- 作成日 : 2024年12月3日
サブスクリプション契約とは?保守契約との違いや会計処理について解説
近年普及しているサブスクリプション(サブスク)サービスを利用する際にはサブスクリプション契約を締結します。この記事では商品・サービスをサブスク形式で提供したいと考えている事業者の方向けに、サブスクリプション契約書の書き方やサブスクのメリット・デメリット、類似の契約との違いについてご紹介します。
目次
サブスクリプション契約とは
サブスクリプション契約とは、消費者が料金を支払うことで一定期間商品・サービスを利用できる権利を得られる契約形態を指します。例えばサービスの対象会社Aとその顧客Bが1カ月間のサブスクリプション契約を締結した場合、Bは料金を支払う代わりに、Aが提供しているサービスを1カ月間にわたって利用することができます。
保守契約との違い
保守契約とは購入した設備やソフトウェアのメンテナンス、修理に関する契約です。サブスクリプション契約との大きな違いは、商品の購入がともなう点です。消費者はまず売買契約やライセンス契約などを締結して商品を購入します。その後、保守サービスが必要であれば保守契約を締結します。
保守契約を締結することで、設備やソフトウェアなどに関するサポートやメンテナンス、故障時の修理、アップデートなどのサービスが受けられるようになります。一方、サブスクリプション契約では基本的に商品の売買契約を締結することが必須とはなりません。
リカーリングシステムとの違い
リカーリング契約とは、消耗品や追加サービスを購入する際に締結する契約です。やはりこちらもまずは商品を購入する必要があります。そして、その消耗品や従量制のサービスを使用する際に追加で費用を支払います。例えばゲーム機を購入した後に、ゲームソフトを追加して購入するというイメージです。
サブスクリプション契約ではサービスや商品は契約期間中しか使えませんが、リカーリングは購入した商品・サービス自体を永続的に使用することが可能です。
サブスクリプション契約を導入しているサービス例
サブスクリプション契約がよく導入されているサービスの事例として、以下のようなものが挙げられます。
動画配信サービス
消費者が一定期間サービスを定額で使用できるサブスクリプション契約は、インターネットサービスと非常に相性がよいです。特によく用いられているのは動画配信の分野です。ユーザーは料金を支払うことで一定期間動画が見放題になる、広告やCMが表示されなくなる、特定の機能が使えるようになるなどの特典を得ることができます。
アプリケーション
オフィスソフトや会計システム、あるいはゲームなどのアプリケーション。かつてはユーザーが購入して永続的に使用する買い切りが基本でしたが、ネットが普及してきたこともあってサブスクリプション契約で提供するケースも増えてきました。ユーザーはサブスクリプション契約を締結することで、必要な期間だけアプリケーションを利用することが可能です。
食材・食品・弁当配達
食材や食品、弁当などの配達もサブスク形式で提供している会社が増えています。利用料金を支払えば、ユーザーの自宅や会社に定期的に食材や食品、弁当が届きます。多忙で時間がない、身体が不自由などの理由で食材や食料品の買い出しが行けない人、あるいは社食の代わりに弁当配達サービスを利用したい企業などからの需要が高いようです。
自動車
自動車に関してもサブスクで一定期間のみ利用するというスタイルが定着しつつあります。ユーザーは定額で契約期間中は車を使うことができます。税金や保険料、車検費用などの維持費も料金に含まれます。仕事や家庭の事情で一時的に車が必要になった、車はほしいけど頭金や購入費の負担が大きいと感じている、いろいろな車種に乗りたい、駐車場代や車検代などの維持費が気になるという方に向いています。
サブスクリプション契約を導入するメリット
企業がサブスクリプション契約で商品・サービスをユーザーに提供するメリットとして、以下のような点が挙げられます。
商品・サービスの利用ハードルを下げられる
サブスクは定額で利用でき、かつ必要なくなったときに任意で契約を終了できるため、ユーザーにとっては契約に至るまでのハードルが格段に低くなります。商品・サービスを販売するよりも新規顧客が獲得しやすく、より幅広いターゲット層にリーチできる可能性があります。
例えば自動車を購入するとなると数百万円単位の初期費用がかかり、その後も車検やメンテナンス、税金や保険料など多額の維持費がかかり続けますので、購入を躊躇される方も少なくありません。サブスクであれば月額数万円で利用できて途中で解約もできるため、これまで自動車の購入を考えていなかったユーザー層が利用してくれる可能性も高くなります。
安定的な収入が得られる
商品やサービスを販売する場合、時期によって売上にばらつきが出るケースも多くあります。よく売れている時期はいいのですが、商品・サービスが売れなくなってしまったとなると、キャッシュフローが悪化しかねません。サブスクリプション契約なら毎月安定的な収入が得られるため、財務も安定させやすいです。
利用者のデータを得やすい
