- 更新日 : 2024年9月2日
動産売買契約書とは?ひな形をもとに必要項目や印紙について解説
動産売買契約書とは、不動産を除く財産の売買取引を行う際に作成する契約文書です。作成が義務づけられているわけではありませんが、トラブルの発生を防ぎ、トラブル発生時に契約内容を証明するためにも、作成するのが基本です。今回は、動産売買契約の書き方の基本やひな形、チェックすべきポイントや、収入印紙の有無について解説します。
目次
動産売買契約書とは?
動産売買契約書とは、売主と買主の間で、動産の売買取引を行う際に作成する契約文書のことです。
そもそも動産とは、現金や商品など、不動産ではないすべての財産のことを指します。
動産売買契約をはじめ、売買契約については、民法で契約書の作成が義務付けられていません。売主と買主が合意すれば、口頭でも売買契約は成立します。
しかし、契約内容を書面に残さなければ、万が一トラブルが発生した際、契約内容を証明できません。言った・言っていないのトラブルを防ぐためには、契約書を作成することが望ましいです。
動産売買契約書は、契約内容を明記してトラブルを未然に防ぎ、万が一トラブルが発生した際に、契約内容を証明するために作成します。
特に、高価な動産の売買や、企業間の取引においては、動産売買契約書を作成するケースがほとんどです。
動産売買契約前のチェックポイント
動産売買契約を締結する際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- 所有権の移転時期
- 代金を支払うタイミングや費用
- 目的物の滅失・損傷リスク
- 契約不適合による責任の期間
- 中途解約時の規定
売主と買主の利害は、しばしば対立します。契約内容によっては、自社が不利になってしまうリスクがあるため、内容の確認が欠かせません。
ここでは、動産売買契約前にチェックしたいポイントを解説します。
所有権の移転時期
売買にあたって所有権がいつ移転するかは、重点的にチェックしましょう。
所有権は、自分の物として自由に使用したり、処分したりする権利です。所有権は、当事者の意思表示によって設定・移転されます。
自身が売主である場合は、所有権の移転時期が遅い方が有利です。逆に、買主である場合は、早い方が有利です。
例えば、売買契約と同時に所有権が移転するという契約では、買主が目的物を加工して転売できてしまいます。また、売り渡した後に買主が支払いを拒絶したり、倒産したりした際も、売主は所有権を失っているため、売買契約を解除しない限り、目的物を取り戻せません。
代金を支払うタイミングや費用
代金を支払うタイミングや、契約書で定められた費用以外の費用が発生しないかなども確認が必要です。
取引によっては、目的物を受け取る前に、代金を一部前払いしなければならないケースもあります。
また、目的物の本体価格以外に、配送料や手数料、設置費用などが別途かかるかどうかも確認してください。想定外の費用が発生した場合は、売主と買主のどちらが負担するかをめぐって、トラブルにつながる可能性があります。その金額によっては、利益が大きく損なわれてしまうため、念入りな確認が欠かせません。
目的物の滅失・損傷リスク
目的物が滅失・損傷してしまった場合、そのリスクを売主と買主のどちらが負担するか、契約書を確認しましょう。これを危険負担と呼びます。
また、リスク負担の移転時期についても確認が必要です。リスクが売主にある状況で、目的物が滅失・損傷した場合、買主の支払い義務がなくなります。一方、リスクが買主にある状況では、買主の支払い義務は存続します。
売主にとっては、リスクが早く買主に移転する方が有利です。一方、買主にとっては、なるべく長い間売主がリスクを負担しなければならない状況が有利と言えます。
契約不適合による責任の期間
契約不適合による責任の期間とは、取引が契約内容と一致しなかった場合、買主が売主に責任を追及できる期間のことです。
これまでは瑕疵担保責任と呼ばれていましたが、2020年4月施行の改正民法により、契約不適合責任と定められました。
改正民法566条では、売主による契約不適合責任について、買主が追及できる期間は以下のように定められています。
- 目的物の種類・品質が契約内容に適合しない場合:買主はその旨を1年以内に通知しなければならない
- 目的物の数量・権利が契約内容に適合しない場合:期間の制限はない
なお、売主が契約不適合を認識したうえで引き渡していたか、重過失により認識していなかった場合には、1年という期間制限は課されません。
しかし、動産売買契約で、別途期間を定める場合は、そちらが優先して適用されます。売主にとって期間は短い方が、買主にとっては長い方が有利になるため、契約書で期間が定められていないかをよくチェックしましょう。
中途解約時の規定
中途解約とは、契約期間の途中であっても、契約によって定められた手続きを踏めば、当事者のいずれかが一方的に契約を終了させられるという条項です。
中途解約時の規定を定めることにより、契約を途中で打ち切られてしまうリスクがあります。しかし、自社にとってメリットがなくなった契約や、トラブルが発生した取引関係を早めに終わらせられる、という特長があります。
中途解約時の規定についてはチェックしておきましょう。
また、途中で契約が解約されてしまった際、自社にとってのリスクを回避できる規定が定められているかも確認することが大切です。
動産売買契約書のひな形・テンプレート(ワード)
動産売買契約書の作成を効率化するためには、テンプレートの利用が効率的です。テンプレートを使えば、必要事項が記載された適切な契約書を簡単に作成できます。
以下より、弁護士監修の動産売買契約書のひな形・テンプレートをダウンロードできます。ワード形式で、自社や契約内容に合わせてカスタマイズできるため、ぜひ利用してください。
動産売買契約書の主な記載事項
動産売買契約書の主な記載事項は以下のとおりです。
- 当事者と売買の目的物の表示
