- 更新日 : 2024年8月29日
業務提携契約書とは?作成する際の注意点も解説
業務提携は、自社だけでは困難な事業を進める際に欠かせない取り組みの一つです。業務提携を行う場合、一般的には、業務提携契約書を作成して契約を締結します。
今回は、業務提携契約書に盛り込むべき内容や作成時の注意点などについて説明しますので、契約書作成時の参考にしてください。
目次
業務提携契約書とは
業務提携契約書の概要として、「業務提携」の意味、業務委託契約書との違い、契約書の必要性について説明します。
業務提携とは
業務提携は、企業間契約の一つです。複数の企業が資金・ノウハウ・人材・ネットワークなどを提供し合って共同で事業を行い、売上向上やコスト削減などの共通目標の達成を目指します。目的や企業同士の関係、分野などによってさまざまな形態がありますが、以下の3つが典型的な形態といえます。
販売提携
販売提携は、ある企業が開発した商品の販売を別の企業が代行する形態の業務提携です。販売活動を代行する代理店契約や、販売側企業が商品を購入して販売活動を実施する販売店契約、ノウハウを提供する本部企業とその指導・統制の下で販売活動を行うフランチャイズ契約などがあります。
生産提携
質の高い商品を生産するための業務提携です。商品の生産を一方の企業(委託側)が別の企業(受託側)に委託するOEM、受託側が設計・開発・生産した商品を委託側が自社ブランド商品として販売するODMがあります。
技術提携
技術やノウハウ、特許などの知的財産権を含む技術面のリソースを共有するのが技術提携です。技術リソースを他社に使用させるライセンス契約や、複数の企業が独自の技術リソースを提供し合う共同開発契約などがあります。
業務委託契約書との違い
業務委託契約は、特定の業務を外部企業や個人に委託して実施してもらい、その対価を支払う形の契約で、業務提携よりも委託・受託の関係が明確であることが特徴です。ただし、業務提携と業務委託の違いが法的に定義されているわけではないため、契約内容によってはあまり違いがないこともあります。
比較的対等な立場で締結されることが多い業務提携契約に対し、業務委託契約は親事業者と下請事業者(個人事業主)のように地位の差が存在するケースも少なくありません。受託側が業務のほとんどを担当することが多いため、業務委託契約書には委託内容を具体的に記載する必要があります。
一方、業務提携契約では業務提携に参加する企業がお互いに何らかの業務を行うケースが多いため、その場合は双方の業務内容と責任範囲が具体的に記載されることになります。
業務提携契約書が必要な理由
業務提携契約書を作成して相手の企業と取り交わすことにより、認識の共有とトラブルの回避が期待できます。
契約書で業務提携の目的や参加企業の役割などを明確に規定しておけば、「相手の企業は●●をしてくれると思っていた」「自社は○○だけ実施するつもりだった」というような認識のズレが起こりにくくなります。また秘密情報の扱いや権利関係などを取り決めることで、トラブルを未然に防ぐこともできます。
業務提携契約書で提携する業務内容と役割範囲を定めることで、円滑な業務提携が可能になります。
業務提携契約書に必要な要項
業務提携契約書に盛り込むべき内容は契約によって変えられます。ただし、自社が不利益を受けないように、最低限必要な情報はいくつかあります。ここでは、必要な情報を7つ紹介します。
目的
契約書には、業務提携を行う目的を記載します。業務提携の合意に至る前のコミュニケーションの段階で目的は明確になっているはずですが、契約書で明確にしておいた方がよいでしょう。目的が明確であれば、それぞれの役割もはっきりします。
業務内容・役割分担
提携後にお互いが行う業務の内容や、それぞれの担当範囲について明記します。例えば、要件定義や設計、開発、テスト、納品、営業、マーケティングなどの業務、その際に必要な機材やツール、システムなどの費用負担、トラブル発生時の対処方法など、業務提携を遂行するために必要な要素を契約書に盛り込みましょう。
成果物・知的財産権の帰属
業務の遂行によって何らかの製品やサービス(=成果物)が発生した場合、その権利を持つ企業や権利の範囲を明確にします。業務提携によって生み出された知的財産についても同様です。契約締結前にこの点を明確にしておかないと、成果物や発生した知的財産を自社で取り扱えないという不利益を被るおそれがあります。
秘密保持義務
業務の遂行にあたっては、お互いが人材やノウハウ、特許、顧客などに関する秘密情報を開示することもあるかもしれません。そういった場合には、このような秘密情報の扱いに関しても契約書に記載するようにしましょう。この点が不明確だと、自社の秘密情報が外部に流出して致命的な損害を被るおそれがあるため、十分注意してください。
