• 更新日 : 2021年10月28日

非弁行為とは?弁護士72条違反行為をわかりやすく解説

非弁行為とは?弁護士72条違反行為をわかりやすく解説

非弁行為(非弁活動)とは、弁護士法に抵触する違法行為のことです。弁護士法72条違反行為が代表的で、ほかにもいくつかの関連規定がありますが、条文を見ただけでは何が違反行為なのかがよくわかりません。
そこで、ここでは「具体的にどのような行為が非弁行為に当たるのか」を解説します。よくある不動産関連の問題や士業に関する非弁行為の問題、また近年取り上げられることが多い退職代行に関する問題なども見ていきます。

非弁行為とは

「非弁行為」を簡単に説明すると「弁護士法に定められている弁護士のみに認められている行為を弁護士以外の者が行うこと」です。「非弁活動」と呼ばれることもあります。
弁護士法では非弁行為に関する規定が「法律事務の取扱いに関する取締り」として、72条・73条・74条に定められています。それぞれどのような行為を取り締まっているのか、見ていきましょう。

弁護士法 72 条違反

弁護士法72条の内容は以下のとおりです。

第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索 弁護士法

72条は「非弁護士による法律事務の取扱い等」を禁止しています。
ポイントは、報酬を得る目的を持ち、法律事件等を対象に、法律事務を行うことを業とするという点です。
そのため、報酬を得なければ72条に違反しませんし、報酬を得たとしても法律事件等ではない一般的な悩み相談に応じた場合も違反とはなりません。
法律事務の代表的な行為は、法律相談や示談交渉の代理、調停や訴訟代理などです。
このような規定があるのは、高い専門性を必要とする法律事務であるにも関わらず、弁護士以外の者が対応することでかえってトラブルに発展するおそれがあるからです。

140万円以下の案件は司法書士が対応できるなど、一部弁護士でなくても対応できる例外はあるものの、基本的には法律事務に有償で対応できるのは弁護士のみです。

「報酬」は金銭に限られませんし、「業とする」ことに関しても仕事としての営利性までは必要ありません。反復して継続的に行う意思があれば、要件を満たします。
同条に違反をした者に対する罰則も設けられており、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される可能性があります(弁護士法77条3号)。
なお、法的な紛争について当事者である自分自身が対応することは問題ありません。

弁護士法 73 条違反

弁護士法73条の内容は、以下のとおりです。

第七十三条 何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることができない。

引用元:e-Gov法令検索 弁護士法

弁護士法73条では、「譲り受けた権利の実行」を禁止しています。
例えば他人から債権を譲渡してもらい、業としてその取立てをした場合は同条違反、非弁行為となります。
こちらも、かえってトラブルを起こす危険があること、法律生活上の利益に弊害が生じるおそれがあることなどから禁止されています。

ただし、形式的に同条に該当するからといって、必ずしも非弁行為として処罰されるわけではありません。
実際、訴訟の誘発や紛議を助長するおそれや、国民の生活上の利益に弊害が生じるおそれがなく、さらに社会経済的に正当な業務といえるケースにおいて、違法行為ではないと判断された例もあります。事業者向けのファクタリングサービスなども、金融目的であることなどから基本的に合法と考えられています。
法務大臣から許可を受けた債権回収会社(サービサー)も、サービサー法によって例外的に認められています。

73条違反に対しては、72条違反と同じく2年以下の懲役または300万円以下の罰金が法定刑として定められています(弁護士法77条4号)。

弁護士法 74 条違反

弁護士法74条の内容は、以下のとおりです。

第七十四条 弁護士又は弁護士法人でない者は、弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない。
2 弁護士又は弁護士法人でない者は、利益を得る目的で、法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはならない。
3 弁護士法人でない者は、その名称中に弁護士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。

引用元:e-Gov法令検索 弁護士法

74条は、72条・73条とはやや毛色が異なります。
法的紛争の解決や債権回収といった業務の遂行を禁止しているのではなく、弁護士のふりをした標示、紛らわしい標示を禁止しています。
つまり、弁護士でない者が「弁護士」と名乗ったり「○○法律事務所」「○○弁護士事務所」などと記載したりするのは違法です。これらの表記は、利益を得る目的とは関係なく非弁行為の要件を満たします。

また、利益を得る目的で「○○法律相談所」などと記載をするのも、同条第2項によって禁じられています。同条第3項では、弁護士法人と間違えてしまうような名称を使用することも禁じています。国民が間違えて弁護士でない者に依頼してしまい、不測の事態を招くことなどを防ぐことがこの規定の目的です。同条に違反した場合は、100万円以下の罰金刑の対象になります(弁護士法77条の2)。

非弁提携について

非弁行為と似た用語に「非弁提携」があります。
非弁提携とは、弁護士が非弁行為をする非弁護士と提携して、その事案を引き受けたり自己の名義を利用させたりする行為のことです(弁護士法27条)。
例えば、弁護士が非弁護士に金銭を支払ったり報酬を山分けする約束をしたりして依頼主の紹介を受けた場合や、名義を貸して紛争処理を非弁護士に行わせた場合は、非弁提携として27条違反に該当します。