- 目的物の引き渡し
- 売買代金の金額や支払い
- 所有権の移転時期
- 買主の検査に関する事項
- 表明保証
- 契約不適合責任
- 危険負担
- 契約解除事由
- 損害賠償
契約書の不備によってトラブルが発生するリスクを防げるよう、基本的な記載事項について理解しましょう。
ここでは、各事項の内容について解説します。
当事者と売買の目的物の表示
動産売買契約書では、まずどちらが売主でどちらが買主なのかを明示します。
また、売買の目的物についても、名称や数量などを記載することが必要です。トラブルが発生した場合に備え、品番のように、個別の商品を特定できる情報を記載しておくとよいでしょう。
目的物の引き渡し
目的物を引き渡す方法や期日などを記載します。
トラブルを防げるよう、運送費用や、引き渡しまでの保管費用をどちらが負担するかなど、具体的な事項についても決めておきましょう。
売買代金の金額や支払い
売買代金の金額や支払い方法、支払い期日などを定めます。支払い方法には、銀行振り込みや手形などさまざまな選択肢があるため、具体的に決めてください。
所有権の移転時期
目的物の所有権が、いつ売主から買主に移転するかを記載します。
基本的には、目的物を買主に引き渡した際、あるいは買主が売主に売買代金を支払った際に、所有権が移転する、と定めます。
買主の検査に関する事項
目的物を買主に引き渡した後、目的物に問題はないか、買主が検査する方法や期限などを定めましょう。問題があった際に、売主に対応を要求する際のルールについても決めておいてください。
表明保証
表明保証とは、取引の前提となる一定の事項について、相手に対して真実かつ正確であることを表明し、保証する条項のことです。一定の事項とは、目的物の状態や数量などを指します。
動産売買契約書では、売主が買主に対して、表明保証をする場合があります。万が一表明保証に違反していた場合は、契約解除や損害賠償の対象となるため、注意が必要です。
契約不適合責任
契約不適合責任は、前述のとおり、取引が契約内容に適していない場合、売主が買主に対して負担する責任のことです。
動産売買契約書では、契約不適合責任の内容や、買主が売主に対して不適合責任を追及できる期間、買主による検品後の責任追及などについて定めましょう。
危険負担
目的物が滅失・損傷して売買契約が実行できなくなった場合のリスクを、売主と買主のどちらが負担するか、そのリスクはどのタイミングで移転するかも定めます。
特に、契約締結日と売買契約の実行日が異なる場合は、危険負担についてのルールを必ず明記してください。
契約解除事由
万が一のトラブルに備えて、契約を解除できる事由について定めましょう。例えば、以下のような事由が挙げられます。
- 売り手が期日までに納品しなかった
- 納品した動産に不具合があった
- 買い手が期日までに支払わなかった
契約違反による契約解除に備え、双方の合意のうえ違約金を設定することもあります。
損害賠償
債務不履行や表明保証違反などによって損害が発生した際の、損害賠償責任の範囲や賠償金の算定方法などを決めておきましょう。
また、万が一裁判に発展した際に、どこの裁判所で裁判を行うかを合意で決める「合意管轄」条項も設定します。
動産売買契約書の書き方や作成ポイント
動産売買契約書を作成する際は、商法第526条を踏まえることがポイントです。
商法第526条とは、会社間の売買における、買主による目的物の検査の義務について記載している条文です。欠陥や不具合等を買主が6ヶ月以内に発見できない場合は、売手に悪意があったケースを除き、代金の減額請求や損害賠償の請求、契約解除などはできないとされています。売主の責任を限定し、保護する意味合いが強い条文と言えるでしょう。
しかし、商法第526条は任意規定であり、契約書の内容によっては適用されない可能性があります。自社が売主として契約書を作成する際は、自社の利益を守るためにも、商法第526条が適用される内容にすることが大切です。
例えば、「取引する動産に欠陥や不具合などが見られた場合、売主が速やかに対応しなければならない」と定め、買主の検査義務について触れなかった場合は、その条項が優先して適用されます。つまり、買主が検査していない場合でも売主が責任を負う必要があったり、6ヶ月を超えても売主が責任を負わなければならなかったりと、売主にとっては不利になってしまうケースはゼロではありません。
このように、動産売買契約書を売主として作成する場合は、商法第526条が適用されない契約条項にならないよう、注意しましょう。
動産売買契約書に収入印紙は必要?
商品や機械など、一般企業が取引の対象とするような動産の売買契約書については、課税文書に該当しないため、収入印紙は不要です。
そもそも収入印紙とは、契約書や領収書といった課税文書に課せられる印紙税を支払うために発行される証票です。印紙税を納付するためには、原則、印紙税額に相当する金額の収入印紙を貼り付けて、消印をする必要があります。
ただし、売買取引基本契約書のように、継続的取引の基本となる契約書については、以下のケースを除き、4,000円の収入印紙が必要です。
- 契約期間が3ヶ月以内である
- 更新の定めがない
動産売買契約書の基本を理解して適切な契約書を作成しよう
動産売買契約書は、現金や商品などの動産の売買取引を行う際に作成する契約書です。作成が義務付けられているわけではありませんが、トラブルを防ぐために作成し、契約内容を書面で残しておきましょう。動産売買契約書にはさまざまなチェックポイントがあります。自社にとって不利な契約にならないよう、動産売買契約書の基本を理解し、適切な契約書を作成することが大切です。契約書の作成を効率化したい方は、テンプレートの活用も検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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