収益分配・費用負担
業務提携によって得られる収益の分配や、負担すべき費用の分担について記載します。一般的に、収益の分配は事業への寄与度によって決めることが多いです。費用負担の割合も当初に定めておかないと、トラブルにつながるでしょう。金額だけでなく、支払日や具体的な支払方法についても記載すべきです。
支配権の変更
支配権とは株式を保有することで得られる、会社を支配する権利です。
業務提携の相手企業が合併や事業譲渡、株式交換や株式移転、株式分割、株式取得などを行って支配権が変更されると、提携関係を継続するのが難しくなることがあります。
例えば、相手企業が競合企業に買収された場合、業務提携によって発生した成果物や知的財産、ノウハウなどが流出するリスクがあるからです。
そのため、「相手企業の支配権が変更された場合は契約を解除できる」と定めるケースが多いです。
契約期間
業務提携の期間を定めます。契約期間内の契約打ち切りや契約延長、更新の条件・方法なども決めておきましょう。
業務提携契約書のテンプレート
業務提携契約書の形式に法的な決まりはないため、個々の契約内容に応じて自由に契約書を作成することになります。今回は、前述の7つの必要事項に沿ってテンプレートを作成したので、契約書を作成する際の参考にしてください。
業務提携契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
※このテンプレートはあくまで一例であり、個々の契約内容によって契約書の内容は異なります。テンプレートの使用によって損害が発生したとしても、弊社は一切の責任を負いません。
業務提携契約書を作成する際の注意点
業務提携契約書を作成する際は、提携内容を明確化するとともに、その内容に則した契約内容にすることが重要です。実際の提携内容に即していないと、契約書の法的な効力が失われたり、自社が思わぬ不利益を被ったりすることがあります。
前述の7つのポイントのように、どのような目的で業務提携を行うのか、お互いがどのような業務をどのような役割分担で行うのか、発生した収益の分配や費用の分担はどのようにするのか、成果物・知的財産の所属および権利はどのように取り扱うのか、といったことを契約書に盛り込みましょう。
7つのポイントを盛り込めば大きな問題は発生しにくくなりますが、契約を締結する前に弁護士や社内の法務チームへリーガルチェックを依頼することをおすすめします。
業務提携契約書に印紙税は必要?
紙で契約書を作成する場合は、業務提携契約書であっても印紙税が必要になるケースが多いです。業務提携契約は請負契約や売買契約、財産権の譲渡など印紙税の額に影響を与える複数の要素で構成されるケースも多いため、契約ごとに支払うべき印紙税の額を慎重に確認しなければなりません。税理士や弁護士などにアドバイスを求めるとよいでしょう。
なお、電子契約の場合は印紙の貼付自体が不要になります。双方が合意しているのであれば、オンライン上で業務提携契約書の作成・やりとり・保管を行うことをおすすめします。
業務提携契約書で業務提携を円滑に進めよう
業務提携契約書は、業務提携を円滑に進めるために必要なことが書かれた重要な契約書です。自社だけで成し得ない事業を他社との提携によって成功させるためにも、過不足のない業務提携契約書を作成しなければなりません。
今回説明した7つのポイントを始め、双方が納得できる形で業務提携契約書を作成することで、業務提携が円滑に進みます。ぜひ参考にしてください。
よくある質問
そもそも業務提携とは何ですか?
複数の企業が資金・ノウハウ・人材・ネットワークなどを提供し合って事業を行い、売上向上やコスト削減などの共通目標の達成を目指す取り組みです。販売提携や生産提携など、いくつかの種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。
業務提携契約書に必要な要素は何ですか?
目的、業務内容・役割分担、成果物・知的財産権の帰属、秘密保持義務、収益分配・費用負担、支配権の変更、契約期間の7つは盛り込んだ方がよいです。詳しくはこちらをご覧ください。
業務提携契約書に印紙税は必要ですか?
紙で作成・保管する場合は、契約内容に応じた印紙税がかかります。ただし、電子契約の場合はかかりません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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