価額によって定める
- 一部滅失または損傷があった場合は、貨物の引き渡しがされるべき地および時における、引き渡された貨物の価額と、滅失や損傷がなかったときの貨物の価額との差額によって定める
- 貨物が延着した場合の損害賠償の額は、運賃や料金の総額を限度とする
- 貨物の価額や損害額について争いがある場合は、公平な第三者の鑑定または評価によって決定する
運送人は、第47条で定められたとおりに賠償額を支払う必要があり、荷送人はそれ以上の請求はできません。
標準運送約款の種類
国土交通大臣は、標準貨物自動車運送約款以外にも、以下の標準運送約款を定めています。
種類 | 関連する事業 |
---|---|
標準宅配便運送約款 | 宅配便 |
標準引越運送約款 | 一般貨物自動車運送事業によって行う引越運送や荷造り、不用品の処理など |
標準貨物軽自動車運送約款 | 自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車)を使用して貨物を運送する、貨物軽自動車運送事業 |
標準貨物軽自動車引越運送約款 | 自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車)を使用して引越を行う、貨物軽自動車引越運送事業 |
標準霊きゅう運送約款 | 霊きゅう自動車を使用して遺体を運送する事業 |
標準貨物自動車特定信書便運送約款 | 特定信書便事業および一般貨物自動車運送事業として行う、信書便物(※)の送達に関する事業 |
標準貨物軽自動車特定信書便運送約款 | 特定信書便事業及び貨物軽自動車運送事業として行う、信書便物の送達に関する事業 |
※信書とは、特定の受取人に差出人の意思を表示する、または事実を通知するための文書のこと。請求書や領収書、契約書、免許証、住民票の写しなどが該当する。
いずれも、自社で運送約款を定める際の見本にしてください。
標準貨物自動車運送約款の内容をもとに運送約款を定めよう
自社の運送約款を定める際は、標準貨物自動車運送約款の内容をもとにしましょう。運送約款の見本のような存在であり、同一の内容を自社の運送約款にすることにより、認可を受ける手間が省けます。まずは、標準貨物自動車運送約款に記載されている条項と詳細を理解することが大切です。
また、適切な運送約款を効率よく作成したい方は、テンプレートを活用するのがおすすめです。ワード形式でダウンロードできるものであれば、簡単にカスタマイズできます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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