• 更新日 : 2024年11月7日

開発委託契約書に印紙は必要?金額や不要なケースを解説

ソフトウェアなどの開発委託契約書を締結する際には、原則として収入印紙を貼る必要があります。収入印紙なしで開発委託契約書を締結すると、後に追徴課税を受ける恐れがあるので注意が必要です。本記事では開発委託契約書に貼るべき収入印紙の金額や、貼る場所、消印(割印)の押し方、当事者どちらが負担するかなどを解説します。

開発委託契約書に印紙は必要?不要?

開発委託契約書を書面で締結する際には、原則として収入印紙の貼付が必要です。

具体的な開発業務の委託に関する託契約書は、印紙税法上の第2号文書(請負に関する契約書)に当たります。第2号文書に当たる開発委託契約書を締結する際には、原則として所定の金額の収入印紙を貼付しなければなりません。

なお、ソフトウェアなどの開発委託に関しては、まず委託者と受託者の間で基本契約書を締結し、具体的な発注は個別契約書で行う2段階の方式を取ることがあります。

この場合、基本契約書は印紙税法上の第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に当たり、個別契約書は第2号文書(請負に関する契約書)に当たります。従って、基本契約書と個別契約書のそれぞれについて、所定の金額の収入印紙の貼付が必要です。

印紙が必要な契約書の種類については、以下のページをご参照ください。

開発委託契約書に印紙税が必要な場合の金額

第2号文書に当たる開発委託契約書(=具体的な開発業務を委託するもの。個別契約書を含む)に貼付すべき収入印紙の金額は、下表の通り、契約書記載の契約金額に応じて異なります。

契約金額貼付すべき収入印紙の額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下1,000円
300万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

消費税および地方消費税の額(=消費税額等)を区分して記載している場合、または税込価格や税抜価格の記載によって消費税額等が明らかである場合には、契約金額に消費税額等を含めないことができます。

第7号文書に当たる開発委託契約書(基本契約書など)に貼付すべき収入印紙の金額は、4,000円です。ただし、契約期間が3カ月以内で、更新の定めがない場合は収入印紙の貼付を要しません。

開発委託契約書の原本を、当事者双方が保管するために2通作成する場合は、各原本に上記の額の収入印紙を貼付しなければなりません。

これに対して、原本を1通だけ作成し、相手方当事者の保管用に原本の写しを作成する場合は、収入印紙を貼付する必要があるのは原本のみです。

開発委託契約書の印紙税はどちらが負担するか

開発委託契約書にかかる印紙税は、当事者のうちどちらが負担しても構いません。契約書の中で、印紙税を負担するのはどちらであるかを明記しておきましょう。

開発委託契約書の印紙の貼り方

開発委託契約書において、収入印紙を貼る場所はどこでも構いませんが、契約書の表紙や冒頭に貼付するケースが多いようです。後に税務調査を受けた場合などに備えて、一目見てすぐわかる場所に収入印紙を貼っておきましょう。

貼付した収入印紙は、以下のいずれかの方法によって消すことが義務付けられています(印紙税法第8条2項、印紙税法施行令第5条)。

  • 消印

自己またはその代理人(法人の代表者を含む)、使用人その他の従業者の印章を、契約書と印紙の彩紋にかけて判明に押します。用いる印章の種類は自由です。

  • 署名

自己またはその代理人(法人の代表者を含む)、使用人その他の従業者の署名を、契約書と印紙の彩紋にかけて判明に記載します。

割印

印鑑が収入印紙の彩紋にかかっていない場合や、署名ではない文字(「印」など)を記載した場合には、印紙が消されているとは認められません。正しい方法で消印または署名を行いましょう。

開発委託契約書の割印の押し方

開発委託契約書の原本と写しを作成するときは、両者の内容が同一であることを示す目的で、割印を押すのが一般的です(原本を2通以上作成する場合も、割印を押すことがあります)。

割印を押す際には、まず契約書の原本と写しを少しずらして重ね合わせます。その上で、重なった部分にまたがるような形で印章を押します。原本と写しにそれぞれ押された印影を合わせると1つの印鑑になれば、正しく割印を押すことができています。

割印の押し方

割印に用いる印章の種類は自由ですが、契約書の調印と同じ印章を用いるのが一般的です。

開発委託契約書に貼るべき印紙を貼らないとどうなる?

開発委託契約書に貼るべき収入印紙の貼付を怠っても、契約自体は無効になるわけではありません。ただし、最大で本税の2倍に相当する過怠税を課されたり、刑事罰を受けたりする恐れがあるので注意が必要です。

契約書に収入印紙を貼らなかった場合のリスクについては、以下の記事も併せてご参照ください。

契約内容は無効にならない

課税文書である契約書への収入印紙の貼付は、印紙税法上の義務ではあるものの、契約成立の効力要件ではありません。収入印紙が貼られていなくても、契約書によって当事者双方が取引内容を合意していれば、その契約は成立します。

従って、収入印紙が貼られていない開発委託契約書も、他に無効事由や取消事由がなければ有効です。

過怠税や刑事罰のリスクがある

開発委託契約書への収入印紙の貼付、または消印(もしくは署名)を怠ったときは、本税とは別に以下の金額の過怠税が課されます(印紙税法第20条)。

①賦課決定を予知せず、自ら印紙税の不納付を申し出た場合

→本税額の10%

②①を除き、課税文書の作成時までに印紙税を納付しなかった場合

→本税額の2倍

③収入印紙への消印(または署名)を怠った場合

→本税額と同額

※過怠税の合計額が1,000円に満たないときは、1,000円の過怠税が課されます。

また、収入印紙の貼付や消印(または署名)を怠る行為は、刑事罰の対象です(印紙税法第21~23条)。

法定刑は、偽りその他不正の行為により印紙税を免れた場合、または免れようとした場合が最も重く「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」とされています(懲役と罰金が併科されることもあります)。

過怠税や刑事罰を避けるため、開発委託契約書には確実に収入印紙を貼付し、消印または署名を行いましょう。

開発委託契約書に関連する無料ひな形・テンプレート

開発委託契約書のテンプレートは、以下のページからダウンロードできます。実際に開発委託契約書を作成・締結する際の参考にしてください。

また、開発委託契約書の内容や注意点などは以下の記事で解説しているので、併せてご参照ください。

電子契約なら開発委託契約書の印紙は不要に

書面(紙)で作成する場合は課税文書となる開発委託契約書も、電子契約で締結すれば、収入印紙の貼付は不要となります。

印紙税の納税義務は、課税文書を作成した際に生じます(印紙税法3条)。課税文書である契約書の「作成」とは、書面(紙)を相手方に交付する行為を意味します。

電子契約の締結は、相手方に対する書面(紙)の交付を伴わないことを理由に、課税文書の「作成」に当たらないと解されています。

従って、開発委託契約書を電子契約で締結する際には、印紙税の納付は不要です。特に契約金が高額である場合、紙の開発委託契約書に貼るべき収入印紙も高額になるので、電子契約によって印紙税を節約できるメリットは大きいといえるでしょう。

開発委託契約書に限らず、その他の課税文書(不動産売買契約書・請負契約書・業務委託基本契約書など)も、電子契約で締結する場合は収入印紙の貼付が不要です。印紙税を節約したいと考えているなら、電子契約の新規導入をご検討ください。

電子契約に収入印紙を貼付する必要がない理由については、以下の記事をご参照ください。

 


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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