サブスクリプション契約で商品やサービスを提供する場合、まずは利用者にユーザー登録をしてもらったうえで商品・サービスを利用する権利を付与するのが一般的です。居住地や年齢、性別、職業などのデータを得ることができ、それを市場分析やマーケティングに活用することができます。また、メールやDMなどで新しい商品やサービスの告知もできるため、営業活動の効率化にもつながります。
サブスクリプション契約を導入するデメリット
企業がサブスクリプション契約を導入することで以上のようなメリットが得られますが、デメリットも存在します。
初期投資を回収するのに時間がかかる
サブスクリプションは定額で一定期間ユーザーに商品・サービスを利用させるという性質上、初期投資を回収するのに年単位の時間がかかります。例えば50万円の商品を月額1万円で利用させる場合、単純計算で50カ月、つまり初期投資分を回収できて利益を得られるようになるのは4年1カ月以降となります。
ユーザーに解約されやすい
サブスクリプション契約を締結した場合、ユーザーは商品・サービスが必要なくなったら利用を終了させることができます。「お試し」感覚で利用するユーザーも多く、契約が得られるハードルが低くなって新規顧客が獲得しやすくなる分、離脱されてしまう可能性も高くなってしまうのです。特に商品・サービスに魅力がないと、顧客を獲得してもすぐに解約されてしまう事態にも陥りかねません。
サポートの手間がかかる
一般的な売り切り型のビジネスの場合、顧客と取引を行うのは商品・サービスを販売するときだけです。一方、サブスクリプション契約の場合は取引関係が続くので、それだけサポートの手間やコストがかかる可能性があります。
サブスクリプション契約で定める事項
以上でサブスクリプション契約の特徴や企業がサブスクリプション契約によって商品・サービスを提供するメリット・デメリットについてご紹介しました。ユーザーとのトラブルを回避するために、サブスクリプション契約書には以下のような内容を盛り込みましょう。
サービス内容
サブスクリプション契約で提供する商品・サービスの内容を可能な限り具体的に記載しましょう。どのような商品・サービスを提供するのか、どの範囲までが対象になるのか・ならないのか、利用限度(契約期間中に何回利用できるのか)などの情報を盛り込みましょう。
料金
利用料金に関しても「月額●●円」というように明示し、支払方法や支払条件についても記載します。また、一定期間で無償から有償に切り替えるような方式を取る場合、その旨も必ず記載しましょう。
プラン変更
複数のプランを用意し、途中で変更できるようにするのであれば、プラン変更の取り決めも盛り込みます。プランの変更方法や変更後のプランが適用されるタイミング、料金の精算方法などを明らかにしておきましょう。
解約方法
特に解約についてはトラブルになりがちです。解約の方法や解約の手続き期限などを契約書に明記したうえで、サイトの目立つ場所に解約の申込みフォームのリンクを設置するなど、解約がしやすい仕組みを整えておくことも大切です。
年齢確認や未成年者の契約トラブル防止の事項
特にサブスクリプション契約をインターネット上で締結できるようにする場合、未成年者も保護者の同意なしに契約を締結できてしまう恐れが高いため、対策をしっかりとしておきましょう。年齢確認を設ける、保護者の同意を求める、未成年者に対して料金の上限を設定するなどの対策が考えられます。
サブスクリプション契約を管理する注意点
サブスクリプション契約で商品・サービスを提供する場合、非常に多くのユーザーと契約を締結しサポートしていかなければなりません。サブスクリプション契約を管理する際には特に以下の2点について注意しておきましょう。
契約期間や更新期限の管理
サブスクリプション契約は一定期間商品やサービスを利用できる権利を与えるという性質上、契約期間や更新期限の管理が非常に重要になってきます。また、ユーザーごとに契約期間や更新期限も異なります。スムーズなサポートや更新を実現し、トラブルを防ぐためにも、契約期間や更新期限を管理・把握できる仕組みを構築しましょう。
プラン変更やオプション追加にともなう料金変更
特にユーザーとのトラブルに発展しがちな要素としてプラン変更や料金変更が挙げられます。どのような方法でプランが変更できるのか、オプションを追加してどのタイミングでいくら支払う必要があるのかを明確にしておきましょう。また、値上げや値下げなど自社都合で料金を変更する場合は、その旨をユーザーに確実に周知する仕組みを構築することも重要です。
サブスクリプション契約にはメリットも多いが注意点もある
ネットの普及にともなってサブスクリプション契約によって商品・サービスを提供する会社も増えてきました。安定的な収入が得やすい、新規顧客を獲得しやすいなどのメリットも多くあり、ビジネスを拡大できる可能性を秘めている一方で、デメリットや注意点も多数あります。
特にサブスクリプション契約を締結した場合、ユーザーと継続的な取引関係が生じるため、契約期間や料金に関するトラブルが発生しやすくなります。今回ご紹介した内容も参考に、抜け・漏れがない契約書を作成してユーザーと契約を締結しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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