この場合は、弁護士も非弁行為をする者と同等の刑(2年以下の懲役または300万円以下の罰金)で処罰されます(弁護士法77条1号)。

知っておきたい事業に関わる非弁行為の一例

ここからは、非弁行為として問題になりやすい「不動産取引に関する行為」「退職代行サービスに関する行為」そして「他の士業が行う行為」について、具体例を挙げて紹介します。

不動産に関わる非弁行為の例

不動産業において、いくつか非弁行為に該当し得る行為があります。
特に不動産取引は多額の金銭のやり取りが行われることから紛争が生じやすいため、不動産業者は非弁行為に該当しないよう留意すべきです。

例えば「賃料に関する交渉業務」を見てみましょう。
不動産業者がある物件のオーナーから依頼を受け、入居者と賃料等の交渉を行った場合は非弁行為に当たる可能性があります。反復継続的であり、金銭のやり取り(オーナーから報酬を受け取る)が発生しているのであれば違法です。

「地上げ交渉」も非弁行為に該当することがあります。
土地利用者の立ち退きを求める交渉は弁護士業務の範疇ですし、地上げに限らず賃貸アパート等の立ち退き交渉も非弁行為になる可能性があります。
ここでも重要なのは報酬の有無、そして実質的に賃貸人の代理人として行動しているかどうかです。名義だけで形式的に判断するのではなく、実質的に代理人として行為をしたかどうかで判断されます。

なお、不動産取引に携わる「宅建士」は、一定の研修を受けて要件を満たすことでADR(日本不動産仲裁機構。裁判外紛争解決方法の一種)の調停人となる資格が与えられます。通常はトラブル解決を業務として行うと非弁行為となりますが、調停人として登録を受けた宅建士であれば宅建業法規定の業務に加え、和解の仲介も可能になるのです。ただし、あくまで裁判外のADRにおける活動に限られます。

退職代行に関わる非弁行為の例

近年は、退職代行サービスを利用して会社を辞める人が増えています。
しかし退職代行サービスは、サービス内容によっては非弁行為に当たることがあります。

単に使者として退職届の提出を代行するだけであれば問題になりませんが、報酬を受け、退職に関する交渉まで代行した場合は非弁行為に当たります。例えば未払い給料や残業代の請求、有給休暇や退職金に関する交渉などは代行できません。交渉の内容が金銭に関わるかどうかも関係ありません。

退職代行サービスを提供する業者が弁護士でないなら、あくまでも退職届を提出するためだけの(民法上の)使者であることを踏まえて行動することが大切です。
サービスを利用する側は、弁護士でない業者には交渉までは依頼できないことを理解した上で、違法な業者でないことを確認しておきましょう。
企業側は、退職代行サービスと称して弁護士でない者が交渉を持ち掛けてきた場合は取り合わず、地域の弁護士会や警察、弁護士などに相談してください。

士業に関わる非弁行為の例

非弁行為が問題になりやすい領域として、弁護士以外の士業が行う業務も挙げられます。
特に司法書士や社労士、行政書士などの業務内容は弁護士が行うものに似ているため、非弁行為が行われやすい傾向があります。

例えば、特定の司法書士(一定の研修を受けた認定司法書士)は民事訴訟における代理人になることができます。ただし訴額140万円以内に限られており、これを超える場合には対応できません。また司法書士は登記の専門家ですが、登記に関する交渉を行うことはできません。
行政書士は離婚協議書や遺産分割など様々な書類を作成できますが、協議で問題が解決できず紛争に発展した場合の「交渉」には対応できません。相談業務も、書類作成に必要な範囲に限られます。

社労士は労働関係の法的知識を有する専門家ですが、労働者などと交渉を行うことは非弁行為に当たります。特定の社労士であればADRに関する業務を遂行できますが、やはり紛争解決全般には対応できません。

非弁行為かもしれないと思った際は弁護士へご相談を!

一般の方でも非弁行為とはっきりわかるものもあれば、そうでないものもたくさんあります。意図的でないにしろ違法行為に加担しないように、疑わしい場合は弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば弁護士法違反になることはなく、あらゆる法律問題に対処できます。交渉代理や訴訟代理など、トラブルの最初から最後まで一貫して合法的に対応してもらえるので、安心して任せられるでしょう。
非弁行為に巻き込まれないように、少しでも疑問があれば弁護士に対処方法を確認することをおすすめします。

よくある質問

非弁行為とは?

弁護士だけに認められている法律業務を、弁護士以外の者が報酬を受け取って業として行う違法行為のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

どんな行為が非弁行為になる?

訴訟代理のほか、契約に関する交渉代理や法律相談など、報酬を受けて行うと非弁行為に当たります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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